106.境界線 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「あれだ!」俺は叫んだ。
葉綺安がもう車のドアの脇まで走っていて、ライフルの銃床で固着したサイドドアを叩き割っていた。彼女は車体に張りついていた。鉄板に打ち込まれたナイフみたいに。後ろから特警二人が側方通路から飛びかかってきて、まだ近づく前に一人を蹴り飛ばし、もう一人が銃を上げた瞬間、シキが後ろから一発で肩を撃ち抜いた。
「その車に触るな!」俺は魔偶に向かって怒鳴った。
理解できるかどうか分からない。だがあいつは確かに俺が望む通りにした。勢いよく二歩前に踏み込んで、車棚と外周火力の間に直接立ちはだかった。機体全体が火を噴く壁みたいになって、Tatraへ向かっていた弾道を全部自分の身に引き寄せた。機関銃弾が胸甲に当たって火花の束を散らし、破片榴弾二発が足元で炸裂して、破片と石礫が下半身に叩きつけられてがんがん鳴り響いた。あいつは止まりもせず、機関砲を一回転させて、高爆曳光弾の連射を右前方の通路へ真っ直ぐ叩き込み、その一条を倒れた人間と残骸だらけにした。
俺は掩体の縁から飛び出して、ヴィクトリアと一緒に車棚へ向かって走った。
「鍵!」葉綺安が運転席から半身を乗り出した。声がエンジンフードと銃声に挟まれて籠もっている。「愛の力で発電しろってのか!」
走りながら、さっき倒れた軍警の腰から鍵束を引き剥がした。ベルトの半分まで一緒に引きずり出した。そいつはまだ死んでいなかった。喉から血泡を吹きながら、手を伸ばして俺を掴もうとした。俺は銃床を鼻梁に叩き込んで、顔ごと地面の水溜まりに押し込んだ。それから血まみれの鍵束を車のドアへ向けて放り投げた。
「おい、アイドル——」俺は怒鳴った。「今夜はお前が運転だ!」
葉綺安が片手で受け取った。最初から準備していたみたいに速い動きだった。彼女は一瞥して、その中の一本を点火孔に差し込み、手首をひねった。口の端が、本当にわずかだけ上がった。
「秋名山の戦神の腕前を見せてやるよ」
俺は弾を換えながら返した。「ひっくり返すなよ、アイドル」
彼女は返事をしなかった。次の瞬間、老いたTatraが本当に一度咳をして、エンジン区画全体が結核患者が夜中に血を吐くみたいな震え声を立てて、それから息を吹き返した。排気管から黒煙が塊になって噴き出し、前照灯は片方が壊れていて、もう片方は黄ばんだ眼球みたいに光った。その音は醜くて、粗くて、壊れかけていたが、俺の耳にはどんな祈りよりも心地よかった。
「車が動いた!」俺はエリザヴェータの方へ向かって怒鳴った。
「なら積めるものを全部積め!」エリザヴェータが返した。声は銃声より安定していた。「南側の熱源が入ってきておる!」
俺は顔を上げた。
そして彼女がなぜ「人」ではなく「熱源」と言ったのか、すぐに分かった。
一番南側の半倒れになった輸送フレームの列を抜けて、三つの輪郭が煙の中から近づいてきていた。体格は人間と大差ない。だが動き方が走っているんじゃない。脊骨を再構成されたような、短く爆発的な跳躍移動だ。止まる、伏せる、鋼柱の後ろから極めて低温の輪郭を一瞬だけ見せて、次の瞬間に十数メートル前へ跳ぶ。熱像の中では外殻が冷たく、核心部分にだけ小さな暗赤色の点滅がある。
リヴァイアサン装甲擲弾兵だ。
もう噂じゃない。本当に放り込まれてきた。
「まず武器を外せ!」俺は怒鳴った。
その瞬間に俺は分かっていた。車は手に入った。だがこの魔偶一台に頼って俺たちを送り届けてもらうのは夢物語だ。軍警が道を封じ、リヴァイアサンが噛みついてくる。そしてこの老いた怪物は目覚めた瞬間から命を燃やし続けている。
