101.撤退じゃない、逃難だ 2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
最初の警察検問口を迂回してから、俺たちはさらに四十分近く東へ切り進んだ。
空が明るくなるにつれ、道は難しくなる。
夜には夜の利点がある。視界が悪い分、向こうも遠くは見えない。夜が明ければ、全てが姿を現し始める。どの道が詰まっていて、どの道がまだ空いているか。人の流れがある場所とない場所。封鎖が本物らしい場所と、急ごしらえの外皮だけの場所。全部が、夜よりはっきり見えてくる。
その「はっきり」が、暗闇より危険な時がある。
前を行く葉綺安が突然しゃがみ、手を挙げて停止の合図を出した。
エリザヴェータが寄って、葉綺安が示す方向を見る。古い枕木と廃棄レールが積まれた半廃棄の側線を挟んで、俺にも見えた——前方に、本来なら小型保守車両の出入りにしか使われないはずの踏切口が、臨時検問所に作り替えられていた。
警察の臨時封鎖帯じゃない。明らかに軍の匂いがする、素早い設営だ。
軽装甲車二台が斜めに角度をつけて停まっている。車頭は幹線道路に正対させず、意図的にずらして交差視野を作っている。横には三角形の土嚢と折り畳み式の車止め架が積まれ、汎用機関銃が左右それぞれ一挺ずつ角を押さえていた。検問所の後方には一本の細い通行路が引かれていて、一方向に一台だけ通れる幅しかない。数名の兵士はチェコ軍の迷彩と防弾ベストを着ていて、銃口はほとんど下に向けているが、立ち位置は全部あるべき場所に収まっていた。無駄な動きもなく、わざとらしい威圧もない。
「第601の外線か配属部隊ね」エリザヴェータが低く言った。
俺は頷いた。立ち位置を見ればわかる。これは警察が兵隊の真似をしているんじゃないし、民間防衛の寄せ集めでもない。本当に戦術的思考で設営された口だ。
「迂回する?」葉綺安が訊く。
ヴィクトリアがそちらを一瞥して言う。「迂回しきれるとは限らない。東線を外へ向かうほど、こういう口は増えるだけよ」
言いたいことはわかった。迂回し続ければ、最後は自分たちが元の場所に戻るか、もっと準備のない場所に追い込まれる。問題は封鎖があるかないかじゃない。最小のコストで抜けられるかどうかだ。
エリザヴェータが俺を見た。
俺は二秒考えて言った。「まず、誰を止めて誰を通すか見る」
俺たちは資材置き場の外周に沿ってもう少し横へずれ、検問所の正面が見えるが逆光で見透かされにくい位置を見つけた。錆び付いた廃棄のフラットベッドトレーラーがあって、底盤が完全に固まっていて、半身を隠すのにちょうど良かった。
すぐに一群の人が来た。
整然とした避難の列じゃない。老夫婦一組、小型バン一台、デリバリーのバイク乗り二名、キャリーケースを引いた若い女性、夜勤明けで工業区から引き上げてきたような作業員三人——そういう寄せ集めだ。軍は彼らを一度に全員を止めることはしなかった。分流させる。まず車のエンジンを切らせ、降車させ、荷台を開けさせる。それから人を見る。証明書を見る。武器、燃料、大型工具箱、不審な金属箱がないか確認する。
余計な怒鳴り声は一切ない。それでいて、冷たく速い。
全部は聞こえなかったが、いくつかの言葉は聞き取れた。
「どこへ行く?」 「なぜ元の住所を離れた?」 「荷台を開けろ」 「この先の通行は保証できない。待つなら端に寄れ、待てないなら引き返せ」
一番面白かったのは、軍が「通ってはいけない」とは言わないことだった。ただ、何の保証もしない。それは強制封鎖より始末が悪い。保証がなければ、人々は自分たちで互いを詰まらせる。
「全面封鎖じゃない」葉綺安が低く言った。
「そうだ」俺は言った。「全面封鎖できる力も、向こうにはない」
