92.罠 92-1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
黒い布がめくられた瞬間、鐘楼の底部に漂っていたもともと澱んだ空気が、さらに一段深く沈み込んだ気がした。
俺が最初に感じ取ったのは、残骸の姿ではなかった。
匂いだ。
焼けた金属、古い機械油、長く封じ込められた埃。その中に、極めて薄く、しかしどうしても消しきれない苦みが混じっていた。昨夜K.A.F.K.A.の旧い節点で嗅いだ匂いだ。今朝、荒らされた後の場所でも一度嗅いだ。ただここはより近く、より新しい。誰かがつい最近、どこか別の場所からこれらを運び込んだばかりで、殻に残った熱すらまだ完全には散っていないようだった。
ヴィクトリアはすでに前へ出ていた。
飛びついたわけでも、おっかなびっくり近づいたわけでもない。足取りは安定していたが、さっきより半寸だけ速かった。取り乱したのではない。脳みそより先に身体が判断を下したのだ——これらは遠くから眺めるものじゃない。まだどれだけ動けるか、どれが死んだふりをしているか、どれがいきなり牙を剥くかを、まず確かめなければならないと。
彼女は一体目から見始めた。
そのゴーレム(魔偶)は胸部が完全に開かれ、内部の刻印線が幾層にも噛み合って固まっていた。互いに譲らない二つの命令系統が同一の核心座の中でぶつかり合い、最終的にどちらも勝てず、外殻ごと道連れにしたかのようだ。ヴィクトリアは触れなかった。ただ身を屈め、視線を内壁の亀裂に沿って奥まで滑り込ませた。数拍眺めてから、手を伸ばしてスパナを逆さに持ち、柄の端で胸腔右下の黒ずんだ支持骨を軽く叩いた。
カン。
音は短く、くぐもり、跳ね返りがない。
彼女の目がわずかに沈んだ。もう一度叩く。今度は位置を半寸上へずらして。
今度は内部から極めて細い共鳴音が返ってきた。どこかの刻印線がまだ完全には死に切っていなくて、その一撃に追い立てられ、不承不承ながら一格だけ動いたような音だった。
ヴィクトリアはすぐに手を引いた。
「後から刻み込んだんじゃない」彼女は低く言った。
誰も応じなかった。
だが彼女は最初から誰かに向けて言ったわけでもなく、ただ判断を空気の中に打ち込んだだけのようだった。
「壊れてから矛盾銘式を補ったんじゃない」彼女は割れた固定座を見据えたまま、声をさらに落とした。「最初から互いに食い合う命令を打ち込んで、そのまま動かして、核心を内側から焼き切らせた」
カレル(Karel)は台の向こうに立ったまま、頷きも首を振りもしなかった。
ただ彼女を見ていた。後半も自分で読み取るのを待つように。
ヴィクトリアはそう長く待たせなかった。
視線を下へ移し、胸腔の最奥の、暗紫色に焼け焦げた薄板に落とす。しばらくして冷たく言った。「しかも一度じゃない。ここに二次溶補の痕がある。最初の一回では死に切らなかったから、もう一度補った」
その言葉が落ちた瞬間、右の柱影に控えていた人物がごく微かに動いた。
驚いたのではない。
ただ傍聴するつもりでいたところを、彼女の一言が本当に意味のある場所を正確に突いたような、そんな動きだった。
俺はその気配を目の端に収めたが、すぐにそちらを見ることはしなかった。
入ってきた最初から、何かがおかしいと感じていたからだ。
この場所は、あまりにも検品場らしすぎる。
工具棚の道具は整然と並び、観測用の隙間の向こうには人がいて、各々の立ち位置は見るのにも動くのにも都合のいい角度を保っている。だが本当に俺を不快にさせているのは、連中が俺たちを警戒していることじゃない。連中が警戒しているのが、どうも俺たちだけじゃないように見えることだ。作業台前の石畳が周囲より妙に清潔で、まるで誰かが何度も何かをここへ引きずり込み、そのたびに後始末を急いで拭き取ってきたかのように。
それ以上に奇妙なのは、カレルが最初からずっと、三体目に近づこうとしていないことだ。
