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145.スペインの羊飼い 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

あれは教会の鐘じゃない。


本物の鐘楼に吊るされた鐘は、打てば余韻が伸びる。冷たい空気と山肌に引き延ばされて、雲の中から鉄線をゆっくり引き抜くみたいに長く続く。さっきの一打ちは、短く、乾いて、硬かった。誰かが鉄槌を持って、そう遠くない場所で、わざと聞かせるように叩いた音だ。


時刻じゃない。


位置だ。


ドアを閉めてエンジンをかける。ハンドルから手を離しきる前に、林雨瞳(リン・ユートン)はもう後部座席で、防水袋を足元に押し込んでいた。袋の中身は、さっきS.O.M.B.R.A.から受け取ったものだ。数枚の地図と一本の銀鍵、そして影とワイスマン(ワイスマン)のダミー会社を結びつける証拠。バローロ神父は助手席で、顔色を少し青くして、まだ後ろの半分崩れた補給小屋を睨んでいる。ヴィクトリアは一番後ろの席で、目立たない工具バッグを抱えたまま、始めから終わりまで一言も余計なことを言っていない。


この編成は、山道を逃げるというより、葬式に向かっているように見える。


「二十二時四十七分」林雨瞳(リン・ユートン)が時計を一瞥して、会議の議事録でも読むような声で言った。「接触完了。山中の第三勢力が、こちらの位置をマーキング開始」


「影じゃない」俺は言った。


バローロ神父が横を向いて俺を見る。「なぜわかる?」


俺はゆっくりと泥地から車を出し、視線を前方の、木の影に挟まれて黒い裂け目みたいになった山道から外さなかった。


「影は金で動く。仕事が終われば、洞穴に戻ることしか考えない。今夜あいつらはちょうど荷を吐き出したところだ。頭が正常なら、今一番やるべきことは消えることであって、鐘を持って山の中で俺に合図を送ることじゃない」


二度目の鐘はすぐに来た。


今度は左後方だ。


神父の手が素早く胸の十字架を掴み、俺は心の中でその位置を黙って記録した。追尾じゃない。尾行でもない。網を張っている。誰かがこの山をいくつかに区切り、網を引き上げる漁師みたいに静かに俺たちを包み込もうとしている。


「進路を絞っている」林雨瞳(リン・ユートン)が言った。


彼女のスマホの画面にはオフライン地形図が灯っている。青い点が俺たち。周りには等高線と放棄された林道がびっしりと走っている。彼女は無駄口を叩かない。特にこういう時にはなおさらだ。「進路を絞っている」と言ったら、それは推測じゃなく、判断だ。


「わかってる」俺は言った。


厄介な追跡というのは、相手が速いことじゃない。相手が急いで殺しに来ないことだ。


殺すだけなら、山の中の方が街中よりよほど簡単だ。タイヤを潰し、道を塞ぎ、銃を構え、車を止めさせ、降りたところを刺して、死体を斜面の下に蹴り落とす。野犬と雨水が後始末をしてくれる。きれいで、手っ取り早い。それが普通の人間のやり方だ。だがC.A.L.F.は違う。あいつらはすぐに撃ってこない。車を爆破もしない。ただ鐘の音を俺たちの耳のすぐそばで鳴らし続けて、「見られている」「数えられている」「どこかへ追い立てられている」と理解させる。


これは狩りじゃない。


牧畜だ。


考えるより先に、俺はハンドルを切った。予定していた下山ルートには乗らず、横のさらに狭く、さらに荒れた林道の分岐に車を突っ込ませた。タイヤが泥に沈み込み、車体が大きく揺れる。右後輪が半秒ほど空転してから、ようやく地面を噛んだ。


