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87.時を刻む遺品 87-2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

時計屋のドアが背後で閉まるとき、ドア枠についた小さな真鍮の鈴がわずかに震えて、ごく短い澄んだ音を立てた。


その音はあまりにも軽かった。軽すぎて、まるで外から見れば、さっき店の中で起きたことなど、取るに足らないと告げているようだった。旧市街の通りはいつも通り人が歩いていた。遠くの教会の鐘の音はいつも通り風の中に散っていた。観光客はいつも通りスマートフォンを塔や屋根に向けていた。通りの角のホットワインの屋台は、いつも通り白い湯気を立てていた。


だが俺は、新しいガラスに替えたばかりの懐中時計をポケットの中で握りながら、通り全体が薄い冷気に覆われているようにしか感じられなかった。


天気の寒さではない。


時間の底に隠されていた何かが、さっき俺たちの前でほんの一度だけ顔を出して、今はまた何食わぬ顔で引っ込んだ——そういう冷たさだった。


エリザヴェータが先に石段を降りた。


小さなパラソルをゆっくりと開き、その動作はのんびりとしていて、雑事を一つ済ませて次の予定に移るだけのように見えた。だが俺にはわかっていた。妾がさっきのことを本当に雑事だと思っているはずがない。ただ、感情を顔に出すことを、妾は最初からしない。


俺は妾の後ろについて歩き出した。二歩ほど行ったところで、店のドアがまた押し開かれる音がした。


ヴィクトリアが追いかけてきた。


彼女が出てきたのは早かった。ほとんど怒気を帯びていて、エプロンの縁のスパナまでがぶつかり合って短い音を立てた。石段の上に立ち、俺たちを見下ろす。さっき店の中で無理やり押し殺していた感情が、今ようやく再び浮かび上がってきていた。ただの負けん気ではない。もっと深く、もっと鋭く、もっと危険な何かだった。


まず俺を一瞥し、それからエリザヴェータを見た。


「このまま帰るつもり?」


エリザヴェータは足を止めず、わずかに顔を向けただけで、平板に返した。


「ほかにどうしろと?そなたの店の前で、さっきの御仁が何者か、大声で議論でもしてほしいのか?」


ヴィクトリアは唇を噛み、追ってきた。


「アタシには、さっき見たものが何なのかを知る資格くらいあるはずよ」


「そなたが見たのは、触れてはならぬものじゃ」エリザヴェータは言った。


「そういう答えで納得するのは、あなたたちみたいな人間だけよ」ヴィクトリアは鼻で笑ったが、足は止めなかった。「あれは投影でもないし、安っぽい手品でもない。あなたたち二人とも、あの人を見ても少しも驚いていなかった。特にあなた——」


彼女はエリザヴェータを睨み、声を少し尖らせた。


「あなた、彼に挨拶までしたじゃない」


エリザヴェータがようやく足を止めた。


俺たちが立っているのは、さほど広くない石畳の通りだった。両側には古い建物の壁が続き、窓辺には花があり、鉄格子があり、年月で剥がれ落ちた角があった。陽光は暖かくはなく、斜めに通りへ落ちて、行き交う人々の影を細かく切り刻んでいた。


妾は振り返り、ヴィクトリアを見た。


「礼儀正しいことは、大騒ぎするようなことではない」


ヴィクトリアは言葉を詰まらせ、さらに顔をしかめた。


「礼儀の話なんかしてないわ」


「ならば、今は誰も答えてくれぬ問いを口にしておるだけじゃ」エリザヴェータは淡々と言った。「それに、そなたが本当に気にするべきは、あやつが何者かということではあるまい」


ヴィクトリアの眉が寄った。


「じゃあ何を気にしろって言うの?」


エリザヴェータは彼女を一瞥し、パラソルの先で地面を軽く突いた。


「そなたの祖父が、なぜ一言も問い質さなかったか、じゃ」


その言葉は針のように、正確に急所を刺した。


ヴィクトリアの唇が結ばれた。


思い至らなかったわけじゃない。ただ、その答えに触れるのを意図的に避けていただけだ。彼女の祖父は、見知らぬ人間が突然現れたからといって、怯えて手を引くような人間ではない。彼を本当に止めさせたのは、「何を見たか」ではなく、「何を理解したか」だ。


俺は傍らに立ち、ポケット越しに懐中時計の冷たい外殻を指先でなぞりながら、胸の奥の奇妙な感覚がまだ引かないのを感じていた。


山口は一度しか現れなかった。


一言しか残さなかった。


俺をもう一度見ることすらしなかった。


その感覚は、彼が長々と説明を始めるよりずっと悪かった。何も言わないからこそ、かえってこう告げられているように思えたからだ。ある種の物事は、ひとたび動き出せば、名前すら先に口にすべきではないのだ、と。


