139.棚上げ 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「バローロに鞘に戻されたか?」俺は訊いた。
彼女は少し考えた。「まあ、そんなところね」
「じゃあ今日のあんたは何だ?医務か?後方支援か?それとも掃除道具か?あるいは、自分は何もしていないって顔か?」
彼女は顔を上げ、目の中の薄い光を一瞬だけ閃かせ、すぐにまた平らに戻した。
「今日の私は修道女よ」と彼女は言った。
「そりゃ便利なこった」
彼女は怒らなかった。少し黙ってから、低い声で言った。「昨夜のことは、あなたにとって不公平だったわ」
その言葉に、俺は少し動きを止めた。
「今さら気づいたのか?」
「昨夜から分かっていたわ」と彼女は言った。「ただ、あの時は止めなかっただけ」
それは謝罪というより、事実の陳述に近かった。
俺は彼女をじっと見た。「じゃあ、それを言いに来たのは、俺に許してほしいからか?」
「違うわ」彼女は首を振った。「ただ、私がそれが間違っていると全く分かっていなかったわけじゃないってこと、あなたに知っておいてほしかっただけ」
彼女の問題がどこにあるのか、突然分かった気がした。
彼女は善悪を知らないわけじゃない。境界線を知らないわけでも、人間性を完全に失っているわけでもない。全部知っている。ただ、その「知っている」ことより速く、深く、抑えがたいものが彼女の中にある。それが一度表に出ると、彼女の脳に残された理性は、即座にその衝動のために一番きれいな道、一番低い強度、一番痕跡を残さないやり方を探し始める。これは単純な狂気よりよっぽど怖い。なぜなら彼女は判断力を失っているわけじゃなく、判断した上でなお、その道を選んでいるからだ。
「なら、それが間違いだってこと、ずっと覚えておくんだな」と俺は言った。
彼女は俺を見て、静かに返した。「善処するわ」
その三文字だけで、俺の中に残っていた怒りは完全に塞がれてしまった。
許したわけじゃない。こういう人間にとって、「善処する」が彼女に出せる最大の保証だとよく分かっていたからだ。もちろん、それで警戒を解く気にはならない。だが少なくとも、昨夜のことが彼女にとっても日常ではなく、越えてはいけない一線だと自覚していることは分かった。
彼女はそれ以上長居せず、布と書類ケースを抱えて踵を返した。アーチ門のところまで歩いた時、ふと立ち止まり、振り返らずにひどく軽い言葉を残した。
「今夜、もし上に呼ばれても、自分からは口を開かないことね」
俺は眉をひそめた。「どういう意味だ?」
「この城では、階が上がるほど、先を争って話す人間が得をしないってことよ」
そう言って彼女は去っていった。
俺はその場に立ち尽くし、彼女が白い壁の角に消えていくのを見送った。頭の中には一つの考えしかなかった。「今夜、もし上に呼ばれても」と彼女すら知っているということは、話が俺の想像以上に広まっているということだ。内城からの正式な通知はまだ下りていないかもしれないが、匂いはすでにパイプの中を走り回っている。
午後六時ちょうど、鐘が鳴った。
B区の夕食が二十分遅らされた。理由は内層通路の臨時規制。こういう小さな異常の方が、大きな動きよりよっぽど事態を物語っている。本当の上層部の変化は、決してスピーカーで天下に知らされたりはしない。まず食事の時間が変わり、動線が変わり、普段開いているはずのドアが閉まることから始まる。
俺たち三人はテーブルを囲んでいたが、誰もろくに手をつけていなかった。
葉綺安は下を向いてパンを切っていた。爆弾のコードを切るみたいに。
「今夜は十中八九、迎えが来るわね」と彼女は言った。
「分かってる」
「あなたが呼ばれたら、私もついて行っていい?」
「駄目だ」
「まだ訊いてもいないのに」
「訊くまでもない、答えは絶対駄目だ」俺は冷めたスープを一口飲んだ。「今、向こうは俺たちを、箱に入った爆発物より慎重に見てる。部外者を一人入れるだけでも異例なのに、もう一人増やせば、つけ上がっていると見なされるだけだ」
林雨瞳がカトラリーを置き、低い声で言った。
「もし本当に上があなたに会うなら、一つ覚えておいて——向こうの質問は、答えを聞きたいわけじゃない。どう答えるかを見たいだけの時がある」
