132.統計 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
男の目が震えた。
バローロは続ける。「嘘をついても、殺しはしない。ただ元の場所に送り返す。失敗を抱えたまま戻ることになる」
直接の脅しより効果的だ。
死を恐れる者もいれば、生きて失敗を持ち帰ることをもっと恐れる者もいる。
その光景を見ながら、俺の中でだいたいの判断が固まった。バローロは拷問を好んでいるわけじゃない。圧力をかけることを楽しんでいるわけでもない。ただ、いつ人間を砕き、いつ残すべきかを極めて正確に分かっている。その加減の精度が、マリアの純粋な発症よりよほど恐ろしい。
マリアのことを思い出して、俺は中庭を見回した。
彼女はいなかった。
顔を上げると、二階の崩れた廊下の欄干に座っていた。両足を宙に垂らして、古い建築物に止まった病んだ鳥みたいだった。すでに改造した黒い修道女服に着替えている。銀色の短い髪が朝の光の中で冷たく光り、左目の眼帯はきっちり装着されている。唯一見える氷みたいに青い右目が下を眺めていた。次に切り開く対象を選んでいるような目だった。七苦を膝の上に横たえ、白い布でゆっくりと刀を拭いている。
その拭き方が妙だった。
刀を愛しているわけでも、惜しんでいるわけでもない。看護師が注射針を消毒しているみたいだった。
視線が合った。
彼女はすぐに笑った。
「おはよう、周士達」
「なんでそんな高いところに座ってるんだ」
「こっちのほうが清潔だから」彼女は言う。「下は泥と血と砕けた歯と、あなたたちの統計顔ばかり。好きじゃないの」
「昨夜はそんな態度じゃなかったろ」
「昨夜は仕事だったもの」
白い布で刀身の末端を拭く。何かの軟膏を塗り込むみたいにゆっくりと。
「朝が好きよ。朝はいい。人間がまだ完全に目を覚ましていなくて、罪もまだ完全に固まっていない。この時間に切ると、もっと新鮮なの」
「朝食の時間にその話はやめてくれ」
彼女はくすくす笑った。
「昨夜ずっと私を見てたでしょ」
「お前が味方まで切り始めないか確認してただけだ」
「で、確認できた?」
「今のところ、敵と味方の区別はついてるらしい」
彼女は少し考えてから、素直に頷いた。
「今のところ、ね」
葉綺安が最後の一口を飲み干して、紙コップを握り潰した。
「正直すぎて、不安になるわね」
「ありがとう」マリアは言った。
「褒めてない」
「全部褒め言葉として受け取るわ」
言い終えると、彼女は欄干から直接飛び降りた。
二階分の高さだというのに、着地はほとんど無音で、スカートの裾と刀鞘がわずかに揺れただけだった。近くにいた護衛二人が反射的に銃に手をかけたが、彼女は見向きもせず、まっすぐ俺の前に歩いてきて、首を傾けて値踏みした。
「一晩ちゃんと眠れなかったでしょ」
「当たり前だ」
「私のせい?」
「お前とあの動く墓石が同じ隊にいるせいだ」
彼女の口元が少し曲がった。ごく合理的な診断結果を聞いたみたいに。
「それはよかった」
「どこがいいんだ」
「まだ正常な恐怖心があるってことだから」
相手にするのをやめて、そのまま内側に向かった。朝のうちにやることはまだ山ほどある。病人の心理セッションに付き合う時間はない。
朝食は小さな食堂だった。
パン、濃いスープ、冷めた卵が二皿、修道院が自分で淹れたブラックコーヒー。罰則みたいな不味さだった。入ると、大体全員揃っていた。シキはレイチェルと窓際に座っている。エリザヴェータは彼女の後ろ側に立っていて、座らない。林雨瞳は地図と書類を持って中央に座り、食べながらルートを確認している。ヴィクトリアは一番端の角に座って拳銃のスライドを分解していた。目の前のパンには手をつけていない。葉綺安は俺の向かいで、自分の分をすでに三分の二片付けていた。
バローロ神父はレイチェルの斜め向かいに座っていた。
妙な光景だった。
