↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
425/586

111.F.A.B.R.I.K.(ファブリク) 2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

夜間出発の一時間前、マレクが来た。


あいつが入ってきた瞬間、整備室の空気が自動的に半段階沈んだ。表情が怖いわけじゃない。ただ、人を前線に押し出す準備ができている軍人の匂いが、入ってきた時点で露骨だった。


「十分後、第一陣の外周観察班が出発する。」彼は言った。「二十五分後に狙撃班が配置につく。お前たちは三十五分後に乗車だ。」


小型のイヤホンを机に置き、全員を順番に見回す。


「通信テストは一回のみ。投入後は無駄口を減らせ。特に、お前たちの内輪のユーモアセンスはな。」


後ろで(シキ)がくぐもった声でぼやいた。


「残念。今夜は絶好のネタになる人がいるのに。」


マレクは明らかに聞こえていたが、あえて無視した。この男の実用的な長所は一つ―任務に支障がない限り、他人の夜の事情には一切興味を持たないことだ。


俺はイヤホンをつけて通信テストをした。ノイズはほとんどない。ポーランド人のこの装備、見た目よりずっと新しい。ヴィクトリアが俺の背中の固定ストラップを引き直してくれた。指が一度だけ触れて、すぐ離れた。短い動作だったが、それでも感触は残った。


横で見ていた林雨瞳(リン・ユートン)が、小声で言った。


「二人とも、装備調整まで昨日より息が合ってる。」


「元々同じ班だろ。」俺は言った。


「うん。」彼女は頷く。「今はもっとそれっぽくなってるだけ。」


相手にするのも面倒になって、最後の予備弾をポーチに突っ込み、立ち上がった。整備室の全員もだいたい準備が終わっていた。銃を背負い、ナイフを固定し、プロテクターを締め、地図を防水袋に入れ、暗視スコープを額に押し当てる。昼間の冷やかしも、薄笑いも、意味ありげな視線も、この瞬間、誰かが手で拭い去ったみたいに消えて、各自が戦場に持ち込むべき顔だけが残った。


マレクが最後にもう一度、全員を見回した。


「カミラからの伝言だ。」


誰も喋らない。


「今夜、急に英雄になりたくなった人間がいたら、彼女の目の届かない場所で先に死んでくれ、とのことだ。」


俺は口の端を引いた。


「いかにもあの人らしい。」


「もう一言ある。」マレクは俺を見た。「周さん、もし彼女が必要としている職人を一緒に無茶に巻き込むつもりなら、せめてその無茶に結果を出してから、とのことだ。」


部屋全体が、二秒間、見事な沈黙に包まれた。


俺が口を開く前に、希が堪えきれない笑い声を漏らした。葉綺安(イェ・キアン)はさっと顔を背けて、肩が一度揺れた。林雨瞳は笑う手間すら省いて、「だから言ったでしょ」という顔で俺を見た。エリザヴェータに至っては―一番端に立って、両手を重ね、目の中の笑みを隠す気すらなかった。


ヴィクトリアの顔が、ようやく本当に曇った。


「これまで計算に入れてたの?」


マレクは落ち着いて答えた。「彼女は何でも計算に入れる。」


「だったら、きっちり計算しといてもらわないと。」ヴィクトリアは冷ややかに言った。


「大抵は精度が高い。」マレクが返す。


反論のしようがなかった。俺たちがここに立っていること自体が、あの女の計算がだいたい当たっている証明だ。


---


整備室を出て、メイン通路を出口に向かって歩く。地下掩蔽壕が夜間出発状態に入ると、昼間よりも静かで、硬くなる。照明は変わっていないのに、全員の足音が速くなっていた。補給区では最後の数箱の弾薬を車に積み込んでいる人間がいる。医療区のドアは閉まっていた。希が後方待機ポイントに残される前、俺に向かって非常に見苦しい手振りをした。


「生きて戻ってきなよ。」彼女は言った。「じゃないと、私が痛い思いをした意味がない。」


俺は頷いた。


「お前もな。俺がいない間に、変な奴に噛みつくなよ。」


彼女は白目をむいて、それ以上何も言わなかった。


外側の傾斜路を上がると、冷気が一気に流れ込んできた。まるで誰かが氷水を首元から注ぎ込んだみたいに。外はもう完全な夜だった。都市のような、ネオンや遠くの灯りが残る夜ではない。工業廃墟の縁に広がる本物の闇。雲の向こうにかすかに白む天光と、意図的に大半を遮られた数個の車のライトだけがある。


