134.人喰いの秩序 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
分かっていても、対処するとは言っていない。あの尻尾は敵の急襲じゃなく、監視だ。こちらから振り返って叩き潰せば、むしろ自分が先に手続きを破ったことになる。この段階でやることじゃない。これが、バローロに対してじわじわ苛立ちを感じる部分でもある――あいつは人間を折り畳むことしかできないわけじゃない。鉄の鎖を使うべき場面と、ネクタイに先に仕事をさせるべき場面を、ちゃんと分かっている。
日が傾きはじめると、車列は高速を降り、より内側の道路に切り込んでいった。周囲の建物が、工業倉庫から低層住宅、古い壁、木陰、そして特に脅威には見えない宗教施設へと変わっていく。ローマの外縁に近づけば近づくほど、何か見えない秩序が道を狭めているような感覚がある。実際に道幅が変わるわけじゃない。ただ、曲がり角のひとつひとつ、塀のひとつひとつ、一見ふつうの鉄の門の向こう側のひとつひとつに、目には見えない分流システムが待ち受けているような感じがする。
そのとき、バローロが初めて自分から停車を要求した。
完全停止じゃない。道端にある小さな聖像の祠の前で、短く路肩に寄せるだけだ。粗末な場所だ。石造りの聖母像が一体、ガラス覆いのランプが一つ、横に柏の木が三本、後ろは何の機関のものか分からない高い壁。バローロは車を降りてもあまり遠くには行かず、祠の前に立って、頭を下げたまま数秒、静止した。マリア(マリア)も降りてきたが、近づきはしない。二歩離れたところに立って、ごく当たり前の作業工程を眺めるみたいな目で見ている。
俺も車から降り、煙草に火をつけて、脇に立った。
葉綺安が歩いてきて、車のドアに寄りかかる。
「あれ、祈ってると思う? それとも合図を待ってる?」
「あいつにとっては、どっちも同じことかもしれない」
「気持ち悪いな」
「だな」
俺たちは二人で、大小二つの黒い人影が石像の前に立っているのを眺めた。バローロの姿勢は微動だにしない。肩の幅が、道の半分を塞いでいるみたいだ。マリアはわずかに頭を下げていて、銀色の短い髪が夕風に一度だけ揺れた。それでも全身が、彼女らしくないくらい静かだ。敬虔さじゃない。帰還だ。ようやく刀架に戻った刃物みたいに、今は声を立てていない。でも、誰かが手を伸ばして掴んだ瞬間に、どこへ向かって切り込むか、ちゃんと分かっている刃だ。
「あいつが静かにしてるほうが、暴れてるより嫌だって初めて思った」葉綺安が言う。
「今のあいつは、どっちかっていうとシステムだから」
彼女が俺を見た。
「それ、けっこう正確だと思う」
煙草を半分まで吸ったところで、バローロが振り返った。車に乗る前に、俺たちにひと言だけ言う。
「あと一時間だ」
説明じゃない。通達だ。
俺は煙草を踏み消して、前導車に戻った。林雨瞳はもう、市内への進入順序と接応ポイントを書き終えていた。俺が戻るのを見て、すぐに紙を差し出してくる。
「外縁から直接バチカン市内に入るわけじゃない」
「そんな単純だと最初から思ってない」
「まず教皇庁の外縁接待施設に向かう。客院か、行政附属区になると思う。車列は分流。護衛車は外側の駐車場で待機。K-7だけ内院に入る。私たちの前導車は身元確認を終えてから入る」
「レイチェルは?」
「大ホールや正面入口には、当面直接出さない」林雨瞳は言う。「内線ルートを使う」
この「内線ルート」が誰のことかは、説明いらない。
バローロ神父と、あいつのシステムのことだ。
俺はシートに背をもたせかけ、ハンドルに手を乗せたまま、妙にはっきりした不快感が浮かんでくるのを感じた。ここまでの道のりで、ワイスマン(ワイスマン)の人間、黒い法衣の先遣、スーツの行政担当、裏帳簿とペーパーカンパニー、全部が一本のラインに刺さった別々の接点みたいだった。直接ドアを蹴破ってくる奴もいれば、テーブル越しに手続きを話し合ってくる奴もいる。夜中の修道院で聖書を使って人の顔を叩き潰す奴もいれば、ネクタイを締めながら「これが秩序というものです」と告げてくる奴もいる。見た目はそれぞれ違うが、最終的にはすべて同じ方向に口を絞っていく。
ローマ。
もっと正確に言えば。
バチカンの外縁に張り巡らされた、あらゆるものを「管理可能」に変える仕組みのある、その一帯だ。
夕方の最後の光が西へ倒れていくとき、車列は再び動き出し、最後の区間を走りはじめた。道の両脇の建物が密になっていく。教会の尖塔、院の壁、鐘楼、宿舎棟、古い石壁と新しく設置されたセキュリティの鉄門が、ごちゃ混ぜになって続いている。ここは都市でもなく、純粋な宗教区でもない。歴史と機関が無理やり同居させられて出来上がったものだ。古い石を見れば、新しく取り付けられたカメラも見える。修道士が通り過ぎるのを見れば、無標識の車が影の中に停まっているのも見える。観光客が喜んで撮りたがる窓と花も見えれば、内部の人間しかどこからカードをかざして入るか知らない灰色の側扉も見える。
前方の護衛車が、ウィンカーを二回点滅させた。
林雨瞳が顔を上げる。
「接応が来た」
前を見る。
二台の濃い色のセダンが脇道から滑り出してきて、前後に一台ずつ、サイレンも標識もなく、車列をそのままきれいに挟み込んだ。またスーツだ。窓のフィルムは濃くはないが、中の人間の顔までは読めない。護送じゃない、接管だ。形は礼儀正しいが、芯は硬い。
