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89.プラハの夜雨 89-4

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

エリザヴェータがそのとき口を開いた。


「そこまでにしましょう」


声は大きくない。それでも、俺たちの間で今にも切れそうに張り詰めていた糸を、静かに押さえた。


「急ぎすぎています」彼女は俺を見て、落ち着いた声で言った。「今夜彼女があなたを連れて下りたことは、すべてを見せる用意ができているという意味ではありません」


俺は何も言わなかった。


エリザヴェータはヴィクトリアへ目を向けた。表情は相変わらず静かだが、聞き流すことを許さない落ち着きがある。「そしてあなたも、すべての問いを要求と受け取る必要はない。今夜わたくしたちが同じものを見た。この街で、かつて誰かが命令そのものを使って命令に触れようとした。それはもう、あなた一人が見なかったことにできる話ではありません」


ヴィクトリアは口元をわずかに引き締めた。この言い方が気に入らないのは明らかだった。


「見なかったことにするとは言ってない」


「でも、扉を閉め直そうとしていた」エリザヴェータは言った。


その一言は、よく当たった。


当たりすぎて、ヴィクトリアはすぐに返せなかった。ただ彼女を見つめた。初めて本当に手強い相手として見ているような目だった。エリザヴェータに対してはずっと警戒していたが、このとき初めて、その警戒に真剣さが混じった。この殿下は、一般的な貴人のように問いを出すだけでもなく、よそ者のように秘密を見つけたとたん飛び込もうとするわけでもない。どちらかといえば、扉の傍に立っている人間だ。蹴破ろうとせず、しかしこの扉が存在しないふりをさせることも許さない。


部屋が静かになった。


しばらくして、ヴィクトリアはエリザヴェータから視線を外し、うつむいて、もう温くもない湯飲みを手に取った。飲まず、ただ掌の中で一度回した。


「旧ノードはアンタたちが思ってるようなものじゃない」彼女はようやく言った。


今度は語り口が少し落ちていた。さっきのように全部を跳ね返すための言葉ではなかった。


「本部でも、地下宮殿でもない。マントを纏った連中が機会を待って地下に潜んでるわけでもない」一度止まった。その比喩が馬鹿げていると自分でも思ったのか、眉間がかすかに寄った。「ただ残った場所よ。誰かが何かをやって、失敗して、荷物を運び出す時間もなかった。それだけ」


「あの魔偶(ゴーレム)は?」俺は聞いた。


彼女は顔を上げなかった。


「最初の一体じゃないし、最後の一体でもない」彼女は言った。「今夜アンタが見たのは、まだ形が残ってるほうよ」


胸の奥が、かすかに締まった。「他にも?」


彼女は今度は答えなかった。


だが答えないこと自体が、答えだった。


エリザヴェータは静かに指を組み合わせ、この沈黙に落ち着き場所を与えるように言った。「では、あなたが知っているのは一つの入口だけではない。あの線が残したものを、全部知っているということですね」


ヴィクトリアはようやく湯飲みを置いた。磁器の底がテーブルに触れて、短く軽い音を立てた。


「少しは知ってる」彼女は言った。「でも、知ってるからって、アンタたちを一つ一つ案内して回るとは限らない」


「俺たちを信用してないから?」俺は聞いた。


彼女は顔を上げて俺を見た。今度はすぐに棘を出さなかった。ただ、目が冷たく、あからさまに率直だった。「まだ見極めてないからよ。アンタたちが道を探しに来たのか、それとも道を踏み潰しに来たのか」


その一言が落ちて、誰もすぐには続けなかった。


窓の外の雨音が少し密になった。誰かが指の節で窓枠を一つ一つ叩いているような音だ。部屋の灯りが風に押されてかすかに揺れ、影が彼女の顔の横を滑って、もともと鋭い輪郭をさらに近寄りがたくした。


俺はうつむいてポケットの懐中時計に触れた。取り出しはしなかった。


「なら、少なくとも一つはわかったはずだ」俺は言った。


「何が?」


「本当に道を踏み潰すつもりなら、さっき下で手を止めなかった」


ヴィクトリアは俺を見据えた。この言葉で点数を稼ごうとしているのかどうか、測っているような目だった。しばらくして、彼女の口角がごくわずかに動いた。笑いとは呼べない。形になりかけて、結局彼女自身に押し殺された表情だった。


「それはただ、救いようがないほど馬鹿じゃないって証明しただけよ」彼女は言った。


まだ棘はある。


でも、さっきよりは半分ほど軽くなっていた。


俺がさらに踏み込もうとしたとき、エリザヴェータが先に言葉を継いだ。


「では今夜は、ノードの数も、まだ生きている者の話も置いておきましょう」彼女は言った。「一つだけ聞かせてください。先ほど下の魔偶(ゴーレム)が、あの懐中時計に反応しました。あれはノードの残滓が反応したのでしょうか、それとも時計そのものが、何らかの旧秩序に触れたのでしょうか」


この問いが落ちた瞬間、俺でさえ思わず彼女を見た。


さっきの俺の聞き方と比べて、この一撃のほうがよほど核心を突いていた。


ヴィクトリアも明らかにそれを察していた。彼女はより長く沈黙した。また答えないつもりかと思うほど長く。だが最終的に、彼女は口を開いた。


「両方よ」彼女はゆっくりと言った。「下に残ってるものは、そもそも死んでない。動くという意味じゃなくて、自分の手筋をまだ覚えてるってこと。そして時計のほうは……」


そこで言葉を切った。


俺は彼女を見ていたが、彼女はもう俺を見ず、テーブルの上で灯りに照らされた木目の一角をじっと見つめていた。次に口にする言葉が、彼女が一時的に存在しないふりをしていたある結論に、形を与えてしまうかのように。


