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79.社交スキル実演 79-1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

一階に降りきった瞬間、ホールにいた人間がちょうど振り返った。


男が二人。どちらも、異様に清潔な身なりをしていた。新品という意味ではない。清潔、なのだ。袖口の折り目まで誰かに管理されているような、自分で服を着たのではなく、人間より古い何かの規矩に一寸ずつ着せ込まれたような清潔さだった。年長の方は微動だにせず立ち、髪も一本乱れていない。顔には昼餐会でしか見ないような穏やかな表情を貼りつけている。若い方は公文鞄を脇に抱え、指先がわずかに強張っていた。今日ここへ派遣される前に、失礼は許さん、失敗も許さんと念を押されてきたのだろう。


エリザヴェータの足は止まらない。


俺の手にある灰色の箱に、視線を一秒たりとも余計に向けようとしない。まるでこれが今朝から当然持ち帰るべきものの一部であるかのように。盗みでも、略奪でも、触れてはならない骨を掘り起こしたわけでもないという顔で。


俺はその半歩後ろについた。シキ、林雨瞳(リン・ユートン)葉綺安(イェ・チーアン)が誰に言われるでもなく自然に散開し、両翼の位置を取る。これは訓練じゃない。ここまで追い詰められながら身体に刻み込まれた習慣だ。場が上品であればあるほど、手は抜けない。


年長の男が先に口を開いた。


「エリザヴェータ殿下」


エリザヴェータはそこで初めて足を止め、男を一瞥した。


「そなたは?」


男が姓を名乗った。


昨夜ウィーンで見た名刺の束の中に、一度だけ見かけた姓だ。一番光る札でも、一番古い札でもない。だが、本当に紙の上に載せれば、誰かが一晩眠れなくなるような姓。財団、銀行、歴史保存委員会、文化遺産諮問——この手の人間には、聞いているだけで眠くなるほど真っ当そうな肩書きが四つも五つもぶら下がっている。だが、その肩書きの裏にあるのは本じゃない。扉だ。


「数名の友人から依頼を受けまして」男はわずかに微笑み、まるで席を勧めるような口調で言った。「少々不要な誤解を解消するお手伝いに参りました」


俺の左斜め後ろで、葉綺安が鼻から小さく息を吐いた。


「さすがウィーン人、口がうまいわね」彼女は低く呟く。「道を塞ぐのも、乾杯の挨拶みたいに聞こえる」


男はそれが聞こえなかったふりをした。あるいは聞こえても応じる気がないのか。視線をエリザヴェータに据えたまま、礼儀正しく、慎重に、表情一つ動かさない。


「本日この建物に保管されておりました古い資料の一部は、関係する範囲が広く、出所も複雑でございます。適切な手続きを経ずに持ち出されますと、各方面に不要な誤解を招き、また体裁もよろしくないかと」


エリザヴェータはそこで初めて、二秒ほど真正面から男を見た。


ホールの天窓から差し込む光が彼女の肩のラインに落ちている。研ぎたての銀みたいに冷たく。手袋をはめた指は動かず、目も動かず、それでいて彼女の全身は、窓の外の空よりずっと冬に近かった。


「体裁?」彼女は淡々と繰り返した。「妾が先ほど持ち出したのは資料ではなく、誰かの面子だとでも?」


年長の男は笑みを崩さず、ただ声をほんの少し柔らかくした。


「歴史が残したものは、内容よりも保存の仕方の方が重要だと、申し上げているだけです」


「違うな」


俺が口を開いた瞬間、男の目が初めて本当に俺の上に落ちた。


侮りでも、興味でもない。値踏みだ。昨夜あの席で全員が俺をエリザヴェータの傍らにようやく据えられた「手」として見ていたように、今日この男は初めて本気で測り始めたのだ。この手はグラスを握る手か、刃を握る手か。


「保存の仕方が重要なのは」俺は男を見て言った。「中身があまりにも見せられないからだ。本当に後ろ暗いものが何もないなら、俺たちが箱を間違えたところで、誰が怖がる?」


若い方の顎が、はっきりと強張った。


年長の方はそれでも崩れなかった。ただ、唇の端の笑みが半分ほど薄れた。


(ジョウ)先生は昨夜初めて正式にお席に着かれたばかりだというのに、今日のお言葉は随分この街の人間らしい」


「昨夜の学習効率が良かったもので」俺は答える。「特に、誰が口を開けば、どのテーブルが焦っているかってことはよく分かった」


空気が半拍止まる。


エリザヴェータはその半拍を無駄にしなかった。半歩前に出て、俺と相手の視線をちょうど遮る。その動作は傍目には庇っているように見えるが、実際はもっと別の意味を持つ。俺を隠すためじゃない。向こう側に示すためだ。喋っていたのは周士達(ジョウ・シーダー)、だがこの場を定義するのは妾だ、と。


