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120.二度目の交渉  2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

うなずく。


「いい。ただし、拒否には理由が要る。気が向かないだけじゃ通らない。」


「当然。」彼女は言う。


俺は彼女を見た。


「それから。」


「言って。」


「セットで欲しいものがある。」俺は言う。


「どんなセット?」


「クレーン車。輸送。随行工兵。基本整備権限。」俺は言う。「シュトゥルムシュライターは走って戦場に行くもんじゃない。今日あんたも見ただろ。あの大型クレーン車がなければ、採石場に行くだけでも一苦労だった。実戦で使用責任をこっちに負わせるなら、それに見合った後勤支援が要る。」


マレクが眉をひそめる。


「ずいぶん欲張るじゃないか。」


「欲張りじゃない。常識だ。」俺は言う。「嫌なら、あいつに二十六キロ自力で歩かせてみろ。」


林雨瞳(リン・ユートン)が隅で低く笑った。


初めてだ。


短く。


何かに同意しているようでもあり、現実をぶつけ合う二人の男を眺めているようでもある。


カミラは驚いた様子もない。


「専用クレーン車が欲しいと。」


「ああ。」


「それが、もう一本命綱を渡すのと同じ意味だとわかってる?」


「わかってるから言ってる。」


彼女はしばらく黙った。


それから手を伸ばし、テーブルの二番目の資料を取り上げ、数ページめくってから閉じる。


「クレーン車を渡すなら、技術資料は出すだけじゃ済まない。こっちが使える形に整理してもらう。」彼女は言う。「ドイツ語の紙束と工学略語をテーブルに放り出して、後は自分たちで解読しろというのはナシ。」


これは最初から計算に入れていた。


「いい。」俺は言う。「原資料は原資料。整理版は別に作る。」


「誰が作る。」


俺が答える前に、ドアが二度叩かれた。


返事を待たずに、扉が半分開く。


ヴィクトリアが立っていた。


着替えていない。まだ作業服のまま。袖口には油。指の関節も黒い。シュトゥルムシュライターの膝関節の横から直接歩いてきたみたいだ。まず俺を一瞥し、それからカミラを見る。


「資料の話をしてると聞いた。」


カミラが眉を上げる。


「耳が早いわね。」


「アタシを外して進める話じゃないから。」


彼女は誰に招かれることもなく入ってきて、近くの椅子を引いて座った。動作は小さいが、態度は明確だ。


傍聴しに来たわけじゃない。


当事者として口を出しに来た。


マレクが眉をひそめる。カミラは止めない。


シュトゥルムシュライターの話からヴィクトリアを外すのは、戦車の話からエンジンを外すのと同じくらい馬鹿げているとわかっているからだ。


ヴィクトリアは自分で書いた手稿の束をテーブルに置いた。


原資料よりずっと薄い。


でも、恐ろしいほど密度が濃い。


「原資料はそっちで持っていい。」彼女は言う。「でも、これを本当に修理可能で、教育可能で、手順を再現できるシステムにするには、アタシが再編する必要がある。」


カミラが彼女を見る。


「どの程度まで再編する気?」


ヴィクトリアは淡々と言った。「猿でもわかるレベルまで。」


部屋がしばらく静まった。


緊張からじゃない。


この一言があまりにも直球で、実に彼女らしかったからだ。


林雨瞳が視線を落とし、口元がはっきりと緩む。


カミラの目にも、わずかに笑みが走った。


マレクは、この女が自分も「猿」の枠に入れているのかと初めて疑った顔をする。


ヴィクトリアは誰の表情も気にせず、そのまま続ける。


「三バージョン作る。」彼女は指を三本立てる。「第一版、操縦と緊急停止。第二版、日常整備と武装搭載。第三版、高度な修理と故障診断。各バージョンとも、オリジナルのドイツ語表記、対応パーツ位置、注意事項、絶対に触ってはいけない場所を明記する。」


一番上のページをめくって、テーブルの中央に押し出す。


シュトゥルムシュライターの胸部と腰部の簡略断面図だ。赤ペン、青ペン、黒ペンで層別に標記されている。それぞれに極短い注記がある。外せる箇所。触れてはいけない箇所。触れたら死ぬ箇所。


実用的だ。


俺の好みでもある。


カミラは指の関節でその図を叩いた。


「期間は。」


「第一版だけなら二日。」ヴィクトリアは言う。「三日あれば、あなたの工兵たちでも読み違えないレベルにできる。全部仕上げるなら一週間以上。」


「遅い。」


「じゃあ自分で原文を読めばいい。」


カミラは彼女を見た。


彼女も見返す。


この二人の性格は大きく違う。だが共通点がある。


言った言葉は飲み込まない。


先に折れたのはカミラだった。


「二日以内に第一版を出して。」


「いい。」ヴィクトリアは言う。「ただし条件がある。」


俺の心がわずかに動く。


来た。


カミラも驚かない。


「言って。」


「シュトゥルムシュライターの技術裁定権を、明文化して残すこと。」ヴィクトリアは言う。「口約束じゃダメ。そうしないと、後で誰かが武器の必要性を盾にアタシを押し切って、未調整の機体を車に押し込みかねない。死ぬのはパイロットであって、命令した人間じゃない。」


