101.撤退じゃない、逃難だ 1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
夜明け前、プラハ東縁の空の色は最悪だった。
夜でも朝でもない。工業粉塵と焼けた金属の気圧に押し潰されて、空一面にべったりと塗りつけられたような灰色だ。高いところから見れば、この街はまだ街灯の一部を点け、幹線道路にはまばらな車の流れがあり、遠くの塔やクレーンも立ったまま——夜明け前のひとときだけ止まる、どこにでもある都市みたいに見える。だが実際に街区の中へ踏み込めば、都市を動かしていたリズムがもうバラバラに砕け散っているとわかる。
信号はまだ点滅しているが、誰も本当には従っていない。サイレンが時々空気を切り裂くが、もうどこかが制御されているという意味じゃない。市政車、消防車、パトカー、民間の小型トラック、乗用車が、強制的に一方通行で流された数本の道路に押し込まれている。みんなまだ普段通りのことをしているつもりだろうが、全部が半拍、いや一拍丸ごと遅れていた。
俺たちは貨物支線の外側、フェンスと設備ピットに沿って延びる保守道を東へ切り進みながら、誰一人口を開かなかった。
沈黙じゃない。節約だ。今の俺たちに足りないのは結論でも感情でもない。一歩踏み出す前の半秒、前がまだ道かどうか見極める、その半秒だ。
エリザヴェータが先頭を行き、葉綺安がその左後ろ、シキが右側を押さえ、俺とヴィクトリアが最後尾につく。隊形は細長い一本の線——一目で一団と見られず、かつ何かあった時に互いを完全に見失わない、その絶妙な間隔だ。林雨瞳は中間に挟まり、地図とあの何度も折り畳まれた紙は彼女のバッグの中にある。方向判断はヴィクトリアが担い、その方向を実際の街区の中で歩ける道に変換するのは、エリザヴェータと葉綺安が地形と人の流れを同時に読みながらやるしかない。
新ホテルを出た後、プラハの圧迫感は単純な撤退プレッシャーに変わると思っていた。東線に実際に踏み込んで初めて、それが違うとわかった。真に重くのしかかってくるのは、後ろからの追手じゃない。前方にある、まだ灯りのついた秩序の外皮が、全部静かに機能を失っていくことだ——しかも派手じゃない。爆発的でもない。演じてもいない。ただ、もともとピンと張っていた皮が、少しずつ緩んでいく。その「緩み」の方が、いきなり断ち切れるより、ずっと腹の底を冷やす。
俺たちが最初に見た検問所は、軍のものじゃなかった。
普通の警察官が臨時で張り、しかし明らかにもう持ちこたえられなくなっている封鎖口だった。
工業地帯の外環と住宅区の縁をつなぐ二車線道路の入り口に位置していた。警察車両二台がハの字に横付けされ、市政の保守車両が無理やり引っ張り出されて壁になっている。封鎖テープは三本張られているが、そのうち一本はどこかの車に引っかけられたのか、千切れて宙に垂れている。路面には反射コーン、散乱したプラスチックバリケード、雨と埃で汚れた臨時迂回の看板。そして三十代前半に見える、目の下に血管が浮き出た警官が一人、車のドア脇に立って群衆に向かって手を振り、口は忙しなく動いているが声はもう嗄れていた。
「近づくな、左から回れ」エリザヴェータが振り向かずに一言だけ言った。
俺たちは止まらず、フェンスの外側に沿ってそのまま回り込んだ。距離は十分近く、その警官が何を叫んでいるか聞こえるほどだった。
「前は通れない!引き返せ!南環から行け!」
誰かが怒鳴り返す。「南環も封鎖されてる!」
別の男がキャリーケースを引きずり、顔色は土気色で、片手にはサンダル履きの子供を掴んでいた。ほとんど叫ぶように言う。 「じゃあ俺たちどこへ行けばいい!?」
その警官は口を開いて、本当に半秒だけ、答えが出なかった。
