↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
383/593

98.犠牲 98-4

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

上からまた一撃。


リヴァイアサン装甲擲弾兵は、下で死んだのが誰かなど気にしない。この場所がどの老職人の世代の最後の手だったかも関係ない。進入方法はただ一種類だ。道がまだ清まっていないなら、もう一度清める。機構がまだ完全に崩れていないなら、崩壊さえも推進の一部にする。 それが奴らの一番恐ろしいところだ——お前が何を失ったかを理解する必要がない。前に進めるかどうかだけ確認すればいい。


俺は歯を食いしばり、補鎖片と半月型の真鍮のキー片を掌に死ぬほど握り込み、もう一方の手でヴィクトリアを引き上げた。彼女はまだ抗っていて、爪が俺の手の甲に食い込んだ。エリザヴェータが反対側から肩を押さえて、半ば引きずるように半ば押し込むように、梯子口の上へ追い立てた。二層はもう立てる場所じゃなかった。銅盤の壁は大半が砕け、古い導拍フォークが死んだ鳥の骨みたいに床に散らばり、工房の床からは灰と火の粉が降り続けていた。


二度目を振り返る余裕は、なかった。


本物の撤退は、そんな贅沢を許さない。


地上の工房に上がると、前半分がすでに打ち抜かれていた。あの古い作業台は木の残骸に変わり、壁の工具の影は全部吹き飛び、右側の大きな鐘の筐体が真ん中から割れていた。誰かに一発で殴り抜かれたみたいに。 外の通りにはいつの間にか二種類の音が響いていた。一つは遠くで混乱したサイレン。もう一つは近くで、もっと冷たく、もっと短く、もっと規則的な、制圧指令の声だ。前者は、まだ自分にこの状況を制御できると思っている街の最後の息みたいだった。後者は、本当に街区を接収しようとしている人間がもう待ちきれなくなっている音だった。


工房を飛び出した瞬間、夜の旧市街は一枚皮を剥がされたみたいに変わっていた。


路地の遠端で火が上がっている。街全体が燃えているんじゃない。いくつかの点が、意図的に灯されている。 警察は本当に来ていた——二つ先の交差点に、数台のパトカーが急停車していて、巡察が降りた時点ではまだ手順を保とうとしていたが、次の瞬間には身を伏せるしかなくなっていた。誰かに止まれと言われたんじゃない。もうここは彼らが声を出せる局面じゃなかったからだ。通り全体が数分のうちに「地元の秩序がまだ機能する」という可能性を失った。灰章の通知の中に、封鎖の言い訳の中に、私服の阻線の中だけに存在していた機能不全が、この瞬間に目に見える現実として打ち出された。


エリザヴェータは俺たちを表通りには向かわせなかった。


向かいの帽子屋の裏にある暗い路地へ、直接切り込んだ。あの路地は一列縦隊がやっとの幅で、壁は湿っていて、足元は旧市街の積年の水と煤灰だ。彼女が先頭を走り、振り返りもせず、最短の言葉だけで方向を告げた。


「左。マンホールを踏むな。次の息の前にアーチをくぐれ。早く」


俺はほぼヴィクトリアを担いで走っていた。


意識がないわけじゃない。ただ全身がまだ後ろへ向かおうとしていた。 足じゃなく、心が。口はもう叫んでいなかったが、呼吸が完全に乱れていて、一息ごとにあの「おじいちゃん」という声がまだそこに詰まって出きっていないみたいだった。彼女はいつも技術で、冷静さで、感情を仕事の中に包み込んで自分を支えてきた。でも井底のあの瞬間が、その全部を打ち抜いた。今の彼女は技師じゃない。判読者じゃない。プラハ篇でずっと廃墟の傍に冷めた顔で立ちながら本物と偽物を聞き分けてきた女じゃない。たった今、目の前で祖父が死ぬのを見た、一人の人間だ。


二本の路地と三つの角を抜けて、とっくに廃業した印刷屋の裏口でようやく止まった。


葉綺安(イエ・チーアン)は予定より早く来ていた。前の騒ぎが彼女にも早めの撤収を強いたのだろう。俺たちの様子を見た瞬間、彼女の顔色が変わった。


「ヨゼフは?」


誰も答えなかった。


答えられるものが、なかった。


リン・ユートンは奥の薄暗い接応点で待っていて、テーブルには次の動線のために簡単な地図が広げてあった。でも彼女はヴィクトリアの顔を見た瞬間、その地図の少なくとも半分は今夜もう必要ないと分かった。シキはここにいない。まだ新市街の外周で最後の後始末をしている。だからこの空間はいっそう狭く、静かで、生きている人間が息をするために臨時に掘られた穴みたいだった。