この言葉を、彼女は俺を見るでもカミラを見るでもなく、テーブルの簡略図に向かって言った。


工学の鉄則を告げるみたいに。


カミラはうなずく。


「妥当ね。」


「それから。」ヴィクトリアは続ける。「メイン反応炉とBetzare-Ritus(ベツァレ・リトゥス)補正コアの開封権は、アタシが立ち会うときだけ。例外なし。」


マレクが口を挟む。


「権限を握りすぎだ。」


ヴィクトリアが振り返って彼を見た。


研ぎたてのドリルみたいに冷たい目で。


「格納庫ごと爆発させたいなら、今すぐあなたに権限を渡してあげる。」


マレクは黙った。


馬鹿じゃないからだ。


カミラは今度は止めず、そのまま話を引き取る。


「いいわ。技術裁定権はあなたに。メイン反応炉と補正コアの開封は、あなたの立ち会い必須。」そう言ってから、また俺を見る。「話を戻しましょう。資料と使用権の交換。技術版の再編はヴィクトリアが担当。で、あなたはまだ何が足りない?」


「大型クレーン車一台。」俺は言う。


カミラはついに、ずっと火をつけていなかった煙草を口にくわえ、ライターで火をつけ、一口吸った。


煙は薄い。


その煙越しに俺を見る。


「条件を積み上げるタイミングが絶妙ね。」


「次に機体があって足がない状況を避けたいだけだ。」


「完全にあなた専用にしたいと。」


「シュトゥルムシュライターと紐付けた運搬手段が欲しい。」俺は言う。「普段はここに置いていい。整備もそっちでやってもらっていい。でも機体が出動するときは、一緒に出る。そのとき『車は別の用途に使ってる』とは言わせない。」


カミラはすぐには答えなかった。


煙を吸って、ゆっくり吐き出す。


彼女が計算しているのはわかる。車一台の話じゃない。その車が意味する独立性を計算しているのだ。


運搬手段が紐付けられた瞬間、シュトゥルムシュライターは彼女が格納庫に閉じ込めておける機体じゃなくなる。


本当の投射能力を持ち始める。


こちら側の手が、一段前に伸びるということだ。


どんな指揮官でも、簡単には頷けない条件だ。


そのとき、林雨瞳が静かに口を開いた。


「渡せばいい。」


全員が彼女を見る。


彼女は椅子の背にもたれ、天気の話でもするような口調で言う。


「渡さなければ、彼は次もまた別の場所でこの穴を埋めるだけ。あちこちでその場しのぎのボロ車を探させるより、こっちで一台縛りつけた方がいい。少なくとも規格、ルート、車両、人員は、こちらの手の内に残る。」


眼鏡を押し上げる。


「それに、クレーン車がなければシュトゥルムシュライターの機動半径は机上の空論。投資の半分を四番庫に死蔵するのと同じ。」


認めざるを得ない。


彼女の言い方は、俺よりよほど商売人らしかった。


カミラは林雨瞳を一瞥してから、また俺を見た。


「クレーン車を一台渡すということは、シュトゥルムシュライターを一戦だけ貸し出すレベルじゃなくなる。」彼女は言う。「あなたの今後の任務計画に本格的に組み込まれるということ。」


「最初からそのつもりだ。」


「だから、もう一つ条件を足す。」


「聞こう。」


「シュトゥルムシュライターに関わる全ての作戦記録、損耗、故障、実戦映像。全部こちらに戻すこと。」カミラは言う。「あれはあなた一人の刃じゃない。共同作戦資産よ。使った者が記録する。戦った者が報告を出す。」


「いい。」


「それから、私の許可なしに、第三者への展示、譲渡、貸与、パーツの流出は一切禁止。」


「それもいい。」


彼女は俺を見て、答えが早すぎないか確認するような目をした。


だが、これらは全部筋の通った条件だ。現実に逆らう人間は、大抵長生きしない。


彼女は最後に煙草を押しつぶして消した。


「じゃあ、最後の一本。」


「何だ。」


彼女はわずかに前傾姿勢になり、両手を組んでテーブルに置いた。


「シュトゥルムシュライターは、あなたの私兵じゃない。」彼女は言う。「優先使用権はある。でも、A.K.-DUCHの存亡がかかったときは、A.K.-DUCHを優先する。これは動かせない。」


この条件は、今までのどれよりも重い。


主権の話だからだ。


彼女が絶対に引かない一線でもある。


俺は彼女を見た。


彼女も俺を見る。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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