たぶん、自分でもわからなかったんだろう。
フェンスの影から抜け出す時、俺はその封鎖口を一度だけ振り返った。警告灯はある。制服もある。武器もある。命令口調もある。でもあれはもう秩序じゃない。秩序が死ぬ前に、まだ倒れていないだけの姿勢だ。
***
市警東区分署の緊急連絡室で、ハヴェル副署長(ハヴェル副署長)は何度も書いては消した白板の前に立ち、三杯目の冷めたコーヒーを飲んでいることにも気づかずにいた。
深夜三時から、東区への通報内容は「現場接触」から「封鎖失効」「避難失序」「指揮系統の衝突」「出所不明の行政命令の混入」へと変わり続け、四時半を過ぎた頃には、まともに報告を上げられる部隊のほぼ全てが同じ問いを投げてきていた。どの道を封じ、どの道を通し、どの部隊の命令がまだ有効なのか、と。
ハヴェルの前には、三つの異なるシステムから届いた臨時管制命令書が広げられていた。三枚とも、一見合法な印章とタイムスタンプがついている。内容は互いに矛盾していた。一枚目は東外環から工業区へ向かう全車線の閉鎖を求めている。二枚目は民間避難のために少なくとも二本の道を確保するよう求めている。三枚目は、元々民間貨物支線だった一区間を軍事優先通行路に指定していた。
彼はその三枚を机に叩きつけ、通信官に言った。 「全部、発信元に差し戻して確認を取れ。確認が取れるまで下に流すな」
通信官の顔色も同じくらい悪かった。 「確認が間に合いません、副署長。現場は今、目で見える封鎖と目で見える人間しか信じません。文書がどれだけ正確でも、検問口が守れるかどうかは別の話です」
ハヴェルは反論しなかった。本当のことだったから。
東区の最大の問題は、命令がないことじゃない。命令が多すぎることだ。人がいないんじゃない。どの線も人が足りないんだ。全部が戦場になっているわけでもない。戦場になっていない場所も、もう普段通りには動かせなくなっている。都市の秩序が崩れる前は、いつも「ちょっと混乱してるだけ」に見える。みんながそれを本当に崩れたと気づいた時には、たいてい二つのことしかできない。最悪の穴を塞ぐか、残りの人間が自分で隙間を探して出ていくのに任せるかだ。
「URNAは?」彼は訊いた。
通信官がページをめくる。「接敵部隊は主接触区域から撤退完了。残存人員は第二線に統合、任務は軍との連携による外周誘導と傷員輸送に変更」
ハヴェルはその一文を一秒見つめ、顔色がさらに沈んだ。この言葉を翻訳すれば、こういうことだ——警察はもう状況を押し戻す役割を担っていない。状況が悪化する中で、なるべく多くの人間が道端で死なないようにする役割だけが残った。
「第601の最新通報は?」
「東工業地帯沿線に臨時検問ラインを設置予定。ただし全面封鎖ではない。理由は兵力不足、および医療・後送・必要な工業通行の確保のため」
ハヴェルはしばらく沈黙してから、一言だけ言った。
「つまり、本当に頭の回る連中は全員東へ潜り込むってことだ」
通信官は返さなかった。この言葉を口にした瞬間、警察側も東線が亀裂だとわかっていながら、その亀裂を先に塞ぐ力がないと認めることになるからだ。
できることは、警察無線の中で口ぶりだけを硬くして、まだ何とかなるように聞かせることだけだった。
「全区放送」ハヴェルは言った。「全検問口注意。正体不明の集団移動目標に対しては、停止・識別・分流を優先とする。工業廃線および無照明保守帯への追跡は、不必要な場合は行うな。繰り返す、不必要な追跡は行うな」
命令が出た時、全員がわかっていた。これは無力感を帯びた命綱だ。追いたくないんじゃない。追い込んだら死ぬのは自分たちの方だとわかっているんだ。
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