昨夜の同じ手が人間を石畳に叩き込んでいたのに、今は極めて安定した動作で湯を注いで、カップをほんの少し前に押し出し、縁がちょうどレイチェルの手の届く位置に来るようにしていた。余計な視線もなく、余計な言葉もなく、声まで低くしていた。
「まず飲みなさい」彼は言う。
レイチェルは一度彼を見てから、ゆっくり手を伸ばした。まだ少し怖がっているが、完全に縮こまっているわけじゃない。それは当然だ。昨夜のあの場面を見た後では、誰だって神父と死刑執行人の違いをもう一度測り直す必要がある。
バローロは小さく千切ったパンを皿の端に置いた。
「空腹だと気分が悪くなる」彼は言う。「今日は道が長い。無理をするな」
この態度だと、昨夜院の中で行われた処理は別の人間がやったみたいに見える。でも違う。俺にははっきり分かる。どちらも同じ人間だ。だからこそ厄介なんだ。
俺が座ると、椅子を引き切る前にマリアが右隣に来て座った。
振り向いて見た。
「席がなかったのか?」
「あるわよ」彼女は言う。「でも、ここに座りたいの」
「俺は嫌だ」
「それはあなたの話」
林雨瞳は顔を上げない。
「修道女、今朝の朝食でも彼に向かって喋り続けるつもりなら、先に食べ終わることをお勧めする。車列の再編成で、あなたを優先的に神父の車に押し込むから」
これは効いた。
マリアが二秒止まった。本当にこの件を続ける価値があるかどうか、真剣に検討しているみたいだった。
俺は林雨瞳を一瞥した。
彼女は地図を見たまま、口元がごく淡く動いた。性格が変わったわけじゃない。この道中で、最も省エネな方法でノイズを処理することを覚えただけだ。
バローロ神父がそこで顔を上げた。
「彼女を私の車に乗せていい」彼は言う。
マリアがすぐに振り向いた。
「嫌よ」
「確認じゃない」
「あなたのあの鉄の棺桶は嫌」
「なら歩けばいい」神父は言った。
食堂が一瞬静まった。
笑いそうになったが、堪えた。
マリアは目を細めてバローロを見た。今ここで発症できるかどうかを判断しているみたいだった。最終的に彼女はただ鼻を鳴らして、視線を俺のほうへ戻した。
「あなたより付き合いにくいわね、あの人」
「最初から知ってた」
朝食の後、主廳で十五分の短い会議を開いた。
俺は長テーブルの前に立って、新しい車列順序と夜間警戒の方針を直接告げた。誰の感情も確認しない。
「第一、今日は出発を二時間遅らせる。六時から八時半まで後処理、補給、タイヤと車体の確認を行い、八時四十分に出発。第二、車列を再編成する。先導車は引き続き俺が運転し、葉綺安が交替する。第三車護衛を前に出して先行と外縁接触を担当させる。K-7は中後位に回し、必要に応じて衝突と殿軍遮断の役割を担う。第三、どの停留地で夜を明かす場合も、夜間警戒を四層に変更する」
紙をテーブルに叩きつけた。
「外周は護衛二人が機動巡回。内周はヴィクトリアが護衛一人と共に車両と重火器を担当。主棟廊下は俺と葉綺安が交替で受け持つ。バローロ神父はレイチェルのいる階の第二対応を自分で担当する。マリア修道女は——」
俺は彼女を見た。
「勝手に配置を離れるな。主棟を無断で離れるな。真夜中に廊下で刀を研いで人を脅かすな」
彼女は自分を指差して、無実の顔をした。
「私が?」
「この建物にそんなに病んだ修道女が二人いるか?」
葉綺安が横で静かに付け足した。
「もう一人いたら、昨夜この建物じゃ足りなかった」
マリアは笑ったが、反論しなかった。
俺は続ける。
「第四、レイチェルの部屋の外には女性看護要員だけを置くのをやめる。昼間はシキが付き添い、夜間は武装した哨兵を一人追加し、扉の前の廊下両端にそれぞれ一人置く。エリザヴェータがその階に残りたいなら構わないが、行動範囲には線を引く。越えたら退場させる」
エリザヴェータは窓際に立って、俺を見もせず、冷たく一言放った。
「やってみればよい」
「やる」
バローロ神父も彼女を見た。
「配合することだ」
エリザヴェータはそこで初めて振り向いた。銀灰色の目には温度のかけらもない。
