81. 触れたくない古傷 81-2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「あれは表に出ておるものではなかった」彼女は言った、「通常の軍の編制でもなければ、ただの研究部門でもない。掛け声と、血統学と、種族神話と、戦の絶望の上に被せられた一枚の皮じゃ。表向きは『より高き人間』を求めておる——より強き肉体、打たれ強き血、安定した変異、夜戦に適した身体、浸透に適した身体、極限環境でも生き延びられる存在をな。だが、実際は——」
彼女は不意に言葉を止めた。
言葉を忘れたのではない。話の途中で、自分の記憶に喉を塞がれた者の止まり方だった。
彼女を見つめながら、今の彼女がすでに境界線に足をかけているのがわかった。これ以上進めば、情報を差し出すのではなく、自らをあの場所に引きずり戻すことになる。
俺が口を開こうとした瞬間、彼女の方が先に続きを言った。
「実際は、血と、死体と、古き異形と、崩れかけた帝国を寄せ集めて、まだ勝てるという幻想をでっち上げようとした狂人どもの巣じゃった」
小部屋の中は静まり返っていた。
ランプの光が彼女の顔を照らし、その瞳の奥にあったものを、さっきよりはっきりと浮かび上がらせた。
ただの怒りじゃないことは見て取れた。
自分自身への嫌悪だ。
怒りより、何倍も重い。
「エリザヴェータ」俺は低く言った、「もういい」
だが、彼女は聞こえなかったふりをした。
正確に言えば、聞こえてはいる。ただ止まりたくなかったのだ。一度止まれば、ちょうど踏みかけた自分の一番触れたくない線の手前で、却って身動きが取れなくなるとわかっていたから。
彼女は顔を上げ、俺を見た。その瞳の中に、初めて年相応の脆さのひびが入っていた。
妙なひび割れだった。若返ったわけじゃない。権力と冷静さと制度に押しつぶされて、必要以上に早く大人にされてしまった顔が、本来なら負うべきではなかったものの重さを、ちらりと覗かせたような——そんな亀裂。
「一九四五年まで続いたのじゃ」彼女は言った。
この一言で、これから先はもっときつい話になることがわかった。
俺を見つめる目は、今すぐにでも止めてほしそうで、それでも本当に待つことはなかった。
「敗亡の前夜」彼女は言った、「妾たちはワイスマンの指揮下で、最後の突撃隊を組んだのじゃ」
胸がぎゅっと締めつけられる。
「妾たち」とあまりにも平坦に言ったからだ。
その平坦さは、心の中でこの話を何度も何度も反芻しすぎて、もはや抑揚をつけることに意味を見いだせなくなった者のそれだった。
「高位吸血鬼百二体」彼女の声は少し浮き始めていた。身体はこの場にあるのに、魂だけが記憶に引かれて別の場所へ歩き出してしまった者の声だった。「で構成された屠殺隊じゃ。撤退路を切り開くための——誰も長くは持たぬとわかっておる、それでも作らねばならぬ道じゃった」
そこで一度言葉が切れ、彼女の視線が半秒だけ完全に空を切った。
俺を見ているのではない。
別のものを見ていた。
「雪、火、泥、血。命令が下れば、妾たちはただ前に進み、引き裂くだけじゃ」彼女の声は低かった。あまりに低くて、少し身を乗り出さなければ聞き取れないほどだった。「ソ連赤軍二個師団の追撃を、妾たちは力ずくで引き裂いた。妾たちが勇敢じゃったからではない。その頃には、誰も人間ではなくなっておったからじゃ。飛びかかり、噛み裂き、引きちぎり、霧となり、また形を取り戻し、もう一度飛びかかる……果てしなく霧と化し、果てしなく噛みちぎり……」
そこまで言ったところで、ようやく彼女の呼吸が決定的に乱れた。
泣いているわけではない。
むしろ喘いでいた。
彼女が今思い出しているのは、ホラー映画の一本ではない。自分の牙がかつて何に食い込んだかという感触そのものだった。
「もういい」俺は言った。
彼女は止まらなかった。
「地面には一面——」
「もういい、エリザヴェータ」
椅子から立ち上がり、小さなテーブルを迂回して、一気に彼女の腕を掴んだ。
彼女の身体がはっきりと震えた。
驚いたというより、今にも彼女ごとあの光景に引き戻されそうだったところを、力任せに現在に引き戻された震え方だった。焦点が一瞬だけ外れ、唇はまだ動いていた。あの場面を語り続ける限り、自分も見続けなければならないと信じ込んでいる者の口の動き方だった。
俺はそれ以上、話を続けさせなかった。
彼女の身体を引き上げ、そのまま抱きしめた。
「もう言わなくていい」
彼女は全身を固くした。
ガチガチに。
骨の一本一本がまだ踏ん張ろうとしているみたいだった。まだ耐えようとして、せめてこの話だけは最後まで言い切るべきだと、手がどれだけ血で汚れていようと、それを説明しきる責任があると思い込んでいるみたいだった。だが、その機会は与えなかった。
片手で彼女の背中を引き寄せ、もう片方でうなじを押さえ、全身を俺の肩口へ押し込んだ。