一体目は俺たちに見せ、二体目もヴィクトリアが近づくのを止めなかった。だが三体目だけは、カレル自身も、脇に立つ二人の搬運係も、どこか意識的に半歩の距離を保っていた。
あれは単純な「品」じゃない。
まだ完全には片付いていない問題だ。
ヴィクトリアはすでに二体目の前に移っていた。
こちらは頭部の半分が欠損していて、外殻は一体目より古く、しかしより乱雑だった。左側の胸肋に、本来の規格には存在しない火器管制インターフェースが一段継ぎ足されている。溶接の縁が粗く、誰かが時間を惜しんで、とにかく合わせられるものを無理やり合わせたような仕上がりだ。彼女はそのインターフェースを指で掴んだが、引き抜こうとはせず、指の腹で接合部の縁をなぞるように一周させた。後頸に近い部分まで来たとき、眉がわずかに寄った。
「これ、同じ手の仕事じゃない」彼女は言う。
カレルがようやく口を開いた。「どういうことだ」
「後から手を入れてる」ヴィクトリアは顔も上げずに言う。声は鉄を刃物で削るように冷たい。「最初に繋いだ奴は、噛み合うかどうかだけ気にして、自己発熱することまで考えなかった。でもここは——」
彼女はスパナを上げ、後頸の内側に新たに磨かれた痕を指した。
「——誰かが二次調整してる。過負荷点を後ろにずらした。長持ちさせるためじゃない。起動した瞬間に爆発しないよう、あと数秒だけ持たせるために」
今度はカレルもすぐには返さなかった。
彼の目がごく微かに動くのを俺は見た。ただ品を見せるつもりでいたのに、彼女が手を伸ばした瞬間、自分たちが後から手を入れた箇所まで読まれたような、そんな目つきだった。
エリザヴェータ(エリザヴェータ)は俺の隣に立ったまま、ずっと口を挟まなかった。ただ静かに見守り、この試し合いに対して偏りのない拍を刻んでいるようだった。そこでようやく、妾は淡々と問うた。
「つまり、二体目は単なる回収品の外殻ではないということじゃな」
ヴィクトリアは立ち上がり、振り返って妾を一瞥した。
「違う」彼女は言う。「この繋ぎ方は、本来合わない命令インターフェースを無理やり嫁がせようとした試みよ。うまくいけば、殻を借りて二、三歩動ける。失敗すれば、内側から先に燃える」
彼女は少し間を置き、視線をリヴァイアサン装甲擲弾兵(利維坦裝甲擲彈兵)式の火器管制インターフェースに戻した。
「これは実戦に出てる」
その一言で、鐘楼の底部全体がさらに静まり返った気がした。
「作った」ことと「実戦に出た」ことは別物だからだ。
作業台の上で組み上げられたとしても、実際に外へ放てるとは限らない。だがもし本当に放たれ、それが持ち帰られてここに横たわっているとしたら、もはや地下職人の気まぐれな試作品ではない。
それは、戦場の縁に触れたことのある代物だ。
そして三体目は、すぐ隣に横たわっている。
ヴィクトリアはすぐには三体目に触れなかった。
その濃灰色のパネルを数秒見つめる。その目に初めて、単純な嫌悪でも警戒でもない、ごく短く、ごく不本意な一筋の集中が宿った。こういう外殻が世に存在することは知っていた。ただ、こんな場所で、こんなに近くで見ることになるとは思っていなかった——そんな目だった。
「プラハの仕事じゃない」彼女は言う。
誰も否定しなかった。
「パネルの切り方が直線的すぎる。支持骨の構造も時計職人の流儀じゃない。先に規格を決めてから機能を詰め込んだ設計で、先に動かすことを考えてから支えを考えた作りじゃない」彼女は言いながら、指先を半分解体された核心座の縁で止めた。触れはしない。「見間違いじゃなければ、この殻は人を守るために作られたんじゃない。命令をより精確に通すために作られてる」
俺は彼女の言葉を聞きながら、視線は別のところに向けていた。
三体目の底架の下に、薄い亜鉛皿が一枚敷かれている。皿の底に、ほぼ透明に近い残液が少量溜まっていた。普通の結露じゃない。なぜなら、その周囲の床に極めて細かな青黒い結晶の屑が数粒散らばっていたからだ。何かが高熱を経て剥落した残滓のようだ。さらに上を見ると、濃灰色のパネルの右側に一個の固定具があり、その金属の光沢だけが周囲と明らかに違う、新しい色をしていた。