「昨夜、そなたたちが血をまき散らさなければ、こんな命令を聞く必要もなかった」
バローロは静かに返した。
「昨夜私たちがいなければ、今頃拭かなければならないのは床だけではなかった」
二人が見合った数秒間、主廳の空気が二種類の異なる刃で同時に押さえられたみたいだった。一方は重く、一方は薄い。前者は人間をまるごと地面に叩き込めて、後者は神経に沿ってゆっくり剥いでいける。
その光景を見ながら、俺の頭にあったのは一つだけだ。
この隊の本当の問題は、外の敵の数じゃない。
俺たちの車に何個の災害源が詰まっているかだ。
短会が終わってから、俺は自分で車の確認をした。
先導車は昨夜直接交戦しなかったので大きな問題はないが、右後部の窓が破片で割れていて、荷物の重心も調整が必要だった。林雨瞳の書類箱と通信機器は中央に移動させ、レイチェルの位置は変えない。中列の内側のまま、シキが隣につく。エリザヴェータは後列外側に座り、立ち上がりやすいが前に突進しにくい位置だ。葉綺安と俺が交替で運転し、空いた方が助手席に座る。ヴィクトリアは工具箱と共に最後列。マリアは——
K-7に押し込もうとしていた。
結果、バローロ神父が一言言った。「彼女は君の車に乗せておけ」
俺は彼を見た。
「俺を苦しめたいのか?」
「違う」彼は言う。「彼女が発症しても、君なら目が届く」
「俺への評価が高すぎる」
「彼女への評価が低いだけだ」
これは妙に合理的だった。
マリアのほうを見た。彼女はK-7の横に立って、ブーツの爪先でタイヤの溝に挟まった石片を蹴り出していた。遠足を待っている子供みたいに嬉しそうな顔をしていた。
俺はため息をついた。
「先導車に乗せる」俺は言った。
林雨瞳が顔を上げて、本当に?という目で見た。
「本気だ」俺は言う。「目の前に置けば、少なくとも口が動いてるのか刀が動いてるのかは分かる」
葉綺安が車のドアに寄りかかって、淡々と言った。「管理学的な発想ね」
「余計なこと言うな。後で前の席に座ってあいつの念仏を聞かされるのはお前だ」
「念仏じゃないわよ」
「そうだな、病歴だ」
八時ごろ、最後の確認が終わった。
捕虜二人は第三車護衛に引き渡した。一人は荷台に縛られ、もう一人はK-7の後部座席の鉄柵の中に押し込まれた。修道院長がようやく姿を見せた。顔色は一夜で十歳老けたみたいだった。俺は損傷の状況と、後で教廷の担当者が後処理に来ることを伝えた。彼は頷いたが、視線がずっとバローロのほうへ流れていた。それは当然だ。昨夜のあの場面を見た後では、あの背の高い黒衣の神父を単なる聖職者として見ることはもうできない。
出発まで二十分というとき、俺は裏庭でバローロを見つけた。
一人で水槽の前に立って、手を洗っていた。
軽く流すんじゃない。丁寧に洗っていた。指の間、指の関節、掌の皺、手首の骨、一か所ずつ。手術室に入る外科医みたいだった。鉄製の水槽を流れる水が、ごく薄い赤を運んでいく。俺は横で数秒眺めた。
「昨夜、主の御言葉に血が付いたままであるべきではないと言ってたな」俺は言う。「今度は手も一緒に洗い流すのか?」
彼は止まらなかった。
「手は汚れていい」彼は言う。「ただ、汚れを習慣にしてはいけない」
この言葉は覚えておいた。
警告に聞こえるし、自戒にも聞こえる。他人に言っているのか、自分に言っているのか、俺には判断できなかった。
「習慣になることを恐れているのか?」俺は聞いた。
彼は水を止めて、タオルでゆっくり拭いた。
「誰もが習慣にすることを恐れている」
俺はその手を見た。大きく、指の関節が太く、掌と指の根元に古い胼胝がある。長年武器、ハンドル、鉄鎖、工具を握ってきた手だ。昨夜その手が人間を石畳に叩き込んでいたのに、今朝は落ち着いた動作でレイチェルに湯を注ぎ、パンを口に入りやすい大きさに千切っていた。
優しさを持つ人間には二種類いる。
柔らかいから優しい者と、力を制御できるから優しい者だ。
彼は後者だ。
そういう人間は、ただ殺せる人間より、ずっと処理が難しい。
