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118.試運転 1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

車列が基地を出たとき、夜はまだ明けていなかった。


真っ暗じゃない。夜明け直前の、一番冷たくて、一番薄くて、一番縁起の悪い灰色だ。車のライトは全部最低限まで絞ってある。走行に必要な光だけ残して。先導車が前で道を開き、後ろの護衛車二台が低床クレーン車を挟み込んでいる。俺は二台目の護衛車に座っていた。窓は閉めているのに、後ろのクレーン車のシャーシが路面の起伏で立てる鈍い音がはっきり聞こえる。


ドン。ドン。ドン。


一発ごとに思い知らされる。後ろに積んでいるのは、荷物じゃない。


シュトゥルムシュライターだ。


今はクレーン車の上に伏せている。メイン拘束はロックされ、胸部と背面の固定架が重量を全部受け止めて、外部冷却とスタンバイ電源のインターフェースが側面に繋がっている。外から見れば、祭壇の台車に縛りつけられた鋼鉄の死体みたいだ。でも、ヴィクトリアが座り込んでメイン起動を押した瞬間、こいつはその「死体」って言葉を自分から叩き落とす。


林雨瞳(リン・ユートン)がイヤホン越しに、順番に通信確認を取っている。


声は揺れない。


「一号車、応答。」

「二号車、応答。」

「クレーン車班、応答。」

「外周観測班、応答。」

「北高地狙撃班、応答。」


返ってくる声はどれも短い。乾いている。無駄がない。


いい。テストランで一番まずいのは、空気が緩むことだ。緩んだ瞬間、連中はシュトゥルムシュライターを珍しい見世物として眺め始める。でもこれは展示じゃない。テストだ。テストというのは、何が自分を殺しにくるかを探し出す作業だ。


俺は首をひねって後方を見た。


護衛車の後部窓越しに見えるのは、クレーン車の荷台に覆いかぶさる暗い輪郭だけだ。巨大で、低く、丸まって眠っている怪物みたいだ。この道中、教会勢力はまだ来ていない。イタリアはまだ遠い。今のところ全部がポーランドに、俺たちの手の中に収まっている。それでいい。少なくとも今は、厄介事の形がまだ見えている。


マレクが隣でライフルを抱えたまま、一言も喋らない。こういう男が黙っているときは、大体話すことがないんじゃなくて、距離と射界と時間と、闇の中から飛び出してくるあらゆるものを頭の中で整理している。


前方で脇道に入ると、路面が悪くなった。


舗装が切れた。砕石と半崩れの工業用作業道に変わる。クレーン車はシャーシが重いから、車頭が沈むと後ろのフラットトレーラー全体がそれに引きずられて低く揺れる。すぐにイヤホンからヴィクトリアの声が入ってきた。


「後部支持、正常。左側二番拘束、軽い負荷あり。停車不要。」


彼女は俺の車にはいない。


クレーン車の助手席に座って、走りながら外部モニタリング表と仮設の拘束センサーを睨んでいる。これが彼女の悪い癖で、同時に彼女の値打ちでもある。他の連中が窓から道を見ているとき、彼女はどのロックポイントがあと何回揺れたら事故になるかを見ている。


カミラの声が続いて入ってきた。


「到着まで五分。北高地、展開済み。西側旧道、封鎖完了。南側爆破障害物、埋設完了。」


「了解。」俺は言う。


採石場は、思っていたより広かった。


車列が入っていくとき、地平の端にようやく薄い白みが差し始めていた。周囲は凸凹だらけで、誰かが爆薬と採掘機で山をごっそりえぐり取って、何層もの断面を剥き出しにしたみたいだ。地面は砕石、硬い土、斜面、残った轍跡、乾いた泥。中央に比較的平坦な主エリアがあって、低床クレーン車を停めるのに十分な広さがあり、シュトゥルムシュライターが直線走行、旋回、緊急停止のテストをこなせる距離も確保されている。


何より重要なのは、ここが空だということだ。


空っぽで、何かが動けば一目でわかる。


俺たちが必要としているのは、まさにそれだ。


車が停まると同時に、テスト組全員が散開した。


手が空いている者は誰もいない。


護衛班が外周へ向かう。狙撃班が位置を報告する。工兵がクレーン車の両側に固定杭を打ち込む。林雨瞳は通信担当を一人連れて、隣の崩れた斜面に上り、中継機と長距離スコープを設置する。カミラは主エリアの北側高台に立ち、双眼鏡で採石場全体の扇形を舐めるように見渡している。砲場の開幕を待つ指揮官の目だ。


エリザヴェータと葉綺安(イェ・キアン)は核心エリアには入らない。二人は左右に分かれ、それぞれ外周機動護衛班を一組ずつ連れて、近づいてはいけない人間や物を排除する役割だ。エリザヴェータが出発前に俺を一瞥して、実に余裕のある口ぶりで言った。


「もしあやつが勝手につまずいて自滅するようなことがあったら、技師だけは先に引っ張り出しておくことじゃ。」


俺は一言返す。


「火炎モジュールから離れてろ。」


彼女の口元がわずかに動いた。


「ようやく要点を覚えてきたようじゃな。」


そう言って去っていった。


三号護衛車が採石場入口に横向きに停まり、最初の物理的封鎖を形成する。クレーン車は主エリアの中央に誘導されて、ゆっくりと所定位置に収まった。エンジンが止まる前に低く震えた。老いた機械が最後の一息をゆっくり吐き出すみたいだ。


