111.F.A.B.R.I.K.(ファブリク) 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「止まれ。」
即座に手を上げ、全員がその場で固まる。
三秒後、脇のサイドドアが開き、もう一人傭兵が保温マグをぶら下げて出てきた。大きなあくびをしながら歩いてくる。明らかに交代かトイレのつもりだ。こういうのが、一番面倒くさい。処理が難しいわけじゃない。ただ、いくら綺麗に組んだ計画でも、人間のこういう退屈な生活習慣一つで、簡単に汚される。
そいつは一瞬で見つけた。床に伸びている、そこにあるはずのない脚を。
叫ばれる前に済ませた。銃を上げて二発。サプレッサーをつけても、刃物よりはよほど音が出るが、まだ許容範囲だ。弾は胸を抜け、そいつは後ろ向きにドア枠にぶつかって、その場に落ちる。保温マグが手から離れて床を叩き、ゴトンと鳴って、中の熱湯が一面に飛び散った。
これで、もう誤魔化しようがない。
中からすぐに怒鳴り声がし、続いて椅子が倒れる音と、ボルトを引く金属音が重なった。マレクがポーランド語で短く悪態をつき、腕を前へ振り下ろした。
「突入!」
もうステルスの時間じゃない。
なら、力ずくで行く。
俺たちはそのままサイドドアに体当たりした。
ドアの先は短い通路で、両側が荒いコンクリ壁。突き当たりが、一階メインプラットフォームへと開けた大きな開口部になっている。最初に飛び出してきた傭兵は、銃を構える暇もなく、俺の短点射に撃ち倒された。二人目は反射的に下がろうとして、俺の肩越しにヴィクトリアから鎖骨に一発もらい、そのまま壁伝いに崩れ落ちた。三人目は少し頭が回るのか、その場に転がり込みながら伏せて、ドアの外へ向かって闇雲に掃射してきた。
火花と破片が壁の上で弾けた。
「左!」俺が怒鳴る。
葉綺安が右側から一気に踏み出した。その動きは、走るというより「ぶつかる」に近い。飛んできた弾丸は、何か目に見えない硬い殻に当たったかのように、当たり方がおかしい。火花を散らすだけで、彼女の勢いを止められない。その傭兵は、生まれてこのかたこんな光景を見たことがなかったのだろう。目が驚愕から恐怖に変わる暇すらない。次の瞬間、紅い槍が胸板ど真ん中に突き刺さり、後ろの木製ラックごと打ち倒される。
マレクの班の何人かは、この瞬間、明らかに呼吸が半拍止まった。
だが、本当に半拍だけだ。
次の瞬間には、いつも通りに射線を押さえ、角を押さえ、倒れた目標に止めを刺しにかかる。これがプロの水準ってやつだ。化け物を見て驚くのはいい。だが驚いた後で、自分の撃つべき位置にちゃんと弾を飛ばせる。それで初めて「部隊」と呼べる。
一階のメインプラットフォームに踏み込んだところで、ようやく本格的な火力が立ち上がった。
ここは外から見たときよりずっと広い。真ん中に半開放の荷役スペースがあり、両脇に鋼鉄の通路と整備用の橋が高低差をつけて交錯している。突き当たりには地下へと続く大型貨物エレベーターのシャフト。上からは重いチェーンとフックがぶら下がり、左右には木箱、ドラム缶、砂袋で雑に積み上げた即席の遮蔽物が連なっている。照明は安っぽい黄色で、全体を磨り減った古い写真みたいに照らし出す。隅っこにミッション目標がポップアップしないのが不思議なくらいだ。
弾を入れ替えながら、さっきの冗談が完全なフラグだったことを心の中で罵った。
正面に少なくとも七、八人。その後ろから、二階の短い通路の上でも銃火器が降ってくる。全部現代の銃火器だというのに、戦っている感覚は、どうしようもなく「旧式工場の戦場」に近い。砂袋、手すり、吊り下げ灯、銃火。反響音までもが、コンクリ壁に叩き込まれて鍛えられたみたいに、硬く乾いている。