俺が立ち去ろうとしたとき、彼が口を開いた。
「周士達」
「何だ」
「今夜から、レイチェルのいる階は私が前半夜を守る」
俺は振り返った。
「俺たちでは守れないと思っているのか?」
「君たちが彼女を任務として扱うことを恐れている」彼は言う。
少し刺さった。
でも反論しなかった。
厳密に言えば、彼は間違っていない。俺たちが今やっていることは全部、任務のフローに見える。移送、護衛、再編成、隔離、夜間警戒、補給。人がフローに入ると、荷物になりやすい。バローロはそれを明らかに嫌っている。
ただ俺も別のことを嫌っている——人間を救済プロジェクトにすることだ。
だから俺は一言だけ返した。
「じゃあ、あんたはあんたの守り方で、俺は俺の守り方でやる。お互い、彼女を囲い込みすぎるな」
バローロは俺を見て、最後に頷いた。
「それでいい」
前院に戻ると、マリアが先導車の横にしゃがんで、聖餐用の薄片でタイヤ外側に貼りついた布切れを切り取っていた。何を持っても手術器械になるみたいな、馬鹿げた精度だった。
歩み寄って、その薄片を指の間から取り上げた。
「俺の車の横でそういうものを使うな」
彼女は顔を上げて、悪趣味な笑みを向けた。
「車を解剖しちゃうと思って?」
「お前が自分の指を切り落として、俺に濡れ衣を着せると思ってな」
彼女は少し考えてから頷いた。
「合理的ね。確かに時々、あなたが冤罪をかけられたときの顔を見たいと思うことはある」
その鋼片を彼女に放り返した。
「俺の車から五歩離れろ」
彼女は立ち上がり、わざと四歩半だけ退いた。
「これは?」
葉綺安が運転席側から顔を出した。
「半歩足りない。蹴り足してあげましょうか」
マリアは彼女を見て、急に真剣な顔で言った。
「今、あなたたち二人のことが少し好きになった」
俺はドアを引いた。
「昨夜の襲撃より気持ち悪い台詞だ」
八時四十分、車列が再び動き出した。
前院の砕けた石が、タイヤの下でじゃりじゃりと鳴る。門番車は今や先行車として、護衛二人は新しい弾倉を装填し、昨夜より硬い姿勢で座っている。先導車の荷室は再配分された荷物、医療箱、書類箱で詰まっていて、重量はかろうじてバランスが取れている。K-7が後方で低い唸りを立てていた。血と軽油を腹いっぱいに飲んだ金属の獣みたいだった。バローロ神父は運転席に座り、横顔は石壁を切り出したみたいで、疲れの気配が一切ない。トレーラーの免許を持つその神父は、今や山でも逆走できそうに見えた。
俺は運転席に座り、ハンドルに手を置いた。
林雨瞳が助手席でルートを最終確認している。葉綺安はドア側に座って目を閉じていた。眠っていないのは分かっている。中列でレイチェルが窓側に座り、シキが隣にいる。エリザヴェータは後列に座り、鞘に収まった銀の刀みたいに静かだった。ヴィクトリアは最後列で、足元に工具箱と拭き終わった銃部品を並べている。マリアは俺の真後ろに座り、きっかり十秒黙っていた。
それから口を開いた。
「周士達」
「何だ」
「昨夜、私が何人やったか統計したの?」
エンジンをかけたまま、振り返らなかった。
「十分すぎるくらいには」
「具体的には?」
「お前の表彰式の司会者じゃない」
「ただ、あなたが私のぶんをちゃんと記録してくれたかどうか知りたかっただけ」
俺はアクセルを踏んで、車が壊れた大門からゆっくり滑り出した。
前は山道で、後ろは遺体の片付けが終わったばかりの修道院、隣には一車分の厄介ごとと二つの高純度の災害源が乗っている。俺は前を見たまま、声を平坦にした。
「一つだけ記録した」
「何を?」
「この隊で一番危険なものは、外にいない」
車内が一瞬静まった。
それから葉綺安が横で静かに付け足した。
「しかも、ちょうど二台分乗ってる」
俺は車を南へ向かう道に出した。朝の光がフロントガラスから差し込んで、温度を持たない冷たさで車内を照らした。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




