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91.時計匠は時間を売らない 91-1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

カレルが去った後、小さな客間にはしばらくの間、誰も口を開こうとしない沈黙が降りた。


扉の向こうの足音はとうに遠ざかっていたが、階下から聞こえる宿屋の主人が帳簿をめくる微かな衣擦れのような音はまだ続いている。窓の外はすっかり白みきっていた。湿り気を帯びた朝の光が、卓上の細長い紙切れと半円形の銅片に落ち、さっきよりもずっと冷たく、そして「見て見ぬふり」を許さない何らかの確たる証拠のように、それらを照らし出していた。


ヴィクトリアはまだその場に立ち尽くしていた。


手にした紙を置こうとはしないが、指の関節は白くなるほど強く握り込まれている。まるで、少しでも力を緩めれば、紙に書かれた文字がたちまち別の、もっと最悪な何かに化けてしまうとでも思っているかのように。先ほどのカレルの最後の言葉が、まだこの部屋の空気にこびりついて離れない。


『扉を見たからといって、すぐに開けるとは限らない』


その言葉自体に重みはない。だが、その前に奴が口にした圧縮エーテル(Compressed Aether)や、冷監、重装配列といった情報よりも、ずっと息苦しさを感じさせた。


俺はまずヴィクトリアから視線を外し、卓上の銅片に目を落とした。


「あいつの言ってることは本当だ」俺は口を開く。


向かいに座るエリザヴェータ(エリザヴェータ)が、すっと目を上げて俺を見た。「理を述べい」


「一つ目。あいつは俺たちを仲間に引き入れに来たわけじゃない」俺は言う。「もし騙す気なら、自分をもっと命綱みたいに見せかけるのが一番手っ取り早い。だが、そうはしなかった。あいつが最初から最後までやったのは三つだけだ——暗号を合わせること、情報の穴を埋めること、そしてタイムリミットを提示すること」


俺は少し言葉を区切り、卓上の半円形の銅片を指差した。


「二つ目。こいつは今朝のあの場所の欠損部分とぴったり一致する。部外者が当てずっぽうで当てられるもんじゃない」


「三つ目」俺は窓の外、湿って灰がかったプラハの屋根の連なりに目をやり、ゆっくりと言葉を継いだ。「あいつが提示したのは、俺たちが生きたまま先へ進むための道筋であって、今すぐブツを渡せという命令じゃない。網を収めるってより、試し斬りに近い」


エリザヴェータは聞き終えると、静かに頷いた。


「同意じゃ」妾は言う。「それに、もう一言付け加えさせてもらうならば——もし本当に妾らを罠に嵌める気なら、この宿にはもう長居できぬと、わざわざ忠告してやる義理もあるまい」


彼女の指先が卓をこつんと叩く。ごく軽い音だったが、それだけで部屋全体に漂っていた空気が、再び確かな着地点を取り戻した。


「今もっとも危ういのは、K.A.F.K.A. が騙し討ちをしてくるかどうかではない」妾は続ける。「リヴァイアサン装甲擲弾兵(利維坦裝甲擲彈兵)がすでに逃げ道を塞ぎ始めておるという事実じゃ。ここに留まれば、それはすなわち、選択権を相手に明け渡すことを意味する」


ヴィクトリアが、ようやくその紙を卓に置いた。


その動作は少し乱暴で、胸の内にまだ吐き出しきれない何かを抱え込んでいるかのようだった。彼女はすぐには俺たちの判断に乗らず、ただ俯いて紙の上の数行の文字を見つめ、数拍ののち、冷ややかな声で言った。


「あんたたち二人は、ずいぶんと手回しよく他人の勘定を済ませてくれるわね」


俺は彼女を見た。「あいつが騙してると思うのか?」


「あいつは、知りすぎている。そう言ってるのよ」彼女が返す。


その言葉を口にした瞬間、彼女自身も、問題は「真偽」ではなく別のところにあると気づいたようだった。彼女は少し黙り込み、細長い紙から指を離して、代わりに卓の縁をぐっと押さえつけた。少しでも気を抜けば、さっき掻き乱されたばかりの感情が指の隙間からこぼれ落ちてしまうのを恐れるように。


エリザヴェータは彼女を見つめ、相変わらず平坦な声で言った。


「お主が恐れておるのは、奴が知りすぎていることではあるまい」妾は言う。「奴の知る事柄が、本来ならば、ある者たちと共にプラハの地の底で死に絶えているべきものだったからじゃ」