俺たちの車は斜面の下に停まっていた。改造された濃い色のトラック。外側は汚れた帆布で覆われ、車高が低く、タイヤには消音チェーンが巻かれている。その前方、マーキングのないオフロード車が二台、すでに動き出していた。黒い水の中を滑り出る影みたいに、テールライトも残さずに消えていく。


マレクが車のドアの横に立ち、最後の名簿確認をしていた。


俺が乗り込もうとした時、ヴィクトリアが横を通り過ぎ、肩が軽く触れた。わざとらしい意味はない。どちらかといえば短い確認―俺はここにいる、銃もある、頭もちゃんと動いていることを願う、という。


俺は横を向いた。


彼女は俺を見ずに、低い声で言った。


「第一ノードで間抜けなことをするな。」


「お前もな。」


「私は間抜けなことはしない。」彼女は言った。「高くつく失敗をするだけよ。」


いかにも彼女らしい一言だ。俺は鼻を鳴らして、車に乗り込んだ。


車内は暗く、全員が各自の場所に収まり、銃口を下に向け、背中を冷たい鉄板に預けた。ドアが閉まった瞬間、外の風音が遮断されて、残るのはエンジンの低い振動と、各自が平らに押さえ込んだ呼吸だけだった。


昼間の無駄話を続ける奴は、もういない。


本当に始まるからだ。


車が動き出した時、俺は車壁に寄りかかり、最後にもう一度、頭の中でカミラの地図を走らせた。北側整備棟、第一ノード、第二層の角、側面給電バッファ室、第三層未知区域。一本一本の線が、釘みたいに脳に打ち込まれていく。


車内の向かい側、エリザヴェータはまっすぐ座り、両手を膝の上で重ねていた。薄暗がりの中、その顔にはほとんど表情がない。車体が穴を踏み越えて揺れた時だけ、目を上げて俺を一瞥した。


短かった。


静かだった。


それから、唇の端がごくわずかに曲がった。まるでこう言っているみたいに。


知っておる。説明は要らぬ。生きて戻ってから話せばよい。


相手にする気力もなく、目を閉じて後頭部を鉄板に預けた。


エンジン音が低くなった。掩蔽壕の外周を離れ、あの工業の死骸に向かって、正式に進み始めた証だ。




車列は最後の区間で、ライトを全て消した。


先頭車が遮光板の下からかろうじて漏れる暗黄色の光だけで走っている。夜の中に刃先で引いたような細い線。俺たちがついていくには十分で、遠くから見つかるには足りない。タイヤが砕け石と凍てついた工業廃土を踏み、音は極限まで抑えられていた。だが、抑えても消えるわけじゃない。この手の場所は、夜になると静かすぎて、エンジンが息を殺して喘いでいるだけでも耳障りに聞こえる。


俺は車体の側板に寄りかかり、銃を手で押さえながら、地図は見なかった。


覚えるべきことはとっくに入っている。今さら見ても道は増えない。増えるとしたら、死に方のパターンだけだ。


車が止まった時、誰も声を上げなかった。マレクが先にドアを開けて降りた。冷気が一気に流れ込む。頭の上から砕いた氷を一桶ぶち撒けられたみたいだ。俺も続いて飛び降りた。ブーツの底が薄く固い石炭灰と霜混じりの泥を踏んだ。足裏の感触は最悪だったが、この場所の匂いにはちょうど合っていた。


F.A.B.R.I.K. は前方にある。


近くはないが、遠くもない。廃棄された鉱滓の山、歪んだ鉄道レール数本、半崩壊したコンクリート壁を隔てて、あの黒々とした工業の輪郭が見えた。何年も死んでいる倉庫が三棟。鉄骨がコンクリートから突き刺さるように飛び出していて、火で焦げた後に処理されなかった肋骨みたいだ。中央の冷却塔は片側が崩れ落ちて、もう片側だけが夜の中で辛うじて立っている。高所では探照灯が数個、ゆっくりと弧を描いていた。光は強くないが、施設全体を何か古くさい戦争遺跡みたいに照らすには十分だった。