ヴィクトリアの視線は、軽装甲車二台の後ろにある一方通行の細い通路に張り付いていた。「あの通路、民間用に残してるわけじゃない」
エリザヴェータが続けて見る。「医療、軍需、後送用か」
「それに、工業維持もあるわ」林雨瞳が後ろからごく小さく補った。「今すぐ全停止できない工場がある。止めた方が後々もっと面倒なことになる」
これが東線の嫌らしいところだ。普通の秩序が崩れても、全部が一緒に止まれるわけじゃない。炉はすぐには落とせない工場がある。突然切れない圧力システムがある。外が荒れていると知りながらも、手持ちの荷物や機材や人員を先に移さなければならない車列がある。だから封鎖と維持が同じ道の上に無理やり共存させられ、どの検問所も硬くて不完全な骨みたいになる。
「遠回りしすぎても駄目だ」俺は言った。「全員一緒に当たるのも駄目だ」
エリザヴェータはすぐに察した。「先に二人で口を試す」
彼女は葉綺安とシキに目を向けた。「お前たち二人が先に行け。工業区の内部移送を装え、不審物は持つな。通れたら目印を残せ。完全に止められたら無理に押すな、南側に回れ」
葉綺安は頷いた。何も訊かなかった。バックパックの中の、普通の避難者には似合わないものを全部底に押し込み、外には汚れた上着と飲みかけの水だけを出した。シキは髪をぐしゃぐしゃにして、上着を裏返しに着た。それだけで、隊の中にいた時の精悍な空気が消えて、徹夜明けで身なりを気にする余裕もなくなった後方要員に見えた。
二人が出発する前に、俺は一言だけ言った。「演じすぎるな。普通であればあるほどいい」
二人は頷いて、背を向けて歩いた。
資材置き場の外周を抜けて検問所へ向かう二人を俺は目で追った。距離が開くと、人は思ったより小さく見える。こういう時に一番きついのは銃口じゃない。待つことだ。向こうの兵士が二人を呼び止め、証明書を確認し、質問する。秒針が伸びる。内容は聞こえない。葉綺安は卑屈にも尊大にもならない立ち方をしていた。シキは本当に眠くて倒れそうな顔を演じていた。兵士が二人の後ろの空路をもう一度確認した。後続がいないか見ているんだろう。
それから、曹長らしき一人が横にずれた。
二人は通された。
俺はすぐには動かなかった。二人通ったからといって、一団が通れるとは限らない。
案の定、十数分後、前方で別の騒ぎが起きた。北側から切り込んできた小型トラックの荷台から、未申告の大型工具数本と燃料缶二つが出てきた。運転手がいきなり感情的になり、声がどんどん大きくなる。周りで待っていた人々も前へ詰め寄り始めた。
検問所の兵士たちは怒鳴らなかった。素早く位置を変えただけだ。
左の機関銃手が銃身を上げ、群衆の方向に向けた。銃口は人に向けず、前方の地面に向けている。歩兵二名が一歩前に出て通行路を塞ぐ。もう一人が運転手を車頭の脇に押し返した。乾いた動きで、余計な動作は一切なかった。
それから無線が鳴った。
俺たちは距離が近かったので、今度は半分聞こえた。
「——Alpha Checkpoint to East Sector、口一、一時的な混雑発生、制御済み。未申告燃料および大型工具を発見、工業移送を装った可能性あり、処置指示を要請」
無線の返答は早かった。
「East Sector 返答、車両拘束、人員留置、物資分離。民間人を三十名以上集積させるな。必要であれば後列を切断。繰り返す、必要であれば後列を切断」
この一言で、この検問所にはもう賭けられないとわかった。
向こうはもう検問から群衆の詰まり対処に切り替えていた。群衆が切断されれば、後から通り抜けようとする者はもっと目立つ。
エリザヴェータも読んだ。小声で言う。「南側に変更。排水帯沿いで行く」
俺は頷いた。