「予定ルートではない」バローロ神父が即座に言った。


「だから行く」俺は平然と返した。「あの鐘の音が『主を讃えよ』に聞こえたか?」


神父は言い返せず、最後にスペイン語で一言悪態をついた。俺を褒めていたわけじゃないだろう。


車が林道に潜り込むと、霧が一気に濃くなった。


絵になる霧じゃない。詩もなければ神秘もない。ただ前方一面を白っぽい冷たいスープみたいにしてしまう霧だ。ヘッドライトを突っ込んでも、五メートル先から曖昧になり、十メートル先は乳白色の湿り気の塊に消える。両側の木陰が車窓に貼りつくように後ろへ流れていく。顔のない黒い観客の群れみたいに、全員がこちらを見ている感覚だけが残る。


三打目の鐘は来なかった。


山は不自然なほど静かになった。


静かであればあるほど、C.A.L.F.が今回は出たとこ勝負ではないと確信が深まる。山の中に俺たちがいると気づいて追ってきたんじゃない。最初から俺たちが来ると知っていて、影と接触することも、地図と銀鍵を回収しようとすることも、どの山域から撤収する可能性が高いかも、ほぼ見積もった上で待っていた。


言い換えれば、今夜の一手は、俺たちがS.O.M.B.R.A.を捕まえに行ったのではない。


「俺たちが必ずS.O.M.B.R.A.を捕まえに行く」と読んで、先に山で待っていた奴らがいる。


ヴィクトリアがふいに言った。「木に、何かある」


声は低い。だが彼女が口を開くときは、理由があるときだけだ。右側をちらりと見たが、何も見えない。林雨瞳(リン・ユートン)が懐中電灯を最弱にして、車窓の外を一度だけなぞるように照らした。その一瞬の白い光が、黒い布を刃で掠めるみたいに走り、俺たちはそれを見た。


松の幹から細長い黒い布切れが垂れていた。


一本、二本、三本……一定の間隔で続いている。長さはまちまちだが、ほぼ同じ高さに結わえてある。ヴィクトリアの目が利かなければ、この視界ではまず気づけない。


バローロ神父はそれを二秒ほど見て、さらに顔を曇らせた。


「道標じゃない」彼は言った。


「じゃあ何だ?」俺は訊いた。


「古い懺悔行列の目印だ」神父の喉仏がごくりと動いた。「俺たちは、数えられている」


俺は何も言わなかった。


説明を補う必要はない。四人。四つの命。四つの回収対象。C.A.L.F.の連中はこれまで人を斬るしか能がないと思っていたが、今は印まで使うようになった。賢くなったというより、背後にあいつらをもう少し"人間らしく"訓練した奴がいる。そういう存在の方が、ただの狂信者より厄介だ。狂っていれば、動きも乱れる。半分だけ正気で、半分だけ狂っている連中こそ、戦術を覚え始める。


前方の林の中で、何かがちらりと光った。


冷たい白い反射だ。小さいが、不自然に澄んでいる。


ヘッドライトじゃない。光学レンズか、スコープだ。


それを認識したほぼ同時に、俺はハンドルを左に叩いた。


一秒遅れて、右後方が爆ぜた。


泥と砕石と濡れた土が一気に吹き上がり、車体全体を叩いてバラバラと音を立てた。威力は大したことがない。車をひっくり返すほでもなく、人を確実に殺せるとも限らない。ただ、冷や汗をかかせるには十分だ。この種の仕掛けは殺すためじゃない。補正するためだ。決められた道筋から外れれば、最小限の暴力で元のレールに戻そうとする。


「外力による誘導」林雨瞳(リン・ユートン)が言った。


「この状況で、まだ報告書みたいな言い方ができるのは、ある意味ありがたいな」俺は言った。


「誰かは普通でいないと」


こんなやり取りなのに、笑いそうになった。ほんの一瞬だが、少なくとも俺の頭はまだこの霧鍋で煮崩れていない。


車は下り続ける。枝が両側のドアに引っかかり、鉄板の上を刃物で引きずったような甲高い音を立てる。背後にはまだ黄色い灯りは見えない。だが灯りの持ち主がまだ付いてきているのはわかっている。こういう牧畜戦術が得意な連中は、羊に牧人の姿が完全に見えない状態を作りたがらない。常に「いる」とわかる距離を保ちながら、手が届かないところにいる。


