119.動くことと、実戦は違う 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「優先順位をつけて。」
「第一、腰部補正再計算。第二、右腕反動処理。第三、左腕供給ライン再構成。第四、膝関節と足裏。」ヴィクトリアは言う。「残りは後回し。」
林雨瞳が口を開く。
「外周、尾行なし。熱源監視、異常なし。ただし採石場、昼間に人が入る。弾痕、焼損、爆破痕、完全除去不可。」
「猶予は。」カミラが問う。
「一日。二日持てば運がいい。」
カミラはうなずく。
「あの場所は廃棄。今後使用禁止。」
マレクが損耗表をテーブルに滑らせる。
「本日テストでの弾薬消費は想定超過。四連装MG制圧火力は見事だが、弾の減り方が狂犬並み。肩部ロケットポッドで一回分配ミス。火炎モジュール使用量は管理範囲内だが、供給ループが危険すぎる。右腕発射ラックについては——」
一拍置いて続ける。
「——テスト場以外では、あの前に人間を立たせたくない。」
俺は表を取って一瞥する。
数字は正直だった。
正直すぎて頭が痛くなる。
シュトゥルムシュライターは節約して使うタイプじゃない。日常的に引っ張り出す代物でもない。一度動くたびに、補給車列と技師の群れと、口を閉じ続けなきゃいけない人間の山がぶら下がる。
カミラが俺を見る。
「あなたは。」
表を置く。
「今日、二つはっきりした。」俺は言う。「ひとつ、あれは本当に正面を一帯ごと潰せる。もうひとつ、一回ミスれば、こっち側もまとめて潰される。」
「続けて。」
「だから、あれを士気向上の見世物にしようとするやつがいたら、先にそいつの脚を折る。」俺は言う。「使う場面は限定すべきだ。突破。圧制。ブレイクスルー。重装目標排除。それ以外は割に合わない。」
カミラは背もたれにもたれ、二秒俺を見つめる。
それからうなずく。
「アタシの考えと同じ。」
ブリーフィングはすぐ終わった。
というより、話せる部分が終わった。
残りは作業の割り振りだ。
クレーン車リアサスペンション担当。代替パーツ調達。採石場痕跡処理。映像記録整理。外周封鎖プラン作り直し。それから、命令なしにシュトゥルムシュライターに近づくバカを出さないよう四番庫を監視する役。
散会する頃には、外はすっかり明るくなっていた。
基地が昼のリズムに入る。遠くで誰かがコンテナを運び、誰かが交代し、誰かが食堂で皿を割っている。世界はまた、人間が住む場所の顔をしていた。
食堂には行かなかった。
四番庫に回った。
入口の哨兵が俺を一瞥し、道を空ける。
中は静かだった。
冷却機の低いうなりだけが響いている。
シュトゥルムシュライターは照明の下に立ち、全身にケーブルを繋がれていた。集中治療室で生命維持装置に繋がれた患者みたいだ。肩。背中。腰。脚。各所にタグが貼られている。赤。黄色。白。それぞれが一つの問題だ。
ヴィクトリアはまだいた。
左膝のそばにしゃがんで外装を外している。
俺が入ってくる音を聞いても、振り返らない。
「寝るべきだろ。」
「あなたもね。」
「アタシはまだ寝られない。」彼女は言う。「今寝たら、頭の中のこれが全部散らばる。」
俺は隣にしゃがんで、細いオイル筋の源を覗き込む。
膝外側のジョイント部から滲んでいる。今は大事じゃない。少なくとも即座に脚が折れるレベルじゃない。だが放置すれば、いずれもっと大きな問題になる。
「今日の乗り心地は。」俺は訊く。
そこで彼女が顔を上げる。
「技術的な話? それともアタシ自身の話?」
「両方。」
彼女は視線を落とし、外したナットをトレイに置く。
「技術的には、機嫌の悪い死体を運転してる感じ。一応指示は通るけど。」彼女は言う。「あいつが何をしたいかはわかる。こっちの命令もギリギリで受け付けてくれる。でも速度が少し上がるか、旋回が一つ増えるか、地形が変わるか、そのどれかが来た瞬間、あいつは自分のやり方で答え始める。」
「おまえ自身は。」
「アタシ?」彼女は少し考える。「疲れた。でも、もう一回乗りたい。」
危険な言葉だ。
俺は彼女を一瞥する。
彼女もわかっている。
だから一言足す。
