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72.独立宣言 72-3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

ヴァヴラが即座に一歩前に出て、彼女の右隣に立ち、タブレットを開く。


その画面を見た瞬間、(シキ)がとっくにテンプレートを用意していたと分かった。


外のカメラが全部、また一斉にこちらを向く。


一国の代表がさっきの質問の嵐からまだ這い出せていないうちに、もう向こう側では新たな領の最初の対外公告が発布されようとしている。


このテンポは交渉じゃない。


処刑だ。


ヴァヴラが口を開く。声は冷たく、揺るぎない。


「ドラキュリヤ=バートリ大公永遠領――第一号対外公告」


現場が、また一層静まり返る。


俺はその場に立ちながら、気がついたら肩が少し伸びていた。


イレーナは後方に立ち、顔色がすでに失血したようになっている。


ヤクブに至っては言うまでもない。「K類」という三文字に、その場で釘付けにされたような有様だ。


林雨瞳(リン・ユートン)はイヤホン越しに(シキ)からの報告を聞きながら、俺に小声で告げる。


「掲示板が今、これで埋まってる――『まず受け取ったことを認めさせろ。どう吐き出させるかはそれからだ』」


俺は笑った。


「民衆の見出しセンス、どんどん上がってきてるな」


「あなたより安定してる」


「それはちょっとした人格攻撃じゃねえか」


外では、今度はハンガリーメディアが追撃してくる。


「永遠領は、臨時法務事務所および外国連絡窓口の設置を検討していますか? 複数国が進出を希望した場合、順番待ち制を採用しますか?」


さすがに俺も吹き出しそうになった。


こいつら、本当に石を拾って投げるのが癖になってやがる。


エリザヴェータはカメラを見据え、その眼差しにほとんど揺れはない。


「法務の窓口なら、すでにある」


顎をわずかに上げ、ヴァヴラのほうを示す。


「対外連絡については、追って定める」


「じゃが、まず一つ覚えておくがよい」


彼女は意図的に一拍置く。


「扉が開いたからといって、汝らがすぐに敷居を跨げるわけではない、ということをな」


海外メディアのエリアが、目に見えて沸き立つ。


この言い回しの一番恐ろしいところは、扉を閉ざしもしなければ、「入っていい」とも絶対に言わないところだ。


俺は隣で、それを眺めながら思う。この女、本当に一言を「招き」にも「警告」にも聞こえるように撃ち込むのがうますぎる。


そのとき、(シキ)の声がイヤホンの中で一段速くなる。


「政府側、原稿差し替えた! 同時声明を出すつもり!」


俺は片眉を上げた。


「ようやくか」


「うん。メインは『政府は歴史的秩序の調整および公共サービスの継続性に基づき、特別取り決めの発効を確認する』。今必死で版を洗ってる」


俺は後方の政府一行に目をやる。


財務次官は案の定、俯いてスマホを見ている。司法協調室主任もイヤホンで何か指示を受けている。文化部次官の表情は、鉄の塊を無理やり飲み込まされた人間のそれだ。


最高だ。


その場で、追い込まれて反応させられている。


しかも、俺たちの後ろを走らされながら。


このテンポこそ、最大級の屈辱だ。


ニュースを主導していない。ニュースを追いかけさせられている。


案の定、数秒も経たないうちに、司法協調室主任が腹を括って前に出てきた。


「政府として、同時に補足説明を――」


俺は横を向き、できるだけ丁寧な笑みを浮かべて言った。


「永遠領第一号公告の後ろで、補習プリントを読み上げに来た、ってことですよね」


前列の記者が、また一人、吹き出しそうになっている。


彼は顔を引きつらせながらも、読み上げざるを得ない。


「政府は、本日付の正式確認書および関連執行手続きが、国家法秩序の枠内における特別な取り決めであり、歴史的場域における権利紛争の平和的処理、公共サービスの不間断、および各方面の手続き進行の明確化を目的とするものであることを、ここに確認する」


