143.取調室 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
俺たちが引き離されるスピードは速かった。
普通の殺人課の効率じゃない。通常の殺人事件なら、まず座らせて待たせる。コーヒーが冷めるまで、書類が印刷されるまで、どこかの主任が別の会議から急いで戻ってくるまで待たせてから、一人ずつ呼び込む。ここにはそれがない。会議室で全員を集め終えてから十分も経たないうちに、ドアの外には三つの異なる部署の人間が揃っていた。地方警官が先に退き、国家警察が入り、続いて情報系統の連中。案件が上に引き上げられた途端、手順は洗練されたが、表情はむしろ冷たくなった。
俺は三番目の部屋に回された。
ドアに名前はない。番号だけだ。部屋には机が一つ、椅子が三脚、白っぽい照明が一灯。水のコップが机の角に置かれているが、誰も手をつけていない。この手の部屋は人を快適にするためのものじゃない。全体から個々の部品に分解して、その部品同士が噛み合うかどうかを見るためのものだ。
座る前に、隣の部屋から最初にペンが止まる音が聞こえた。
かすかな音だった。
誰かが順調に書き進めていたのに、突然、次の言葉を正式記録に残すべきかどうか迷い始めたような音。
手続きを最初に汚し始めたのが誰か、だいたい見当はついた。
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後になって、廊下で他の連中から話を繋ぎ合わせて聞いた。
彼女が連れて行かれたとき、担当したのは国家警察の記録係一人と、年若い副官一人だった。二人とも、自分が今何に向き合っているのか、まだ気づいていなかった。彼らは彼女を、外見が若すぎて身分が奇怪な随行女性として扱っていた。せいぜい、国境システムで完全な情報が出てこない厄介な案件程度の認識だ。その手の厄介事なら見慣れている。たいてい二次照合で片がつく。
問題は、エリザヴェータが嘘をつかなかったことだ。
嘘をつくより、ずっと始末が悪い。
「名前は?」
「エリザヴェータ」
「フルネームで」
「そなたが今扱えるのは、その部分だけだ」
記録係が顔を上げたが、まだ異常とは思っていない。口の悪い外国人程度の受け取り方だ。ペン先が続く。
「国籍は?」
「そなたらの分類表には該当がない」
「ご協力ください」
「ならば空欄にしておけ」
記録係は息を一つ吐いて、欄を変えた。
「年齢は?」
「五百九十六」
ペンが止まった。
部屋の中が二秒ほど静まり返った。
記録係が顔を上げる。聞き間違いだと思ったのだろう。「もう一度、お願いします」
「五百九十六だ」彼女は今日が何月何日かを告げるような口調で言った。「もっと正確に記したければ、月まで補ってやろう」
副官が先に笑った。外国人が取る最も安っぽい抵抗だと思ったらしい。だが笑いは途中で止まった。エリザヴェータが彼を見る目に、挑発がなかったからだ。演技もない。冗談の気配も、一欠片もない。ただ、事実を述べていた。
「職業は?」記録係がまた訊いた。
「永遠領の女大公」
またペンが止まった。
「……それは何ですか?」
「統治者だ」
副官が眉をひそめた。「マドレ、ここは演劇の稽古場じゃありませんよ」
エリザヴェータは少し首を傾けた。自分よりはるかに年若い器物を観察するような仕草だ。「妾もそうであれば良いと思うておるが、どうやら違うようだな」
記録係は口元を引き結んで、もっと実務的に処理できると信じている欄に移った。
「種族は?」
「吸血鬼だ」
今度は副官も言葉を継げなかった。
恐怖ではない。行政システムに対応する欄がないからだ。人間の書類がどれだけ複雑に作られていても、記入者がまだ人間の共通認識の中にいることを前提としている。彼女はその一言で、その前提を崩壊させた。
「現場でのそなたの役割は?」
「嗅ぐことだ」
「……何を?」
「血、腐敗、死亡時刻の差。それから、何人足りぬか」彼女は言った。「昨夜、そなたらの誰かがそれを先に記録しておれば、今これほど紙を無駄にせずに済んだであろうに」
副官は明らかに怒りかけていた。だが記録係は動かなかった。彼女を見ながら、この人物が精神的に異常なのか、それとも自分にはこの供述を受け取る資格がないのかを判断しようとしていた。最終的に彼はペンを置き、外のドアを二度ノックした。