「勘違いしないで。イカれてるからじゃない。今日、あいつが本当は何になれるか、少し見えたから。」
俺は何も言わなかった。
彼女もそれ以上説明しなかった。
武器を見て、火力しか見えない人間がいる。
武器を見て、構造が見える人間がいる。
ヴィクトリアは後者だ。
彼女は立ち上がり、脇の作業台に歩いて、油の染みついた草図を一枚引っ張り出し、俺の前にパンと置いた。
「ここを見て。」彼女はシュトゥルムシュライターのバックパックと腰部の接続部分を指さす。「この補給ルートを作り直して、右腕の反動吸収パーツを換えれば、次のラウンドはもっと安定する。その先は、肩のロケットポッドを二モード化したい。全弾斉射。分列発射。手動オーバーライド。それから——」
彼女は二枚目を引き抜く。
「——クレーン車も改造が要る。今の版は運べるだけ。速く運べない。急旋回も無理。二次固定架と、横方向のリミッターが必要。」
俺はその線の束を眺めた。
びっしりと描き込まれている。新しい戦場の地図みたいだ。
「もう改造の算段か。」
「他に何があるの。」彼女は目を上げる。「きれいに磨いて、格納庫で展示品にでもする?」
「カミラが大改造を許すとは限らない。」
「あの人が賢いなら、許す。」ヴィクトリアは言う。「今日あなたも見たでしょ。シュトゥルムシュライターは今、動けるだけ。使い物になるまでにはまだ遠い。」
少し間を置いて、付け足す。
「でも、あなたが先に生きて必要なものを手に入れないといけない。」
「何が要る。」
「パーツ。時間。それから、使用権。」
最後の三文字を、彼女はさらりと言った。
だが釘が木に打ち込まれるみたいに、真っ直ぐ刺さった。
俺は彼女を見た。
彼女も俺を見た。
格納庫の白い照明が彼女の顔を照らし、その蒼白さと硬さを際立たせていた。暗示しているわけじゃない。ただ事実を述べているだけだ。
シュトゥルムシュライターはここにある。
技術資料もここにある。
でも、それはこいつがもう俺のものだという意味じゃない。
少なくとも、こいつが俺の意図通りに戦場に出てくれるという意味でもない。
俺はゆっくり立ち上がり、あの無言の鋼鉄の化け物に視線を向けた。
冷却の霧の中に立っている。まだ値段の決まっていない軍需取引みたいだ。
「手伝ってくれるか。」俺は訊く。
ヴィクトリアは視線を落とし、草図を折り畳み直した。
「こいつを動かし続けられる人間を、アタシは手伝う。」彼女は言う。「ただの置物にするやつには、見事に失敗してもらう。」
十分に直接的だ。
実に彼女らしい。
俺はうなずいた。
「なら、まずおまえの『猿でもわかる版』を書き上げろ。」
彼女が初めて、本当に笑った。
薄く。
「猿でもわかるからって、猿が操縦できるわけじゃない。」彼女は言う。
「まず理解する。それから先の話だ。」
彼女は短く返事をして、また膝の外装を外す作業にしゃがみ込んだ。
俺はそれ以上邪魔をしなかった。
四番庫を出るとき、頭の中に残っていることは一つだけだった。
シュトゥルムシュライターは、拾ってきた戦利品じゃない。
これから全員が目をつける資産だ。そして、交渉の切り札でもある。
切り札というのは、勝手にこっち側に歩いてきてくれるものじゃない。
交渉が要る。
交換が要る。
テーブルの上のものを一つずつ押し出して、欲しいものを一つずつ引き寄せる。
俺は廊下を進んだ。
照明は白い。
壁は冷たい。
足音がコンクリートの床に響く。一歩、また一歩と、カウントダウンみたいに。
カミラも計算しているのはわかっている。
今日彼女がシュトゥルムシュライターを見ていた目は、機械を見る目じゃなかった。まだ誰の手に収まるか決まっていない刃を見る目だった。
それでいい。
彼女も計算しているなら。
この話には、まだ続きがある。
俺は寝床には向かわなかった。
そのままブリーフィングルームへ続く廊下に足を向ける。
待てないものがある。
特に、全高三メートルで四連装機関銃とロケットポッドを背負った鋼鉄の化け物が、俺たちの基地で冷却液を飲んでいる今は。
カミラと話をつける時間だ。
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