81. 触れたくない古傷 81-1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
ワイスマンとの接続をほとんど夜明け間際まで解体し続けたが、拠点の明かりは一つも消えなかった。
シキはまだ機材の前で逐語録を整理していて、整理しながら罵倒を続けている。しまいには汚い言葉にまでリズムが生まれ始めていた。葉綺安は晩餐会で見た顔ぶれとワイスマンの語調を照らし合わせ、老貴族たちの皮の下に埋まった古い線を探し出そうとしている。林雨瞳はもっと直接的で、白紙にはすでに大きな文字がいくつか並んでいた——宣告、清場、カウントダウン、身代わり、企業の看板。
全員が動いていた。
エリザヴェータの周りだけが、不自然なほど静かだった。
彼女は別のテーブルの前に立ち、手元にはリヴァイアサンからの書簡、ワイスマンの逐語録、イレーナから届いた手書きの名簿、そして一枚の白紙が広げられていた。ずっと座ろうとせず、ただ立ったまま、自分自身をも一つの秩序として立ち尽くそうとしているみたいだった。俯いて紙を見つめる時間があまりに長く、その白紙がどんな言葉よりも重く見えるほどだった。
林雨瞳とさっきのキーワードを照合しながら、俺はどうしても彼女の方に意識が向いてしまう。
表向きは乱れていない。
肩のラインはまっすぐで、手も安定していて、ページをめくる動作さえいつも通り無駄がない。だが、おかしいことはわかっていた。後から黙り込んだからじゃない。ワイスマンが接続した瞬間、彼女に向かってあの言葉を放ったときから——
「前回お目にかかったのは、1941年のベルリンでしたな」
彼女は返さなかった。
聞き取れなかったわけでも、相手にする価値がないと思ったわけでもない。
返さなかったのだ。
他の誰かなら、それはただの間だったかもしれない。だがエリザヴェータにとっては、それは亀裂だ。彼女は安っぽい歴史ゲームを一つ言われたくらいで、その場に釘付けにされるような女じゃない。相手の言葉を解体して、裏返して、具名に追い込み、窓口に追い込み、責任に追い込む——それが彼女の本領だ。なのにあの瞬間、彼女は何もしなかった。
ただ静まった。
しかも、俺たちにはまだ見えない古い名前に触れられたみたいに。
その場で突かなかったのは、あのタイミングじゃなかったからだ。
だが今は違う。
部屋はまだ動いていて、リズムもある。でも一番急いでいた刃はもう落ちた。ワイスマンは言うべきことを言い終え、火薬の匂いを置いていった。これ以上引き延ばせば、あの「おかしい」という感覚がずっと目の前に横たわって、これから先の判断に影響する。
手の中の紙を置いて、立ち上がり、彼女の方へ歩いた。
足音が聞こえているはずなのに、彼女は振り向かなかった。
俺は彼女の隣に立ち、すぐには何も言わず、ただその白紙を見下ろした。
薄い圧痕が三つあった。ペン先が触れたのに、本当の意味では書かれなかった跡だ。何か書こうとして、最後の瞬間に力を引き戻したみたいに。
「さっき、返さなかったな」俺は言った。
彼女の指先が紙の縁でわずかに止まった。
「別のことを考えていたのじゃ」
「いつものお前じゃない」
今度は、彼女がようやく振り向いた。
その顔はやはり白かった。もともと血の気をほとんど感じない、体温で生きているわけじゃないような存在の白さだ。だが今は違った。その白さがさらに一段深くなっていた。皮膚の下に埋まっていた冷たさが、全部浮き上がってきたみたいに。死人の白さじゃない。古い夢に無理やり引きずり戻された後に残る、あの蒼白さに近い。
二秒だけ俺を見てから、彼女は淡々と言った。
「今はそれを聞くべきではなかろう」
「わかってる」俺は言った、「それでも聞く」
彼女は返さなかった。
ドアの向こうから、キーボードの音と紙をめくる音が遠く届いてくる。遠すぎて、別の世界みたいだ。同じ拠点で、同じ夜のはずなのに、彼女の隣に立っているだけで、あの「1941年のベルリン」という言葉が俺たちの間に一枚の層を切り開いたような気がした。
「エリザヴェータ」俺は彼女を見た、「今話したくないなら、無理強いはしない。ただ、さっきの言葉が何に触れたのか、それだけ教えてくれ」
彼女は目を落として、その白紙を見た。
数秒後、ようやく口を開いた。
「ついて参れ」
---
彼女は大広間には戻らなかった。廊下の奥の、いかにも密談向けな場所にも連れていかなかった。
連れていかれたのは、隣の小部屋だった。
拠点の一番奥の部屋だ。窓がなく、狭いテーブルが一つ、椅子が二脚、ランプが一つだけある。言葉を短く切り詰め、呼吸を押し殺すためだけに用意されたような空間だ。ドアが閉まった瞬間、外の音がすっと遠退いた。