「分かってる」
「いいえ、分かってない」彼女は俺を真っ直ぐ見た。「あなたはプレッシャーの中で、まずナイフを抜くことに慣れすぎている。でもここは銃口と銃口の撃ち合いじゃない。発言権と発言権のぶつかり合い。あなたが半歩でも踏み込みすぎれば、向こうは礼儀正しさであなたを押し潰す」
葉綺安が鼻を鳴らした。「半歩踏み込まなければ潰されないみたいに言うじゃない」
「少なくとも潰される姿勢は選べる」と林雨瞳は言った。
俺は彼女を見て、頷いた。「覚えておく」
半分ほど食べたところで、スーツの先遣がドアから入ってきた。
ダークグレーのスーツ、黒いネクタイ。手には書類はなく、左胸に小さな銀のバッジをつけているだけ。こういう人間は雑談しに来るわけじゃない。彼は俺たちのテーブルのそばに立ち、まず三人を見回して、最後に俺に視線を落とした。
「周さん」
「言え」
「二十時十五分までに身支度を整え、室内で待機してください」
葉綺安が顔を上げた。「待機してどうするの?」
スーツは彼女を見向きもせず、俺にだけ言った。「時間になれば案内が来ます」
「どこへ?」俺は訊いた。
「上へ」
こいつはあっさりしている。
俺はさらに訊いた。「誰が俺に会うんだ?」
彼は半秒止まった。どの言葉なら言ってよくて、どの言葉はまだ言ってはいけないのかを量るみたいに。
「知る必要がある時になれば、分かります」
内城の標準回答だ。
俺は頷き、それ以上は追及しなかった。彼は踵を返し、すべてが手順の一部であるかのように規則正しい足取りで去っていった。だが、食堂を出ていくその後ろ姿を見ていると、胃の中にあるまだ飲み込んでいないスープが急にひどく冷たく感じられた。
来た。
本当のあの層が、ついに手を伸ばしてきた。
部屋に戻り、まず顔を洗った。肩の薬油の匂いを少し薄め、あまりシワのない黒いシャツに着替え、外側に暗い色の上着を羽織った。ナイフは持つが、銃は持たない。これは礼儀じゃない、現実だ。換気口から鎮静剤を流し込めるような場所で、さらに上の層の人間と会うのに、銃を持ったところで安全にはならない。ただの口実にされるだけだ。
十九時五十八分、バローロが来た。
彼はドアの前に立っていた。相変わらず黒い法衣だが、胸には小さな銀の十字架が一つ増えている。いつもの金属で角を補強した聖書の重々しさとは違い、今夜のこの十字架はより格式高く、そして冷たく見えた。
「あんたが案内役か?」俺は訊いた。
「同行だ」
「何が違う?」
「案内役は送り届けるだけだ」彼は俺を見た。「同行は、お前がまだ我々の監視下にあるということを意味する」
俺は笑った。「そりゃ感動的だな」
彼は俺の皮肉には乗らず、ただ俺の肩の辺りを一瞥した。
「まだ痛むか?」
「歩くのには支障ない」
「ならいい」
彼が先に背を向け、俺が続く。
今夜の内城は、昼間とはまた違っていた。
灯りはより明るく、廊下はより空虚で、ドアの数が増えていた。道中、少なくとも五か所の臨時検問所を通り、手の甲の識別コードを二回照合され、一度はナイフを預けさせられた。そしてあるドアの前には、彫像みたいに立つ二人の年老いた司祭がいて、その目はどんな黒衣の内勤より鋭かった。ドアを一つ越えるたび、俺の中の圧迫感が実体を帯びていく。怖いからじゃない。自分が、中に連れ込める状態へと一枚一枚剥がされていくのをはっきりと感じるからだ。
三つ目のドアを越えた後、俺はふとバローロに訊いた。「レイチェルは?」
「お前より先だ」
「あいつも上に呼ばれたのか?」
「待っている」
その答えに胸が沈み、さらに訊いた。「他には誰が?」
バローロはしばらく黙った。廊下の前後に聞かれてはいけない人間がいないか確認するみたいに。それから低い声で言った。
「八人の枢機卿が同席する」
足は止めなかったが、心臓を鉄のフックで下へ引っ掛けられたような気がした。
八人の枢機卿。
これはもう一般の安全公聴会でも、手順の審査でもない。内城が本当に重みのある頭を、一つの部屋に全部押し込んだということだ。こういう場は、単に証言を照合するだけじゃ終わらない。危機対策会議か、あるいは見届け、切り離し、共同で保証する必要のある決定が下される場だ。
