↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
493/600

137.星の子 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

バチカン内城に夜はない。


少なくとも俺にとってはそうだ。


深夜二時を回っても、ここの廊下は明るい。壁のランプシェードが光を平坦に押し潰していて、病院ほど白くなく、修道院ほど暖かくもない。その中間の、馴らされた冷たさだ。人がその中を歩くと、安心するんじゃなく、無意識に足音を殺し始める。靴底の音まで、どこかの記録に残されそうな気がして。


俺はB区の制限宿舎で、二度目の鐘の音が鳴り終わるまで待った。


明かりはつけなかった。


バローロ神父の手書きのメモはテーブルの上に置いたままだ。石に刻んだみたいに几帳面な字で。


――二十二時三十分以降、二度目の鐘の音を聞いたら、明かりをつけるな。


これは注意じゃない。命令だ。


俺は、いつ命令に従うべきかをずっと前から知っている。


余計なことを聞かない。余計なものを見ない。自分の戦区じゃない場所で賢いふりをしない。そういう習慣が人間の寿命を何年か延ばす。俺はベッドの端に腰かけて、拳銃を分解しては組み立て、組み立てては分解した。部品が手の中で擦れる音が一定のリズムになるまで。ドアの外を誰かが通った。革靴の音、布地が擦れる音、低いイタリア語、それから台車の車輪が床の継ぎ目を越える細かい音が十五秒ほど続いた。病棟の音じゃない。どちらかといえば、倉庫が在庫を動かしているときの音だ。


この場所は人間も、武器も、患者も、秘密も、全部同じシステムで運ぶ。


違うのはラベルだけだ。


午前三時七分、ドアが二回ノックされた。


入室を求めるノックじゃない。通知だ。


立ち上がってドアを開けると、見たことのない司祭が立っていた。黒い法衣、六十前後、顔色は漆喰の壁みたいで、鼻の上に銀縁眼鏡をかけている。後ろにはスーツの男が一人、濃いグレーのネクタイをきつく締めて、薄いファイルフォルダを手に持っている。


(ジョウ)さん」銀縁眼鏡が俺を一瞥した。握手もなく、自己紹介もない。「ついてきてください」


「どこへ?」


「傍聴です」


この二文字は「尋問」より聞こえが悪い。


尋問なら少なくとも、相手は自分が何かをしていることを認めている。傍聴は、お前に何も説明する必要はないが、そこに座って、こちらが見せたい部分だけを見ていろ、という意味だ。


俺は分解した銃の部品をバッグに戻して、ナイフだけ持っていった。銃は持たない。弱みを見せているんじゃなく、判断だ。他人の縄張りに乗り込んで完全武装したまま歩き回るのは、今夜この建物ごと吹き飛ばす気でいるんじゃない限り、ただの自殺行為だ。


司祭は俺の腰のナイフを一瞥して、何も言わなかった。


それでいい。少なくともここは、ある程度の正直さを許容している。


俺たちはB区から内側へ向かって歩いた。七分ほどかかった。三つのセキュリティゲートと二つのチェックポイントを通過する。最初のゲートは瞳孔スキャン、二番目は手の甲の仮識別コードをスキャン、三番目は何もスキャンしない。ただ、二人の男が立っているだけだ。軍服は着ていない。イヤホンをつけて、袖口が膨らんでいる。立ち姿は警備員じゃない。汚れ仕事をする人間の立ち姿だ。こういう連中は俺も何度も見てきた。たいてい規則なんか必要としない。なぜなら、やつら自身が規則の最後のページだからだ。


歩きながら、俺はルートを頭に入れた。


左折、長い廊下、階段を二階分下る、半円形のアーチをくぐる。壁面が塗装から剥き出しの石材に変わり、気温も一緒に下がった。床は現代的なタイルじゃなく、磨り減った古い石だ。踏むと低い反響がある。これが意味するのは二つ。一つ目、この場所は相当古い。二つ目、客を迎えるための場所じゃない。


突き当たりに来たとき、俺は鉄の匂いをかすかに嗅いだ。


薄いが、消えない。


半歩、足が止まった。


銀縁眼鏡は振り返らずに、静かに言った。「ご安心ください。今夜、あなたが手を動かす必要はありません」


俺は鉛筆みたいに細いその背中を見た。「安心させようとしているようには聞こえない」


「では、事実の陳述として受け取ってください」


扉が開いたとき、最初に目に入ったのは光だった。


まぶしい白じゃない。テーブルと器具の上に意図的に絞り込まれた、黄白色の照明だ。部屋は想像より広かった。長方形、丸天井、壁に十字架はない。古い木製の戸棚が一つ、鉄の棚が一列、それと壁に固定された排水溝。床は洗い上げられていて、挑発的なくらいきれいだった。