彼女は後ろ手でドアに鍵をかけた。
その音は小さかったが、さっきのどんな言葉よりも重かった。
「座れ」彼女は言った。
俺は座った。
彼女は向かい側には座らなかった。もう一脚の椅子を引いて、少し距離を置き、斜め前方に腰を下ろした。この距離感は奇妙だった。尋問でもなく、慰めでもない。今から話すことが普通の情報じゃないとわかっていて、テーブルの上に広げるには向かない、立ったまま話すにも向かない——そういう話だとわかっているみたいだった。
ランプの光が上から落ちて、彼女の顔をさっきより一段白く照らした。
普通の意味での蒼白さじゃない。
抑えきれない失血感、とでも言うべきものだ。怪我はしていない。なのに彼女がそこに座っているのを見ていると、見えない場所から少しずつ流れ出ているような、そんな錯覚に囚われた。
長い沈黙があった。
このまま気が変わって、全部引っ込めてしまうんじゃないかと思うくらい長かった。
だが最終的に、彼女は口を開いた。
「周士達」彼女は俺を見た。声は低かった、「妾が話したくなかったことがあるのじゃ」
俺は遮らなかった。
「一九四一年」彼女は言った、「あの年、皆が狂うておった」
その言葉を口にするとき、彼女の表情は薄かった。冷静なんじゃない。平らすぎた——ずっと前に埋めてしまおうとしていた文章を、今さら諳んじているみたいに。
「すべてが良くなると信じておった。未来はもっとましになると、歴史がようやく正しき者に正しき位置を返してくれると信じておった。そう思うた者は多い。多くの家、軍人、学者……そして人ならぬものまでもが、そう信じておった」
彼女は一度言葉を切った。
俺はただ見つめていた。遮らない。
喉がかすかに動き、続きの文があったはずなのに、自分で飲み込んだようだった。
「されど、ついには徒花じゃった」彼女は言った。
今度は俺の顔を見た。
もともと若いその顔が、一瞬だけ奇妙に歪んで見えた。崩れたわけでも、形が変わったわけでもない。今この瞬間に属しているはずの顔が、遥か昔の影に内側から押し広げられたような——そんな違和感。瞳の奥で何かが揺れていた。深く、乱れていて、それは恐怖だけではなかった。自分で抱えすぎた記憶の重さに近い。
「妾は、多くの者を傷つけたのじゃ」
その言葉を口にするとき、彼女の声はさっきよりさらに低くなった。
胸の奥が、ほんのわずかに沈む。
彼女が俺の前で過去の影を覗かせたのは、これが初めてじゃない。もともと清潔に育ったわけじゃないことぐらい知っている。古い血、古い姓、古い城、古い権力、そして名状しがたい残響を、ずっと纏ってきた。だが、こんな言い方をしたことは一度もなかった。
「我が家が何をしたか」じゃない。
「昔の者たちが何をしたか」でもない。
ただ——妾は、多くの者を傷つけたのじゃ。
俺は遮らず、短く一言だけ告げた。
「聞いてる」
彼女の呼吸がかすかに乱れた。
大きく崩れたわけじゃない。それまで完璧に整えて押さえ込んでいたリズムに、初めて小さな綻びが入っただけだ。
「あの年」彼女はゆっくりと言った、「妾たちの同族の多くが、掛け声に騙されたのじゃ」
「同族」という言葉を口にした瞬間、彼女の目に初めて本物の炎が宿った。
涙でも激情でもない。冷たく、硬い怒りだった。
「掛け声というものは、人を欺くのが得意じゃ」彼女は言った、「とりわけ、もともと時代の端に追いやられておるものに対してはな。貴族、異形、古き血、伝説として飼われておる怪物、自分はまだ価値があると証明したき者——そういうものほど、騙されやすい。あまりに長く、居場所を失っておるからじゃ。誰かがこう告げれば足りる——お主らは間違っておらん、まだ正しき場所に戻されておらぬだけだ、と。未来はお主らを必要としておる、歴史はお主らを用いる、血統は恥ではない、資格じゃ……そう言われれば、多くの者は自ら歩み寄ってしまう」
彼女は言葉を切った。
俺は彼女を見つめながら、なぜワイスマンのあの一言が彼女をあれほど静まらせたか、少しわかった気がした。
あれはただの歴史の年号じゃなかった。
彼女が一度は本当に足を踏み入れた、一層の地獄だったからだ。
彼女は深く息を吸い込んで、覚悟を決めたように次の言葉を吐き出した。
「アーリア超人機関」
その五文字が彼女の口から出た瞬間、はっきりとした嫌悪の気配が走った。名前を告げたというより、喉の奥に長年こびりついていた腐肉を、無理やり引きずり出したかのようだった。
俺は黙っていた。
彼女も俺を見ず、ただテーブルを見つめていた。
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