123.外縁 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
林雨瞳。マレク。ヴィクトリア。爆破手二人。前突組四人。そして俺。
壁に貼ってあるのは一枚の図だけ。
大きな図じゃない。
精巧なジオラマでもない。
ただの実用一辺倒で、残酷なほど簡潔な略図だ。
辺鄙な付属区。
偽装建築。
シュトゥルムシュライター地上火力陣地。
K-7待機。
前突接近ライン。
疑似入口。
地下初期降下ポイント。
カミラが前に立ち、余計な言葉は一切ない。
「今夜接近。夜明けに突入。目標はここ」
彼女はペンで、あの辺鄙な建物を叩いた。
「地上を先に確認。見張りを先に始末。外周を先に封鎖。シュトゥルムシュライターは待機、最初は姿を見せるな。入口の外に固定火力か硬い障害物がない限り、先に撃たせない」
彼女が俺を見た。
「あんたの班が入ったら、最初の目標は死に物狂いで下まで突っ込むことじゃない。構造がまだ生きてるか、扉が扉として機能してるか、中に人間がいるかどうかの確認だ」
最後の二文字を口にする時、語気がさらに重くなった。
「人間がいたら、まずマーキング。連れ出せるなら連れ出す。無理なら、位置を確保してから考えろ。英雄気取るな」
誰も口答えしない。
これは英雄劇じゃない。
地下施設攻略だ。
彼女はマレクを見た。
「地表で異常な外部増援が近づいたら、まず食い止めろ。食い止められない時だけ、シュトゥルムシュライターに火を吹かせろ」
「了解」
「林雨瞳、通信は?」
「メイン一回線、予備一回線。地下は全通保証しない。接近ライン沿いに短距離中継を設置するけど、深く入りすぎれば、やっぱり通信が途絶える」彼女は俺を見る。「だから上で私が扉を開けてくれるなんて思わないで。扉は自分で見る」
「わかってる」
ヴィクトリアが最後に口を開いた。
彼女は新しい薄い冊子をテーブルに置く。
『サルでもわかる』第一版補足ページ。
「シュトゥルムシュライターが今夜やることは三つだけ」彼女は言う。「破る、制圧する、守る。四つ目はない。あの子を地下に降ろそうとする奴がいたら、私が先にそいつの脳みそをシャットダウンしてやる」
誰も疑わない。
このルールは今や鉄の掟になっている。
ブリーフィングが終わる頃には、外はすっかり暗くなっていた。
俺たちは待たなかった。
こんな面倒な任務は、長引けば長引くほど変数がデカくなる。
車列は大灯を点けずに出発した。抑えた前照灯と赤外線遮蔽だけで走る。K-7は中段。シュトゥルムシュライターはその上に縛り付けられ、幌と闇に押さえ込まれた鉄の怪物のようにそこにいる。前後の護衛車も灯火を絞っている。ひたすら南へ。大通りじゃない。もっと辺鄙で、もっと汚くて、誰も余計な質問をしてこない道を選んで走る。
俺は先頭車に乗っている。
助手席はマレクの部下。林雨瞳は後方の通信席からリモートで繋がっている。カミラの車は車列の側後方を押さえている。隊形は短い。十分に速く。十分に硬く。そして十分に、裏の仕事をしに行く連中らしい格好をしている。
目標区域に近づくほど、口数が減る。
最後の二十キロに入ると、車内には無線確認の短い声とエンジン音だけが残った。
「前方、灯火なし」
「林線、異常なし」
「外周、民間活動を確認せず」
「K-7、固定正常」
「シュトゥルムシュライター、待機正常」
一つ一つの報告が、人間を井戸の縁へと送り込んでいくようだった。
夜明け前、俺たちは最終接近ポイントに入った。
車列は林線の遮蔽区域後方で停止した。
K-7を安定させる。固定点をもう一度確認。シュトゥルムシュライターは荷台から降ろさない。まだ表に出す時じゃない。ヴィクトリアと整備士二人が地上に残り、冷却ラインを繋ぎ、武装を確認し、命令を待つ。カミラの部下が外へ散開し、第一陣の封鎖を開始する。
俺は林の縁に立ち、あの建物を見た。
本当に目立たない。
低い。灰色。ボロボロ。とっくに取り壊されるべきだったのに、誰も動かすのが面倒で放置されてきた古い整備棚のようだ。横の短いコンクリート地坪は割れている。フェンスは半分倒れている。もう少し遠くでは、木立が視界の角度をきれいに断ち切っている。昼間に主区域の方向から見ても、価値のない付属の隅っこにしか見えないだろう。
いい。
つまり相手は馬鹿じゃない。
そして下に埋まっているものが、これだけ長く隠す価値があるということだ。
カミラが俺の横に来て、声を落とした。
「シュトゥルムシュライターはここで待機させる」彼女は言った。「あんたたちが下に入ったら、地上は私が守る」
俺は頷いた。
「入口を確認するまで、出すな」
「わかってる」
彼女はあの建物を見て、もう一言付け加えた。