すぐに、その日はっきりした悪意が道の真ん中に現れた。


黒い羊だ。


仮設の木枠に打ち付けられ、喉を掻き切られ、血はすでに乾いている。両前脚は高く突き上げられ、粗悪で笑えるほど下品な宗教飾りのようだ。一番胸糞悪いのは、腹を割かれた中に内臓が一つも残っておらず、代わりに真鍮の鈴が詰め込まれているところだ。ヘッドライトに照らされて、その鈴が黄ばんだ光を返す。安っぽく、悪趣味な聖像レプリカみたいに。


バローロ神父の口元が露骨に引きつった。


「犠牲の子羊だ」彼は言った。


「センス最悪だな」俺は言った。


それでもブレーキを踏んだ。


羊のせいじゃない。その木枠の後ろの、わずかな地面の「きれいさ」のせいだ。山道の地面は、あんなにきれいなはずがない。落ち葉、小枝、泥水。どんなに目立たなくても、何かしらの痕跡は残る。だがその一角の土だけは、ざっくりと削られて、上から薄く新しい土をかぶせたみたいに、妙にすべすべしている。何かが通るために用意されたような土だ。


「バック」ヴィクトリアが言った。


質問せずに、すぐにギアを入れ替えた。


ほぼ同時に、木枠の下で轟音がした。黒い羊ごと木枠と鈴が落ち込み、路面が薄い皮のように破れた。穴は深くない。だが横幅は十分ある。前輪が落ちれば、車全体が腹を支えられて、ここで動けなくなる。


俺は黒い穴を二秒ほど見つめて、むしろ冷静になった。


上等だ。


ようやく、邪教趣味の悪趣味で脅かすだけじゃない手を使ってきた。


「右後方」林雨瞳(リン・ユートン)が言った。


バックミラーを見ると、霧の中にぼんやりと黄色い点が浮かび上がっていた。


ヘッドライトじゃない。位置が高すぎるし、揺れ方もおかしい。林の向こうで誰かがランタンを提げて、こちらと平行に歩いている。ひとつ、ふたつ、みっつ……数が増える。叫び声も、足音も、怒鳴り声もない。ただ霧の中で明滅する灯りだけがある。湿った夜の、一列に並んだ瞬きしない瞳のようだ。


バローロ神父が低く言った。「ここで閉じ込めるつもりだ」


「寝言はあっちで言え」俺は言った。


ハンドルを切り、車体を松の幹すれすれに滑らせて、道とも言えない斜面に突っ込む。枝が側窓に叩きつけられ、泥水がフロントガラス一面に飛び散る。前輪が二度空転してから、再び噛みついた。バローロ神父は前のパネルに頭から突っ込みそうになり、林雨瞳(リン・ユートン)は一方の手で防水袋を押さえ、もう一方の手で体を支えた。ヴィクトリアは身をかがめて工具バッグを漁っている。


「何を探している?」神父が振り向いて訊く。


「パーツ」ヴィクトリアは言った。


「今か?」


「今」


そう言うと、工具バッグから細かい金属片を一握り取り出した。ナット、バネ板、角の擦り減った小さな金属片、そして見るだけで足裏が痛くなりそうな細いスパイク付きの小さなシャフト。時計職人のはずだが、その掴み方は、古い兵隊がポケットから鉄製のスパイクや三角のジャックをばらまくときと大差ない。


次の分岐で、俺はわざと速度を一瞬だけ落とした。ヴィクトリアはすかさず窓を数センチ開けて、それらを後方へ撒き散らした。


林雨瞳(リン・ユートン)は一瞥で意図を理解した。


「タイヤを割るほどじゃない。でも、踏めばかなり不愉快ね」


「山で追跡するとき、相手を殺す必要はないこともあるわ」ヴィクトリアは窓を閉めた。「一歩遅らせられれば、それで十分な時もある」


俺は振り返らなかったが、頭の中で彼女の名前に印を付けた。この女は普段、懐中時計でも直しているように見えるが、いざとなれば、人のリズムの壊し方もよく知っている。時計師と殺し屋は、どこかで似ている。どちらも時間を狙う。