前方のどんどん狭く、きれいになっていく廊下を見ながら、俺はふと、ずっと前に下で聞いたベルタスの言葉を思い出した。
——教皇に電話する。
あの時は狂人の戯言か、出鱈目だと分かっていても本能的に笑い飛ばしたくなるような言葉に聞こえた。だが今、上へ行くほど静かになる内城の廊下を歩いていると、初めて本当に、あれが冗談じゃなかったのだと感じた。それはずっと前に俺の道に埋め込まれていた鋼の釘で、今日になってようやく床の下から頭を出したのだ。
バローロが突然、高いドアの前で立ち止まった。
一番大きいドアではないが、一番重厚なドアだった。濃い色の木材、金属の縁取り、大げさな装飾はなく、極細の彫刻だけが四辺に沿って上へ伸びている。ドアの外にスーツの先遣も内勤もおらず、ただ白髪の老修道士が一人、名簿を抱えて立っていた。
彼は顔を上げ、まずバローロを見て、次に俺を見た。
「周士達さんですね?」
「ああ」
老修道士は頷き、名簿を閉じた。
「お呼びがかかるまでお待ちください。入室後、許可があるまで自ら発言せず、線を越えず、テーブルの上のいかなる物品にも触れないように」
俺は訊いた。「もし中で誰かが先に発砲してきたら?」
老修道士は三秒間俺を見て、その顔にほんのわずか、極めて短い奇妙な表情を浮かべた。ここでそんな質問をする人間を何年も見ていなかったみたいに。
「その時は、今夜の会談がすでに失敗に終わったということです」と彼は言った。
「少なくとも現実的な答えだな」
彼はそれ以上何も言わず、半歩下がった。
ドアはまだ開いていないが、中に重く圧し掛かるような気配があるのはすでに感じられた。宗教でも神聖でもない、権力だ。権力が集まった時、空気は変わる。一層分厚くなって、呼吸するのさえ先に審査を通さなければならないみたいに。
バローロが振り向いて俺を見た。
「覚えておけ。まず自分からは口を開くな」
マリアが午後に言ったのと同じ台詞だ。
俺は彼を見て、ふと笑いたくなった。珍しいこともあるもんだ。神父と病んだ修道女が、同じ日に同じアドバイスを俺に寄越すとは。
「俺がそんなに空気の読めない奴に見えるか?」俺は訊いた。
バローロはあっさりと返した。
「見える」
今度は本当に笑った。短く、硬い笑いだった。
「なら、中で誰かが先に馬鹿な口を利かないよう祈っておくんだな」
彼はそれには応えず、ただドアに手を当てた。
そのドアが開く直前の一秒、俺の中に一つの判断が、ひどく鮮明に浮かび上がった。
今日まで、俺はただレイチェルをバチカンに護送して、外よりも大きく、きれいで、危険な機械に引き渡し、その機械がどうやって人を飲み込み、どうやって帳簿をつけ、どうやって世界を整理するかを傍で見ているだけだと思っていた。だが、もうそうじゃない。石室から始まり、昨夜のマリアの病的な「検査」から始まり、俺の名前が上送バージョンの備考欄に載った時から、俺はもう単なる護送員じゃなくなっていた。
引きずり込まれたんだ。
俺が重要だからじゃない。いくつかの線が交差する場所に、たまたま俺が立っていたからだ。レイチェルの証言、ベルタスが残した暗線、バローロとマリアによる俺の再評価、そして八十年経っても死に絶えない金と屍の流れ。今、上の連中は直接この目で確かめたいのだ——この迷い込んできた部外者が、証人なのか、変数なのか、それともまだ分類されていない厄介事なのかを。
扉の向こうから、かすかな音が聞こえてきた。
茶器を盆に戻した音か、誰かの指の関節がテーブルを叩いた音か。
老修道士が低い声で言った。「どうぞ」
重いドアがゆっくりと内側へ開き始めた。
暖かい黄色の光が隙間から流れ出し、木材、紙、古い布、そして焚かれた香が混ざり合った匂いを連れてきた。権力が一番好む偽装の匂いだ。穏やかで、古く、伝統があるように見せかけて、血を流すような決定のすべてを文明の営みであるかのように錯覚させる。
俺はバローロの後に続いて歩き出した。足取りは安定している。
肩にはまだ痛みがあり、手首も昨夜の拘束帯を覚えている。だがそんなことはもうどうでもいい。本物はドアの向こうにある。
そして俺は分かっていた。この一歩から先、バチカンの本当の顔が姿を現すのだと。
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