この代物は、ただ運び込まれて展示されているだけじゃない。
つい最近、誰かに開けられている。
しかも、ほんの少し前に。
俺は胸がわずかに縮まるのを感じ、口を開こうとした。だがヴィクトリアのほうが一歩早かった。彼女は身を少し前に傾け、直接指摘するのではなく、極めて低い声で一言だけ言った。
「あんたたち、これに反応させようとしてる」
カレルは彼女を見た。今度は聞こえないふりをしなかった。
「こいつに本当のことを喋らせようとしている、とも言える」彼は言う。
その言葉が落ちた瞬間、背中の違和感がいっきに鮮明になった。
そうだ。それが問題の核心だ。
布を捲った最初から、この「検品」は俺たちに見せるためだけじゃなかった。俺たちが持ち込んだもの——俺の懐中時計、ヴィクトリアの手帳、入ってきてからの俺たちの立ち位置と反応——それらが、この「品」からさらに何かを引き出せるかどうかを見ていたのだ。
だから観測の隙間に人がいる。だから台前の石畳があれほど清潔に保たれている。だから搬運係まで厚手の革手袋をしている。
ここは展示台じゃない。試験台だ。
そしてカレルはまだ、一番肝心な半分を口にしていない。
俺は彼を真っすぐ見て、直接切り込んだ。「こいつら、死んでないだろ」
鐘楼の底部が一瞬静まり返った。
カレルはすぐには答えなかった。ただ俺を一瞥した。驚いた目ではない。俺が本当に読み切ったのか、それとも偶然踏み当てただけなのかを測るような目だ。
やがて彼は淡々と言った。「死の定義による」
こういう答えが一番腹に来る。
否定でも肯定でもなく、本当の境界線を意図的にぼかしたままにしているからだ。だがエリザヴェータはその言葉に引きずられることなく、ただ平然と受け流して続けた。
「では問い方を変えよう。今ここで妾らが三歩下がり、この台から離れたとして——こやつらは自分で動き続けるか?」
カレル(Karel)は今度、さらに長く沈黙した。
観測用の隙間の向こうで、誰かがそっと重心を移す気配がかすかに聞こえてくるほど長く。
「分からない」彼はようやく言った。
ヴィクトリアが冷たく鼻を鳴らした。
「あんたたちみたいな連中は、『知らない』を『半分だけ知ってる』みたいに言うのが本当に好きね」
カレルは取り合わず、ただ三体目の胸腔中央にある半分砕けた圧縮エーテル(Compressed Aether)の嚢を見つめながら、低く付け加えた。
「こいつらは、あるときは殻で、あるときは傷口だ。正しいものに触れるまで、今夜どちらなのかは分からない」
その言葉が落ちた瞬間、俺はほぼ即座に、奴がずっと何を見ていたのかを悟った。
ヴィクトリアじゃない。
手帳でもない。
俺のポケットの中の懐中時計だ。
俺たちをここへ連れてきたのは、俺たちがこの線に踏み込んだからだけじゃない。奴ら自身にも確証の持てない反応を、俺たちの持ち込んだものでなければ引き出せないからだ。
俺が声を上げようとした瞬間、ヴィクトリアがふいに手を伸ばし、三体目の胸腔脇にある新しく交換された固定具をがしっと掴んだ。引き抜くのではない。力任せに押し込み、そのまま左へ捻り上げた。
カチッ。
殻の内側から極めて短い乾いた音が響いた。
次の瞬間、彼女の顔つきが一変した。
「下がれ!」彼女が鋭く叫ぶ。
あまりに切迫した声で、エリザヴェータ(エリザヴェータ)ですら反射的に俺を半歩後ろへ引いた。ほぼ同時に、三体目の胸腔の奥で半分砕けた圧縮エーテルの嚢が、極めて淡い青い光を滲ませた。明るくはない。だがずっと誰かに握り潰されていた神経が、最悪のタイミングで痙攣したような光だった。
そしてその瞬間、俺は本当におかしい部分を見た——
あれはヴィクトリアが捻って引き出した反応じゃない。
彼女の手が固定具に触れるより前に、作業台の左下の暗がりから、すでに別の手が忍び込んでいて、音もなく何かを弾いていた。
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