131.神の歪んだ愛 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
第四停留地の夜には、神聖なものは何もなかった。
あるのは風だけだ。
山肌を這う風が石壁に貼りついて擦り抜けていく。鈍い刃で骨を何度もこすっているような音だった。聖ワレリウス避難院は古い坂道の突き当たりに座っていた。主棟は低く、壁は厚く、窓は狭く、鐘楼は誰かに無理やり切り落とされたみたいに短い。ここは巡礼のための場所じゃない。一夜を生き延びるための場所だ。壁は十分に厚く、扉は十分に重く、地下室は十分に深い。中庭の枯れ木は、かつて人を吊るしたことがあるみたいに歪んでいた。
俺たちの車は内院に停まった。
先導車は西壁沿いに、K-7は中庭の北寄りに横向きに据えられ、灰黒色の鋼板みたいに院の中央に食い込んでいる。第三車の護衛車は正門の内側、銃口を外に向けて停車した。修道院の連中は空気を読んで、晩課が終わるなりきれいに引き上げ、厨房とボイラー室に年配の修道士を二人だけ残していった。足音は軽く、誰かの神経を踏まないよう気をつけているみたいだった。
林雨瞳は停留リストと翌日のルートをもう一度確認してから、通信のチェックに向かった。シキはレイチェルと一緒に二階東側の部屋にいる。エリザヴェータは窓際に立って、床に打ち込まれた銀色の釘みたいだった。ヴィクトリアは一階の長テーブルで相変わらず銃器と工具の整備を続けていて、顔を上げる気配がない。葉綺安は廊下の壁に寄りかかってブラックコーヒーを飲んでいた。顔色は壁より冷たい。マリア修道女は夕食後からずっと落ち着きがなく、発症した針みたいに建物中を刺して回っていた。
最後に落ち着いたのは、俺の隣だった。
そのとき俺は二階廊下の突き当たりに立って、細い窓越しに中庭を見ていた。古いガラスに俺の顔の半分が映っていて、ひび割れた鉄板みたいに見えた。
「周士達」彼女は寄ってきて、声をひそめた。ガラスを刃先で削るみたいな声だった。「あなたみたいな人間って、夜は銃を抱いて寝るの?それとも、別のもの?」
俺は彼女を見ない。
「それ以上口を近づけたら、鐘楼に吊るして風見鶏にしてやる」
彼女は笑った。普通の人間の笑い方じゃない。まず口角が動いて、目が半拍遅れてついてくる。別々の人間二人を無理やり一つの顔に押し込んだみたいな笑いだった。
「相変わらず乱暴ね」彼女は言う。「覚えてるわよ。台北で。あなた、私のことSMコスプレ変態って言ったでしょ。あの一言、ずっと覚えてる。今でもあなたを開いてみたくなるの。中に、何かベルトみたいな構造があるんじゃないかって」
「頭おかしいだろ」
「そうよ」彼女は素直に頷く。「しかも治す気はない」
葉綺安が横でコーヒーを一口すすって、淡々と投げた。
「そこだけは、案外健全ね」
マリアが首を傾げて彼女を見る。
「あなたも冗談を言うようになったのね」
葉綺安は紙コップを握り潰して、角のゴミ箱に放り込んだ。弾倉を捨てるみたいな動きだった。
「昔、一人だけこんなにイカれた女を見たことがある」俺は言う。
葉綺安は暗くなった中庭を見ながら、鼻にかかった小さな声を出した。
「今は、私も十分イカれてる」
俺は返さなかった。
冗談じゃないと分かっていたからだ。
この南下の道行きで、全員が少しずつ人間らしさから滑り落ちている。ゆっくり滑っている者もいれば、頭から真っ逆さまに落ちている奴もいる。
マリアがまたこっちに顔を戻した。あの氷みたいに青い右目が、廊下の灯りに照らされて冷たく光る。
「どうして私が車に乗ってきたか、聞かないの?」
「聞きたくない」
「なら、なおさら言ってあげる」彼女は微笑む。「バローロ神父は、あなたが汚れてると思ってる。私もそう思う。彼の言う汚れは倫理的な汚れ。私のは、もっと現実的なほう。単純に興味があるのよ。あなたみたいな人間を、ちゃんと縛って、切り開いて、層ごとに分けたら、最初に出てくるのは何か。責任感かしら。それとも、ただのゴミ?」
「今夜、他にやることがあるといいな」俺は言う。「そうじゃないと、本当に外に吊るすぞ」
「できないわよ」
「試してみろ」
彼女がまだ何か言おうとしたとき、林雨瞳が階段から上がってきた。書類を脇に挟み、顔には翻訳不要なくらいはっきりした苛立ちが浮かんでいた。
「修道女」
マリアは彼女を見た。新しい解剖図でも見つけたみたいな目だった。
「何かしら、小さな会計士さん?」
林雨瞳の表情は一ミリも動かない。
