80.警告 80-6
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
葉綺安がふと聞いた。
「で、どうする? 三時間後の補足書を待つ?」
「待つ」俺は言った。
「まだ待つの?」彼女が眉を上げた。
「待つ。ただし、ただ待つんじゃない」俺はシキを見た、「さっきの録音全体を正式な逐語記録に起こせ。特に三か所、太字でマーク。一、日本はただの検証。二、私の命はもうすぐ燃え尽きる。三、その人間が私の代わりにすべてを処理してくれる。それと最初の1941年ベルリンの言葉も、別に独立して保存しろ」
シキが頷いて、手がもう動き始めた。
「了解」
「雨瞳」俺は林雨瞳に向いた、「今夜のやつの言い回し全体をもう一度抽出してくれ。内容の要約じゃない、語調の構造が欲しい。どう敷いて、どう転じて、どこが勧告に見えて、どこが実際には命令だったか、全部解体してくれ」
「了解」
「綺安」俺は葉綺安を見た、「今日の晩餐会で、封存を勧めた、保管を勧めた、むやみに掘り返すなと言った連中全員を、さっきの接続の口ぶりと照合してくれ。誰かがすでにやつのために前口上を並べていたかどうか確認したい」
葉綺安が少し笑った。
「それ好き」
全部言い終えてから、俺はようやくエリザヴェータを見た。
彼女はすぐには返さなかった。
数秒後、ごく淡々と一言だけ言った。
「やるがよい」
声は乱れていなかった。語調も歪んでいなかった。
だがそれが普通すぎるからこそ、さっきのあの沈黙が余計に異常に際立った。
俺は彼女を見つめていた。何も聞かなかった。
彼女も俺を見なかった。
この距離感は妙だった。疎遠でもない、制御不能でもない、逃げているわけでもない。ただ彼女が一時的に、ある扉を内側から押さえつけているみたいだった。誰にも見せず、自分もこのタイミングでは触れないように。
その扉の向こうに何があるのか、今の俺にはまだわからない。
だが一つだけははっきりしている——ワイスマンのあの「1941年のベルリン」という言葉が、ただ人を苛つかせるための出任せじゃないということだ。
あれは彼女に刺さった。
しかも、深く。
俺は踏み込まなかった。
今夜は、その時じゃないから。
シキの方はもう逐語記録のテンプレートを開いていて、打鍵しながらもまだ罵倒を忘れなかった。
「マジで花輪注文するからね」キーボードを叩きながら言う、「口だけじゃないわよ。あいつが死んだら真っ先に送ってやる。白菊なんかじゃ生温い、一番ダサくて悪趣味なやつにしてやる。ドアを通れないくらいデカいやつね」
葉綺安がたまらず吹き出した。
「供花につけるメッセージ、私が書いてあげるわ」
「なんて書くの?」シキが顔を上げる。
「『ようやく黙る気になった老いぼれへ』ってね」
「短すぎ」シキは鼻を鳴らした、「もっと長く書くわ」
こういう冗談は、今の状況では逆に効く。
面白いからじゃない。さっきからずっと胸にのしかかっていた吐き気を、別の角度から少しだけこじ開けてくれるからだ。
林雨瞳は笑わず、整理し終えたばかりの第一版の要点をテーブルの中央に押し出した。
「現在、線は二本」彼女は言った、「表の線は、今夜リヴァイアサンが正式に記録に入ったこと。裏の線は、ワイスマンがすでに『もう隠れない』段階に入ったこと。前者は企業窓口への攻撃材料になるけど、後者が意味するのは——」
「やつの時間が近いってことだ」俺は言った。
彼女は頷いた。
「そう。完了が近いわけじゃなくても、少なくとも、もう偽る必要のない段階に突入しつつある」
シキが顔を上げ、再び表情を沈ませた。
「あいつの『命がもうすぐ燃え尽きる』って言葉、演技だと思う?」
「思えなかったな」俺は言った。
「思えない」林雨瞳も言った。
「むしろ本気に聞こえたわね」葉綺安がグラスを揺らした、「しかもさらにタチが悪いのは、それを言うときの態度が悲壮じゃなくて、愉快そうだったこと。ようやく自分を使い切れる、みたいな」
シキが汚い言葉を吐き捨てた。
「頭おかしい」
「この世の災難の多くは、頭おかしい奴が起こすわけじゃない」俺は言った、「自分自身を完璧に説得しきった人間が起こすんだ」
そう言い終えて、俺自身も少し黙り込んだ。
脳裏にまたワイスマンのあの顔が浮かんだからだ。古風な教養と、過剰な冷静さ、そして自分自身を結論として燃やし尽くしたような、あの目。
こういう手合いが一番厄介だ。
侮辱で退くこともなく、憎悪で逃げ出すこともない。罵倒したところで本当にバランスを崩すこともない。まともな人間の尺度で理解しようとすればするほど、やつのペースに引きずり込まれる。
なのに今夜、やつはわざわざ自ら出てきた。
