132.統計 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
夜明け直後の聖ワレリウス避難院は、一度こじ開けられてから無理やり蓋を戻された棺桶みたいだった。
風はまだ吹いていた。夜の焦げた匂いと血の匂いは散りきらず、朝の冷気に一層押し下げられて、石壁、院の地面、車体に貼りついている。見えない汚れの膜みたいに。院門は半分歪んで、鉄条が醜い弧を描いている。門を守っていた護衛車の左側ドアは弾痕だらけで、フロントガラスは蜘蛛の巣状に割れていた。院壁の西角が一か所崩れ落ちて、瓦礫がそのまま積まれている。誰も急いで片付けようとしていない。
俺は五時四十分に起きた。
十分眠れたからじゃない。これ以上横になっている意味がなかっただけだ。
昨夜のあの騒ぎの後で、朝まで熟睡できる人間は、死人かバローロ神父くらいだ。
上着を羽織って下に降りると、ヴィクトリアはもう中庭にいた。門番車の脇にしゃがんで、工具を手にサスペンションとホイールハブを確認しながら、損傷箇所を小さなノートに書き留めている。彼女の仕事ぶりはいつも銃の機関部整備と同じだ。速くはないが、一つ一つが正確だ。シキと護衛二人が地面の薬莢を回収している。区域別、口径別、位置別に分けていて、正規部隊よりよほどきちんとしていた。林雨瞳は石段の上に立ってファイルを抱えていた。顔色は空と同じくらい白い。
俺を見て、一言だけ聞いた。
「人から先?それとも車から?」
「まず死人だ」俺は言った。
彼女は頷いた。
こういうときは何よりも先に死体を確認するのが一番役に立つ。車は壊れても直せる。壁は崩れても補修できる。死人は少なくとも、それ以上面倒を起こさない。
中庭の遺体と重傷者はすでに三か所に集められていた。玄関ホール、東側回廊の下、衝突で大破した車両の脇。護衛たちは昨夜ほとんど追い打ちをかけていない。追い打ちが必要な状況がほとんどなかったからだ。バローロ神父とマリア修道女はやり方こそ違うが、効率の悪趣味な高さは同じだった。
俺はまず玄関ホールの列を見た。
一人目。フェイスシールドが完全に陥没し、前額、鼻梁、顔の中心線が一塊に潰れている。傷の形が整いすぎていて、鈍器で滅多打ちにしたとは思えない。金属縁取りの分厚い本で、顔の正中央に一ページずつ叩きつけていったような規則的な損傷だ。
二人目。首に深い絞扼痕、喉頭骨の明確な粉砕、肩と背中に石柱への衝突による二次損傷。鋼鉄チェーンが残した痕跡は直線的で、普通の鎖が絡んだ跡とは違う。鉄でできた教義を首に押し当てられて、理解するよう求められたような痕だった。
三人目。胸郭全体の陥没、肋骨は八本以上折れているはずだ。外傷は多くなく、主に圧迫損傷。胸の凹みの形は、バローロのあの金属装丁の聖書の大きさとほぼ一致する。
しゃがんで一瞥してから立ち上がった。
「神父三、護衛一」俺は言う。
林雨瞳が後ろで記録している。
「どうやって分けたの?」
「工事現場の重機で処理されたみたいなのが、全部あいつの仕事だ」
彼女は何も言わず、ただ書き留めた。
東側回廊の分はまったく違った。
傷口が細く、速く、位置が嫌らしい。関節、手首、足首、咽頭の側面、眼窩の縁。即死はしなくても、確実に即座に戦闘能力を奪う場所ばかりだ。前腕全体が精密器具で腱を外されたみたいになって、銃を命より先に落とした者がいる。大腿内側に薄い切り口があって、深くはないのに立ち上がれなくなっている者がいる。左目から耳前にかけて非常に清潔な斜線が一本、外科の教科書みたいだ。
「修女七」俺は言った。
林雨瞳が顔を上げた。
「何で数えたの?」
「病気の感触だ」
彼女は理解したらしく、そのまま頷いた。
大破したバンの横に移動した。バローロが車から引きずり出して地面に押しつけた運転手はまだ死んでいない。死に近いだけだ。縛られて、口に布を詰められ、胸の上下が浅く、目に神学と重力に同時に教育された空白が浮かんでいた。二秒見てから、護衛に布を外すよう示した。
「名前」
何度か息を吸ってから、ようやく絞り出した。
「……マティアス」
「ワイスマンの手の者か?」
男は目を閉じ、小さくうなずいた。
「昨夜は何台来た?」
「三……三台……二十四人……」
「誰の命令だ?」
「分からない……ただ……奪えと……奪ったらすぐ引けと……交渉は不要……生存者も残すなと……」
その言葉には真実味があった。
昨夜の奴らの突入の仕方は、およそ交渉にきた人間のそれではない。力任せに強奪しにきた動きだ。偵察も、浸透も、外縁の分断もなし。ノックも挨拶も抜きで、形ばかりの警告すら煩わしがっていた。こんな真似をする理由は二つしかない。上が焦っているか、下が無能かだ。ワイスマンがその両方なら、俺が思っていた以上に死に急いでいるらしい。
護衛に猿ぐつわを戻させた。