ヴィクトリアは数秒黙り込み、ふいに俺を振り返った。


「あの時計、いったい何なの?」


俺は顔を上げたが、すぐには答えなかった。


彼女は今日初めて山口を見た。現実には存在するはずのない人間が、自分の家の作業台のそばに立つのを初めて目の当たりにした。祖父がもう一寸たりとも時計に触れようとしなかったのを初めて見た。今の彼女は、単なる好奇心で聞いているわけじゃない。自分がさっき手を伸ばして触れようとしたものが、いったい何だったのか、その重さを測り直しているのだ。


だが俺も、どう答えればいいのかすぐにはわからなかった。


故人の遺品だと言うには、軽すぎる。


ある種の鍵だと言うには、早すぎる。


ただの懐中時計だと言うのは、もはや白々しい嘘でしかない。


エリザヴェータが俺の沈黙を引き取った。


「出処などどうでもよい」妾は言った。


ヴィクトリアはすぐに妾を睨んだ。「どうでもいいわけないでしょ」


「いや、本当に重要なのは、そなたがさっき結果をその目で見たということじゃ」エリザヴェータの声は高くないが、ひどく安定していた。「ある者がそなたに分解を許さなかった。それはつまり、この代物がひとたび先へ進めば、動くのは単なるムーブメントだけではないということじゃ」


通りの角から風が吹き抜け、パラソルの下の銀白色の髪を数本揺らした。


妾がその言葉を口にしたとき、その語調は無造作に近いほど軽かった。だが軽いからこそ、通りに響く賑やかな音が、一瞬にしてひどく遠く感じられた。


ヴィクトリアは妾を見つめ、少しずつ目つきを沈ませた。


「知ってるのね」


「そなたより多くを知っておるとは限らぬ」エリザヴェータは言った。「ただ、いつ手を引くべきかを、そなたより心得ておるだけじゃ」


「アタシはそういう言い方が一番嫌いなのよ」ヴィクトリアは半歩距離を詰め、声を潜めた。「あなたたちはある物を抱えてうちの店に転がり込んできて、おじいちゃんに分解させて、見てはいけないものを見せておいて、今になって『知りすぎないほうがいい』なんて言う。不公平だわ」


「世の中の重みのある事柄の大半は、もとより不公平にできているものじゃ」エリザヴェータは彼女を見て、表情に一波の揺れもなかった。「特に、このプラハという場所ではな」


その言葉が落ちて、ヴィクトリアは一瞬言葉を返せなかった。


遠くで路面電車が軌道を滑り、細長い金属の摩擦音を立てた。通りの角を観光客のグループが笑いながら通り過ぎていく。中の一人は買ったばかりの木彫りの土産物を手に持っていて、その鮮やかさが少し目に痛かった。その過剰に正常な喧騒と、俺たち三人が立ち尽くしている様子が並ぶと、かえって胸の奥の不安がもう一層深く沈んでいく気がした。


ヴィクトリアは結局、視線を俺に向けた。


今度俺を見る目は、ベンチの横で懐中時計を奪おうとしたときとは完全に違っていた。


あのとき、彼女は「珍しい物」を見ていた。


今は、「外へ持ち出してはいけない何かを、自分の家の作業台へ直接持ち込んだ人間」を見ていた。


「あなた」彼女は俺を呼んだ。「あなた自身は、少しはわかってるんでしょ」


俺は数秒黙り、ようやく口を開いた。


「ただ壊れてるだけじゃないってことは知ってる」


ヴィクトリアは動かなかった。


俺は続けた。「あんたの爺さんがさっき手を止めたのが、自信がないからじゃないってことも知ってる」


彼女は俺を見据えた。


「それから?」


喉が少し乾いていた。手はまだポケットの中の時計を押さえている。


「それから……山口でさえ、『分解するな』と一言残しただけだ」


その言葉が口から出たとき、俺はようやく気づいた。自分でも想像以上に、あの瞬間のことを気にしているのだと。


彼が現れたからじゃない。


彼が何も言わなかったからだ。


ヴィクトリアの目の底で抑え込まれていた火が、その言葉でもう一段下へ押し込まれたようだった。彼女は賢い。意味はわかるはずだ。あんな存在でさえ多くを語りたがらず、ただ命令だけを落として去っていくのなら、それはこの事態がまだ「説明」で処理できる段階にすらないことを意味している。