その調書は、結局完成しなかった。
最後に一行だけ注記が残ったと聞いた。
「供述内容が標準的身分登録の範囲を超過。上位部署へ移送」
至極当然だ。
問えないのではない。問い続ければ、システム全体を一緒に壊してしまうからだ。
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マリアの部屋の空気は、エリザヴェータとは種類が違った。
エリザヴェータは分類の機能不全。
マリアは忍耐の機能不全だ。
彼女が座ったとき、向かいの取調官は最初、自分が一番楽な相手を引いたと思っていた。修道女、女性、無口。この手の人間は、通常の手続きで一番問題を起こさないタイプだ。しかも服装は乱れておらず、座り方も挑発的でなく、両手もきちんと机の上に置かれている。全体として、鞘に収まった短刀のように見えた。他の誰よりも、手続きで処理しやすそうに見えた。
そこで取調官は始めた。
「名前は?」
「マリア」
「フルネームで」
「マリア」
「職業は?」
「修道女」
「所属修道会は?」
「当ててみな」
取調官のペン先が一瞬止まった。聞き間違いだと思ったらしい。「正式にお答えください」
「答えたわ」彼女は言った。
「どの修道会に所属しているかを訊いています」
「当ててみな」
「マドレ、ここは冗談を言う場ではありません」
「冗談は言っていない」彼女は目を上げた。その瞳に波紋は一つもない。「私は修道女よ」
取調官は息を吸って、方向を変えた。
「昨夜、事件現場で何をしていた?」
「見ていた」
「何を?」
「死体を」
「それ以外は?」
「当ててみな」
二度目だ。
取調官がペンを机に押しつける力が少し強くなった。声も硬くなった。
「取調べを拒否しているのか?」
「していない」彼女は言った。「私は修道女よ」
その一言は、石が手続きの真ん中に落ちるようなものだった。
口先だけで言っているのではない。彼女は本当に、自分がそれ以上を言う必要があるとは思っていないのだ。彼女が手続きに協力するのは、自分が十分だと認めるところまでだ。その先は、言う気があるかどうかの問題ではない。そなたに訊く資格があるかどうかを、彼女が認めているかどうかの問題だ。
「現場で何に気づいた?」
「拘束痕、抑え込みの痕、自白強要」
「もっと具体的に」
「法医学者が書く」
「私が訊いている」
「なら、もう答えた」
「遺体に触れたか?」
「触れていない」
「関連する訓練を受けたことはあるか?」
マリアは彼を見て、半秒止まった。
「当ててみな」
三度目だ。
部屋の中は空調の音しか聞こえないくらい静まり返った。
最後は二人目の記録係が流れを立て直そうとした。「バローロ神父とはどういう関係?」
「仕事」
「どんな仕事?」
「修道女」
この一言を記録に残したら侮辱みたいになる。だが彼女があまりにも真剣に言うから、誰もすぐに机を叩いて「ふざけるな」とは言えなかった。
その調書も、結局大した内容は引き出せなかった。唯一、本当に使えたのは、彼女が退室前に自分から付け加えた一言だった。
「狂信者がやったんじゃない」
取調官がすぐに追った。「どういう意味だ?」
「狂信者なら無駄を積み上げる」立ち上がりながら彼女は言った。「昨夜のあの連中は違った。時間を節約していた」
そのまま出て行った。
残されたのは、一夜眠れていない国家警察官が二人。「修道女」「当ててみな」「見ていた」「死体」と書き並べられた記録紙を前に、入ってきたときより顔色が悪くなっていた。
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バローロ神父は、また別の種類の厄介さだった。
エリザヴェータみたいに常識の外に出るわけでもなく、マリアみたいに手続きを空回りさせるわけでもない。非常に協力的で、口調は穏やかで、回答は完全で、大多数の一般市民よりもはるかに正規の行政訓練を受けた人間らしく見えた。
問題は——
彼が言うことの一つひとつが、あまりにも普通じゃないことだ。
「名前は?」
「バローロ」
「職務は?」
「専任神父」