俺は二秒ほど眺めてから、思わず低い声で悪態をついた。


「……くそ。」


マレクが横から一瞥した。


「どうした?」


「いや。」俺は視線を戻し、声を落とした。「ふと思ったんだが、ここって二次大戦系FPSの隠しステージじゃないのか。」


マレクはFPSという単語の意味がわからなかったようだが、葉綺安は理解していた。俺の右後方に立ち、赤い銃はまだ収めたまま、口調は淡い。


「建築のスタイルが古いと言いたい?」


「古いんじゃなくて、」俺は言った。「そのまますぎる。コンクリート、探照灯、廃倉庫、鉄道レール、上に銃を持った人間を何人か配置したら、クリア後に実績が解除されそうだ。」


希は反対側で、背中から祖靈の山刀を引き抜いていた。刃が暗がりの中で冷たい光を一瞬吸った。腰の傷はまだある。だが牛小琴(ニウ・シャオチン)が上がってきてからは、昼間とは立ち方が全然違った。重心が低く、肩が沈み、呼吸が一息ごとに深く押し込まれていく。骨の奥から何かが目を覚ましているみたいに。


「ほな、死なんこっちゃな。」彼女はドスの効いた声で言った。「やないと、実績解除やのうて墓石がポップアップするで。」


俺は口の端を引いて、返事はしなかった。


イヤホンに微かな電流音が走り、次いで林雨瞳が入ってきた。


「外周観察班、配置完了。」声はいつも通り冷たい。「北側第一哨塔に一人、第二プラットフォームに二人、地表巡回四人、移動間隔はカミラの予測と一致。前方の整備棟廃墟の後ろに、タバコを吸っている一人が追加で確認できる。」


続いてカミラが入ってきた。


彼女の声がイヤホンに入る時、いつも誰かが鉛筆で直接頭の中に線を引いているような錯覚がある。


「元の計画通りに進め。」彼女は言った。「外周と一階プラットフォームの人間を片付けろ。エレベーターを降りたら、もう音を気にしなくていい。その時点で必要なのは速度であって、体裁じゃない。」


「了解。」俺は言った。


「それと。」彼女は一拍置いた。まるでこの一秒を専用に取っておいたみたいに。「周さん、今夜はユーモアのセンスを判断に使わないこと。」


俺は少し笑った。温度のない笑いだ。


「心配しなくていい。俺が口が悪いのは、だいたい引き金を引く前だけだ。」


「それは好都合ね。」カミラは言った。「あと十五分もすれば、そんな余裕はなくなるから。」


通信が切れた。


マレクが手を上げ、前進の合図を出した。全員が即座に散開した。誰かの肩を叩いて励ます奴もなければ、この場で余計な口を開く奴もいない。A.K.-DUCHの十人はすぐに二つの火力ユニットに分かれ、左右それぞれ鉱滓の山と廃壁に沿って動き始めた。AKの銃口は全員下を向いているが、セーフティをかけたままの奴は一人もいないはずだ。このポーランド人たちは、化け物を見れば驚くかもしれない。だが戦う時は、観光客みたいな奴は一人もいない。


俺たちは北側の整備棟廃墟から、中に入り込んだ。


この区間は長くないが、全身を石炭灰まみれにするには十分だった。廃壁の裏には錆び抜けた部品、ひび割れたドラム缶、焦げた木製パレットが積み上がっていて、空気には湿ったコンクリート、鉄錆、それに焼けたケーブルの匂いが混じっている。前方でタバコを吸っている傭兵は、半崩壊した出入口の脇にしゃがみ込み、背中を壁につけて、火の点いたタバコをチカチカさせながら、警戒心ゼロで座っていた。


普通の人間だ。


怪物でも、棺でも、ゴーレムでもない。金で雇われて夜番に立っているだけの、どこにでもいる傭兵。


俺はエリザヴェータの方に、ほんのわずかに顎をしゃくった。


彼女は俺を見ず、軽く一度だけ頷いた。次の瞬間、まるで影の中から滑り出るみたいに、ほとんど音も立てずに動いた。あの傭兵は、かろうじて風の気配を感じたかもしれないが、その時にはすでに首を後ろから締め上げられ、刃がすぐに喉に当てられ、一捻り、一放し。咳をする暇すらなく、全身から力が抜けていく。エリザヴェータは死体を半歩分だけ内側に引きずり、壁にもたれさせて座らせた。遠目には、ただの居眠りにしか見えない。


この女の仕事は、いつだって不愉快なくらい清潔だ。


俺は長く見ている気にもならず、そのまま前を押した。奥に進むと、第一プラットフォームの外縁部に出る。高所の手すりの後ろに傭兵が二人、一人は外を見張り、もう一人は俯いて何かをめくっている。マレクが手を二回合図すると、そっち側の班がすぐに足を止め、銃を上げ、呼吸を殺した。小さな「プッ、プッ」という音が二つ鳴り、高所の二人が前後して崩れ落ちる。手すりを叩く暇すらない。