中央に椅子が一脚。鉄製、補強された肘掛け、足元固定可能。そこに男が一人座っていた。


四十代、髪が乱れていて、シャツを着ている。襟元はすでに引っ張られて緩んでいた。顔には徹夜明けの浮腫みと恐怖が混ざっていた。両手が肘掛けに拘束され、足首も固定されている。大規模な処置はまだ受けていないと分かった。恐怖がまだ完全な形をしているからだ。本当に叩き潰された人間の目は、こんなに生きていない。


バローロ神父が左側に立っていた。


黒い法衣は一分の乱れもない。胸の十字架がまっすぐ垂れて、手には古いウルガータ訳の聖書。金属の角金具がついた表紙に光が落ちて、薄い氷みたいだ。俺を見なかった。ただ少し目を上げて、俺が来たことを確認しただけだ。


マリアが右側に立っていた。


修道院での血の匂いがする作業着じゃなく、異様なほど清潔な濃いグレーの修道服を着ていた。袖口はきつく締めてあり、襟元は一番上まで留めてある。頭巾の下から見える顔は、白すぎてほとんど透けそうだ。極薄の手袋をはめていて、手に持っているのはナイフじゃなく、細長い金属の探針だった。もう一方の手にはトレイを持っていて、上に小さな道具が整然と並んでいる。鉗子、針、クランプ、細鋸、皮帯、木の楔、それから俺には名前の分からないものもいくつか。


展示品じゃない。


手入れが良すぎる。


葉綺安(イェ・キアン)は後方の影の中に立って、腕を組んでいた。俺が入ってくるのを見て、眉を一度だけ上げた。


エリザヴェータは壁際に寄りかかって、黒づくめで、いつもより表情が乏しい。俺をちらりと見て、口の端をわずかに動かした。その意味はだいたい分かった。文明社会の地下構造へ、ようこそ。


スーツの先遣が三人来ていた。一人が記録担当、一人が平板端末を見ている、一人が供述の照合担当。全員ネクタイを締めて、袖口は雪白で、慈善晩餐会の司会でも今すぐ務まりそうだ。


本当に胃が痛くなるのは、拷問器具じゃなくてネクタイだ。


刃物を見れば、相手が誰かを傷つけようとしていると分かる。ネクタイを見ると、手続きを話し合おうとしているとしか思えない。でも往々にして後者の方が酷い。なぜなら、やつらはまずサインをさせるから。


「座れ」バローロが言った。


俺は脇の木椅子に腰かけた。近すぎず遠すぎず、部屋全体が見渡せて、でも参加者に見えない位置だ。


縛られた男が顔を上げて俺を見た。目が一瞬揺れた。見知らぬ顔を見つけて、そこに逃げ道を見ようとするみたいに。


「俺はあんたの人間じゃない」俺が先に言った。


男の唇が震えた。何か言おうとしているみたいだ。


バローロが聖書の表紙を指の関節で叩いた。音は小さかったが、男はすぐに黙った。


(ジョウ)さんは証人だ」バローロは言った。「救援じゃない」


この言葉はゆっくり言われた。男が一文字ずつ飲み込めるように。


銀縁眼鏡の司祭がテーブルの端に行き、資料を開いた。


「氏名:エンツォ・ベッラーミ。四十二歳。法定上の身分は物流監理顧問。Pieta Holdingsの外部法務審査員を経て、Via Lucis Asset Recoveryの顧問チェーンに転入。Lumen Burial ServicesおよびFons Aurea Advisoryとの共同認可記録あり。八年前から、ローマ外縁の三か所の倉庫拠点の夜間棚卸しに定期参加。認めますか?」


