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117.準備作業 3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

「西側の旧道は完全封鎖。南口にリモート起爆式障害物を一基追加。北側高地の狙撃班は一時間前倒しで展開。メイン回線は内圏専用。外圏は全部サブ周波数に切り替え。」


そう言ってから、三番格納庫の方を見やる。


「武装はどう載せる?」


ヴィクトリアは、即答した。


「明日は単項テストのみ。両腕のMG-42は各二回、短連射。右肩ロケットポッドは片側だけ一発ずつ。左腕の火炎モジュールは圧力再テスト、外部噴射なし。Panzerfaustは実弾なし、空作動チェックのみ。」


カミラはうなずいた。


「いいわ。」


そのとき、葉綺安(イェ・キアン)も入ってきた。床一面の鋼板、溶接痕、図面をざっと一瞥して、単刀直入に訊く。


「明日、私たちは何をすればいい。」


カミラが答える。


「あなたとエリザヴェータは最外周機動。守るのは機体じゃない。テストエリアの方。わかるわね。」


「了解。」葉綺安は言った。


悪くない配置だ。


明日の主役は「一戦やる」ことじゃない。「シュトゥルムシュライターを無事に一周走らせる」ことだ。だからエリザヴェータと葉綺安みたいな連中は、外周に置くのが正しい。こういうときに近づいてくるやつは、そこで死ねばいい。


黄昏どき、四番庫はようやく少し静かになった。


第一版の固定架の溶接が終わり、スロープは形になり、サポートポイントも仮組みされた。老クレーン車には、新しい骨が無理やり詰め込まれたような姿になっている。見た目は悪い。荒い。戦場工廠の場当たり仕事そのものだ。でも、もう「本当に怪物を引っ張れるかもしれない」雰囲気を帯び始めていた。


シュトゥルムシュライターも、位置を微調整された。


起動したわけじゃない。クレームアームと油圧ジャッキを使って、固定ポイントに合わせて立ち位置を動かしただけだ。その光景はどこか異様だった。全高三メートルの鋼鉄歩行機が、工事用ワイヤより太い拘束ベルト数本に繋がれ、二台の吊具の間に立っている。短時間だけ首輪を付けられた野獣のようだ。今は大人しい。だが、その静けさを真に受けて「ただの物」と見なす者はいない。


夕食は、俺は格納庫のそばで済ませた。


食堂に行きたくなかったからじゃない。今日はみんな、ここの二つの庫が基地の他のどこより優先度が高いとわかっている。飯は直接ここに運ばれてきた。スチールボックス。熱いスープ。肉片。パン。誰も文句は言わない。


ヴィクトリアは昼よりさらに早いペースで食べ、食べながら「猿でもわかる」版の草稿にペンを走らせている。最初の項目群のリライトは、すでに始まっていた。


俺は一瞥した。


元々は原始的な記号とドイツ語の術語が並んでいたページが、彼女の手で書き直されて、極めてシンプルで容赦のない文章に変わっていた。


起動前チェック一:メイン拘束がロックされていないことを確認。

起動前チェック二:バックパック中央の給弾チェーンが定位置に戻っているか。

禁止事項:冷却圧力未確認のままメイン起動に入るな。

ダメな例:急いで、爆発。


二秒ほど眺めた。


「おまえの『猿版』、かなり個性的だな。」


彼女は顔も上げない。


「その方が、読み間違えにくい。」


「怒られてる気分になるやつは増えそうだけどな。」


「両立するわよ。」


異論はない。


夜の十一時、カミラが全員をブリーフィングルームに呼び戻して、テストラン前の最終確認を行った。


今回は大きな地図はない。採石場の断面図、走行タイムライン、射界セクター、撤収フローだけだ。


彼女の話は短かった。


「明日の目的は三つだけ。」彼女は言う。「ひとつ、制御された条件下でのシュトゥルムシュライターの歩行と旋回を確認する。ふたつ、クレーン車による輸送と緊急解放フローを確認する。みっつ、交戦なしの前提で、武装システムが十分に安定しているかを確認する。」


彼女は指の関節でテーブルをコツコツと叩いた。


「パフォーマンスじゃない。閲兵式じゃない。誰かが自分の凄さを証明する場でもない。これはテスト。テストというのは、ミスを探すためにある。見つけて、覚えて、戻って直す。興奮しすぎて事故にしたやつは、次のリストから外す。永久に。」


誰も口を開かなかった。


開く必要がないからだ。


彼女は俺を見た。


「周さん、明日あなたはコクピットに入らない。」


「わかってる。」


「外部観察と緊急手順の記録担当。」


「了解。」


今度はヴィクトリアを見る。


「あなたは明日、おかしいと思ったら即座に止める。」


「いつ止めるべきかは、アタシが一番わかってる。」


「そうであることを祈るわ。」


林雨瞳(リン・ユートン)は反対側の席で、最後の通信コードを表に書き足している。葉綺安(イェ・キアン)とエリザヴェータは余計なことを言わない。マレクは護衛班のローテーションを割り振っていた。全員が、明朝どこに立って、何を見て、どういう状況で引き金を引くか、あるいは絶対に引かないかを把握している。