魔偶も分かっているみたいだった。
南側から新たに入ってきた三つの目標を察知したようで、上半身全体をそちらへ向けた。一頭目のリヴァイアサンが斜め梁の陰を借りて右脚の死角へ突っ込んできた。地面から弾け上がる黒い鉄の鉤みたいな速さだった。魔偶の反応が半拍遅れた。右膝の側面を思い切り撞かれて、機体全体が右へ沈んだ。二頭目が反対側から飛び上がり、爪みたいな前肢が腰部装甲を掠めて眩しい火花の筋を引いた。
魔偶が痛みに似た音を初めて出した。
冷却システムが瞬間的に回転数を上げ、蒸気圧弁が甲高く鳴いた。
次の瞬間、あいつは反撃した。
右腕の破障杭が下から上へ思い切り薙いで、二頭目のリヴァイアサンを地面から完全に打ち上げた。あいつは空中で打ち散らされた金属関節の塊みたいになって、車棚の支柱に激突し、支柱ごと後ろの棚架一列を道連れに倒した。左腕機関砲はほとんど一頭目の胴体に密着して一発撃ち込んだ。命中じゃない。上半身の半分を直接吹き飛ばした。破片と黒い粘性のある組織がトラックの幌骨組みに飛び散って、ぱたぱたと落ちてきた。
三頭目は突っ込まなかった。
遠くの装甲車の屋根に伏せたまま、ただ見ていた。
あの「見る」という行為が嫌いだ。
突っ込んでくるよりずっと嫌いだ。
「周!」ヴィクトリアが右側で怒鳴った。「こっちに来て!」
振り返った時、彼女はすでに魔偶が引き倒した装甲盾車の屋根に上っていて、俺に手を振っていた。彼女が立っている位置から魔偶の背後が見える。変形した鋼架と散乱した薬莢を踏んで走り寄った。見た瞬間、俺は思わず毒を吐いた。
魔偶の背脊の三本の放熱縫は元々魚の鰓みたいに開閉していた。今は真ん中の一本が丸ごと撃ち抜かれていた。
普通の弾痕じゃない。
大口径徹甲焼夷弾か同等の硬貫通弾が作った創口だ。外層の護板が内側へ向かって裂け開いていて、中の赤白く熱した熱交換板と導流溝が剥き出しになっていて、過熱した蒸気と冷却液が何度も噴き出している。噴き出すたびに、胸腔のコアの輝度がわずかに一段下がる。
「誰がやった?」俺は聞いた。
「後ろの輪式装甲車か、もっと遠くの重火器組ね」ヴィクトリアは俺を見ずにその創口だけを見ていた。「貫通した。中層の導流板が全部断ち切れてる。予備部品なし、加工環境なし、時間なし。修理できるかどうかの問題じゃない。もう熱崩壊に入ってる」
「あとどれくらい持つ?」
彼女は一秒黙った。計算しているのか、宣告しているのか分からなかった。
「動かなければ三分」
「まだ戦わせたら?」
「どれだけ見苦しく死ねるか次第ね」
噴き出し続ける白い蒸気の傷口を見ながら、胸の中がかえって冷えた。
いい。
これで話が単純になった。
チェコを突き抜けるまで連れて走る幻想も、廃車寸前の老いた怪物に綺麗な結末を作ってやる必要も、もう何もない。こいつはここで死ぬ。俺たちがやることは、死ぬ前にまだ使える牙を全部引き抜くことだけだ。
「外す」俺は言った。
ヴィクトリアがようやく俺を見た。
「全部?」彼女は聞いた。
「全部だ」俺は言った。「大口径機関砲、側面機関銃、火箭巣に残ってる発射可能なやつ、持ち出せるだけ持ち出す。車が出られるなら武器も一緒に引っ張り出す」
彼女はうなずいた。一言も無駄にせず、直接車の屋根から飛び降りて、走りながらエリザヴェータに工具と固定チェーンが要ると怒鳴った。俺も魔偶の方へ向かって走り出した。
あいつはまだ戦っていた。
さっきより激しくなっていた、とすら言える。
