139.棚上げ 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
それを全部考え終えてから、口を開いた。「じゃああんた自身は?」
バローロが俺を見た。「どういう意味だ?」
「昨夜俺を連れ出して、今日またここで話して、冷処理を自分から認めた。単純な後始末には見えない。この後俺をどこへ連れて行くつもりか分かってるから、先に線を整えに来た、そういうことじゃないのか」俺は彼を見据えた。「何を準備してる?」
彼はすぐには答えなかった。
窓の外から鐘の音が入ってきた。小さく、分厚い壁を隔てたみたいに。
数秒経ってから、彼は言った。「上が、お前に会うかもしれない」
「かもしれない?」
「ここでは多くのことが、正式に起きる前は『かもしれない』としか言えない」
「誰が会うんだ?」
「通知が来れば分かる」
もう少し押したかったが、ドアの外から短いノックが二回。バローロが立ってドアを開けると、スーツの先遣が立っていた。グレーと黒のネクタイ、表情は冷蔵庫から出したばかりみたいな顔。
「神父、静黙室の方で移送を前倒しにとのことです」とスーツは言った。
バローロが頷き、振り向いて俺を見た。「レイチェルが移動する」
「見に行けるか?」
「遠くからなら。ドアラインには近づくな」
「ここはドアラインが国境より多いな」
「少なくとも国境は自動でロックされない」
それだけ言って歩き出した。俺は半歩の距離を保ってついた。
東翼の二層は昨日より人が少なかった。
人がいないわけじゃない。全員が、声を出してはいけない位置に退いていた。廊下の両側にそれぞれ黒い内勤が一名ずつ、スーツの先遣が角で書類を照合し、カーテンは半分下ろされて、陽光が斜めの一筋だけになっている。静黙室のドア前には三層の人間がいた。医務、手続、証人。この場所は本当に、あらゆる行動を合法的な部品に分解するのが得意だ。責任が隙間から漏れないように怖がってるみたいに。
レイチェルが部屋から出てきた時、俺は一瞬見間違えそうになった。
大きく変わったからじゃない。「引き渡し対象」として整えられすぎていたからだ。服は内城が用意したダークグレーのスカートに替わっていて、薄い上着を羽織っている。髪はきっちりまとめられ、顔色はまだ白いが、ここ数日みたいな散漫さはない。手には本もなく、個人の持ち物も何もなく、昨日見たあの白いハンカチだけを抱えていた。バローロは彼女の左前方に立ち、触れず、ちょうど誘導にはなるが護送にはならない距離で歩いている。
この距離感は知っている。
護送の、プロフェッショナル版だ。
彼女がドアを出た時に顔を上げて、遠くにいる俺と視線が一瞬だけ合った。すぐに手続担当者の確認の声に切られた。
「証言対象、コードR-1、内層会談待機区へ移送」
「確認」
「医務評価は安定か?」
「安定」
「認知連続性は?」
「維持可能」
「感情トリガーリスク?」
バローロが答えた。「制御可能」
その三文字が出た瞬間、胸の中で何かがまた少し熱くなった。
制御可能。
彼女は昨夜、自分がこれから向き合うのは本当に死んでいないナチスの屍骸システムで、戦争と永生を結びつけることができるものだと、自分の口で証言した。それが今日、「制御可能」な状態の証言容器として整えられて、上の階へ送られようとしている。これが内城だ。まず呼吸を保証して、それからお前の恐怖を文書として綴じ込む。
レイチェルが角を曲がる前に、足取りがほんのわずかに止まった。
非常に細かく、長期間人の動きを観察してきた俺みたいな人間でなければ気づかないくらい。振り返らなかった。ただ、あのハンカチをより強く握った。バローロは即座に歩幅を半寸縮め、彼女が追いつくのを待ってから、また前へ進んだ。この細部を見て、俺は彼に対する判定をまた少し修正した。
確かに彼女をコントロールしている。
だが、そのコントロールは非常に細かい。崩れる一秒前に自分から半歩引く。これは慈悲じゃない。高度に訓練された管理技術だ。問題はそこにある——人を「ちょうど崩れない」状態に維持できる人間は、「ちょうど説明できる、ちょうど上に送れる、ちょうど用途を失わない」状態に維持する方法も、一番よく知っている。
刃物は怖い。血が出るから。
