126.人類悪 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
俺が最初に目にしたのは、彼女の顔じゃなかった。
あの星だった。
汚れている。灰色がかっている。亜麻色の古びたスカートの胸元に縫い付けられている。布地はもともと古く、血と薬品の染みと、何年洗っても落ちない汚垢が重なっている。黄色い星は大きくない。だがこういう場所では、どんな標識よりも目に刺さる。
俺は何も言わなかった。
上着を脱いで、そのまま彼女の上に掛けた。
布地が落ちた瞬間、彼女の全身が目に見えて縮んだ。また誰かが何かをしようとしていると思ったのかもしれない。普通の怖がり方じゃない。訓練されて身についた警戒だ。肩が後ろへ引かれ、右手が本能的に自分の前を守り、足も後ろへ引いた。何度も打たれてきた小さな獣が、次に何が起きるかを知っているような動き方だ。
「奴らじゃない」俺は言った。
声は低く。
短く。
彼女は顔を上げて俺を見た。
目が大きい。琥珀色だ。あまりにも覚醒している。こういう場所に閉じ込められているべき人間の目じゃない。灰黒色の短い髪が顔の側面に貼り付いている。耳の下までの長さで、切り揃えられておらず、剃られた後にまた少し伸びたような長さだ。顔は痩せている。頬骨が高い。顎が尖っている。皮膚は紙のように灰白色で、その下に青い血管が透けて見える。
素足だった。
足首が細すぎる。膝に古い傷がある。右手はずっとわずかに曲げたまま、胸の前で守るように構えていて、完全に伸ばそうとしない。
部屋は広くない。
牢房というより隔離区画に近い。壁は新しく補修された白い防水層で、角には安定化ポンプと生命維持の配管が繋がっている。ベッド架は床に固定され、横には拘束帯がある。ベッドの足元には金属のプレートが掛かっている。名前じゃない。番号だけだ。その下にドイツ語の略称が一行。さらにその下に、後から押された黒い印章がある。
エリザヴェータが扉口に立ち、顔色がそれまでより白くなっていた。
スカートの裾から覗く痩せた脚の骨を見て、喉が動いた。だが何も言わなかった。
カミラが入ってきた時、ベッドの頭、壁の角、生命維持設備を一通り確認してから俺を見た。
「生きてるか」
「生きてる」
「歩けるか」
俺は少し身を低くして聞いた。
「立てるか」
すぐには答えなかった。
俺を一度見た。それから俺が掛けた上着をもう一度見た。これがまた別の騙しじゃないかを確かめるように。数秒後、彼女はごくわずかに頷いた。
俺は手を差し伸べた。
体が軽すぎた。普通の人間とは思えないほどだ。手の中で支えているのが人間じゃなく、今にもばらけそうな骨と布の束のように感じた。立ち上がった瞬間、脚がふらついた。右膝がそのまま折れそうになった。俺は素早く支えた。彼女は反射的に振り払おうとした。力はほとんどなかった。
「無理するな」俺は言った。
彼女は何も言わなかった。
ただ呼吸が速くなった。
ニウ・シャオチンが傍らで壁に向かって血混じりの唾を吐いた。
「人、見つけた。行くで」
「行く」俺は言った。
カミラがすぐに続けた。
「撤退手順、今すぐ開始」
誰も疑問を挟まなかった。
この層の目的は、ここで十分に果たされた。
生きた証人を手に入れた。黒い帳簿の糸口も掴んだ。これ以上留まれば、下で死ぬだけだ。
マレクがすぐに命令を下した。
「二組は前進してラインを清掃。三組は資料回収。四組は爆破準備。負傷者は先に中段回収位置へ送れ」
部下の反応は速い。
それが第二隊の価値だ。派手な戦い方じゃない。命令が落ちた瞬間、全員が自分のやるべきことを知っている。
俺は上着を少女の上からもう少し引き上げ、あの黄色い星を完全に覆った。
「エリザヴェータ」俺は言った。「左側を支えてくれ」
彼女は一瞬止まり、すぐに頷いた。
「わかった」
手を伸ばす動作が、いつもより半拍遅かった。丁寧だった。何かを壊してしまいそうに恐れているような手の動かし方だ。少女が本能的に後ろへ引いた。俺はそのまま少女をこちら側へ引き寄せ、廊下に倒れているものが視界に入らないようにした。
「足元だけ見ていろ」俺は少女に言った。
返事はなかった。
だが抵抗も止まった。
カミラは隣の監視兼生命維持室へ向かった。
「ジョウ・シーダー、台帳」
「わかってる」
俺は二人を連れて守衛室と小さな資料室へ戻った。
距離は短い。
だが床は先ほどの戦闘で砕けた死体の破片と黒い血で覆われている。ゾンビが爆発した後、廊下は腐肉の泥を一桶ぶちまけたようになっていた。壁には手榴弾の破片がいくつか刺さっている。照明に照らされ、床全体が薄い油のように光っている。
少女の足は素足だった。
俺は一目見て、後ろの兵士に向かって言った。
「靴」