エンツォの口の端が引きつった。答えない。


スーツの男が平板端末を一度タップした。


マリアはトレイを脇のテーブルに置いた。解剖器具を教室で並べているみたいな動きだ。


「"はい"と答えればいい」彼女は言った。


声は高くない。むしろ柔らかい。だがその一言で、部屋の全員が少しだけ静かになった。警告じゃない。相手のために、少し短い道を選んでやっているだけだ。


エンツォの喉仏が動いた。


「……はい」


「結構」銀縁眼鏡が言った。「では最初の段は省きましょう」


二ページ目をめくった。


「あなたが関わったチェーンの起点は、最も遡ればいつ頃になりますか?」


「分かりません」


バローロが聖書を開いた。神父がミサの前に聖句を探すみたいに。


「分からない、それとも言いたくない?」


「本当に分からないんです。私が引き継いだときには、あの会社たちはすでに動いていた。私は書類に署名して、物流と保険を確認しただけで――」


言い終わらないうちに、マリアが細い針を左手の人差し指の指の間の皮膚に差し込んだ。


深くない。


血も出ない。


それでもエンツォは弓なりに背中を反らせ、顔が瞬時に白くなり、呼吸が数回に断ち切れた。


俺には分かった。傷口のためじゃない。神経のためだ。


葉綺安が低く言った。「あいつ、相変わらず"校正"から入るのね」


俺は返さなかった。


マリアはエンツォを見ていた。患者にまだ知覚があるかどうかを確認している医師みたいな表情だ。


「今、職歴を並べたけど、年号は言わなかった」彼女は言った。「時間の無駄は嫌いなの」


エンツォの目が赤くなり、唇が制御を失って震え始めた。「一九八七……私が見た最も古い文書は一九八七年のものです……」


「文書じゃなく、起点」銀縁眼鏡が言う。


「私が確認できたのはそこまでです!」


マリアは針を抜いて、別の、もっと短いものに持ち替えた。すぐには動かない。頭を下げて道具を整理した。その数秒は、実際に刺すよりも拷問だった。部屋にいる全員が、彼女は脅しをしているんじゃなく、より効果的なルートを選んでいるのだと知っているから。


バローロがようやく顔を上げて、エンツォを見た。


「主は懺悔を重んじる。言い逃れは重んじない」声は安定していた。「一九八七までしか知らないと認めるなら、我々は一九八七以前に、誰がお前に"それより前を調べるな"と伝えたかを聞く」


エンツォは一瞬、固まった。


これがバローロの恐ろしいところだ。相手の嘘を追いかけない。その嘘が守ろうとしているものを直接探しに行く。ハンマーを持って、手を叩くんじゃなく、手の後ろにある扉の枠を叩くみたいに。


「……誰にも言われていません」エンツォは意地を張って言った。


マリアがバローロを横目で見た。


その一瞥は妙だった。お伺いでも服従でもない。同じ仕事を長年やってきた二人の熟練者が、次にどの手順で行くかを確認しているみたいな目だ。


バローロは聖書を閉じた。


「では、お前に任せる」


「はい、神父」


この「はい、神父」は、落ち着いていて、ほとんど従順に聞こえた。


だが俺には分かっていた。今この部屋で最も危険な人間が、動き始めた。


彼女はエンツォの右側に移動して、細い皮帯を取り上げ、前腕を先に固定してから、二本の指で手首の内側の脈拍の位置を確かめた。虐待の準備をしているんじゃない。耐久限界を計算している。こういう人間が最も厄介なのは、感情で動かないからだ。制御を失わない。そもそも制御を失う必要がない。


「あなたは文書仕事をしていた、ベッラーミさん」マリアは静かに言った。「文書の特徴は、必ず前後の文脈を残すことです。前の会社が潰れれば後の会社が引き継ぐ。ある取締役が死ねば別の受託者が上がってくる。名前は変わる、印鑑は変わる、国は変わる、輸送品の名目も変わる。でも表の論理は変わらない」


彼女は細い金属のクランプを取り上げて、薬指の爪の端を挟んだ。


エンツォが喘ぎ始めた。


「だから全部知らなくていい」彼女は言った。「ただ、あなたがかつてどの欄を見て、それ以上先をめくらないと決めたか、それだけ教えてくれれば」


手に力を込めた。


エンツォの全身から、くぐもった変形した悲鳴が上がった。額に青筋が一本一本浮き出て、椅子の脚が石の床を引っかいて耳障りな音を立てた。クランプは何かを引き剥がそうとしているんじゃない。神経が最も密集している縁を精密に圧迫しているだけだ。その痛みは人を即座に気絶させない。ただ理性を少しずつ削り取っていく。


俺は尋問を何度も見てきた。


戦地で、地下室で、裏社会で、情報機関で。大抵の場合、手を動かす人間には効率と発散が混ざっている。両方が多かれ少なかれ絡んでいる。ここは違う。残酷さにすら、職業倫理がある。バローロが罪と出口を定義する。マリアが相手を本当のことを言えるところまで解体する。脇のスーツがその本当のことを使える行政言語に変換する。


分業が明確だ。


だからこそ、工場に見える。


エンツォは喘ぎながら、途切れ途切れに言葉を吐き出した。「私は……転置表を一枚見た……一九四六年の……」


部屋が一瞬、静まり返った。


驚いたからじゃない。ようやく正しい急所を踏み当てたからだ。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。