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129.法皇庁異端審問局 2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

「状況を」


カミラは迷わない。「女性。十九歳。長期拘禁の痕跡顕著。栄養失調。古傷多数。精神状態は不安定だが意識清明。短文での応答可能。現在、後棟二階に一時保護」


マリア修道女は何も聞かない。


この話題には本当に興味がないらしい。退屈しのぎに右手袋の細い銀の十字架を指先で回しながら、視線は相変わらず俺に落ちている。心の中でこの会議をとっくに二層に切り分けているみたいに――神父が重要なことを処理し、自分は面白いことを待つ。


バローロが続ける。


「身元は確認できたか」


「名前は確認済みだ」俺は言った。「その他はまだ補完中」


「言え」


Rachelレイチェル


その名前が出ても、マリアはまぶた一つ動かさない。


バローロは二秒沈黙した。


石を刻み出したようなあの顔に、初めてごく僅かな変化が浮かぶ。柔らかくなったわけじゃない。鉄でできた何かが、ほんの一度だけ温度を下げたような感じだ。一瞬だけ。ごく短い。それでも俺には見えた。


「彼女はどこまで見た?」


「十分すぎるくらいには」俺が答える。


「自分がどこにいるか、理解しているか?」


「一部は理解してる。完全じゃないが」


「誰に助け出されたか、分かっているか?」


「分かってる」


バローロは一度頷いた。


それから彼の視線が初めて、資料と特定の対象だけでなく、部屋全体を本当に見渡した。


「ならば今この瞬間から」彼は言う。「彼女は単なる生存者ではない。生きた証人だ」


その一言で、数日前のあの黒服先遣隊二人の存在意義が、さらに鮮明になった。俺たちの逃亡を防ぐためじゃない。こういう生きた証人が、あの黒い帳簿ごと外部のスキャンダルに変わるのを封じるためだ。


カミラが両手をテーブルにつき、身体を少し前に傾ける。


「どうするつもり?」


バローロはすぐには答えない。


まずエリザヴェータを一瞥した。


彼女とレイチェルに直接の関係があるからじゃない。紙の上の資料より、部屋の中の感情の線のほうがずっと処理が厄介だとよく分かっているからだ。その視線に感情はないが、秩序がある。誰が彼女の世話をし、誰が彼女を守り、誰が引き渡しを拒んでいるか――そしてどれが今すぐ処理すべき優先事項ではないか、全部把握している、と言わんばかりの目だった。


エリザヴェータは無表情だったが、明らかに身体を強張らせていた。


そのときマリアが、ふっと俺の側へ半歩近づいた。


ごく軽く。


わざと俺にだけ気づかせるように。


「彼、何て言うと思う?」小声で聞いてくる。


「分かってもお前には教えねえ」


「私は知りたいわ。彼が人員を要求したとき、あなたの顔が今より少しはマシになるかどうか」


俺は横目で彼女を見た。


「まずは自分のその目玉をくり抜いてみろよ。少しは見れるツラになるか試してみな」


彼女は笑った。


今度は本当に嬉しそうだ。俺が脅したからじゃない。俺が退かなかったからだ。この女は明らかに、互いに殺し合いたいと思いながら交わすこういう会話を、ある種の高級な社交だと思っている。


バローロがようやく答えを口にした。


マリアを見ることもなく、俺たちの殺伐とした空気も無視して、ただ両手を静かにテーブルの上に置いた。あらかじめ用意された裁定を読み上げるかのように。


「その少女は」彼は言う。「私が連れて行く」


部屋の誰もすぐには声を上げなかった。


俺が最初に思ったのは教廷でも、手続きでも、安全でもない。


後棟二階の、布をかぶせたあの小さなランプのことを思った。布団の端を握りしめて眠るレイチェルの姿を思った。ベッドの傍らに座って、何度も何度も「ごめんなさい」を繰り返すエリザヴェータのことを思った。