そのこと自体が、やつがこの盤面を次の段階へ進めようとしている証拠だ。
さらに考えを整理しようとした矢先、エリザヴェータがようやく立ち上がった。
動きは速くないが、無駄がなかった。さっきの短い沈黙など、最初から存在しなかったかのように。
「今夜の録音は三つに分けよ」彼女は言った、「一つは完全封存、一つは作業用、もう一つは対外的な牽制に使うためキーワードだけを残した予備じゃ。リヴァイアサンが三時間以内に本当に補足書面を送ってくるなら、それが発信される前に、こちらの言葉の陣形を整えておくのじゃ」
全員が短く応じた。
彼女はすっかり元通りに見えた。
普通すぎるくらいに。
胸の奥の「おかしい」という違和感は消えるどころか、さらに輪郭を濃くした。
だが、やはり何も聞かなかった。
ただ、彼女が背を向けて別のテーブルへ向かうとき、無意識に一瞥しただけだ。彼女はこちらを見なかった。俺が見ていることを知っていて、俺が今は触れないこともわかっている——そんな背中だった。
それでいい。
少なくとも彼女は、自分の中に問題があることを俺に悟らせる程度の隙は残してくれている。
一番恐ろしいのは、それすらも見せなくなることだ。
夜はさらに深まっていくが、拠点内の明かりは一つも消えていない。
シキは機材の前で逐語録を作りながら、ワイスマンが早く土に還るよう低い声で呪詛を吐き続けている。葉綺安は晩餐会の名簿とさっきの通信の口調を並べ、今夜すでに底を割った顔ぶれを探し出そうとしている。林雨瞳はペンを握り、ワイスマンの話術全体を「勧告」「宣告」「責任逃れ」「時間的圧迫」という項目に解体し、一つ一つ書き出している。
そして俺は元の席に座ったまま、真っ暗になった画面を凝視し、長く視線を外さなかった。
ワイスマンの最後の一言が、まだ耳にこびりついている。
邪魔をするな、周士達。
あの言葉に怒りはなく、殺気もなく、感情すらほとんど乗っていなかった。
だが、それが一番気に食わない。
俺を対等な敵として見てすらいない。ただ道の真ん中に突っ立って、まだ自分から退いていない生きた障害物程度にしか思っていない——そういう扱いだからだ。
俺は小さく笑った。
笑みがこぼれた瞬間、胸の中の炎はむしろ静かに定まった。
上等だ。
やつが本当にこれを単なる障害物排除だと考えているなら、教えてやる。この道は、てめぇが好きなように轢き殺して通れるほど甘くねぇってことを。
横をちらりと見た。
エリザヴェータは俺たちに背を向け、別のテーブルの前に立っていた。手元にはワイスマン関連の名簿、今夜のレターヘッド、通信の逐語録の初稿、そして一枚の白紙が広げられている。彼女は一言も発さず、ただその白紙を見つめていた。まるで、書き留めるかどうかまだ決めていない言葉を、先に喉の奥から取り除こうと待っているみたいに。
彼女を見つめながら、胸の内の糸がさらに一段張り詰めた。
だが、歩み寄りはしなかった。
したくないわけじゃない。今はダメだ。
ワイスマンが今夜火薬を投げ込んできた——これが第一層。
やつが1941年のベルリンという言葉でエリザヴェータに触れた——これが第二層。
第二層は今、解体できない。
少なくとも、今は。
だから俺は視線を戻し、手を伸ばしてモニターを引き寄せ、さっきのリヴァイアサンからの正式な手紙をもう一度開いた。
笑えるほど短い手紙だ。
誰が見てもただの表看板。
だが今はもう、その看板の後ろに誰が座っているかわかっている。
そしてそれは、どんなに体裁の整った法的文書よりも重みがある。
外のウィーンはまだ静かだ。すべての窓の向こうで、人々が今夜も安らかに眠っているかのように。
だが、そうじゃないことはわかっている。
少なくとも今夜以降は、もう二度と。
ワイスマンが自ら言葉をテーブルに突きつけてきたからだ。
やつはもう、ウィーンの老姓や、古い財団、地下施設、封印されたファイルの裏には隠れない。
リヴァイアサンの法務に様子見させる必要すらなくなった。
直接座り込み、俺たちを見据えた。まだ自分から逃げるのに間に合う生きた人間を、最後に見定めるみたいに。
上等だ。
なら、退いてやるもんか。
その手紙を閉じ、顔を上げたとき、窓の外の夜がちょうどもう一段深くなった。
そして、俺の心の中で初めて、極めてはっきりと悟った——
この瞬間から、これはもうウィーンの手続き戦じゃない。永遠領が旧ヨーロッパのテーブルに対して行うただの探り合いでもない。
ワイスマンが自ら表舞台に立った。
ならば次は、誰が体面を保ちたいかどうかの話じゃない。
誰が先に受け止めるかだ、
本物の宣告を。
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