普通の人間なんて、そんなものだ。


うまく急所を押さえれば、怪物よりよほど始末が楽だ。


俺たちは整備ピット脇のスロープを上がり、一階外周のプラットフォームへと踏み込んだ。


実際に足を踏み入れてみて、さっきの「第二次大戦FPS」発言が単なる悪態じゃなかったと悟る。ここは本当に、そのまんまだからだ。やたら分厚いコンクリの柱と手すり、狭い射撃孔、並んだ古い工場風の吊り下げ照明。床には粗い鉄板と錆びたリベットが敷かれている。唯一の違いは、銃を持って立っている連中が、歴史上の軍服ではなく、寄せ集めのタクティカルベストと古い軍靴、汚れすぎて色が判別不能な防寒ジャケットを着ていることぐらいだ。新しい銃、古い建築、古典的ドイツ臭が一緒くたに混ざっていて、まるで誰かが歴史とゴミを一緒にミンチ機に放り込んで、ひどい見た目の塊にして吐き出させたみたいだ。


俺は声を潜めて呟いた。「後はBGMだな。」


葉綺安(イェ・キアン)が俺の脇をすり抜けながら、氷のような口調で返す。


「まだ喋るなら、そのBGM、あんたが食らう被弾音になるわよ。」


言い終わるころには、彼女の身体はすでに角に張り付いていた。背後の気配は昼間とはまるで別物だ。馬三娘(マー・サンニャン)が上がってきてからというもの、彼女は見えない鉄の殻で全身を包まれたみたいに、まっすぐ立っているのに、目つきが普段よりずっと険しい。長槍はまだ肩の後ろに伏せられたままだが、呼吸のリズムを見れば、あれがいつでも抜かれる状態なのがわかる。


前方のプラットフォームには四人いた。


機械アームの下でタバコを吸っているのが二人、弾薬箱に腰掛けて舟を漕いでいるのが一人、エレベーターシャフトの外側にかかる短い橋の上を行ったり来たりしているのが最後の一人。全員人間。全員銃持ち。だが、今夜の本命ではない。


消すだけでいい。


俺は手で二回合図する。左二、右二。遠い方から、近い方へ。巡回している奴には、声を上げさせるな。


マレクの班から二人が右へ回り、俺はエリザヴェータとヴィクトリアを連れて左へ出る。ヴィクトリアは本来、哨戒潰しに最適ってわけじゃないが、「どこなら音が出ないか、どこを踏めば鳴るか」を知っている。足さばきは安定していて、緩んだ鉄板の縁を踏む時でも、先にどこへ重心を逃すべきかきっちり理解している。


(シキ)と葉綺安は、まだ動かない。


今のタイミングであいつらを出したら、ただの騒音源だ。牛小琴(ニウ・シャオチン)も馬三娘も、本来はドアをぶち壊し、ラインを断ち切り、人間を正面から叩き潰すための存在であって、煙草と煤の中で首を一つずつ切り落とすための道具じゃない。


距離が十メートルを切ったところで、左側の喫煙中の一人が、ふいに頭を傾けた。何か聞こえたのかもしれない。そこから先は、思考より手が早かった。俺はそのまま飛びかかり、一方の手で口を塞ぎ、もう一方の手で顎の下から刃を突き上げる。骨に当たって、少し引っかかったあとでようやく抜ける。身体を支えてやり、倒れさせない。隣のもう一人が半身を振り向きかけた時には、エリザヴェータが俺の右後ろからすでに滑り込み、喉の側面を刃で一閃。吊り下げ灯の下で血の線が一瞬だけ光り、そのまま力が抜けていく。


反対側から、ほぼ同時に二つの鈍い衝突音がした。


マレク側の二人が、居眠りしていた奴と橋の上の奴をまとめて処理したのだ。前者は肋骨の隙間に刃を差し込み、後者は手すりの死角に引きずり込んで、銃ごと落とさずに仕留める。ここまでのプラットフォームは、まるで俺たちが荷物を取りに来ただけみたいに静かだった。


俺が抱えていた死体を床に寝かせた瞬間、イヤホンから林雨瞳(リン・ユートン)の声が割り込んだ。


「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。