118.試運転 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
一歩目で斜面に踏み込んだとき、足裏のグリップがさっきよりさらに落ちた。砕石が滑り落ち、下半身全体がわずかに横滑りする。ヴィクトリアは即座に歩幅を縮め、より保守的な登坂リズムに切り替えた。
二歩目。
三歩目。
四歩目。
ぎりぎり安定を保っている。
最初の排水溝を跨ごうとしたとき、問題が腰から先に出た。
溝が広すぎるからじゃない。脚を上げたとき、Betzare-Ritusが全体の有効重量を軽くしたせいで、本来どっしりした「踏み出し」が少し速くなりすぎた。この「速すぎ」は平地では武器になるが、障害地形では厄介だ。脚が積極的すぎると、着地点が少しでもずれた瞬間、機体全体がより悪い角度に押し込まれる。
案の定、左足の着地点がずれた。
半足分ほど。
それで十分だった。右腰の補正が完全に緊張する。
シュトゥルムシュライターの上半身が右斜め前に傾いた。
今度は小さな揺れじゃない。
全員の目に見えた。あの一瞬、ヴィクトリアの反応が半テンポ遅れていたら、全高三メートルの鋼鉄の化け物が斜めに溝へ突っ込んでいた。
「止まれ——」俺が言いかけたときには、彼女はもう修正に入っていた。
力任せに引き戻したんじゃない。
まず右脚を半歩引いて骨盤と重心を再整列させ、それから左脚を溝の縁に沿って外側に振り出し、強引に安定圏に押し戻した。全過程は一秒強。だがその一秒間、シュトゥルムシュライターの外装、リンク、油圧ライン全部が、極めて不快な軋み音を立てた。
そして、踏みとどまった。
採石場全体が二秒間静まり返る。
俺は自分が息を吐いていることに気づいた。
林雨瞳がイヤホンの向こうで低く言った。
「ギリギリ。」
「わかってる。」ヴィクトリアが返す。
声はまだ安定している。ただ、さっきより少し冷たくなっていた。
シュトゥルムシュライターは最終的に障害エリアを歩き切った。
だが、きれいに歩き切ったわけじゃない。未成熟な補正、グリップ不足、慣性の問題を、パイロットが力技で全部押さえ込んで、ようやく渡り切った。
主エリアに戻ると、それ以上の追加テストはしなかった。
ヴィクトリアが自分で止めた。
「十分。」彼女は言う。「今日のデータはこれで足りる。」
カミラは反対しなかった。
俺を一瞥してから、記録板に並んだ問題のリストを見た。
「クレーン車に撤収。」彼女は言う。
シュトゥルムシュライターが向きを変え、ゆっくりクレーン車へ戻っていく。
この区間では新しい問題は出なかった。ヴィクトリアが完全に出力を絞り、限界に近い動作を一切させなかったからだろう。機体がスロープを踏んで荷台に固定されるとき、テスト組の誰もほっとした顔はしていなかった。疲れていないからじゃない。今見たものをまだ全員が消化中だからだ。
強い。
そして問題だらけだ。
鉄の棺桶よりずっと上等だ。
鉄の棺桶よりずっと手がかかる。
全員がそれを今日、はっきりと理解した。
ヴィクトリアがコクピットから降りてきたとき、足取りは明らかに乗り込む前より重かった。
怪我じゃない。長時間の高強度制御の後、体がまだ余震を消化している状態だ。最後の段に降りたとき、手すりを掴む手が一秒余計に止まった。俺は手を貸さなかった。今どれだけ疲れているか、そういう形で気づかせる必要はないとわかっていたからだ。
着地すると同時に、彼女は髪を後ろに掻き上げ、そのまま作業台へ歩いた。
カミラが先に口を開く。
「結論。」
ヴィクトリアが止まって振り返る。
「戦える。」彼女は言う。
「それから。」
「歩行補正が未成熟。腰の慣性管理に問題あり。足裏グリップパターンの変更必須。ロケットポッドの分列制御は作り直し。右腕の反動過大。火炎モジュールの供給回路も再処理が要る。それと——」彼女は間を置いて、さっきの障害地形を指さした。「今のこいつは、アタシが機嫌悪いときに、誰かが勝手に乗り回すものじゃない。」
まったく容赦のない物言いだ。
だがカミラは反論しない。
今日のテストランで、全員がすでに一通り教育を受けていたからだ。
彼女はもう一つ訊いた。
「戦場に出せる?」
ヴィクトリアは彼女を見た。
「出せる。」彼女は言う。「ただし、アタシが選んだ戦場に限る。」
この一言は重い。
シュトゥルムシュライターが「使えない」から「どう使うか」に変わったということだからだ。その差は大きい。
カミラはうなずいた。
それ以上は追わない。