それから俺は顔を上げ、バローロ神父を見た。


「ダメだ」


引き延ばしも回り道もなく、真正面から返した。


バローロ神父は俺を見つめた。顔には微塵も波紋が浮かばない。石碑を刻み出したようなその顔は、もとから感情表現には向いていない。それでも分かる。彼は驚いていない。俺のこの返答も、あらかじめ計算に入れていた。


「理由を」


「彼女は貨物じゃねえ」俺は言った。「あんたが一声かけたからって、ハイどうぞと渡せるもんじゃない」


マリア修道女が横で軽く笑った。


「いい台詞ね」彼女は言う。「あなた以外の口から出てくれば、もっときれいだったのに」


俺は彼女を見ない。


「お前と話してるんじゃねえ」


「分かってるわ」彼女の笑みがさらに細くなる。「だからこそ面白いのよ」


バローロ神父は彼女を無視した。


その灰白色の両目が相変わらず俺の上にのしかかったまま、頭蓋骨に埋め込まれた二つの冷たい石のようだった。


周士達(ジョウ・シーダー)」彼は言う。「一つ理解しておけ。今は誰が先に手を伸ばしたかで、連れて行く資格が決まるわけじゃない。彼女は生きた証人だ。関わっているのは地方武装勢力の小競り合いでも、地下拠点一つでもない。彼女の背後には資金、名簿、手続き、教廷内部の粛清と外部の口封じが繋がっている。君が彼女を連れて歩くのは、彼女を火線のど真ん中に置くということだ」