こういう人間が怖いのは、いつの間にか、こちらが依存し始めるからだ。
レイチェルが連れて行かれると、東翼はあのきれいな沈黙を取り戻した。
葉綺安がどこかの窓の近くから現れて、腕を組みながら俺の隣に来た。
「さっきのあなたの顔、生きた人間を箱に梱包する機械を見てるみたいだったわよ」
「だいたいそんなもんだ」
「彼女はどこへ送られるの?」
「もっと奥だ」
「また無駄口叩いてる」
「ここのドアの向こうは全部『もっと奥』しかないからな」
葉綺安が二秒黙って、レイチェルが消えた方向を一瞥した。
「バローロって人、昨日までは少し強引な神父として見ることができてたんだけど」と彼女は言った。「もう無理ね」
「俺もだ」
「じゃあどう判定し直した?」
俺は壁に寄りかかって少し考えてから言った。「牧羊者でも屠殺者でもない。同時に二つのことができる人間だ——羊の群れを囲いに追い込んでおいて、どの一頭を屠殺場に送るか決める。しかも全過程、自分は秩序を維持していると信じてる」
葉綺安が静かに息を吐いた。「聞けば聞くほど教皇庁っぽいわね」
俺はもう一言付け加えた。「マリアも、ただのイカれた修道女とは言えなくなった」
「あら?昨夜たっぷり体験したんじゃなかった?」
「純粋にイカれてるわけじゃない。純粋にイカれてる人間の方がむしろ単純だ。あいつは病を技術に訓練して、その技術を戒律の中に包み直した。あいつの一番怖いところは手を出すことじゃない。いつ止めるべきか分かってることだ」
葉綺安が俺の肩の不自然な強張りを見て、冷たく笑った。
「本当に分かってたと思う?」
俺も笑った。笑いは硬かった。「少なくともバローロは分かってた」
その一言で、二人とも黙った。
それが一番面倒なところだからだ。内城は制御を失った人間の集まりじゃない。自分のどこが制御を失っているかを知っていて、その制御の失い方を手順に組み込むことを学んだ人間の集まりだ。そういう組織だからこそ、八十年の秘密と屍骨を支えていられる。
昼を過ぎると、内城に軽い慌ただしさが漂い始めた。
混乱じゃない。見えないどこかのノードが開いて、機械全体の回転数が少し上がったみたいな感じだ。B区と東翼の間を二往復する間に、昨日より三倍のスーツの先遣、見たことのない高位司祭が二名、赤い封蠟筒を抱えた文書修道士の一団、そして軍の憲兵みたいな立ち姿なのに軍服を着ていない黒衣の二人組を見かけた。全員が声を落として歩いているのに、だからこそその圧迫感がより鮮明に伝わってくる。
何かが上へ送られている。
しかも急いで。
午後二時過ぎ、林雨瞳が俺を空いたファイル室に呼んだ。
手には書き写したばかりの転送注記が三枚ある。字が小さく、明らかに俺みたいな外部の人間に見せる版じゃない。一枚を渡してきた。上にはいくつかのキーワードだけ。R-1供述摘録補件、戦後基金再編証拠チェーン、外部非公式証人備考。
俺は最後の行を指さした。「これ、俺のことか?」
「ほぼ間違いなく」と彼女は言った。「昨夜の石室の傍聴に加えて、レイチェルが早い段階の供述であなたに言及していた。備考欄に入るのは不思議じゃない」
「備考欄って普通どういう意味がある?」
「層級による」林雨瞳の口調は淡々としていた。「層級が低ければ付帯参考。高ければ、正式な聴取の前にあなたが何者かを知りたい人間がいるということ」
その行を見ながら、あまり歓迎できない考えが浮かんだ。昨夜マリアは俺の中の残留と裂口を確認したいと言い、今日の上層文書は俺を証人備考に入れた。この二本の線が繋がっているとは限らない。だが同じ一日に重なって現れた以上、偶然だけとは言えない。内城が俺を「護送者」から「何かを知っているかもしれない人間」へと少しずつ変換し始めている。この転換が半分でも完成すれば、後から元に戻るのは難しい。
「もう一つある」林雨瞳がもう一枚の紙を出した。「レイチェルの上送バージョンに、単独で枠に入れられた段落がある」
「どの段落だ?」
「彼女がワイスマン(ワイスマン)は新しい第三帝国を再建しようとしているわけじゃなく、終わったことのないシステムを目覚めさせようとしていると確認した部分。復活したゾンビ化人員、戦争機械、長年隠蔽されてきた研究チェーンを含む。この段落に『最高層閲覧要』の印が押されている」