彼女はその場に立ち尽くし、しばらく何も問わなかった。


エリザヴェータは再び背を向けた。この会話はもう十分だとでも言うように。


「そなたにまだ少しでも脳味噌が残っておるなら、戻って祖父の傍にいることじゃな」


ヴィクトリアはすぐに顔を上げた。「どういう意味?」


「今日はそなただけが驚かされたわけではないという意味じゃ」エリザヴェータの口調は平坦だった。「そなたの祖父がさっき手を引いたのは、老いたからではなく、どこで止まるべきかを知っていたからじゃ。ああいう人間は、手を止めた後のほうが、手を動かしているときよりよほど神経をすり減らすものじゃ」


ヴィクトリアは一瞬、言葉を失った。


その瞬間、彼女の顔から怒気が完全に消えたわけではなかった。ただ、もっと現実的な心配が素早くその上を覆い隠した。


彼女は振り返り、時計屋の閉まったドアを一瞥した。


そのドアは今、通りのどの古い店とも変わらず、ひっそりと静まり返っていた。だが俺たちは全員わかっていた。あのドアの向こうの作業台に、さっき何かが立っていたのだと。


エリザヴェータが静かに付け加えた。


「そなたが知りたいことじゃが——」


ヴィクトリアはすぐに妾を見た。


エリザヴェータの口元に、ごくかすかな弧が浮かんだ。


「もしそなたが今後、自分の家の古時計を片っ端から分解せずに済んだなら、また会うこともあるかもしれぬな」


「それって招待?」ヴィクトリアが問う。


「警告じゃ」エリザヴェータは言った。


俺は笑いそうになったが、うまく笑えなかった。


ヴィクトリアも明らかにわかっていた。この女の口から出る「警告」は、たいてい招待とそう変わらないのだと。それ以上食い下がらず、ただもう一度俺を見て、視線がポケットの位置に落ちた。布越しでも懐中時計が見えているかのようだった。


「なくすなよ」彼女は低く言った。


「わかってる」


「自分で中をいじるのもなしよ」


「それ、自分に言うべき台詞だろ」


彼女の口元が引きつった。何か言い返したそうだったが、結局口を開かなかった。ただ一歩後ろへ引き、手をエプロンのポケットに突っ込んだ。指先が何かに当たって短い音を立てた。スパナか、それとも別の部品か。


「おじいちゃんがもう手を出さないからって、アタシが今日何も見なかったふりをするわけじゃない」彼女は言った。


エリザヴェータはもう歩き出していた。軽く一言だけ落とす。


「それは結構なことじゃ。見なかったふりをする人間は、プラハではたいてい長生きできぬ」


ヴィクトリアはその場に立ち尽くした。


俺とエリザヴェータは通りの角へ向かって歩いた。十数歩ほど行ったところで、俺はどうしても振り返らずにいられなかった。


彼女はまだ時計屋の前の石段のそばに立っていた。追いかけてくるでもなく、すぐに店へ戻るでもない。風が高く束ねた赤みがかった茶色のポニーテールを少し乱し、片手をポケットに突っ込み、もう片手をエプロンの縁に添えて、真っ直ぐに立っていた。俺たちの後ろ姿を見ているようでもあり、さっきから自分の中に食い込み始めた何かを見ているようでもあった。


俺は前を向き直し、低く問うた。


「わざとだったのか?」


「どれが?」


「彼女を巻き込んだこと」


エリザヴェータはパラソルを差したまま歩いた。急がず、石畳に靴音が当たる音は軽い。


「妾が巻き込んだのではない」妾は言った。「あの時計が自分で場所を選んだのじゃ」


俺は二秒黙った。


「そんな話を信じるのか?」


「信じぬ」妾は淡々と言った。「じゃが、そう見えることを妨げるものは何もない」


また少し風が起きた。


通りにはまだ人が多く、プラハはあいかわらずプラハだった。塔楼、石壁、ショーウィンドウ、観光客、何一つ欠けていない。だが俺はこの通りを歩きながら、全ての窓の向こうに何かが潜んでいるような、全ての鐘楼が俺たちをさりげなく見ているような感覚を拭えなかった。


俺は手をポケットの上に当てた。


懐中時計は掌の端に静かに寄り添って、何の気配もなかった。


だが静かであればあるほど、止まっているのではないような気がしてくる。


ただまだ、自分の番が来ていないだけだ。


エリザヴェータがふいに口を開いた。声は天気の話でもするように平らだった。


「今夜は深く眠るな」


俺は妾を見た。


「何かあると思うのか?」


妾は直接答えず、ただパラソルの縁をわずかに下げた。


「山口閣下が、分解するなという一言のためだけに自ら姿を現すのを見たのは、そう多くはない」


その言葉はごく軽かった。


だが、時計屋から持ち出してきた不安が、その瞬間に初めて胃の底まで沈んでいった。


通りの角の鐘がちょうど鳴り始めた。


一打。


また一打。


旧市街全体が、同じ瞬間に振り返って、俺たちを一瞥したようだった。


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