こういうときに一番バカなのは、技師に自分でも信じていない安全保証を言わせることだと、彼女はわかっている。
俺は作業台に近づき、問題の一覧を眺めた。
歩行時偏移。
腰部補正過剰。
急停止時慣性遅延。
足裏グリップ不足。
右腕反動超過。
ロケット分列制御要件。
火炎モジュール供給逆流。
障害越え時着地修正マージン不足。
いい。
本物の兵器ってのは、こういう顔をしているもんだ。
完璧じゃない。
問題だらけだ。
そしてその問題は一つ一つが、こっちが一番頼りたい瞬間に、思い切り牙を剥いてくる。
それがかえって俺を安心させた。
見えている問題なら、直せる。一番厄介なのは、まだ姿を見せていないくせに実戦でいきなり部隊全員を道連れにするやつだ。
工兵がシュトゥルムシュライターの外部拘束を補強しに近づく。整備士がクレーン車の荷台に今回の乗降で新たな変形が出ていないか確認し始める。林雨瞳が通信網を徐々に畳んでいく。外周護衛班がエリアクリアを報告する。エリザヴェータと葉綺安も両翼から戻ってきた。靴の底には採石場の嫌な灰白い粉がついている。
エリザヴェータはシュトゥルムシュライターを見て、それからヴィクトリアを見た。
「で、結論はどうなったのじゃ?」彼女は訊く。
ヴィクトリアは顔を上げずに図面に書き続ける。
「結論は、まだ優雅な動き方を覚えてないってこと。」
エリザヴェータはうなずく。
「じゃが、人殺しは十分に心得ておるようじゃな。」
「その部分に関しては、オリジナル設計は期待を裏切らなかった。」ヴィクトリアは言う。
牛小琴は今日来ていない。シキもだ。それでよかった。大きな動きに感情を引きずられやすい二人がいない分、現場がすっきりしていた。このテストに必要だったのは熱気じゃなく、記録だ。
カミラが双眼鏡を畳み、俺のそばに来た。
「どう見た。」
「思ってたより良かった。」俺は言う。
「思ってたより厄介でもある。」
「それは当然だ。」
彼女は黙った。
ただ、クレーン車の上で再び拘束されたシュトゥルムシュライターを見つめている。朝の光がすでに採石場全体に広がり、その輪郭をくっきりと浮かび上がらせていた。装甲。肩のポッド。給弾バックパック。両腕の火器。どれもが、こいつは人を脅かすためのものじゃないと告げている。前に押し進むためのものだ。
だがカミラが見ているのは明らかに火力じゃない。
価値を見ている。
リスクも見ている。
「昨日あなたたちが持ち帰ったのは、兵器一つじゃない。」彼女が不意に言った。
「じゃあ何だ。」
「問題一式よ。」彼女は言う。
俺はうなずく。
「いい代物ってのは、そういうもんだ。」
彼女は、意外にも薄く笑った。
「あなたがそう言うと思ってた。」
そう言って、撤収命令を出しに向かった。
車列が戻る前に、ヴィクトリアは現場の記録を全部まとめ、三つの束に分けた。
一つは純粋な機構問題。
一つはクレーン車輸送の問題。
一つは今後の戦術運用制限。
三つ目の束を抜き出し、俺の手に押しつけた。
「これ、あなたが持っておいて。」
俺は目を落とした。
一行目はシンプルだった。
【不適合環境】深泥地・狭隘路地・崩落リスク地下・耐荷重不明床面。
その下に備考が続く。
【優先運用環境】開けた地形・工業地帯・障害物突破・半開放斜面。
【禁止思考】万能兵器扱い。
【推奨思考】高価で、機嫌が悪くて、でもよく噛みつく重装突撃獣扱い。
読み終えて顔を上げる。
「これも猿版か。」
「あなた用バージョン。」彼女は言う。
「猿版はもっとシンプル?」
「もっと凶悪。」
俺はその紙を仕舞った。
「おまえ自身の結論は。」
ヴィクトリアは残りの二束を工具箱に突っ込み、二秒置いてから口を開いた。
「戦える。」彼女は言う。
今日すでに一度聞いた言葉だ。
だが、続きがあるのはわかっていた。
案の定、彼女はクレーン車上のシュトゥルムシュライターを見た。目は冷たい。自分が檻から出してまた押し込んだ獣を見る目だ。
「でも、まだアタシたちのものになりきれてない。」
この一言が落ちた瞬間、第121章の本当の結論が出たとわかった。
成功じゃない。
失敗でもない。
確認だ。
シュトゥルムシュライターが「拾ってきた化け物」から「飼い続け、改造し続け、戦場に送り続ける価値のあるもの」に変わったという確認。
その代償として、今日から俺たちは、こいつを本当に自分たちのものにする方法を学び始めなければならない。
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