「下に本当に生きてる人間がいたら、頭を冷やしておけ」
「いつも冷えてる」
「あんたは顔だけ冷えてる時がある」
それだけ言って、彼女は地上指揮位置へと戻っていった。
いい。
それが彼女のやり方だ。言うべきことを言ったら、あとは行動で示す。
俺たちはすぐには前へ出なかった。
まず見る。まず聞く。まず外周からの報告を待つ。
三分後、最初の報告が入った。
「外周、見張り一名。処理済み」
さらに二分。
「建物東側、窓は完全に封鎖。灯火なし」
もう少し経って。
「後方に人為的な清掃痕を発見。新しい。二日以内」
十分だ。
この場所は死んでいない。
俺は手で合図を出した。
前突組、前へ。
四人。低姿勢。左右に分かれる。影と地坪の亀裂に沿って建物に張り付くように接近する。爆破組は俺の半歩後ろ。回収位置はさらにその後ろ。全員の通信は絞られ、呼吸音さえ聞こえる。
扉は思ったより普通だった。
鉄扉。塗装が剥げている。錆びている。外側には、とっくに緩んだ封条が一本。長年誰も触っていないように見える。
だからこそ気持ち悪い。
出来すぎている。
俺はしゃがんで扉の底を触った。
埃はある。
だが厚くない。
つまりこの扉は数十年開いていないわけじゃない。開けるたびに、誰かがまた古く見せ直しているだけだ。
俺は横にずれ、視線を扉枠の下の角に落とした。
新しい痕がある。
小さい。
だが新しい。
俺は手を上げ、爆破手に待機を指示した。
もう一度見る。
左側の壁面。排水口。地坪の亀裂。そして建物後方の、本来荒れているはずなのに均一すぎるほど綺麗な砂利帯。
「扉はここだけじゃない」俺は小声で言った。
隣の人間は聞き返さなかった。
彼らも見えていたからだ。
本当の入口は扉の奥じゃないかもしれない。
この扉はむしろ、目くらましだ。
俺は部下を連れて建物の後方へ回った。
そこはさらに暗い。風も冷たい。壁際に、整備車両のバック用と思しき下がったコンクリート地坪の一区画がある。今は汚水と落ち葉が溜まっているだけに見える。
だが落ち葉の積もり方がおかしい。
中央が薄く、両側が厚い。
まるで下から何かが時々押し上げているかのように。
俺はしゃがんで、ナイフの先で湿った葉と泥を一層剥がした。
下にあるのは割れた地面じゃない。
継ぎ目だ。
人工的すぎるほど整然としている。
「見つけた」俺は言った。
爆破手が近づいて一目見て、目つきが冷えた。
大きな扉じゃない。
地坪の蓋板だ。
古く見せ、汚く見せ、廃棄整備帯の一部に見せかけている。その下にこそ、生きた道がある。
俺は手を上げ、地上に通信を繋いだ。
「入口確認」俺は言った。「後方。偽装地坪蓋板。正面扉はダミー」
イヤホンの中で短い沈黙があった。
それから林雨瞳の声が入る。
「図面の推定通り」
続いてカミラ。
「シュトゥルムシュライター、その場で待機継続。地上外周、締め込み開始。そっちは扉を開けろ」
「了解」
通信を切り、後ろの数人を振り返った。
誰も何も言わない。
爆破手はすでに半身を落とし、縁を探り、カム錠なのか油圧咬合なのかを確認し始めている。前突組の二人は銃を構え、前後の死角を睨んでいる。もう一人がマーキングロープを少し繰り出した。動きは手慣れている。そして速い。
俺はその偽装地坪の上に立ち、かすかな匂いを嗅いだ。
泥じゃない。
草じゃない。
もっと下から滲み上がってくるものだ。
乾いている。冷たい。機械油と古い空気の匂いが混じっている。
何年も前に封じられた地下倉庫のようだ。換気はされ続けているが、本当の意味で外の空気を吸ったことがない場所の匂い。
爆破手が顔を上げて俺を見た。
「開けられます。爆破は不要。少なくとも最初の一枚は」
「どのくらいかかる」
「二分」
「やれ」
彼は頷いて、すぐに作業を始めた。
俺は半歩下がり、銃口を下げ、今しがた削り出された継ぎ目を見つめた。腹の中ははっきりわかっていた。この瞬間から、全ては推測じゃなくなる。
上は地表。
後ろにはシュトゥルムシュライター。
もう少し遠くにK-7と撤退ライン。
カミラが入口を守っている。
ヴィクトリアがあの鉄の怪物を見張っている。
林雨瞳が上で俺たちのために図面を読んでいる。
そして俺たちは、下へ行く。
それだけは、誰も代わりにやれない。
金属の内側から、かすかな緩む音が一つ。
続いて、二つ目。
蓋板の縁がゆっくりと、一筋の隙間を開けた。
下は深く黒い。
冷気が内側から吐き出されてくる。
俺はその黒い隙間を見て、手を上げた。
「潜るぞ」
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「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




