108.ポーランドゲリラのもてなし 3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
一人がしゃがみ、鍵を二回回し、扉の脇を三度叩く。短く、硬く、無感情なリズム。数秒後、扉の向こうから鈍い金属音がして、中の何かが引き外された気配が伝わってくる。それから鉄扉が内側へ押し開かれ、隙間から温かみのある黄色い光が漏れてくる。外の泥の上にその光が帯となって伸びる。地下に、もうひとつの、より静かで秩序があるが、決して優しくはない世界が、ゆっくりと口を開けているようだった。
マレクが先に車を降り、振り返って俺を一瞥する。
「俺たちの、まだマシな方の場所へようこそ」
俺はドア枠を掴んで地面に降り立つ。足はまだ本調子じゃない。エリザヴェータは俺の百倍優雅で、泥を踏んでも自分の城の絨毯を歩くみたいに進んでいく。後ろの車から降りてきた牛小琴は、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込み、自分がまだ死んでいないことを確かめるみたいだった。葉綺安は半開きの鉄扉を一瞥し、顔には何も浮かばないが、俺にはわかる。彼女も少しだけ肩の力を抜いた。林雨瞳は入口を一度確認してすぐに視線を外す。「ここは少なくとも、その場で埋める用の穴」ではないと認めたのだ。
俺は地下へ続く光を眺めながら、妙な感覚に襲われる。
チェコ側では、俺たちはひたすらぶつかり、奪い、逃げ続け、何かに尻を噛まれながら前へ蹴り出されてきた。このポーランドで最初に門を開いてくれた場所が、廃鉱山地帯の端に埋まった地下シェルターだなんて。
この世界は本当に腐っている。避難所ですら、墓場の顔をしていなきゃならない。
「行くで、周士達」牛小琴がかすれた声で言う。「ウチ、今は風呂入って、爆発せえへんベッド探すことしか考えられへん」
「立派な理想だな」
「黙っとき」
俺は短く笑った。今度は傷口が割れなかった。
それからマレクに続き、湿った冷たい泥を踏みしめ、地下へ開いたその扉をくぐる。
鉄扉が背後で閉まる音とともに、外の風と夜がきれいに切り落とされた。
代わりに押し寄せてきたのは、安心感ではない。もっとくぐもった何かだ——湿ったコンクリートの匂い、ディーゼル発電機の低い振動、消毒薬と汗と古い鉄錆の臭い、それに地下空間特有の、決して完全には乾かない空気。扉の先には短い階段が地下へ向かって伸びている。壁は荒い灰白色の塗料で塗られ、角という角が剥がれ落ちている。照明だけはやけにしっかりしていて、天井に並んだランプが一本おきに並び、やたらと白々しい光を落としている。この場所は、「雰囲気」で自分を誤魔化す気などさらさらない。
内扉の脇にはA.K.-DUCHの隊員が二人立っていた。銃口を俺たちの顔に突きつけたりはしないが、愛想よく微笑むわけでもない。一人はクリップボードを手に、もう一人は俺たちが何を携行し、何を失い、誰が足元をふらつかせているかをチェックしている。
マレクがまず振り返って、俺たち一行を見回す。
「先にルールを言っておく」彼は言う。「主兵装、爆発物、未登録の特殊装備は一旦預けてもらう。個人携行の護身武器は、状況次第で許可する」
「状況次第って?」
「今ここで誰かを殺すつもりがあるかどうかだ」
「基本的に、礼儀正しい方だ」
「ずっとそのままでいろ」
俺は口の端を引き上げ、それ以上は言わない。彼らの規則は、理不尽とは言えない。むしろ、予想より穏当だ。国境から這い出してきた連中から、爪の先まで全部剥ぎ取ったら、かえって場が不安定になると分かっているのだろう。
安検は決して屈辱的ではない。
「戦場慣れした連中が、最短時間で『この掩体ごと吹き飛ばされるリスク』を測る手続き」という方が近い。