「どの部署の専任神父か?」
「教皇庁、異端審問局」
記録係が顔を上げた。「何ですって?」
「教皇庁、異端審問局だ」もう一度言った。口調は変わらない。「専任神父」
部屋の二人のスペイン人が二秒ほど黙った。この言葉は威張っているわけでも、もったいぶっているわけでもない。彼はそれを、税関の部署か税務署の名前でも言うように、当たり前に口にした。
「……それは正式な組織なのか?」
「当然だ」バローロは言った。
「職務内容は?」
「異端の調査、危害の認定、処置の執行」
記録係は彼を見た。この答えがどれほどの問題を呼び込むか、本人が気づくのを待っているような目だ。だがバローロ神父は気づかない様子だった。ただ姿勢よく座り、両手を机の上で重ねて、ごく普通の職務調査票に答えるみたいにしていた。
「宗教裁判の話をしているのか?」
「その方がわかりやすければ、そう呼んでも構わない」彼は言った。
副官が口を挟まずにいられなかった。「スペインに宗教裁判所はもうない」
バローロ神父は彼を見た。その目はほとんど穏やかとさえ言えるものだった。
「そうだな」彼は言った。「だから今、あなた方は多くのことを一から理解し直さなければならなくなっている」
副官はその場で口をつぐんだ。
記録係はページを一枚めくって、話を手続きに引き戻そうとした。
「なぜあの修道院へ行ったのか?」
「教皇庁の承認を得て、指定ルートに従いスペイン国内の教区接点へ向かった」
「目的は?」
「調査だ」
「何の調査?」
「あなた方が今まさに引き継いでいるものだ」
この一言で取調官は明らかに居心地が悪くなった。自分が今、たまたま現場に居合わせた神父を訊問しているのではなく、この線の下に何が埋まっているかをもともと知っていた可能性が高い人間を訊問していると、突然気づいたからだ。
「修道院内にどのような資料が保管されていたか、知っているか?」
「一部は知っている」
「具体的に説明してくれ」
「地方の記録紙に残す内容ではない」
「ここはもう地方の部署ではない」
「ならば、もう一段上の人間が訊きに来ればいい」バローロ神父は言った。「相手は選ばない。だが権限は選ぶ」
この一言で、バローロの調書の行方は決まった。
抵抗しているのでも、謎めかしているのでもない。彼は非常に明確に線を引いていた。
話すことはできる。だが、あなた方の階層に話す内容ではない。
この手の人間が一番厄介だ。手続きの上では不協力と断定できない。しかし実際には何も取れない。
退室前に、取調官が最後に一つ訊いた。
「あなた方は、いったい何をしている人間なのか?」
バローロ神父は立ち上がり、袖口を一度整えてから答えた。
「あなた方の歴史にあったものと、だいたい同じだ」彼は言った。「ただ、我々は今もまだやっている」
その部屋はしばらく、静まり返ったままだった。
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蕾切爾の部屋は、本来なら一番簡単なはずだった。
若い女性、明らかに動揺している、現場の目撃者、主導的な役割ではない。通常の手続きでは、こういう人間が一番話しやすい。声を少し柔らかくして、水を出して、基本的な質問をすれば、向こうから色々と出てくる。
前提は、彼女がそういう扱いを受け入れる側にいることだ。
彼女は受け入れなかった。
最初は普通だった。
「名前は?」
「レイチェル」
「国籍は?」
答えた。
「同行者との関係は?」
彼女は顔を上げ、平静に言った。
「周士達の家族」
記録係のペンが止まった。顔を上げ、書類に目を落とし、また顔を上げた。
「……家族?」
「そう」
副官が眉をひそめて、口が先に動いた。
「ユダヤ人と東洋人が家族なのか?」
部屋の空気が一瞬、硬くなった。
レイチェルは引かなかった。怯えた証人みたいに縮こまりもしなかった。相手を真っすぐ見て、さっきより落ち着いた声で言った。
「今、人種差別をしているの?」
副官がひるんだ。「そういうつもりじゃ——」
「じゃあ、どういうつもり?」
「ただ——」
「ただ、何?」彼女は訊いた。「自分の頭の中の『普通』に合わせて、人が並んでいるべきだと思っているだけ?」
この一刀は正確だった。