「あんたに付いて行っても、結局火線の中だろ」


「違う」バローロは言う。「私と一緒なら、保護プログラムに入る」


「あんたら教廷の保護プログラムってやつ、今日ちょうど半分読み終わったところだ」俺はテーブルの上の黒い帳簿資料を顎で指す。「説得力が足りねえな」


この一言で、ロレンツォとアドリアンの顔色が悪くなった。


だが顔色がどう変わろうと関係ない。ここで口を挟める立場じゃない。


マリア修道女だけが実に楽しそうだった。


半歩前に出て、指先で自分の腕甲の縁を軽く叩く。まるで俺の一言一句にリズムを付けているかのように。


「そこが好きよ、周士達(ジョウ・シーダー)」彼女は言う。「いちばん不敬な台詞を、弾薬の在庫報告みたいな顔で平然と言ってのける」


「黙ってくれたら、もっと好きになれる」


「ダメよ」彼女は首を傾げ、あの氷みたいに青い右目で俺を見た。手術灯みたいに明るい目だった。「私が黙ったら、あなたの楽しみが減るじゃない」


「お前の楽しみには興味がねえ」


「それはまだ、縛り上げられてたっぷり教育されたことがないからよ」


カミラがテーブルの端から冷たく吐き出した。


「修道女、もう一言でも多かったら、出て行ってもらう」


マリアがようやく彼女を見た。


「隊長、誤解しないで。今、かなり自制してるほうよ」


「なら、その自制を最後まで維持しなさい」カミラは言う。


この女にこれ以上ペースを握らせるつもりはない。俺は直接話を引き戻した。


「神父、人が欲しいなら構わねえ。だが今じゃない。あんたが口を開いたからってすぐ渡せるもんでもない」


「私を拒絶するのか?」


「引き延ばしてるんだ」俺は言った。「こっちのほうが正確だな」


バローロは俺を見つめる。目は変わらず、声も熱を帯びない。


「少なくとも、自分が何をしているかは分かっているようだ」


「最初から分かってるさ」


「そこが問題なのよ」マリアが横から笑みを浮かべて口を挟んだ。「いつだって分かってるのに、相変わらずこのザマ。だから最高なの」


あの長刀を鞘ごと喉に突っ込んでやりたかった。


バローロ神父が片手を上げた。彼女を見もしないで、ごく小さな制止の動作だけ。


マリアは本当に黙った。


怖じ気づいたわけじゃない。


ここで誰にいつ話させるべきかを、彼女も理解しているからだ。


神父が視線を俺に戻す。


「君は教廷を信用していない」


「このラインにぶら下がってる教廷を信用してねえんだ」俺は言った。「本体とは大きく違う」


「その点は同意する」彼は言った。


その一言で、部屋全体が一瞬静まった。


林雨瞳(リン・ユートン)でさえ、一度だけ顔を上げる。


バローロ神父はあの重たい金属製の聖書を手元に少し引き寄せた。鈍器を正しい位置に置き直すような動作で。


「だが君には別の問題がある」彼は言う。「君は彼女を長期的に連れて歩くのに適した人間ではない」


「また始まった」


「始まりではない、事実だ」彼は言った。平坦で、硬い。議論の余地のない報告書を読み上げるような口調だった。「君の戦術判断は合格。現場での対応も合格。暴力行使の境界線は……ギリギリ合格だ。だが君の生活様式、行動習慣、親密さと距離の取り方――どれもが不潔だ」


マリアが横でごく小さく、愉快そうな鼻音を立てた。


彼女はこのパートが大好きだ。


誰かが俺の面前で、こういう評価を叩きつけてくれるのを心底待っていた。


俺は神父を見据えた。


「今、俺の品行査定か?」


「十九歳の生存者を連れて歩くのに、君が適任かどうかを評価している」


「あんたら異端審問局は、いつから保母業に転職したんだ?」


「君みたいな人間が、自分を保護者だと勘違いし始めたあたりからだ」


カミラは口を挟まない。


それは当然だ。ポーランドのこの件は本当に厄介だから。


彼女がこの件に触れたくないのは、見て見ぬふりをしているという意味じゃない。


今の彼女の立場は至ってシンプルだ。


――この爆弾を持って行けるなら、どっちでもいい。


――とにかく、さっさと自分の基地から持ち出してくれ。


だから俺の肩を持つこともない。神父の肩を持つこともない。


ただ、どっちが言葉に力を持っているか。どっちが、この件を自分のところまで爆散させずに処理できそうか。そこだけを、静かに見ている。


林雨瞳(リン・ユートン)は黙って資料をめくり続けた。


無関心じゃない。


誰よりも分かっているからだ。最終的にこれを決めるのは帳簿じゃなく、人間だと。


俺はテーブルの端に手を押しつけた。


「神父、自分だけはきれいみたいな言い方すんなよ」


「していない」彼は言う。「私のほうが君より適任だと言っているだけだ」


「何が適任だ?彼女をローマに連れて行って、別の手続き、別の神父連中、窓もない別の部屋に放り込むのか?」


この一言で、バローロの顔が初めて本当に沈んだ。


怒りじゃない。


もっと硬い何かが、ずっしりと圧し掛かってきた。


「私を汚職にまみれた連中と一緒くたにするのは、侮辱だ」


「なら俺を、彼女に手を出すような人間扱いするのも同じことだろ」


マリアが笑った。


「ああ、ようやく少しはまともになってきたわね」


二枚の鉄が打ち合うのを眺めているような目だった。


エリザヴェータはずっと黙っていた。


壁際に立ち、鞘に収まった刀のように静かだった。だが反応していないわけじゃない。バローロが入室した瞬間から、彼女の全身は張り詰めている。神父の「お前がまだ生きているのは利用価値があるからだ」という態度は、彼女のような存在にとって、面と向かって罵倒されるより、よっぽど胸糞が悪い。


そして今、話題がレイチェルに及んだところで、彼女はついに口を開いた。


「その男の言う通りじゃ」エリザヴェータが冷たく言い放つ。


部屋にいた何人かの視線が彼女に向く。


彼女が見ているのはバローロで、俺じゃない。


「そなたは人を救いに来たのではない」彼女は言う。「接収しに来ただけじゃ。そなたにとって、あの娘はまず証人であり、人間であるのはその次じゃろう」


バローロの上半身がゆっくりと彼女のほうへ向いた。


動作は小さい。


圧力は大きかった。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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