ヴィクトリアが助手席から飛び降りた。


きれいな降り方じゃない。「まだやることがある、優雅にしてる暇はない」という技師の降り方だ。防弾ジャケットの下に作業服、腰にはスパナ、懐中電灯、短銃、マーカーペン数本がぶら下がっている。降りて最初にしたことは、俺を見ることじゃなく、拘束センサーを確認することだった。


「やっぱり左の二番ロックポイントがずれてる。」彼女は言う。


そばにいた整備士がすぐ寄ってくる。


「どのくらいずれてますか。」


「二センチ以下。でも、このままこいつが自力で降りたら、後部フラップに嫌な負荷がかかる。」彼女はしゃがんで、その拘束フレームの溶接点を手で触る。「シム持ってきて。斜め補強をもう一本入れる。」


工兵がすぐ動く。


カミラが北側高台から降りてきた。


「開始まで何分。」


「十五分。」ヴィクトリアは顔を上げない。「先に最終外部チェックを一周する。」


カミラは急かさない。一言だけ言う。


「今日ここを第二の工廠にしないと、十五分以内に確信させてちょうだい。」


「本当に吹き飛ぶなら、十五分じゃ止められない。」ヴィクトリアは言う。


カミラは一秒彼女を見た。


「その正直さは評価する。」


「本当に評価してくれるといい。」


俺は二人の横に立って、口を挟まなかった。


こういうときに一番役に立たないのは、余計な口出しだ。今は技術の時間だ。わかっている人間に喋らせておいた方が、生き残れる確率は上がる。


ヴィクトリアはシュトゥルムシュライターを頭から足先まで、もう一度全部見た。


胸部拘束。

背面サポート。

脚部メインロックポイント。

外部冷却接続。

待機電源接続。

肩部ロケットポッド安全隔離。

両腕四連装MG-42の機構状態。

右腕下掛けPanzerfaust空作動ロック。

左腕火炎モジュール圧力制限バルブ。


一項目確認するたびに、白いマーカーでチェックシートの項目を消していく。


俺は横に立ちながら思っていた。こういう代物は、技師がいなくなった途端に大体ろくな末路をたどる。


こいつを本当に生かしているのは、圧縮エーテル(Compressed Aether)でも合金でも、あの美しくて狂った設計図でもない。目の前のこの人間が、一項目ずつ問題を拾い上げ、押し戻し、もう一度確認する、その行為だ。


最後の項目を消して、彼女は立ち上がり、手袋を外した。


「降ろしていい。」


その一言で、周囲が少し静まった。


緊張して息を呑んでいるわけじゃない。全員が、本番が始まると知っているからだ。


工兵が最初の外部拘束を解放する。

油圧スロープが降りる。

胸部緩衝フレームが退く。

バックパック給弾モジュールの外部サポートが解除される。

待機電源が車載端末モードに切り替わる。


シュトゥルムシュライターはまだ動かない。


でも、「いつでも動き出せる」という気配が、もうはっきりと出ていた。


ヴィクトリアは機体の正面まで歩いて、コクピットを見上げた。


そのまま乗り込むと思っていた。


ところが彼女は先に振り返って、俺を見た。


「緊急手順、もう一回言って。」


試しているんじゃない。


確認だ。


昨日彼女に教わった通り、そのまま言う。


「外部手動燃料遮断は左脚の外部点検パネル下。最初に一番系統のレバーを引いてから、腰の二番メカニカルカットオフに触る。反応を失ったとき、まずメインハッチの一段目拘束を解除、次に補助電源を手動カット、最後にコクピットをこじ開ける。黄黒ストライプのパネルは、おまえがいないときに開けない。」


彼女は二秒俺を見た。


「まあ、いい。」


これが彼女の褒め言葉だ。ケチだが、十分だ。


そう言うと、彼女は外部ハンドルを掴み、装甲ステップを踏んで、コクピットへよじ登っていった。


速くもなく、急いでもない。


全員が見ているのはわかっている。そして今一番必要ないのが、無理をしているように見えることも、わかっている。


ハッチが開く。彼女が中に入る。拘束フレームが一段ずつ締まっていく音が、下に立っている俺にもはっきり聞こえた。


カチン。

カチン。

カチン。


機械が人間を飲み込んでいく音みたいだ。


次の瞬間、シュトゥルムシュライターの胸部メインハッチの奥に、最初の冷たい青い光が灯った。


続いて、二つ目。


それから、機体全体が眠りの中から骨を繋ぎ直すように、背部給弾モジュールが低く震え、肩部ロケットポッドのロックインジケーターが一つずつ点灯し、両脚内部の油圧ラインも動き始めた。


見慣れた起動シーケンスがメインハッチの中を流れていく。画面は見えないが、あのドイツ語の行がまだそこにあることはわかっている。


シュトゥルムシュライター。

駆動:圧縮エーテル(Compressed Aether)コア。

公式:Betzare-Ritus(ベツァレ・リトゥス)

光学:ツァイス・システム。

装甲:ラインメタル。


古い。尊大だ。八十年前から直接手を伸ばしてきて、今の時代の顔を平手で殴りつけるような口ぶりだ。


「システムチェック完了。」ヴィクトリアの声が外部スピーカーから響く。金属質の共鳴が少し混じっている。「メイン起動、第一段階開始。」


シュトゥルムシュライター全体の重心が、わずかに変わった。


腕を上げたわけじゃない。動いたわけでもない。ただ、巨大な物体が「ただの死重」から「自分でバランスを取るもの」に変わるときだけ現れる、言葉にしづらい変化だ。荷台下のサスペンションがすぐに沈み込む。スロープ支柱も鈍い音を立てた。

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