ヴィクトリアは目を上げたが、反論はしなかった。


彼女にとって、そうした沈黙はほぼ肯定に等しい。


部屋がしばし静まり返ったとき、窓の外から遠く鐘の音が一つ聞こえてきた。昼間の鐘の音は夜よりも澄んでいるはずだが、気のせいか、耳に落ちたその一音は、余韻が妙に間延びして聞こえた。まるで一枚の歯車が深く噛み合いすぎて、うまく抜け出せなくなっているかのように。


ヴィクトリアはその音を聞くと、目の奥で張り詰めていた何かを、さらに一段深く押し込めた。


「私が子供の頃ね」彼女がふいに口を開いた。声は高くないが、先ほどよりもずっと乾いていた。「ヨゼフの店には、ある決まり文句があったの」


俺もエリザヴェータも口を挟まなかった。


彼女は卓の上の銅片を見つめながら、ゆっくりとその言葉を吐き出した。


「『時計職人は時間を売らない』」


俺はわずかに眉をひそめた。


エリザヴェータはただ静かに耳を傾け、先を促すようなことはしない。


「店に来る客が一番よく口にするのは、直せるかどうかじゃないの」ヴィクトリアは言う。「もう少し早くならないか、あと数日、数時間、いや数分だけでも稼げないか、そればっかり。結婚式に間に合わせたい奴もいれば、葬式に間に合わせたい奴もいる。もうすぐ止まりそうな時計を持ち込んでくる奴もいるわ。まるで、針を巻き戻しさえすれば、命まで一緒に巻き戻せると信じてるみたいに」


彼女は短く笑った。


その笑みはひどく薄く、笑いと呼べるかどうかも怪しい。古い木材に刃物を一度だけ滑らせて、乾いた傷跡だけを残したような、そんな表情だった。


「ヨゼフはそういう言葉を聞くたびに、いつもその一言だけを返したわ。時計職人は時間を売らない、って」彼女は続ける。「彼が気高いからでも、急ぎの仕事を受けないからでもない。その意味はね——私たちが直すのは外殻であり、歯車であり、脱進機(エスケープメント)であって、それがまた規則通りに動くようにするだけ。延命は売らない、後悔も売らない。誰かのために、すでに訪れた結末を先延ばしにしてやることもない、ってことよ」


彼女はそこまで言って、ようやく顔を上げた。


「のちに、この言葉は K.A.F.K.A. のルートでも一種の暗号になった」彼女は言う。「この言葉を手土産に扉を叩く奴がいたら、その意味はたいてい一つだけ。条件闘争はするな、猶予も求めるな。中に入る者は、本物のブツだけを持て、ってね」


俺の胸が、わずかに沈んだ。


無理もない。さっきカレルがヨゼフの名を出したとき、彼女の反応があれほど硬化した理由がわかった。単に死者の影に刺されたからじゃない。旧い職人のルートにおいて、その暗号が真に意味するものを、彼女は痛いほど分かっていたからだ。


それは保護でも、慰めでもない。


逃げ道をすべて塞ぎきったあとにだけ使われる、最後通牒だ。


エリザヴェータは彼女を見据え、ひどく平坦な声で問うた。「ゆえに、お主が先ほど取り乱したのは、カレルその人が理由ではないのじゃな」


ヴィクトリアはすぐには答えなかった。


数拍置いてから、低く押し殺した声で言った。


「死人が生きてる人間のために、勝手にルールを残していくのが気に入らないのよ」


その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気がまた一段と冷えた気がした。


俺は初めてはっきりと感じ取った。彼女のヨゼフに対する感情は、決してただの哀しみなんかじゃない。その奥には、もっと硬く、決して認めたがらない何かが混ざっている——不信感、あるいは怨念とすら呼べるものが。


彼の人間性を信じていないわけじゃない。


いつだって言葉を半分飲み込んだままにしておく、彼のそのやり口を信じていないのだ。


エリザヴェータも明らかにそれを察したはずだが、その点についてさらに踏み込むことはしなかった。妾は昔から、いつ問題を切り裂くべきか、いつそれを手付かずのまま残しておくべきかを心得ている。