数分ほど下り続けると、背後の黄色い灯りが一度乱れた。二つの光点が突然下に沈み、すぐ後に金属の滑るような音が微かに響いた。誰かが斜面で足を取られて、手に持った灯りごと落とした音だ。


俺は息を抜かなかった。


本当に危ないのは、あの提灯持ちどもじゃないからだ。


まだ一度も姿を見せていない「誰か」の方だ。


雨瞳(ユートン)、外との通信は?」俺は訊いた。


「電波は全部潰されてる」彼女はスマホを見ながら言った。「自然な圏外じゃない。人為的なジャミング。短波もきれいじゃない」


「だろうな」


ただ山で追跡するだけなら、ここまで綺麗に通信を潰す必要はない。このレベルの準備をしているということは、今夜の狙いが地図と銀鍵の奪取だけじゃなく、俺たちを外から切り離し、山の中で誰にも知られない回収作業を完遂することだという意味だ。


バローロ神父が突然訊いてきた。「最初からわかってたんだろう? 物を取り返した瞬間に、あいつらが動くことを」


俺は霧に飲み込まれそうな前方の道を見つめて、少し間を置いてから答えた。「わかってた」


「じゃあなぜ俺たちを連れてきた?」


「他にどうする?」俺は言った。「地図と銀鍵を影の手に残して、C.A.L.F.に好きに回収させるか? そうしたら修道院のあの死体は、今度こそ本当に無駄死にだ」


神父は言葉を詰まらせた。


俺はさらに一突き加えた。


「それに、物をこっちに取り戻して初めて、あいつらは急ぐ。敵は急がせてこそ尻尾を出す。教会だって昔からよくやってきただろう? 異端の角が出るまで泳がせて、『神意』が現れたと宣言する。俺はただ、その手続きを少し現代風にしただけだ」


バローロ神父は俺を睨んだが、最後には小さく笑った。


「異教徒のくせに、本当に口が悪い」


「お互い様だ、神父」


霧が山風に裂かれて、前方に黒い輪郭が現れた。


廃棄されたロープウェイ駅だ。


あそこは一見何もないように見えて、実は待ち伏せに一番適している。左右が高く、中央が狭い。車が入った瞬間、前後を光と火力で完全に封鎖できる。銃を構え、ライトを据え、障害物を置く。上から鋼索を二本落とすだけでも、俺たちを一網打尽にするには十分だ。


俺は方向も修正せず、外側をかすめるように通り抜けた。


その場所を掠めたほぼ次の瞬間、高い場所から強烈な光が突然叩きつけられ、本来なら車のフロントが入るはずだった位置を真っ白に照らし出した。続いて林の中から、低く抑えられた悪態が聞こえた。


空振りしたのだ。


林雨瞳(リン・ユートン)が横を向いて俺を見た。「なぜあそこに人がいるとわかったの?」


「俺が奴らでも、あそこを選ぶからだ」俺は言った。


彼女はそれ以上訊かなかった。


こういう時、相手の次の一手が読めるほど、相手がただの殺人狂ではないと証明されてしまう。それは良いことじゃない。狂人は恐ろしいが、こっちの思考をなぞってくる狂人の方が厄介だ。


山道はさらに下り、前方に突然古い橋が現れた。


橋というより、二つの斜面の間に挟まった細長い骨のようだ。哀れなほど狭く、車一台がやっと通れる幅しかない。下は底が見えないほど暗い谷で、橋の隙間から風が吹き上がってくる。深いところで誰かがゆっくり喘いでいるみたいだ。橋の両端には古い木の杭が立ち、錆びた鉄の輪がついている。

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