その兵士はすぐに反応し、自分の装備から予備の軟底布カバーを取り外し、しゃがんで履かせようとした。
少女が全身で後ろへ引いた。目つきが一変した。驚いた鹿が罠を見た時のような目だ。
俺はしゃがんで布カバーを受け取り、彼女の足元に置いた。
「履いてくれ」俺は言った。「床が汚い」
彼女は俺を見た。
二秒後、自分で身を屈め、指先を震わせながらゆっくりと布カバーを履いた。
いい。
自分で動ける。
守衛室に戻ると、カミラはすでに机の上の書類を三つの束に分けていた。
一束目は台帳。
二束目は振込証明、保険証書、修繕名目、輸送支払い記録。
三束目はペーパーカンパニーの登記と代理書類だ。
表面は全部綺麗だ。
慈善。修繕。保存。医療消耗品。歴史修復。物流外注。
汚いのは金の流れ先だ。
一層また一層と重なっている。いくつかの名前は明らかに偽名だ。いくつかの会社の住所は空き地だ。財団、修道会の附属法人、保管委員会が、それぞれ異なる名目で同じ一本の脈に血を送り込んでいる。
俺は数ページ捲った。
全部読む必要はない。
十分だ。
これを外に持ち出せば、眠れなくなる者が出てくる。
「原本は全部持つ」俺は言った。「印章があるもの、署名があるもの、照合できるもの、全部持て」
カミラが頷いた。
「鉄箱も持て」
マレクの部下がすぐに動いた。
台帳、鉄箱、保険証書、寄付名簿、振込の写し——一包みずつ防水回収袋に詰め込んでいく。手回し式の伝票機と横の印章まで持っていく。こういう時に上品なことを言っている場合じゃない。相手を追い詰められるものは全部持つ。
ニウ・シャオチンが扉の外で警戒に立ち、廊下の奥の気配に耳を澄ませていた。
「後ろが動き始めとる」
俺にも聞こえた。
一つじゃない。
たくさんある。
引きずる音。鉄柵を叩く音。鎖が擦れる音。喉が腐った後にしか出ない低い唸り声が、奥からこちらへ少しずつ押し寄せてくる。生きた人間が何かを持って出ようとしていることを、地牢全体が察知して出口へ向かい始めているようだ。
マー・サンニャンが分岐口まで歩き、長槍の穂先を床に当てた。
「手を止めるな」
「マレク」カミラは顔も上げずに言った。「爆薬」
「設置中だ」
マレクが連れてきた爆破手がすでに配置を始めていた。
手当たり次第じゃない。
計画的な封鎖だ。
外扉に二組。
分岐路の角に一組。
左側の大牢区通路に一組。
階段口に予備一組。
B2下行扉の裏にさらに一組。
最後がB1上行と入口建築の主要耐荷重点だ。
どの組も全面崩落を求めていない。
封じるためだ。断つためだ。後から追ってくるものを途中で砕くためだ。
俺はプラスチック爆薬を受け取り、自分の手で守衛室の扉枠内側に押し込んだ。
「導火線を長めに取れ」俺は言った。「ここは今潰せない。俺たちがB2を抜けてからだ」
爆破手が頷いた。
「了解」
カミラが最後の書類束を袋に詰め込み、顔を上げて俺を見た。
「彼女は」
俺は振り返った。
少女は片付けられたばかりの鉄椅子に座っていた。上着が体の大半を覆っている。周囲をきょろきょろ見回すことはない。ただ扉の外の廊下を見つめている。琥珀色の目に涙はない。緩んだ表情もない。ただ深い疲労と、それよりさらに深い警戒だけがある。
エリザヴェータがその横に立っていた。
まだ白い。
だがさっきよりは安定していた。
俺にはわかる。彼女はまだB2とB3で見たものから完全には抜け出せていない。ただ今は、もっとはっきりしたやるべきことができた。守るべきものができた人間は、そう簡単には崩れない。
俺は歩み寄り、しゃがんで少女と目線を合わせた。
「俺の言葉がわかるか」
彼女は頷いた。
動きはごく小さかった。
「これから速く動く」俺は言った。「歩けるなら自分で歩け。歩けなければ誰かが運ぶ。声を出すな。止まるな。わかったか」
彼女は二秒、俺を見つめた。
それからもう一度頷いた。
ようやく声が出た。
酷く掠れていた。長い間まともに話していなかったような声だ。
「……下に、まだいる」
俺は「彼ら」が誰かは聞かなかった。
ここでは関係ない。
重要なのは、彼女が下にまだ何かがいることを知っているということだ。
「だから今すぐ出る」俺は言った。
彼女の唇がわずかに動いた。まだ何か言いたげだった。最後には何も言わなかった。
いい。
今は聞く時じゃない。
遠くから最初の本格的な扉を叩く音が響いてきた。
鈍い。
重い。
全身で鉄扉に叩きつけているような音だ。
一回。二回。三回。
続いて、さらに多くなる。
B3全体が目覚め始めているようだった。
カミラが回収袋を背負い上げた。
「撤退」
その一言で、全員が即座に動き始めた。
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