「生かしておけ」俺は言った。「道中、まだ何かの役に立つかもしれない」
次は味方の被害状況だ。
三番車の護衛二名が軽傷。一人は左肩をかすめる貫通傷、もう一人は下腿外側に破片と跳弾を受けたが、歩行も射撃も可能。修道院の老修道士二名も生存、一人は鼓膜損傷、もう一人は腕の骨折。核心メンバーは無傷だ。俺たちがうまく守り切ったわけじゃない。昨夜、実際に戦っていたのが俺たちではなかったというだけのことだ。
状況の数字をリン・ユートンに報告した。
「敵二十四名。現場死亡十六、重傷五、完全拘束一、瀕死だが尋問可能が一。味方は死亡ゼロ、護衛二名負傷、修道院側二名負傷。車両の被害は大破一台、中破一台。門扉は全壊、西側の外壁が一部崩壊、本館外壁への被弾十七か所、二階東側の窓枠破損二か所」
林雨瞳は記録しながら言った。「予定ルート通りなら、今日はさらに二百キロ以上南下する。門番車は交換する?」
「交換だ」俺は言う。「第三車を二番手に上げて、K-7を中後位に回す。先導車は据え置き」
彼女が顔を上げた。
「神父を中段に置くの?」
「昨夜一つ分かったことがある。相手は直接突っ込んでくる。K-7を中後位に置けば、前で何かあれば押せるし、後ろで何かあれば潰せる。最前列を走らせるより、どちらでも使い道がある」
「神父が同意するとは限らない」
「同意を求めてるわけじゃない」
その言葉を言い終えた直後、背後から地面が喋っているような低い声がした。
「だが、事前に知らせる必要はあるだろう」
振り返った。
バローロ神父が玄関ホールの陰に立っていた。外側の法衣はすでに着替えている。黒い強化プレートはそのままで、外に短めの作業用長衣を羽織り、肩の金属護具は外していない。相変わらず移動する壁みたいだ。手には金属装丁の聖書を持っていた。昨夜角が少し歪んでいたが、今は不快になるほどきれいに拭かれていた。
洗顔を済ませたばかりらしく、灰白色の皮膚が朝の光の中でさらに蠟みたいに見えた。目は相変わらず死んだ灰色で、静かなときは中に生きた人間がいないみたいだ。でも俺は知っている。昨夜あの目が光ったとき、地面には統計が必要な人間が山ほど増えた。
「今知らせた」俺は言う。「K-7は中後位に下がり、先導車が頭を張る。護衛車は前に出す。今日また突っ込んでくる奴がいたら、まずあんたにぶつかってもらうほうが効率がいい」
彼は俺を二秒見て、不機嫌な様子は見せなかった。
「合理的だ」彼は言った。
この老いぼれの一番厄介なところはこれだ。罵倒しても、理にかなっていると判断すれば本当に頷く。純粋な宗教屋として扱い切れない。
俺は彼の手の聖書を見た。
「きれいに拭いたな」
バローロは視線を落とした。
「主の御言葉に血が付いたままであるべきではない」
「でも昨夜はかなり付いていた」
彼は平然と返した。
「それは人間の選択であって、書物の責任ではない」
俺は言い返すのをやめた。
こういう人間と道理を交わすと、棺桶の釘を一本ずつ頭に打ち込まれるような気分になる。
葉綺安が内側から出てきて、ブラックコーヒーを二杯持っていた。一杯を俺に渡し、もう一杯は自分で飲む。バローロを一瞥して、それから地面に並んだ人間たちを見た。
「統計はどこまで進んだ?」
「だいたい終わった」俺は言う。
彼女は相槌を打って、柱に寄りかかってコーヒーを飲み、遺体を眺めながら淡々と付け足した。
「神父が処理したやつ、大型交通事故より大型交通事故っぽいわね」
バローロ神父が彼女を見た。
葉綺安も見返した。表情に敬意のかけらもない。
彼は最終的にこう言った。「彼らが止まっていれば、こうはならなかった」
「残念ながら」葉綺安は言う。「あなたは止まる時間を与えてくれる人には見えない」
かなり直球だった。
バローロが少なくとも眉を動かすかと思ったが、一秒沈黙してから言っただけだ。
「与えた。彼らが受け取らなかっただけだ」
俺はコーヒーを一口飲んだ。熱く、苦く、ちょうどよかった。
「その点は証言できる」俺は言った。「昨夜あんたは確かに先に声をかけた」
葉綺安が横目で俺を見た。
「あなた、あの人の肩を持ってるの?」
「違う」俺は言う。「事実を記録してるだけだ。この老いぼれは昨夜、悔い改めを勧めながら人を叩き潰していた。手順は完璧で、態度は敬虔で、やり方は確実だった」
葉綺安の口元がわずかに動いた。笑いそうになったみたいだった。
バローロは俺たちを無視して、捕虜二人のほうへ歩いていった。しゃがんだとき、膝が石畳に低い音を立てた。見せかけじゃない。本当に重いんだ。座るたびに判決の痕跡を残すみたいに。
マティアスという男に向かって、声を低くした。
「協力するなら、次の停留地まで生かして連れて行く」
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