あの温度と圧力が最後に残っていた制御の余裕まで一緒に焼き切ってしまったみたいで、今の中に残っているのは最も原始的な戦闘指令だけだ。左腕機関砲が狂ったように車棚の外へ向けて撃ち続け、右腕破障杭が迫ってきた輪式装甲車の車頭を直接叩き潰して、前軸がその場で折れてタイヤが外れて飛んだ。南側の最後の一頭のリヴァイアサンがついに動いた。装甲車の屋根から飛び降りて、倒れた鋼梁を踏んで魔偶の背後の放熱創口に向かって直撃した。
走りながら銃を上げた。間に合わなかった。あいつはもう触れていた。
そのリヴァイアサンの機体が魔偶の背脊にほぼ密着して、前肢を鑿みたいに創口へ思い切り打ち込んだ。魔偶の機体全体が激しく震えて、コアの輝度が何かに絞め殺されたみたいに一瞬暗くなった。次の瞬間、あいつは振り返らなかった。そのまま後ろへ倒れた。
いや、後ろへ座った。
自分の上半身全体の重量で直接あいつをコンクリートの瓦礫の中に押し込んで、それから背脊の熱口から白く光る蒸気の塊が轟音と共に噴き出した。下敷きになったリヴァイアサンが高圧鍋を顔に押しつけられたみたいな、俺が記憶したくない種類の甲高い声を上げた。魔偶がもう一度追い打ちをかけた。右肘を背後と地面の挟み角へ思い切り打ち込んで、世界全体がその一撃と一緒に揺れた。
リヴァイアサンはもう動かなかった。
だが魔偶も、ゆっくりと立ち上がれなくなっていた。
立ち上がろうとして、左腕機関砲はまだ回っていたが、回転数が不規則になり始めていた。胸腔の赤い光が安定した脈動から断続的な明滅に変わっていた。俺はあいつの足元まで走り込んで、ヴィクトリアに早くしろと怒鳴った。彼女はすでに葉綺安とシキを連れて、解体用スパナ、切断鉗、固定索の一式を引きずって走ってきていた。エリザヴェータが後ろで林雨瞳を連れて火力を抑え、こちらへ近づいてくる者を全員外へ弾き返していた。
「左腕から先に外す!」ヴィクトリアは魔偶の外側の点検梯を登りながら命令した。「周、あっちを押さえろ!シキ、チェーンをかけろ!葉綺安、車をバックさせろ、荷台を合わせろ!」
Tatraが重い息をつきながら車棚の陰へバックしてきた。荷台が砕けた鉄と死体の間で角度を強引に作った。葉綺安の運転技術は本物だった。あんな大型車をあの最悪の路面でバックさせるのは、鋸で縫い物をするくらい無理な話だ。それでも彼女は一発で位置に入れた。荷台の弧形フレームが探照灯と火光の中で明滅して、骨を受け取る準備をしている鉄の肋骨みたいだった。
俺は薬莢とコンクリートの破片の中に跪いて外へ向けて点射しながら、ヴィクトリアがスパナで左腕の武器座のカートリッジを外していくのを見た。あの大口径機関砲は近くで見るとさらに醜かった。外層の断熱板が焼けて青みがかっていて、給弾槽の縁には先ほど打ち砕いた破片と黒赤色の半凝固した液体が張りついている。ヴィクトリアの手は安定していた。爆発寸前の怪物の上に立っているんじゃなく、停止した農機を修理しているみたいに。
「外れた、引け!」彼女が怒鳴った。
シキと俺が同時に固定索を思い切り引いた。葉綺安が車内で少しバックして車重を使った。あの機関砲が武器座からもぎ取られた。砲全体が外れた瞬間、魔偶の左肩の部分が護板ごと少し沈んだ。最後の一枚の皮膚を剥がされたみたいに。
それでもあいつは立っていた。
胸腔の赤い光が点滅していた。止まりそうな心臓みたいに。
「周、右後ろ!」エリザヴェータが突然怒鳴った。