「もう言わなくていい」もう一度言った。
彼女はすぐには抱き返さなかったし、すぐに身を預けてきたわけでもなかった。
ただ、そこに立ち尽くしていた。あまりに長く誰の手にも触れられなかった氷が、初めて炎に包まれたときのように、溶けるどころか最初はかえって硬くなった。
呼吸が乱れているのが、腕越しに伝わる。
ひどく乱れている。
それでも、なお持ちこたえようとしていた。
こういう種類の人間が、一番厄介だ。一度自分が盤面を支える役になることに慣れてしまうと、どこに亀裂が入ろうと、そこですら自分で支えねばならないと思い込む。裂け目の下に血と牙と、もう一言でも続ければ本当に折れてしまいかねないものが溜まっていようと、それでも、支えなければならないと思ってしまう。
だから、俺は抱きしめたまま、腕を緩めなかった。
「エリザヴェータ」俺は低く言った、「これは、今お前が全部言い切らなきゃならない話じゃない」
彼女の喉が小さく動いた。
数秒後、俺の肩口でほとんど砕けるような声がした。
「お主は、あれがどのようなものか知らぬ」
「知らない」俺は言った、「だからといって、今ここで一息に全部俺に見せる必要もない」
彼女は黙った。
背中の向こうで、彼女の指がほんのわずかに俺の服を掴んだ。
一度だけ。
そんな依存の仕方さえ、まだ不器用で、どこか抵抗の色が混じっている。それでもその一度で十分だった。少なくとも今の彼女が「止まりたくない」のではなく、「止まり方がわからない」だけだとわかったから。
腕に、少しだけ力を込める。
「さっきのお前は、情報を差し出していたわけじゃない」俺は言った、「自分を、あの線の中に戻していた。ワイスマンがさっき接続を切った直後に、その口調に合わせてまで語る価値のあるものじゃない」
この一言で、彼女はようやく本当に静まった。
冷静になったわけじゃない。ごく短い「覚醒」だった。
さっきまで自分が俺に向かって話しているつもりで、実際には耳の奥にへばりついたワイスマンの余韻に向かって話し続けていた——その事実に、ようやく気づいたのだ。
彼女は俺の肩に額を押しつけるようにして、そっと目を閉じた。
表情は見えなかったが、その一瞬がどれほど重いものかは、息の落ち方でわかった。
しばらくして、ようやく彼女が低く言った。
「妾は、あやつが怖いわけではない」
「知ってる」
「生き延びたことを、悔いておるわけでもない」
「それも、知ってる」
「ただ——」
そこで彼女は、言葉を切った。
今度の沈黙は、言葉が見つからないからじゃない。本当に言いたい語が、あまりにも重くて、まだ触れたがっていないからだ。
俺は先を促さなかった。
ただ掌で彼女の背中をゆっくりと押し下げ、この小部屋という「今」へ彼女を押し戻した。
「ただ、あの年を、まだきちんと埋葬できていないだけだ」俺は、代わりに半分だけ言葉にした。
彼女はすぐには肯定しなかった。
だが、否定もしなかった。
小部屋は静まり返り、遠くからキーボードの音がかすかに届いてくる。それがかえってはっきり聞こえて、妙な安心感をもたらした。あの連中がまだ手続きを回し、逐語録を解体し、第二ラウンドの対応を組み立てている——それが今は救いだった。少なくとも、俺たちは今この瞬間、ちゃんと現在にいる。ベルリンにいるわけでもなければ、一九四五年の雪原にいるわけでもない。
やがてエリザヴェータが、ゆっくりと俺の腕の中から顔を上げた。
目は赤くなっていなかったし、涙も流れなかった。
それでも、その顔はまだ白く、さっきより一段、何かを抜き取られたように見えた。彼女みたいな人間はこういうものだ。崩れた部分の多くを外に流さず、内側へ内側へと縮こまらせる。縮こまった結果、見た目はかえって整って清潔に見えるのに、その分だけ深く傷ついている。
俺はすぐには腕を緩めなかった。
彼女は俺を見ていた。まだ言いたいことがあるようで、それでも最後の瞬間に、その言葉をすべて飲み込んだ。
最終的に、彼女はただ一言だけ言った。
「妾は、無辜ではないのじゃ」
俺はその言葉を見つめた。
これこそが、本当にずっと彼女の中に刺さり続けていたものなのだろう。
ベルリンでもなく、ワイスマンでもなく、アーリア超人機関でもなく、高位吸血鬼百二体でもなく、雪原に染みた二個師団の血でもなく、さっき彼女の口から出てきた、まだ散りきっていない噛み裂きの感触でもない。
この一言だ。
妾は、無辜ではないのじゃ。
彼女が恐れているのは、俺が彼女の殺した事実を知ることじゃない。
俺が彼女をあの一年の中に置いて見たとき、今のこの彼女ごと、その勘定に含めてしまうことを恐れていた。
俺は数秒黙ってから、口を開いた。
「今、お前は二つの別々のことを俺に話してる」
彼女は黙って俺を見ていた。
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