「ならば、立ち位置は明確じゃな」妾は言った。


彼女は手を伸ばし、卓上の細長い紙と銅片を一つにまとめた。その手つきは極めて安定しており、この議論に最初の、そして確実な結論を下すかのようだった。


「妾らは赴く」妾は言う。「じゃが、傘下に入るわけではない」


「手帳は渡さず、時計も手放さぬ」


「もし相手が品定めをしたいと言うのなら、見せてやるのは『どれだけ知っているか』であって、『どれだけ手に入れたか』ではない」


俺はそれを聞き、頷いた。


それはまさに、俺の頭の中にあった方針そのものだ。


行く。それは絶対条件だ。


だが、行くからといって、相手の言い分を丸呑みするわけじゃない。


ヴィクトリアはエリザヴェータをちらりと見た。表情は相変わらず冷たかったが、反対はしなかった。


「もう一つある」俺は言った。


二人の視線が、再び俺に戻る。


「さっきのカレルの言葉、あんたたちも聞いてたよな。俺も耳にこびりついてる」俺は言う。「あいつは『砸門的人(扉叩き)』がもう第二節に入ってるって言った。こういう情報、もしハッタリだとしたら具体的すぎる。ハッタリじゃないとしたら……それはつまり、俺たちを狙ってるのは単一の勢力じゃないってことだ」


俺は少し間を置き、その言葉の重みを沈ませた。


「言い換えれば、今夜の約束は、ただ K.A.F.K.A. が俺たちを品定めしてるだけじゃない。もし俺たちが行かなければ、もう片方の連中も、俺たちが次にどこへ向かうか計算し始めるってことだ」


エリザヴェータは顔色を変えなかったが、明らかに同意していた。


「左様じゃ」妾は言う。「ゆえに、妾らが選ぶべきは『行くか行かないか』ではない。『まずどの扉に対して意思を示すか』じゃ」


ヴィクトリアが冷たく引き継ぐ。


「しかも、もたもたしていられない」


部屋は再び静寂に包まれた。


今度は誰かに語るべき言葉がないからではない。三人がすでに同じ結論に辿り着き、あとは最後の一歩を踏み出すだけになっていたからだ。


エリザヴェータが真っ先に立ち上がった。


「少し下へ行ってくる」妾は言う。「宿の者に、元の荷物を分けて処理させる。ついでに、ここへ残しておくべきではない痕跡も消しておこう。お主ら二人は、この階から離れるでないぞ」


そう言うとき、彼女の視線が俺とヴィクトリアの間でそれぞれ一瞬だけ止まった。


その眼差しは淡々としていたが、明確な意図を含んでいた。この部屋にはまだ語り尽くされていない言葉があることを、彼女は百も承知で、わざと時間を作ってくれたのだ。


扉が閉まると、部屋は急に静まり返った。


窓の外は少し風が強くなってきたらしく、窓枠がかすかに二度ほど揺れた。ヴィクトリアはまだ卓のそばに立ち、すぐには動こうとしない。俺は彼女を見つめながら、さっきの「時計職人は時間を売らない」という言葉を吐き出した後から、彼女の身をきつく覆っていた何層もの殻のうちの一つが、ほんの少しだけ緩んだのを感じていた。


俺から先に口を開いた。


「さっき、その言葉がのちに K.A.F.K.A. でも暗号になったって言ったな」


彼女は短く「ええ」と応えた。


「ってことは、あんたはとっくの昔に、時計屋以外でもその言葉を聞いてたってことだ」


彼女は目を上げて俺を見た。その目にはまだ警戒の色が残っていたが、さっきのようにすぐさま棘を逆立てて人を突き放すような真似はしなかった。


「何が聞きたいの?」


「あんたのその技術」俺は言った。「一体、誰に教わったんだ?」


彼女は俺を見つめたまま、しばらく声を出さなかった。


昨夜だったら、十中八九話題を逸らすか、「あんたには関係ないでしょ」の一言で片付けていたはずだ。だが今日は少しの沈黙のあと、彼女は本当に口を開いた。


「半分は、ヨゼフよ」


彼女は窓際へ歩き、手を伸ばして窓扇を少し押し開けた。外の冷気がより直接的に流れ込んでくる。その動作のせいで、横顔のラインがいっそう硬く見えた。だが同時に、これまでよりずっと素のままの彼女でもあった。


「彼は私に鐘の音を聴くことを教えてくれた。脱進機(エスケープメント)の音、軸心が負荷を受けたとき音がどちらへずれるかを聴き分けること。外殻の傷みが表面なのか内部なのかを見極める方法。それから、目だけじゃ分からないものは手の甲で振動を感じ、骨に刻み込めってことも」


彼女は少し言葉を区切り、視線を窓の外の、どこか濡れた屋根の上に落とした。


「でも、核心部分は教えてくれなかった」


俺は口を挟まなかった。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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