本能で振り返った。全身を黒い装備で覆った軍警が十メートル以内まで来ていた。手に持っているのは小銃じゃない。肩射式対装甲弾だ。俺は弾丸を全部叩き込んだ。上半身が後ろへ折れ曲がった。それでもロケット弾は手から離れて飛んでいき、俺たちから近くない棚柱に当たった。支柱が爆裂して、棚屋根の半分が轟音と共に落ちてきた。
魔偶が一度頭を上げた。
その動きが恐ろしいほど遅かった。だがそれはまるで最後の選択みたいだった。
それからあいつは前へ歩いた。
一歩。
二歩。
車棚の前の遮蔽から出て、背後の噴き続ける白い蒸気の傷口を引きずりながら、外のより明るく、より開けた、全ての火力に晒される場所へ向かっていった。俺たちと外周の火網の間から、自分を完全に引き抜いた。
命令じゃない。
戦術でもない。
あいつが何かを理解したのかどうか、俺には分からない。
だがその瞬間、俺には分かった。あいつは俺たちのために時間を買っている。
火の中へ歩いていった。
外の銃口がほぼ一斉に向きを変えた。曳光弾、破片弾、爆震弾、徹甲弾——あの方向へ送れるものが全部送られた。装甲が一枚ずつ火花を散らした。右肩甲が吹き飛ばされた。左脚の外側の液圧管線が一区間爆発した。機関砲はもう外されていた。あいつは右腕の破障杭を地面に思い切り叩きつけて、砕石と鋼板を一面掻き上げて前方の火点へ向けて撒き散らした。
「続けて外せ!」俺は怒鳴った。声が嗄れていた。
誰も躊躇しなかった。
続く二分間、俺たちはまだ完全には死んでいない軍馬を解体する屠夫だった。右側の双連機関銃座を一組丸ごと外して、シキと俺で荷台の右後ろへ担ぎ込んだ。火箭巣に残っていた四発のうち、ヴィクトリアは状態のいい二発だけ選んで、残りの二発はその場で捨てた。給弾箱、予備銃身、固定三脚架、弾鎖箱、作動把、簡易照準器——全部車に放り込んだ。林雨瞳は自分で一番使いやすい位置を選んで、RPGと予備弾を棚架と側板の間に固定した。急カーブでも転がり出ない角度で。
最後にもう一度振り返った時、魔偶は半跪きになっていた。
半身が火と煙の中に埋まっていて、背脊の熱口は蓋を開けた炉みたいで、白い蒸気と炎が一緒に空へ向かって噴き上がっていた。あいつはまだ完全に力の入る最後の片手で、飛びかかってきたリヴァイアサンの一頭を掴んで地面に押しつけて、一度また一度と叩きつけていた。叩くたびに胸腔の赤い光が一段暗くなった。
俺はふと思った。もしこいつに本当に魂があるとしたら、作られた時からあったんじゃない。
捨てられて、埋められて、今日みたいな時のために掘り出されるのを待って、そして再び動き始めた心臓を無理やり押し込まれた後に、初めて生まれたものだ。
「周士達!」エリザヴェータの声がその一瞬から俺を引き戻した。「乗れ!」
俺は振り返らなかった。
荷台の前部に飛び乗って、両手で固定したばかりの大口径機関砲の握把を掴み、ヴィクトリアに向かって怒鳴った。「固定は終わったか?」
「お前が死ぬ前には持つ!」彼女は最後の弾箱を一蹴りで俺の足元に飛ばして、自分は荷台の左側へ翻り上がった。動きが鮮やかすぎて、実験室じゃなく武器の後ろに生まれてきた人間みたいだった。
エリザヴェータが助手席のドアを引いて乗り込んだ。林雨瞳とシキが前後に続いた。葉綺安が運転席でクラッチを踏み込んで、シフトレバーと格闘した。車体が一度震えて、重いタイヤが砕けた鋼板と死体を踏み越えて、Tatra全体が勢いよく飛び出した。
車棚を突き抜けたその瞬間、背後からそれまでのどの爆発とも全く異なる轟音が届いた。
砲弾でも、油ドラム缶でも、車両の誘爆でもない。
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