「右上抑えろ!」叫びながら三発連続で撃ち、高所の手すりの向こうから顔を出した一人を引っ込めさせる。
エリザヴェータはそれより速い。ほとんど歩を止めず、横の低い足場に身を躍らせ、鉄骨と影の間を異様な速さで渡っていく。どう見ても「工場にいて当然の生き物」じゃない。高所の第二火点の男が弾倉を替えかけたところで、背後から首を捻られ、そのまま無音で手すりの外へ落ちた。
「左側、フォークリフトの後ろに三人。」イヤホン越しの声は、相変わらず献立を読み上げているみたいに平坦だ。
「見えてる。」
俺は倒れた金属箱の陰にしゃがみ込み、隙間から銃口だけを出して、フォークリフトのシャーシの下を先に掃射した。一人が足に被弾して悲鳴を上げ、転がり出てくる。立ち上がる前に、マレク側からの一発で沈められた。もう一人は肝が据わっているのか、フォークリフトの陰から身を乗り出し、手榴弾を一発投げてきた。
「グレネード!」
プラットフォーム全体が一斉に身を伏せる。俺は後方へ飛び退り、爆発は前方半分の遮蔽物を吹き飛ばした。鉄片と木片が顔を叩き、焼けるような痛みが走る。すぐ横でA.K.-DUCHの一人が、罵声を一つ吐きながらも、手の中のAKは止めずに、爆心地の向こう側に向かってフルオートでお返しを見舞った。
希が動いたのは、そのタイミングだ。
牛小琴が完全に表へ出てからの彼女は、もはや、トラックの脇で冷たい飯をかじりながら、ポテチを取った奴に文句を言う、いつもの女とは別物だ。祖霊の山刀を片手に握り、背はどこまでも低く構えられている。山中の何かが、ようやく正面衝突できる相手を見つけたかのようだ。左側の遮蔽物の影から一気に飛び出す。速度そのものはさほどでもない。だが一歩一歩が重くて、床の鋼板ごと揺さぶる。
一人の傭兵が胸元を狙って連射する。だが弾は、ねじれた力場に弾かれるみたいに明らかに軌道がおかしい。次の瞬間には、希が目の前まで詰めていて、祖霊の山刀が肩から腹までを一息で割り裂く。湿った薪を割る時よりも、よほどあっさりしていた。
マレク側の何人かは、はっきりと息を呑んだ。
誰も「何だあれは」とは言わない。
ただ、ポーランド連中が希を見る目が、明確に変わった。「東の方から来た負傷した女」から、「近接破壊ユニット」へと、分類を切り替えたのだ。そして次の瞬間には、また自分の持ち場に戻って火力を維持する。
それでいい。
こっちは、いちいち文化講座を開いてる暇なんてない。
「エレベーターシャフト前、空けろ!」俺は怒鳴る。
葉綺安は返事をせず、動きで応えた。砂袋の裏で機関銃を構えていた一人を槍で突き上げ、そのまま遮蔽物の上へと乗り込んで押し込んでいく。なおも弾が飛んでくるが、彼女の周りで火花が散るだけで、歩みは止まらない。理屈が完全に崩壊した光景に、敵側の引き金も半拍ほど遅れた。
その半拍で十分だ。マレク右側の班が一斉にポジションを変え、左の通路口に向けて手榴弾を投げ込む。
轟音一つ。飛び出してきたばかりの二人の傭兵が、まとめて吹き飛ばされる。
俺は新しいマガジンを叩き込み、弾を撒きながら前に出る。こういう普通の人間傭兵は、最初の一枚目の胆が剥がれれば、その先は簡単だ。戦えないからではない。こんなクソみたいな現場のために、最後の一秒まで命を捨てる気がないだけだ。弾の効かない奴、鋼板の上で火花を引く祖霊の刃、上から影みたいに忍び寄って仲間を放り投げる存在、そういう光景を一度に見せてやれば、心のどこかの線は、すぐに切れる。
案の定、エレベーターシャフトに一番近い二人が先に退いた。
二人が引いた瞬間、全体の扇型の火線が一気に崩れる。
「押せ!」マレクの怒号が響く。