葉綺安とシキが戻るのを待たず、事前に決めていた通りに南側へ切った。コンクリートの排水路の外縁に沿って延びる保守帯がある。普段は点検員か廃品回収業者しか歩かないような道だ。路面は悪く、壊れた金属フェンスを何度もまたぐ必要があるが、普通の人間の逃げ道に出てくることはない。
少し歩いたところで、葉綺安とシキが別の側から合流してきた。二人は一言も無駄にしなかった。情報を最短に圧縮して渡す。
「通れる。でも検問口の先に第二チェックがある」葉綺安が言う。
「主に工具、燃料、大型金属箱と集団行動を篩にかけてる」シキが補う。「手も見てた。職人の手すぎると、余計に訊かれる」
ヴィクトリアは無意識に自分の手を見て、傷ついた方の手を袖口の中に引っ込めた。
排水帯に迂回してから、プラハが本当に崩れていく光景が少しずつ顔を出した。
火の海でも、死体の山でもない。本来なら誰かが維持しているはずの細部が、全部主を失っていく光景だ。コンビニのシャッターが半分だけ上がっていて、中はまだ明かりがついているが外に人はいない。路面電車が分岐点の手前で止まっていて、ドアは開いたまま、運転手も乗客もいない。小さな地域診療所の前には、車を待てない老人と家族が溢れていて、中の医療スタッフは明らかに人数が足りていないのに、それでも誰かがスマートフォンを耳に当てて「もう少し待って、車が来るから」と言い続けている。ゴミ収集車二台が同じ路地の入り口で詰まっていて、運転手は両方とも消えていて、ゴミ箱が一面にひっくり返っているが、誰も気にしていない。
廃墟になりきれていないから、余計に死体に見える。
「見すぎるな」エリザヴェータが言った。
心が軟らかくなるのを恐れているんじゃない。リズムが乱れるのを恐れているんだ。この東移線を歩く者が一番やってはいけないのは、壊れたものを一つ一つ見るたびに、自分が何とかしなければならないと思い込むことだ。そういう人間は二ブロックも持たない。
昼前に、半休止状態の貨物支線の脇で、二つ目の封鎖に当たった。
今度は警察でも正規軍の検問所でもなかった。「普通の交通事故による封鎖」に見えるよう、意図的に作り込まれた偽の外皮だ。
前方にレッカー車二台、事故処理車一台、交通局仕様の警告板数枚、反射ベストを着た人間が回転を指示している——どこかの鉄道か道路で問題が起きて、臨時修繕中に見えた。だが俺が立ち止まったのは、その人間たちの立ち位置だった。
綺麗すぎる。
一人が角に立ち、一人が側線を押さえ、一人が遠端を見て、一人が中央で書類処理をしているように見える。訓練が行き届いているだけの可能性もゼロじゃない。だがその「訓練の行き届き方」がここに出てくるのが、かえって不自然だった。
俺は低い壁の後ろに伏せ、十秒だけ見てから、エリザヴェータに言った。「偽物だ」
彼女も一瞥して頷いた。「しかも、適当に演じてるわけじゃない」
葉綺安が声を落とす。「K.A.F.K.A.の残存ライン?」
ヴィクトリアはその反射ベストの人間たちを見て、眼差しが冷えて固まった。「それだけじゃない。地方の行政の殻と、そこに潜り込んだ人間を混ぜて使ってる」
正規の検問所より厄介だ。正規の軍警は少なくとも、ある程度予測できる手続きとリスクの制約を受けている。この半官半渗透型の封鎖は全く違う。通行を維持するためのものじゃない。通行の中から特定の人間を拾い出すためのものだ。
「触るな」俺は言った。
今回は誰も反論しなかった。
鉄道下の排水暗渠を這って抜ける時、膝と手のひらに泥と錆が食い込んだ。暗渠の反対側は道じゃなく、廃棄された変圧器の外殻と古いケーブルドラムが積み上げられた小さな空き地だった。シキが這い出て最初に言った一言。
「なんで賢い人ほどどんどんネズミみたいになるのか、やっとわかった気がする」
誰も笑わなかった。
正確すぎたから。
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