「そなたを遣わした者どもに伝えるがよい」彼女は言った。「本日これらの品は、然るべき手続きを経ずに持ち出されたのではない。永遠領(エターナル・ドメイン)対外窓口が正式に接収したのだ。異議があるなら、窓口宛てに文書を送れ。具名の上、箇条書きで、どのページを、なぜ取り戻したいのか、明記して」


一拍置いて、声がさらに平らになった。


「妾は、そのすべての名を喜んでリストに加えてやる」


この一言が落ちた瞬間、男の顔から昼餐会用の表情が半分剥がれ落ちた。


取り乱したわけじゃない。この種の人間は玄関ホールで取り乱したりしない。ただ理解したのだ。ここで手を伸ばせば、この件が「後始末の協力」から「自分が火消しに焦っていることの自白」に変わってしまうと。古いヨーロッパが最も恐れるのは刃じゃない。刃が台帳に記されることだ。


「さようでございましたら」男は言った。「そのままお伝えいたします」


エリザヴェータが小さく頷いた。


「大儀」


彼女はそう言い置いて歩き出した。


急がず、速くもなく、振り返りもしない。この歩き方が一番えぐい。追うかどうかを相手に自分で判断させるしかなくなるからだ。追えば、自ら身分を差し出したことになる。追わなければ、俺たちが荷物を持ち去るのを見送るしかない。


結局、彼らは追ってこなかった。


車のドアが閉まった瞬間、シキが即座にタブレットを叩き起こし、さっきまでの静かな冷血モードから一気に仕事モードに切り替わった。


「三分前から、四つの発信元が同じことを聞いてきてる」指が素早く画面をスクロールする。「二つはこっちの歴史資産財団、一つはプライベートバンク、一つは昨夜の宴会の裏方連絡係。それとあと一つ——」


シキが顔を上げ、俺を見た。


「スロバキア経由」


葉綺安がシートに背を預けて、短く笑った。


「伝わるの早いじゃない」


「早いんじゃない」林雨瞳が窓の外を流れる街並みを見ながら、淡々とした声で言う。「ずっと座って待ってた。どの扉が開くかを」


俺は何も答えず、ただ自分の指についた灰を見下ろした。


さっき箱を引いた時についたやつだ。ほんの少し。醜くはないが汚くもない灰色で、やけにしつこくこびりついている。親指で擦ってみたが、落ちない。皮膚の上に浮いているのではなく、掌紋の中に入り込んでいるみたいだった。


イレーナの声が昨夜、耳の奥からふっと浮き上がってきた。


——明日あの扉を入って、錆の匂いがしたら、それがただの錆だなんて思わないで。


目を閉じ、その声を押し戻す。


車内は静かだった。エリザヴェータの手袋の布が擦れる音が聞こえるくらいに。彼女は俺の向かいに座り、窓からの光と影の中で顔の輪郭がくっきりと切り取られている。俺の手の灰も、昨夜首の横に残った、今朝になっても完全には消えなかった薄い痕も、見てはいない。だが見えていることは分かっていた。聞かないのは見えていないからじゃない。いつ聞くべきかを知っているからだ。


拠点に戻り、ドアが閉まり、灰色の箱がテーブルに置かれて、彼女はようやく口を開いた。


「今日から、新しいルールを設ける」


テーブルの傍らに立ち、手袋もまだ外さず、声も大きくない。それでも部屋の全員が自然に手を止めた。彼女がこういう口調で話す時は決まって、誰かが今日から不自由を強いられることを意味している。


「第一、資料室から持ち出したすべての姓は、口に出さない。記号で記せ。第二、外部からの連絡はすべて三種に分ける。探り、切り捨て、手打ち。第三、妾の許可なく、いかなる善意にも返事をしない」


「悪意は?」葉綺安が聞いた。


「悪意は分類しなくていい」エリザヴェータは言った。「悪意はどれも似たような顔をしてる」


シキは顔を伏せてタブレット上で爆発している通信ログを整理しながら、それでも口を挟む余裕を見せた。


「善意の皮を被った悪意、用の欄も作っとく?今日のこの街、そっちの方が多そう」


「作れ」エリザヴェータは言った。「一番上に置け」


林雨瞳が灰色の箱を回転させ、封口を俺の方に向けた。


「先に開けるのはどっち。箱、それとも連中の面」


「面が先」エリザヴェータは言った。「誰が一番落ち着かないか、先に見る」


俺は彼女を見ながら、昨夜と今日がひとつながりだと感じた。


イレーナは身体で扉を一寸だけ開けて見せた。エリザヴェータは秩序でその扉ごと接収した。前者は火で、後者は刃だ。火は人間を失手させる。刃は失手を紙に刻む。

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