それを合図に、A.K.-DUCHの十人がようやく本当に前へ出た。この距離でのAKの点射と短いバーストは、実に扱いやすい。銃声は短く、鋭く、密だ。派手さはないが、しがみつこうとする相手を遮蔽物の裏へ押し戻すには十分。俺もそのまま前に飛び出し、まだ銃を構えようとしていた負傷兵を蹴り倒し、額に銃口を押し当てて引き金を引いた。
後頭部から出た血が、壁の煤と混ざって、どうしようもなく汚い色になった。
ようやく、エレベーターのプラットフォームが空いた。
思っていたよりも広い。建物の腹の中に、鉄の桟橋を無理やりねじ込んだみたいだ。中央には大型貨物リフトの金網シャッター。左右に操作盤と手動チェーン。床には重量物を引きずった跡の深い溝。横には肉厚のカーゴボックスがいくつか積まれていて、色の抜けた番号とドイツ語の略号がプリントされている。詳しく読む気はない。一周だけ視線を走らせて、生き残りがいないかを確かめる。
いた。
右側の操作盤の陰で、一人だけまだ息があった。肩に被弾しているが、それでも何かのスイッチに手を伸ばそうとしている。俺が銃を上げるより早く、ヴィクトリアが飛び込んだ。伸ばしかけていた手を蹴り飛ばし、そのまま頭を操作盤の角に叩きつける。一発で足りず、二発目を追加した。その音は鈍く、重かった。男は、それきり動かなくなった。
彼女が身体を起こした時、拳の甲に血が少しついていたが、顔にはこれといった感情の色は出ていなかった。
俺は彼女を一瞥し、彼女もこちらを見る。どちらも、何も言わない。
横で見ていたポーランド人の一人は、その光景を確実に目に焼き付けたようで、一瞬だけ複雑な目をした。だが、それも本当に一瞬だ。次の瞬間には、マレクの声に従って、また自分の持ち場に散っていく。
「左右封鎖! 二階クリア! 二人ドア、二人操作盤だ!」
これぞプロの部隊、という動きだ。驚いても、手元を崩さない。
イヤホンに、タイミングを見計らったようにカミラの声が入ってきた。
「一階プラットフォームの状況は。」
俺は息を抑えながら答える。
「制圧済み。安っぽい傭兵ばかりだ。死に方も安っぽい。貨物リフトは目の前。」
林雨瞳がすぐに繋ぐ。「外周に大規模な警報なし。局所的な銃声だけ。時間的余裕は、まだある。」
「了解。」
「周士達、」彼女は続けた。「下に降りたら、もう『静かにやる』なんて考えないで。」
俺は金網シャッターを見据え、火薬の匂いが混じった息を吐き出した。
「安心しろ。下は、最初から殴り合うつもりだ。」
その言葉が落ちた瞬間、希は祖霊の山刀を提げてプラットフォームの端まで歩いていった。牛小琴が上がってきてからというもの、目の奥が深く沈んでいて、刃からはまだ血が滴り落ちている。葉綺安は反対側に立ち、長槍の石突きで鋼板をコツコツと小刻みに叩いていた。細かい金属音が響く。二人のポーランド人が彼女の横を通り過ぎる時、視線が明らかに半拍止まり、それから無理やり自分を引き戻すみたいに、すぐ弾薬の確認に戻っていく。
マレクが俺の隣に来て、ポーランド語の悪態を一つ低く吐いてから、口を開いた。
「お前たちのその憑依ってやつ――普段からああなのか?」
「普段じゃない。」俺は言った。「人を殺す時だ。」
彼は希を見て、葉綺安を見て、表情はほとんど変えなかったが、目の奥で何かが再評価されていくのがわかった。
「わかった。」最終的に、それだけ言った。「下に降りたら、お前たちの人間が前を行く。俺の人間は火力で続く。」
「妥当だな。」
ヴィクトリアは操作盤の前にしゃがみ込み、両手はすでに外蓋を外しにかかっていた。動きが速い。保護カバーのロックを外して、中の機構と配線を一瞥し、眉をわずかに寄せた。
「旧式の工業用貨物リフト、後から二重のセーフティが追加されてる。」彼女は言った。「動くことは動くけど、遅い。」