俺はヴィクトリアを壁際の椅子に座らせた。


彼女は一言も言わないまま来ていた。本当に座った瞬間、手が急に力を失ったみたいにゆっくり開いた。その時初めて気づいた。掌の中に、いつの間にか小さな欠片が握られていた。俺の持っている真鍮のキー片じゃない。ヨゼフの井底の道具箱から落ちた、ごく細い古い歯車の破片だ。縁に黒い油と、乾いた血が少しついている。


彼女はその欠片を見ていた。長い間、ただ見ていた。


部屋の中で誰も声を出さなかった。葉綺安は初めて一言の毒舌も出なかった。エリザヴェータはドアの脇に立ち、外の夜が本格的に乱れ始めるのを、全員のために押さえていた。リン・ユートンは聞こうとしていた言葉を全部飲み込んで、ただ静かにテーブルの地図を折り畳んだ。「閉鎖は成功したか」「北の線は断たれたか」「次はどこへ」——そういう問いはどれも、今この瞬間、裂けたばかりの傷口を仕事で塞ごうとする行為に等しかった。


それでも、俺がその仕事を最初に拾い上げなければならなかった。


ヨゼフが補鎖片を俺の手に押し込んだ瞬間、この役目ごと押し込まれたのだから。


半月型の真鍮のキー片と補鎖片を一緒にテーブルに置いた。声は、誰かを起こしてしまいそうで怖いくらい低かった。


「北の線は断たれた」


エリザヴェータはドアの前で、振り返らずに、ただ短く「ああ」と言った。


「きれいに断たれた」


その言葉はプラハに向けて言ったのであって、部屋の中の人間に言ったのではない。


俺たちには全員分かっていたから。ヨゼフは無駄に死んだんじゃない。七割方測られていたあの道を、自分の命で完全に塞いだ。だがそれだけに、断ち切りが完璧だったからこそ、街はこれからもっと激しく跳ね返す。北の線が一本消えたからといって、向こうは止まらない。もっと直接的に、もっと理屈のない方法で入ってくるだけだ。つまりヨゼフの死は終わりじゃない。本当の制御不能の始まりだ。


俺はヴィクトリアを見た。


彼女はまだ泣いていなかった。


ただ欠けた歯車の破片を握り、怖いくらい静かだった。 今ここで泣いてくれた方が、まだましだった。この静けさは、何かが骨の中で割れた音そのものだ。


長い時間が過ぎた。


それからようやく、彼女が動いた。


俺を見るんじゃない。誰かを見るんじゃない。


ただあの欠片を、もっと強く握り込んだ。祖父の最後の気配が染みついた黒い油と血を、自分の骨の中に全部押し込もうとするみたいに。そして、とても低く、とても小さく、こう言った。


「……おじいちゃん」


井底で叫んだ声より、ずっと小さかった。でも、ずっと痛かった。


あの時の声は、まだ呼び戻せると思っていた。信じたくなかった。本能だった。まだ認めきれていなかった。今のこの声は違う。 この声が出た瞬間、死がついに本当に落ちた。老職人でも、接触窓口でも、番人でも、いつも一手を残しておくあのヨゼフでもなく——彼女の祖父が、本当にいなくなった。


その声が落ちたのと同じ瞬間、旧市街の方角からまた一つ、より遠く、より重い爆発音が届いた。


今度は試しじゃない。脈を測るんでもない。どこかの死に節を先触れで叩くんでもない。


これはプラハの局勢が、本当に別の方向へ傾き始めた音だった。


葉綺安が窓の隙間の外の夜を向いて、珍しく顔が白かった。リン・ユートンは本能的に地図に手を伸ばしかけて、紙に触れた瞬間に止まった。今夜を境に、地図上の多くの線はもう、じっくり分析できる情報じゃない。生きている人間が焼け死ぬかどうか、路地で追い詰められるかどうか、部屋から引きずり出されるかどうかの現実に、すぐ変わるのだと気づいたみたいに。


エリザヴェータがようやく振り返り、視線が俺に落ちた。


「今どうすればいい」とは聞かない。「まだ立っていられるか」とも聞かない。


ただ一言だった。


「周士達、そなたの番じゃ」


それだけだ。


余計な慰めもない。きれいな言い回しもない。


でも俺には分かった。彼女が言ったのは全部だ——


ヨゼフが死んだ。北の線が断たれた。ヴィクトリアが割れた。プラハが本当に制御を失い始めた。この瞬間から、「私は判読するだけ」「私は接触窓口だけ」「私は外周担当だけ」という場所に自分を隠せる人間は、もう誰もいない。生き残った者が、すぐに受け止めなければならない。


俺はテーブルの上の二枚の金属片を見て、ヴィクトリアの、欠けた歯車を握り締めた手を見て、それから顔を上げて、窓の外を見た。


火と警笛で自分の夜を書き換え始めた、プラハを。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。