三秒聞いて、俺は一言だけ返した。


「翻訳すると――『扉はもう開いた。契約ももう結んだ。だから、これは全部茶番か?って質問はやめろ』だな」


現場が一斉に笑いに傾く。


主任の俺を見る目は、もはや「気に入らない」じゃない。「行政権限で、この男を射程外に放り投げたい」だ。


手遅れだがな。


というのも、記者の次の一発は、それ以上にえげつなかったからだ。


「政府は、永遠領第一号公告の対外的効力を認めますか?」


主任は、その場で言葉を詰まらせた。


そうだ。


この問いに、中間地点は存在しない。


否定すれば、今日の自分たちの文書を自分で殴ることになる。


認めれば、相手の公告に、政府確認書という土台の上で血肉を与えることになる。


俺は彼の顔を見ながら、心の中でただ一つの結論に頷いていた。


だからこそ、手続きは徹底的に詰めて、名前も、文書番号も、時点も、全部打ち込んでおかなきゃならなかった。


ここまで来れば、死んだふりをしようにも、入る棺桶がない。


彼が、最後に絞り出したのは――


「政府は、本日具名された文書から生じる公開された法的および行政上の効果を、尊重する」


俺は、隠す気もなく笑い声を上げた。


結構。これで十分だ。


またシャッターが一斉に閃く。


林雨瞳(リン・ユートン)が隣で、低く囁く。


「自分の口から『公開された効果』って言葉、出しちゃった」


俺は頷く。


「今夜、自分の舌を預かり所に預けたくなるだろうな」


そのとき、ヴァヴラがタブレットに視線を落とし、短く告げた。


「第一号公告、正式に公開された」


外のメディアが、さらに一段ざわめく。


(シキ)の声がほぼ同時にイヤホンへ流れ込んできた。


「全ネット配信済み。トップページ、法文フルテキスト版、メディア向け要約版、外国語ダイジェスト版、全部上がった」


俺の口元は、さらに持ち上がる。


完璧だ。


これが「杭を打つ」ということだ。


喋って終わり、じゃない。


喋った瞬間、それをコピペされ、引用され、スクショされ、見出しにされるものへと変える。


この瞬間から、世界中がこの件を書くとき――参照するのは政府だけじゃない。


永遠領第一号公告も、必ず合わせて引かねばならない。


たった今生まれたばかりの存在にとって、これほど価値のあるものは他にない。


エリザヴェータは前方のカメラの群れを見据え、最後に一言だけ付け加えた。


「本日は、ここまでといたす」


外からは、なおも追撃しようとする声が上がる。


彼女は片手を上げ、そのすべてを押し下げた。


「扉は開いた。名は立った。告は発せられた」


隣に並ぶ、まだ屈辱から立ち直れていない政府代表たちに、一瞥を向ける。


「残りは――汝らが、差し出すべきものを差し出す番じゃ」


この台詞は、メディア向けのものじゃない。


あいつらに向けた最後通牒だ。


だが皮肉なことに、全カメラが録っている。


つまり――国家丸ごと、一緒に聞いた。


彼女はそれだけを言い残し、そのまま身を翻して城内へと戻っていく。


余計な言い訳も、第二ラウンドに付き合う気配も、一切ない。


こういう場面でいちばん残酷なのは、相手を徹底的に罵倒することじゃない。


やるべきことをすべて言い終え、その場に相手だけを残して、カメラの前で勝手に朽ちさせることだ。


俺も踵を返し、門の内に戻る前にもう一度だけ振り返った。


海外メディアはなおも質問を浴びせ、本国メディアは政府代表に食らいついて「公開効果を認めるのか」「収益保全の連鎖はいつ差し出すのか」「二十一日以内に完了しなければ違約か」と問い詰めている。チャット欄はどうせ夜通し燃え上がるだろう。そして政府代表の列は、自分たちの部署の葬式を終えたばかりのような顔をして、その場に釘付けになっていた。


俺は、驚くほど具体的な種類の幸福感を覚えていた。


本当に。


これはもう「こっちのほうが上手く喋れた」って話じゃない。


あいつら自身の口で、永遠領の成立に血の領収書へ署名させるところまで追い込んだという事実の話だ。


俺は声を落として、ヴァヴラに囁く。


「公告第一号。上々の打ち上げだな」


彼は振り向きもせずに言う。


「お前が道中、ありとあらゆる窓口を血まみれにしてくれたおかげだ」


俺は笑う。


「それ、褒め言葉で受け取っとくぞ」


「違う」


「もう受け取った」


林雨瞳(リン・ユートン)が後ろから追いつき、冷たく一言投げてくる。


「浮かれてる場合じゃない。まだ一号に過ぎない」


俺は振り返って彼女を見る。


「分かってるさ」


そしてもう一度、外のうねるメディアの海、顔を保つ余地をほとんど削り取られた政府窓口、その外側で――この城をどう呼ぶか、自分たちの言葉を変え始めた世界を見やる。


口元が、ゆっくりと歪む。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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