その副官に悪意があったわけじゃない。頭の中にある「普通の分類」を口にしただけだ。だがひとたび口にしてしまえば、録音と記録がある部屋では、自分から俎板の上に乗ったも同然だ。
記録係がすぐに咳払いをして、話を引き戻した。
「わかった、家族ということで。現場での役割は何だった?」
「生きている証人」
「どういう種類の証人?」
「あなた方が読み取れないものを、一部読み取れる人間」
まだ硬い言い方だが、他の人間への対応と比べれば、まだ協力的な部類だ。蕾切爾は自分の役割をわかっている。相手を翻弄しに来たんじゃない。この手続きの中で、簡単に押しのけられない立場を確保しようとしている。
「現場の宗教的な記号と配置について、読み取れるものがあるか?」
「一部は」
「それは何を意味していた?」
「祈りじゃない」彼女は言った。「侮辱と裁きよ。あの人たちは単純に殺されたんじゃない。何かを渡すよう強いられてから、あの形に並べられた」
「なぜそう断言できる?」
蕾切爾は少し間を置いて、指で膝を押さえた。
「記号を刃物代わりに使う人間を、見たことがあるから」彼女は言った。
その一言で、部屋の取調官二人が黙った。これが文学的な表現じゃないことは、聞けばわかる。生き延びた人間だけが持つ、あの口調だ。
彼女がその部屋を出るとき、あの副官は余計なことを一言も言わなかった。
上出来だ。
怖がることを忘れたんじゃない。怖いときでも、噛み返すことを覚え始めただけだ。
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ヴィクトリアは、スペイン人が最初に読み違えた人間だった。
チェコ人。
時計職人。
外見も話し方も、国家安全部門を悩ませるタイプには見えない。
だから彼女が座った途端、向かいの取調官は明らかにほっとした顔をした。ようやく普通の人間の番が来た、という顔だ。
「名前は?」
「ヴィクトリア」
「国籍は?」
「チェコ」
「職業は?」
「時計職人」
ペンが滑らかに動いた。
ようやくまともに埋まる欄が来た。取調官は無意識に声のトーンを落ち着かせた。
「なぜその一行と一緒に現場にいたのか?」
「設備の整備」
「どんな設備?」
「車に積んである」
「どの車?」
「K7」
記録係が顔を上げた。「K7とは何か?」
「プラットフォーム」彼女は言った。
「どんなプラットフォーム?」
「移動式の」
「何のための?」
「移動するための」
この流れはもう相手を苛立ちの一歩手前まで追い込んでいたが、ヴィクトリアは翻弄しているわけじゃなかった。余計な問題を起こさないと確認できた部分だけ、本当に答えていた。
取調官は方向を変えることにした。
「現場について、技術的な観察はあるか?」
ここで彼女は初めて、本当に答え始めた。
「ある」彼女は言った。「食堂の外側の勝手口の鍵は、一次的な破壊じゃない。資料室の外側のこじ開け痕には、後付けの細工が入っている。正規の方法で開けてから、人為的に強引に押し込んだように見せた。工具の痕が連続していないし、力の入れ方の角度も不自然。要するに、入った人間は鍵を持っていた。出るときに、こじ開けたように見えるよう演出しただけ」
記録係と副官が二人とも止まった。
この内容は専門的すぎて、しかも無駄がなさすぎる。推測じゃない、判断だ。
「なぜそこまでわかる?」
「時計だけ直しているわけじゃないから」彼女は言った。
「他に何を?」
「噛み合って、疲弊して、力の記憶を残すもの、全部よ」
彼女は自分を武器の専門家に見せる必要も、どれだけ多くの錠前を見てきたかを強調する必要もない。相手に伝えればいいのはただ一つ——
機械を見るとき、表面を見ているわけじゃない、ということだ。
そして、もう一刺し。
「昨夜、あなた方がそんなに急いで工具箱を封印しなければ」彼女は言った。「今頃、あの二つの扉の力の入り方を図に描いて見せられたと思うけど」
取調官の顔色がその場で少し変わった。侮辱されたからじゃない。非常に使える技術的証人を、ただの外国人技術工として扱うところだったと気づいたからだ。
それで十分だ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