葉綺安がドアの横で最後まで聞いて、低く言った。
「つまり私たちが向こうのドアを叩きに行くんじゃなくて、あの何かが自分でドアを蹴破ってきたってことね」
「だいたいそうだ」と俺は言った。
林雨瞳が紙を回収した。目が重い。「それと、今日の午後に二組が戦後避難名簿と修道院収容名簿の調査に入った。一組はイタリア北部ルート、もう一組はローマ外周の墓地認可チェーン。通常の閲覧申請とは思えない速さだ」
「誰かが焦ってるってことだ」と俺は言った。
「あるいは、もう焦らないふりができなくなったってことね」
その言葉が終わった直後、廊下から急ぎ足だが低く抑えられた足音が聞こえてきた。走ってはいない。だが内城の通常の移動よりずっと速い。三人、革靴、書類ケース持ち。通り過ぎる時、ほとんど息だけの声でイタリア語が一言聞こえた。その中の一語が聞き取れた。
Cardinale。
枢機卿。
葉綺安と目が合った。
事態は本当の上の階へ動き始めていた。
午後の後半、もう一度バローロを見かけた。
北側の長廊下を横切ってくる彼の両脇に、見たことのない司祭が二名いた。一人は非常に年老いていて、一人は四十代くらい、二人とも胸に違う様式の十字の飾り章をつけている。バローロの顔は朝より硬く、足は速くないが一歩一歩が安定していて、これから向き合う手続の全てをすでに肩に乗せたみたいだ。
俺を見て、半秒だけ止まった。
その半秒で、一つのことが見えた。彼もまた上へ引っ張られていた。
昇進じゃない。召喚だ。
この違いは外から見ると分からないかもしれないが、俺は体制の中にいたことがあるから、よく知っている。自分から上に報告しに行く人間は、方向を持った歩き方をする。上から呼ばれた人間は、歩く前にまず自分を収める、余分な一言も落とさないように気をつけるみたいに。バローロは今、後者だった。
俺は訊いた。「上に行くのか?」
彼は否定しなかった。
「一時的に」
「誰を連れて行く?」
「まずは一人で」
「その後は?」
彼は俺を一瞥した。「その後は、上の意向次第だ」
もう少し追いたかったが、老司祭がすでに口を開いていた。
「神父、時間です」
その声は大きくはなかったが、乾いた木の定規を机の端に打ちつけたみたいだった。バローロが頷いて、俺にはもう何も言わず、連れの二人を引き連れて内層へ消えた。その後ろ姿を見送りながら、頭の中の輪郭がどんどんはっきりしてきた。まずレイチェルの証言上送、次に石室から掘り出された資金の流れと戦後再編チェーン、それから手続室の冷処理、今や枢機卿の層まで動き始めた。この線はどこかの安全委員会や内部審査グループで止まらない。外部の人間が見てはいけない部屋に辿り着くまで、上へ上へと続いていく。
そして俺みたいな、端に立っている外来者には通常、二つの運命がある。
切り捨てられるか。
引きずり込まれて、証人にされるか。
夕方前、マリアがついに一度姿を現した。
B区の小回廊の端で、ひどく不味いブラックコーヒーを一口飲みながら、遠くの鐘の音を聞いて、東翼の新しく増えた門禁をぼんやり見ていた時だった。彼女が向かいの長廊下から出てきたのはその時で、手に清潔な白い布と書類ケースを抱えて、外側にグレーのケープを羽織っていた。昨日より普通に見えて、静かだった。
俺を見て、足取りがわずかに緩んだ。
俺は動かなかった。ただ見ていた。
二人の間には十数歩、アーチ形の門、壁灯が二つ。この距離は銃には近すぎて、刃物にはちょうどよく、言葉には十分に冷たい。
彼女が先に口を開いた。
「今日は調子良さそうね」
疑問形じゃなかった。
「おかげさまで、まだ死んでない」と俺は言った。
彼女は少し目を伏せた。俺の手首を見ているのか、石畳の隙間を見ているのか分からない。
「それは良かった」
その三文字が彼女の口から出てきた時、あまりにも場違いで、笑いそうになった。もう少し刺してやろうかとも思ったが、今日の彼女の様子を見て、言葉を半分引っ込めた。心が軟らかくなったわけじゃない。昨夜みたいな病的な集中がなくて、何か非常に深い場所から引き上げられたばかりみたいに、静かすぎるくらい静かだったからだ。
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