「これ以上、ドライバーと護送対象に対して、移動中の言語的妨害を続けるなら、停留リストと部屋割りからあなたの名前を消す。神父と一緒に車庫で寝てもらう」
廊下が一拍、静まり返った。
マリアは彼女をじっと見て、それから、針で神経を突かれて気持ちよくなったみたいにゆっくり笑い出した。
「あなたのこと、好きになってきたわ」
「結構」林雨瞳は言う。「狂犬は引き取らない」
そう言って踵を返し、石段を踏んで降りていった。靴音一つ一つが、誰かへの判決文を読み上げているみたいだった。マリアはその場に立ったままで、追いかけようとはしなかった。俺は彼女を一度見て、初めて気づいた。こいつの口は生まれつき閉まらないわけじゃない。単に今まで、直接釘打ち機を当てる奴がいなかっただけだ。
「勉強になったか?」俺は聞いた。
彼女は唇を舐めた。
「ちょっとはね」
中庭の風が、ふいに変わった。
文学的な比喩じゃない。戦場を一度でも踏んだことがある人間なら分かる、あの種の変化だ。さっきまで外にあったのは、枝が壁を擦る音、金具が揺れる音、遠くのディーゼルエンジンの低い唸り。それが次の瞬間、突然重くなった。一本の線だったものが、いくつかの硬い石塊になって坂を転がり落ちてくる。速度が速い。探る動きも、溜めもない。
俺は窓を少し開けた。
冷たい風が一気に吹き込んできた。機械油の匂い、湿った土の匂い、エンジンがオーバーロードしたときの、あの焦った熱の匂いを運んで。
「来たな」俺は言った。
葉綺安がカップを置いた。
マリアが笑った。
嬉しいわけじゃない。発症だ。
正門の外で、まずヘッドライト二本が木立の影を切り裂いた。続いて、警告もなければ手順もなく、鈍い衝突音が一つ、修道院の外側の古い鉄門を内側に弾き飛ばした。門を守っていた護衛車がヘッドライトをそっちに向けた瞬間、二台目がそのまま突っ込んできた。フロントには曲がった鉄片がぶら下がっている。車が完全に止まる前にドアが開き、人間が飛び降りてくる。長銃を水平に構え、ナイトビジョンを適当に括りつけている。偵察隊の動きじゃない。
偵察じゃない。
強奪だ。
「ワイスマンの手の者だ」俺は言った。
「礼儀知らずね」マリアがささやいた。「嫌いじゃない」
中庭に走った最初の一斉射撃が、避難院全体を鉄棒で一度殴ったみたいに震わせた。護衛車の後部座席の二人が銃を構えた瞬間、外壁を越えて三人が転がり込んでくる。東側二階に向かって、いきなり射撃。弾丸が石壁と窓枠に当たって、石片が飛び散る。あの辺りは、ちょうどレイチェルの部屋だ。
ノックもない。浸透もない。煙幕も使わない。基本的な角度の掃射すら無視だ。
粗雑すぎて、むしろ侮辱に近い。
「本気で焦ってるわね、あいつら」葉綺安が言う。
「ただの馬鹿って可能性もある」俺は銃を手に取ったが、動かなかった。
別の足音が、階段の向こうから聞こえてきたからだ。
走る音じゃない。
踏みしめる音だ。
鉄筋を満載したダンプカーが、石畳の上を低速で走ってくるみたいな。
バローロ神父が影の中から姿を現した。黒いタクティカル法衣の上に、布とは思えない重さの祭服を重ねていて、動く壁みたいに幅がある。灰と黒が入り混じるその布地は廊下の灯りをほとんど反射せず、むしろ彼の輪郭をさらに巨大に見せていた。顔は相変わらず死人みたいに無表情で、皮膚はロウみたいに張りつめている。角張りすぎた顎は、石を切り出したみたいだ。左手には金属縁取りの聖書一冊。右手では、腰に巻かれていたラテン語の刻印入りの鋼鉄チェーンを半分ほど解いている。
彼は俺を一瞥した。
「君の部下は上階を守れ」彼は言う。
「そっちの部下は、死に急ぐな」
「アーメン」彼は言った。
そして階段を降りていった。
俺は窓際に寄り、二百センチを超える化け物が廊下を進むのを見下ろした。最初に浮かんだのは「神父」じゃない。「装甲車」だ。あの塊が前に出たら、まともに受け止められる人間は多くない。
マリアもほとんど同時に動いた。
彼女は手すり側には向かわず、いきなり窓の桟に足をかけた。スカートの裾と黒いロングストッキングが、廊下の灯りの下で冷たい線を描く。次の瞬間には、闇から投げ捨てられたみたいに音もなく中庭の側面に落ちていた。背中の、長すぎる打刀「七苦」が窓枠をかすめて斜めに走り、鞘がきいんと細い金属音を立てる。耳の奥を針でひっかいたみたいな音だった。
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