「どのくらい遅い?」俺は聞いた。
「降りてる間に遺言を考える時間がたっぷりあるくらいには。」
「親切設計だな。」
彼女は無視して、二本の配線を直結した。操作盤が低い唸りを上げる。プラットフォームの中央、金網のシャッターがゆっくりと上がっていき、その奥に黒い縦穴が口を開けた。喉の奥みたいに暗い。下の方には灯りがあるはずだが、見通せない。丸い鉄骨のフレームとチェーンが、一段一段、闇の中へ沈んでいくのが見えるだけだ。
もっと冷たく、もっと湿った、地下工業施設特有の空気が、下から押し上がってくる。
外周の石炭灰や鉄錆とは違う。
もっと深いところの匂いだ。
油、古い血、それに電気。そこへ、言葉にしにくい何かが混じっている。
エリザヴェータが俺の左側に立ち、下を一度だけ覗き込んで、低い声で言った。
「ここから先は、もはや人だけでは済まぬ。」
「わかってる。」俺は言った。
彼女はそれ以上何も言わなかった。ただ、さっきより目が静かになっていた。あの種の静けさは、たいてい吉報じゃない。俺たちがまだ実際には触れていない何かを、彼女がすでに嗅ぎ取り、聞き取り、あるいは感じ取っているということだ。
プラットフォームでの最後の確認は、手短に済んだ。
弾薬を重点的に再配分する。手榴弾の位置を調整し直す。A.K.-DUCHの二人が、余分の爆破コードと予備の爆薬を貨物リフトの隅に引き込む。マレクの班の十人が全員乗り込み、AKの銃口を外向きに揃える。いつでも下に向けて火を吐ける鉄の歯が輪になったみたいだ。まだちらちらと希と葉綺安を盗み見ている奴はいるが、どれも本当に一瞬で、こんな場面でくだらない質問をする奴は一人もいない。
イヤホンに、最後のカミラが入ってきた。
「貨物リフトが降下したら、外線は必要最低限の通信だけ保つ。一層降りるごとに、反響、干渉、コンクリートが全部ワイスマン(ワイスマン)の代わりに喋り出す。上から神様ごっこをしてやれるとは思うな。」
「最初から神様には見えない。」俺は言った。
カミラはそっちで半拍止まったと思う。
「結構。」冷たく返ってくる。「なら、あんたも生贄みたいな真似はするな。」
通信が切れた。
俺は周りを一度見回した。
ヴィクトリアは操作盤の脇に立ち、手にはまだ拭いきれていない血と機械油が残っている。エリザヴェータは影みたいに静かだ。希は祖霊の山刀を握り、全身を低く落として、山から飛びかかる直前みたいな構えをしている。葉綺安はまっすぐ立ち、長槍を斜めに提げ、下に何があろうと気にする素振りもない。
俺は一度深く息を吸い、貨物リフト中央の鋼板に足を踏み出した。
「乗れ。」
誰も迷わなかった。
金網のシャッターが再び落ちて、プラットフォームの向こう側にある死体、黄色い照明、砂袋、そしてさっきの戦闘の硝煙が、少しずつ、一寸ずつ切り取られていく。
制御レバーが引き下ろされた瞬間、リフト全体がまず一度、大きく揺れた。それから降下が始まる。
チェーンが重い金属摩擦音を立て、縦穴の四壁の灯りが一段ずつ上へ流れていく。上のプラットフォームが金網越しに遠ざかり、薄汚れた黄色い四角形になって、どんどん小さくなっていく。マレクの十人は銃口を全員外に向けて、姿勢を低く保っていた。それでも俺の目には映る。あいつらが希と葉綺安を見る目が、十分前とはもう違うということが。
怪談を見る目じゃない。
一緒に地下へ降りていける戦力を見る目だ。
それでいい。
この瞬間から先、俺たちに必要なのは、理解してくれる奴じゃない。
足を引っ張らない奴だ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