「あの時計は、通りすがりじゃない」彼女はついに言った。


俺の指先がかすかに締まった。


彼女は目を上げた。今度の視線は逸らされることも、迂回することもなく、まっすぐ俺に落ちた。


「アンタたちがたまたまプラハに来たから、偶然下と反応したわけじゃない。どちらかというと……あの時計は最初から、ああいうものを知ってる。あるいは、あれを残した連中と、少なくとも同じ言葉を使ったことがある」


部屋がどっと重く沈んだ。


俺はすぐには返せなかった。意味がわからなかったからじゃない。彼女のこの一言は、どんな激しい反応よりも居心地が悪かった。懐中時計が単独の異物ではなく、最初からもっと古く、もっと深い線の上に置かれていた可能性がある。俺はずっと時計を追っているつもりでいたが、実際はただ、時計がとっくに知っていた道筋をなぞらされているだけかもしれない。


エリザヴェータはその沈黙を長く続けさせなかった。


「結構なことです」彼女は言った。


ヴィクトリアが眉をひそめた。その二言が軽すぎると思ったのだろう。


エリザヴェータの表情は変わらない。「事態が簡単になったという意味ではありません。ただ、少なくとも脈絡が見えてきた。プラハのこの線は、もうあなた一人が守るものでも、彼一人が引きずられるものでもない。脈絡がある限り、まだ手に負えなくなったわけではない」


この言葉は俺たちを落ち着かせるためでもあり、彼女自身を落ち着かせるためでもあるように聞こえた。


だが俺にはわかっていた。彼女が本当にやっていることは別だ。場を「互いの探り合い」から「まず今夜を生き延びる」へと引き戻したのだ。彼女は人に信頼し合えとは急かさない。ただ今この瞬間、局面を崩すなと要求している。


ヴィクトリアも明らかにそれを聞き取った。椅子の背にもたれ、長く息を吐いた。今夜すべてを扉の向こうに閉め直すことはできないと、ようやく認めたような息だった。


「もう一つだけ付け加えるわ」彼女は言った。


俺は顔を上げた。


「旧ノードは人を恐れるだけじゃない。音も恐れる」彼女の声は冷たかった。「今夜どうしてもその時計を手放せないなら、窓は全部閉めるな、扉も鍵をかけきるな。何かが音を伝って近づいてきたとき、せめてアンタが熟睡してる最中に壁を叩かれるのだけは避けなさい」


俺は眉をひそめた。「その『何か』って何だ?」


「知らない」彼女はきっぱり答えた。「知ってても、ここでは言わない」


今度は俺も追わなかった。


もったいぶっているわけじゃないとわかったからだ。彼女は本当にここまでしか言うつもりがない。すべての線が見えているわけでもなく、ただ、どこまで言葉にすれば今夜この部屋の全員が眠れなくなるか、その境界を彼女はきちんと知っていた。


エリザヴェータが立ち上がり、この夜の話に最後の結び目をつけた。


「では、ここまでにしましょう」


彼女は俺を見た。声は高くないが、ぶれない。「今夜はもう下りない。次の扉も聞かない。時計にも触れない。彼女を試したいなら、明日まで待ちなさい。少なくとも、プラハが今夜の鐘の音を吐き出し終えるまで」


それからヴィクトリアを見て、軽く頷いた。


「来てくれただけで、充分です」


ヴィクトリアはこういう丁寧な言い方に慣れていないようで、眉の端がわずかに動いた。工具袋を引っ掴んで立ち上がる。「アンタたちを助けに来たんじゃない」


「承知しております」エリザヴェータは言った。「自分がまだ知らないふりを続けていられるかどうか、確かめに来たのでしょう」


これにはヴィクトリアもついに返せなかった。


扉の前まで歩いて、ノブに手をかけた。そこで一瞬だけ止まった。振り返らず、低い声でぽつりと落とした。


「夜中に鐘の音がおかしかったら、数えるな」


それだけ言って、扉を引いて出ていった。廊下に足音が響いて、すぐに遠くなった。


部屋が静けさを取り戻した。


俺はその場に座ったまま、しばらく動けなかった。窓の外では雨がまだ降り続けている。遠くのどこかの鐘楼がまた一つ打って、余韻が夜の向こうで細く長く引き伸ばされ、高いところからゆっくり垂れてくるようだった。


エリザヴェータは窓の傍へ歩いて、窓扇をもう少し押し開けた。


冷たい風がどっと部屋に流れ込んだ。


俺は顔を上げた。「信じてるのか、あの女のこと」


彼女はすぐには答えなかった。濡れて黒い屋根と塔の影が続く外をしばらく眺めてから、ようやく静かに言った。


「全部は話していないと、そこは信じています」


「それで信じてることになるのか?」


「プラハで、本当のことを三分話してくれる人間は、もうかなり義理堅いほうです」


彼女は振り返り、俺を見た。目は静かで、ほとんど冷酷に近いほど落ち着いていた。


「だから今夜は彼女の言う通りにしなさい。時計は手放すな。窓は閉めきるな。おかしな音がしたら、まず聞き分けること。無理はしない」


俺はうつむいて、懐中時計をポケットから取り出した。


新しく嵌め直したガラスが灯りを映して、今夜何も起きなかったかのように澄んでいる。でも俺にはわかっていた。それは表面だけだ。本当に厄介なものは何一つ直っていない。ただ、一時的に元の位置へ押し戻されているだけだ。


エリザヴェータはそれをひと目見て、小さな声で言った。


「今夜は深く眠らないように」


俺は答えなかった。ただ時計を掌の中に握った。


窓の外では、雨がまだ降り続けていた。


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