会議はすぐに終わった。


みんなが散っていくとき、時刻は深夜に差し掛かっていた。


ヴィクトリアはてっきりまた格納庫に戻って夜明かしするつもりだろうと思っていたが、出口で俺に捕まった。


「まだ戻るつもりか。」


「フローチャートがあと一ページ終わってない。」


「明日やればいい。」


「明日はアタシがあれを動かすのよ。」


「だからこそ、今すぐ寝るべきだ。」


彼女は二秒ほど俺を睨んだ。


少し苛立っていた。少し疲れてもいた。


結局、反論しなかった。ただ、手のファイルを俺の胸に押しつけてきた。


「じゃあ、これ持って行って。」


「どこへ。」


「アタシの部屋。」彼女は言う。「わざわざ格納庫に寄り道するのが面倒。今夜は、あいつのことは勘弁してやる。」


これは進歩だ。


居住区まで一緒に歩いた。基地はめずらしく少し静かだった。完全に静かなわけじゃない。ただ、昼間ずっと人を圧し続けていた稼働音が、この時間になってようやく背景に退いていた。


彼女は歩きながら、ほとんど口を開かなかった。


部屋の手前まで来たとき、不意に言った。


「明日、最初の一歩を見ても、早合点しないこと。」


「なぜだ。」


「機械ってのは、一番様になるのが最初の一歩だから。」彼女は言う。「本当の問題は、二歩目、三歩目、それから自分がわかった気になり始めた後に出てくる。」


うなずいた。


これも覚えておく言葉だ。


彼女はファイルを受け取り、ドアを開ける前にもう一度振り返った。


「あと、明日は火炎モジュールから離れてること。」


「昼間も言ってたな。」


「今また言った。それが、本当に重要だってこと。」


「わかった。」


それで彼女は部屋に入った。


扉が閉まるのを一秒眺めてから、俺も自分の部屋に戻った。


大して眠れなかった。


午前三時二十分、放送がテスト組全員を定刻通りに叩き起こした。


起き上がり、装備を着け、銃を取り、外に出る。廊下には同じ顔をした人間が並んでいた。雑談なし。あくびなし。文句なし。今日うまくいけば、シュトゥルムシュライターは「奪い返してきた化け物」から「戦術に組み込める戦力」に変わる。うまくいかなければ、基地の中に置かれた爆弾のままだ。みんな、それをわかっている。


三番と四番の格納庫の扉は、両方とも全開になっていた。


冷気が流れ込んでくる。ディーゼルと金属と、朝の一番乾いた寒さが混ざり合っている。


クレーン車は所定位置についている。


スロープは降ろされている。


固定架は準備完了。


シュトゥルムシュライターは作業灯の下で、スタンバイ前の状態に呼び起こされていた。フル点灯じゃない。一部のインジケーターと外部システムだけが動いている。まだ完全には目を開けていないが、もうどこへ行くかはわかっている獣みたいだ。


ヴィクトリアは昨日の作業着に、短めの防弾ジャケットを羽織っていた。機体の足元に立ち、工兵二人と最後の拘束ベルトの位置確認をしている。無駄な動作はない。昨夜の疲れは押し込まれていた。代わりにあるのは、乗り込む直前だけに宿る、あの静かな冷静さだ。


カミラはクレーン車の左前方に立っている。


マレクは護衛班を連れて外周の警戒についている。


林雨瞳はイヤホンをつけて、最後の周波数確認をしていた。


俺は車頭の横に立って、シュトゥルムシュライターがスロープを一歩一歩踏んでいくのを見ていた。


音は重い。


だが、安定している。


鋼鉄の足裏が新しく溶接された板架を踏むたびに、低い摩擦音が鳴る。油圧サポートがわずかに沈み込み、それから荷重を受け止める。固定架が一つずつ噛み合っていく。胸部前面の緩衝拘束がロックされる。背面サポートが接合する。冷却と待機電源のインターフェースが繋がる。機体全体が、低床台の上に重く伏せた。いつでもどこへでも引きずっていけて、必要とあれば噛みつける、動く棺桶みたいに。


俺はそこに立って、それを見ていた。


頭の中では、はっきりとわかっていた。これは終わりじゃない。完成でもない。


ただの最初の一歩だ。


これが本当に俺たちの手の中の戦力になるかどうかは、今日の採石場で決まる。


クレーン車のエンジンが前方で点火された。


老いた機械が最初にひと咳きする。それから低く、どっしりと安定する。排気が白い霧になって後ろへ流れる。ヘッドライトは全灯じゃない。最低限の走行灯だけが点いている。外周護衛車が一台ずつエンジンをかける。車列全体が、巣穴を出ようとしている鋼鉄の節足動物みたいに、ゆっくりと地面から力を引き上げていく。


カミラが俺を見た。


「乗って。」


うなずき、助手席後部のドアを引いた。


乗り込む前に、振り返って、車台の上に伏せているシュトゥルムシュライターをもう一度見た。


静かだ。重い。まだ何も言っていない。


でも、わかっている。


太陽が昇れば、あの採石場で、本当に俺たちのものになる最初の一歩を踏み出す。

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