後部座席からマリアが、小さく笑った。
「ようやくそれらしくなってきた」
「囲い込まれるのが好きなのか」俺は言う。
「違う」彼女はシートに背を預けたまま、声を低くする。「他の人が緊張しはじめるのを見るのが好きなだけ」
俺は返さなかった。
なぜなら、あいつは正しいからだ。
俺は今、確かに緊張している。
銃撃戦が怖いわけじゃない。包囲が怖いわけじゃない。ワイスマンの人間が銃を持って路地から飛び出してくることが怖いわけじゃない。そういうのは慣れている。今、俺が居心地悪く感じているのは、別の種類のものだ――ここでは誰も怒鳴らないし、誰も走らないし、誰も銃を抜かない。それでも、周囲のすべての扉と視線が、じわじわと俺の方向に閉じていくのが分かる。
バチカンの圧力は、爆発しない。
挟み込んでくる。
前後の二台のセダンが俺たちを、より静かな道へと誘導していく。両側の高壁が少しずつ高くなり、木の影も深くなる。さらに進むと、それほど大きくはない鉄門がすでに開いていた。門の向こうは内院と側棟、それから暖かい黄色い灯りが点いた窓が一列。場所だけ見れば、高級な修道院の迎賓館にも見える。だが、門の両脇に立ち並ぶ二列の人間が、その幻想を完全に踏み潰す。
黒いスーツ、白いシャツ、濃い色のネクタイ。
外で銃を持っている者は一人もいない。だが全員が、銃がどこにあるかを知っている顔をしている。
バローロのK-7は別の側の内場へと誘導され、俺の前導車は本棟の前に停めるよう示される。護衛車は外周にしか入れない。つまりこの瞬間から、俺たちは自分たちの車列編制じゃなく、他人のポケットの中に入ったということだ。
俺はエンジンを切ったが、すぐには降りなかった。
林雨瞳は最後の数枚の書類を書類袋に収めていく。その動きは、狼の巣に入るんじゃなく、法廷に向かうみたいに落ち着いている。葉綺安がドアを押し開ける前に、横から俺を一瞥した。
「昨夜、神父が人を折り畳んでるのを見たときより顔色が悪い」
「昨夜は明るかったから」俺は言う。
彼女はうなずく。
「ここは暗いってこと?」
「ここは明るい」俺は言う。「明るすぎて、隠れる場所がない」
俺はドアを押して降りた。
夕風が石壁と柏の木、それからどこか清潔すぎる古い匂いを運んでくる。こういう場所は本来、祈りや晩課の鐘や神学や歴史を連想させるはずだ。なのに俺が最初に思い浮かべたのは、手術室の前の廊下だった。白くて、静かで、秩序があって、そしてドアの向こうで誰かが開かれることになっている。
バローロ神父がK-7の方から歩いてきた。後ろに神職が二人付いている。黒い法衣に濃い色の外套を羽織っているが、立ち位置と目つきは、普通の神父のそれじゃない。マリアが一番後ろについてくる。足音が軽い。顔に笑いはない。左目の眼帯が灯りの下で黒く、乾いた傷口みたいだ。これほど静かになると、彼女はもう修女には見えない。書類の端っこに書き込まれた黒いメモみたいだ――必要なときに使用すること。
年かさの司祭が台階を下りてきた。表情は穏やかで、声も低い。
「皆さん、長旅お疲れ様でした。部屋と仮の宿泊場所は、すでに手配が整っております」
この言葉そのものは、何もおかしくない。
ただ、彼の後ろに並んでいるスーツの列が、どんな「手配が整っております」も、休息じゃなく「仕分け」に聞こえさせる。
バローロ神父が俺の前に来て、一言だけ言った。
「まず中に入れ。今夜は勝手に歩き回るな」
俺は彼を見る。
「そういう注意をするときは、たいてい歩き回る価値のあるものがあるってことだけどな」
彼はすぐには返さなかった。ただ少しだけ頭を下げて、俺を一秒見た。灰色の、ほとんど死人みたいな目に感情はない。それでも、この言葉を冗談として受け流させてくれない重さがある。
「周士達」彼は言う。「ここは道中じゃない」
俺は一度、うなずいた。
「分かってる」
当然、分かっている。
ここは道中じゃない。
道中より清潔で、道中より静かで、道中より明るくて、そして道中よりずっと、すべてを「最初からなかったこと」として処理できる場所だ。
最悪なのは、俺たちがついにその外縁に入ったということだ。
俺は顔を上げて、本棟の向こうにある暗い影を見た。夜の中で、どこかの円蓋と高い壁の輪郭がわずかに覗いている。巨大な機関が体を深い闇の中に隠して、端っこだけを先に見せているみたいだ。「バチカンへようこそ」と言う者は誰もいない。言う必要もない。ここに立てば、自分がもっと大きな胃の外側に入ったことが、ただ分かる。
車のライトが一つ一つ消えていき、内院の灯りが一つ一つ点いていく。
俺はその場に立ったまま、ふと、はっきりと気づいた。今この瞬間から、事態は「レイチェルをここまで護送する」という話じゃなくなっている。裏帳簿、ペーパーカンパニー、地下施設、ワイスマン、先遣部隊、スーツの行政組織、バローロとマリア、それらすべてが同じ方向へ収束していく。そしてその方向は、教会でも、庇護所でも、単純な政治的中枢でもない。
工場だ。
信仰と、秩序と、法律と、祈りと、暴力を、一緒に溶接してしまった工場。
そして俺たちは今、その外縁に足を踏み入れた。
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