階段を降りた先の半開放スペースに案内される。壁際には鉄製ロッカーと武器ラックが並び、隣のテーブルには分厚い台帳が広げられている。ヴィクトリア(ヴィクトリア・ローヴォヴァ・ベン・ベザレル)は、その番号付けと分類分けされた一時保管システムを見た瞬間、さっきより明らかに目に光が戻った。こういうものが好きなのだ。まだ完全には腐敗しておらず、ある種の手順に従って動いている技術系の流れを見ると、それだけで少し機嫌が良くなる。
「主武器」記録係の男が手を差し出す。
魔偶の残骸から取り外した大口径機関銃を渡した時、正直言って気分は良くなかった。愛着があるからじゃない。命綱をひとまず他人のロッカーに預けることへの、本能的な不快感だ。林雨瞳はRPGと、残っていたロケット弾を差し出し、ゴミを捨てるみたいな表情だった。葉綺安の長物、ヴィクトリアの腰のツールガン、牛小琴の磨き込まれた山刀——必要なものはすべて記帳されていく。
エリザヴェータの番になると、担当の男は二秒ほど彼女を眺め、「五百九十六歳・上位純血吸血鬼本人」を危険物リストに載せるか真剣に悩んだ様子だった。
最終的には、ごく理性的にスルーした。
その判断は、俺の好みだ。
手に負えないものは手に負えないと認める方が、「全部コントロールできる」と思い込むより、よほど賢い。
俺の腰のハンドガンとナイフは一本だけ残った。林雨瞳もハンドガン一丁を許された。葉綺安はショートブレード、小琴もマレクと一瞬だけ視線を交わし、もう一本の小型ナイフをブーツの中に戻した。マレクは見なかったことにする。これが地下武装組織の成熟だ。規則は掲げておくが、全員を同じラインまで締め上げるのが安全とは限らないと理解している。
安検を終え、ようやくこの場所が「生きている」ことが見えてきた。
この地下シェルターは決して大きくない。メインの通路も狭く、曲がり角が多い。壁はざらついていて、時おり古い配管が頭上を走る。そこには新しく断熱材が巻かれ、縫い合わされた血管のように見える。だが、今にも崩れそうなネズミの穴ではない。電力は安定し、換気も効いている。要所要所には新しい補強材が入っている。ここに手間も知恵もかけた人間がいる。
右手最初の区画は負傷者エリア。
完全な医療棟ではなく、倉庫を二部屋ぶち抜き、簡易ベッドと点滴スタンド、折り畳みスクリーン、ポーランド語のラベルが貼られた医療箱の山を詰め込んだだけ。中には二人の負傷者が起きていて、一人は胸に厚い包帯を巻き、ベッドの頭にもたれて水を飲んでいる。もう一人は左脚に外固定具を付け、歯を食いしばって包帯の交換に耐えている。うめき声も、わざとらしい悲壮感もない。聞こえてくるのはテープを切るハサミの音、器具が触れ合う金属音、痛みを抑え込んだ低い呼吸だけだ。
左側の奥が補給区画。
棚には番号付きのレーションボックス、缶詰、ペットボトルの水、インスタントコーヒー、メディカルキット、バッテリー、銃のスペアパーツ、分解清掃済みの冬季装備が並んでいる。隅には小さな温食台があり、大鍋から白い湯気が立ち上る。中身の匂いはマクドナルドといい勝負の安っぽさだが、熱気だけは本物だ。私服姿の女が二人、物資の棚卸しをしていて、手元のクリップボードをめくる手が速い。俺たちの方を振り返る余裕もない。ここには英雄譚はない。ただ、「生き続けたければ、誰かが包帯や弾薬、燃やせる燃料の数を覚えていなければならない」——そんな素朴で現実的な地下戦争の匂いだけだ。
牛小琴はその鍋をもう一度見た。今の彼女が立ったまま寝そうでなければ、絶対におかわりをしに行っていたはずだ。
さらに奥へ進むと、人が暮らしている痕跡が増えていく。壁には簡略化した地図、当直表、交代休憩の時間割、読めないポーランド語の略語が貼られている。通路脇を書類フォルダを抱えた誰かが駆け抜け、ベンチで銃を磨く者もいる。ボルトが前後に引かれる音が乾いた音を立てるたび、ここにいる全員がまだ戦場を離れていないことを思い知らされる。ただ一時的に地下に埋もれているだけだ。
俺たちはシェルターの奥の方へと連れて行かれ、通路の左右に狭いドアが並び始める。ドアはどれも古びているが、鍵と番号札だけは新調されている。マレクがその一つの前で立ち止まり、振り返って俺たちの方を見る。声の調子は、天気予報でも読み上げているみたいに平板だ。
「ここはホテルじゃない。でも、共同の物置部屋に押し込むこともしない」
彼は鍵束を俺に投げてよこす。
「一人につき一部屋、『自由』に使ってくれ」
俺は彼を一瞥する。「自由」という単語を口にした時、マレクはまぶた一つ動かさなかった。大変よろしい。自分が言っていることの本質を、よく承知している男だ。
一番近い扉の鍵を回し、中を覗く。
部屋は狭い。ドアに立てば、ほとんど全体が見渡せる。簡易バスユニット、幅広シングルベッド一台、机と椅子が一つ、ペン一本、紙数枚、内線電話一台、コンセント一つ、デスクライト一つ。それだけだ。
実に「気前のいい」ポーランド人だ。少なくとも大湊基地よりはマシだな——と俺は意地悪く思った。
正直に言えば、この部屋は徹底的に簡素だが、信じられないほど清潔でもある。シーツは新しく、タオルは四角くきっちり折り揃えられ、机に埃一つない。蛇口をひねると、配管の奥から本当に温水の音が這い上がってくる。俺の想像していた地下武装組織の拠点よりはるかに上出来だ。少なくとも「銃を抱えて壁際で夜を明かせ」という話ではない。
「順番に風呂、順番に寝ろ」マレクが言う。「傷は先に処理しろ。お湯は限られている。別荘気分はやめてくれ」
「ポーランド人のバカンスがこれなら、観光産業は地獄だな」
マレクは俺を見て、ようやく少しだけ笑みを浮かべた。
「今は観光業をやる気はない」
林雨瞳はドア枠にもたれ、顔色はまだ白いが、さっきまでの「今にも途切れそうな糸感」は少しだけ濃くなっていた。部屋のベッドを一瞥し、一言だけ訊く。
「鍵は?」
「内側から施錠できる」マレクは言う。「外からは無理だ。火事か、壁を爆破された時以外はな」
「それなら問題ない」
葉綺安は何も言わず、もう一本の鍵を受け取る。牛小琴は表情を作る余裕すらなく、ただ一言訊く。
「どれが浴室に一番近い?」
「全部に付いてる」
彼女は半秒だけ固まった。このポーランド人たちに対して、ほんの少しだけ「人として」の敬意が芽生えた顔だ。
ヴィクトリアはまだタトラのことが気になっているが、口を開きかけたところでマレクが先に口を挟む。
「トラックも武器もそのままだ。お前が起きているときに、技術班の作業を見せてやる。ただし、まずは休め」
ヴィクトリアは二秒ほど黙ってから、意外にも素直にうなずいた。
それはつまり、彼女も限界が近いということだ。
俺たちは通路に立ち尽くしていた。爆心地から拾い集められ、新しい容器に詰め直された残骸の群れみたいに見えただろう。この地下シェルターの光はさほど暖かくない。少なくとも、マクドナルドのニセモノの暖かさとは違う。だが、この中途半端な光の下で、俺は初めて本当に感じた。ポーランドは安全地帯じゃない。だが、少なくとも人がいて、ルールがあって、それを何とか維持しようとしている連中がいる土地だ。
そして、そういう場所はたいてい、もう一つのことを意味する——
上にいる「決定権を持つ人間」が、話しやすい相手じゃない、ということだ。
マレクは俺の頭がまだ回っているのを見抜いたのか、去り際に一度だけ足を止め、肩越しに言った。
「体を洗って、少し寝ろ。部屋でバカな真似はするな。電話線に触るな。出口を探そうとするな」
俺は片眉を上げる。
「さっき、ここは監獄じゃないって言わなかったか?」
「『完全な』監獄とは言っていない」
彼はドア枠から手を離し、いつも通りの平坦な声で締めくくる。
「カミラが、後でお前たちに会う」
そう言い残し、去っていった。
残されたのは、通路に絶えず唸り続ける蛍光灯の音、遠くの負傷者エリアから届く押し殺した咳、それから俺の手のひらの中でまだ金属の体温を残した部屋の鍵だけだった。
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