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70.所有権の争い 70-2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

午後三時四十分、俺たちは臨時拠点に戻った。


今度は俺たちが政府を待つんじゃない。


政府が書類を抱えて、自分たちから乗り込んでくる番だ。


ドアが開いた瞬間、昨晩の見慣れた顔がまた揃っていた。ただし今日は列が長く、顔色はさらに悪い。


司法調整室主任。文化部次官。財務次官。内政地籍局副局長。基金会事務局長イレーナ。改制主任ヤクブ。そして昨日「建設的に」という言葉を一番愛用していた危機連絡調整秘書官。


いいじゃねえか。


一卓の料理が、全部揃った。


シキが投影を全部立ち上げる。左側は今日各窓口から引き出した書面の流れ。右側は全ネットのニュースとチャット欄の洪水。真ん中には一か所だけ空白が残してある。


彼らの文書のために。


エリザヴェータは一番前に座っていた。全身黒。手袋も外していない。その表情は、今日署名するのが合意案じゃなく判決文であるかのように、静かだった。


林雨瞳(リン・ユートン)は彼女の右後ろに立ち、両腕を組んでいる。その目の冷たさは、向かいの人間に毛布をかけてやりたくなるくらいだ。


ワヴラが椅子を引いて座り、俺はその隣に座る。


文化部次官が先に書類をテーブルに置いた。


「こちらが政府側の統合後の正式書面案です」


俺は表紙のタイトルを見る。


《ポニツァ歴史的自治管理および公共サービス継続取り決め具名草案》


俺は笑った。


「今日はやっと『具名』って書けるようになったか」


誰も笑わなかった。


ワヴラが一ページ目をめくり、二行ほど流し読みして、そのままエリザヴェータの前に押しやった。


彼女は速く読んだ。


向かいの一団の呼吸が乱れ始めるくらい、速く。


数十秒後、彼女は書類を置いた。


「午前中のものよりは、多少まともになっておる」


財務次官がほんの少し、息を吐いた。


次の一言が、その半分の息を切り取った。


「だが、まだ足りぬ」


俺の気分は最高だった。


そうだ。これが正しい流れだ。


エリザヴェータが手を上げ、第一項を指す。


「そなたらは『特別歴史自治管理区』と書いた。『領』ではない」


司法調整室主任がすぐに口を開く。


「現行の国内法制の枠組みでは、『自治管理区』が運用可能な用語です。『領』は主権の誤読を招きやすく——」


エリザヴェータは一瞥もしない。


「それはそなたらの問題じゃ。妾の問題ではない」


テーブル全体が静まり返った。


彼女の指が次の項目へ動く。


「第二。そなたらは範囲をポニツァ城本体と文化保護緩衝地帯と記した。ノヴァキ、プレヴィザ一帯、鉱区、連動収益地塊——全部消えておる」


内政副局長が息を吸い込む。


「それらの部分は、さらなる技術的確認を要するため——」


ワヴラが地籍、文化財、鉱業権、財務の四枚の副本を一列に並べた。


「違う。あんたら自身の窓口が今日、書面で認めている。歴史的地籍索引、重複現場検証、オーバーレイ比較、収益分類と承継チェーンの存在を。今さら『確認を要する』と書くのは、意図的な客体の矮小化だ」


俺が一言添える。


「人間の言葉に訳すと——正門だけ半分認めて、地下と周辺の肉は先に隠しておこうってことだ」


財務次官の顔色が悪くなった。


この一言が核心を射抜いているからだ。


彼らが何を守ろうとしているか、今は手に取るようにわかる。


城そのものじゃない。


城の横に伸びている、まだ金を生み続けられるあの一本の線だ。


エリザヴェータが第三項を指す。


「そなたらは、政府が自治管理区内で『既存の管理権を継続行使できる』と書いた」


彼女は目を上げ、はじめて財務次官を正面から見る。


「まだわかっておらぬのか?」


相手の喉仏が上下した。


「我が方としては、公共安全・文化保全・住民サービスの継続性を考慮し——」


彼女は冷たく遮った。


「管理は続けてもよい。権利は盗めぬ」


俺は横で笑いをこらえるのに必死だった。


始まった。


エリザヴェータが収益のページを開く。


「入場料、ガイド料、場所代、地下連動収益——全部『政府が暫定的に代行管理する』と書いてある。賃貸関係なし、対価なし、家主の承認なし」


財務次官が今度は先に音を上げた。


「賃貸関係という表現を直接使うと、政治的に——」


「政治的に見苦しい?」俺は笑いながら見る。「それとも帳簿が見苦しい?」


男は答えない。


答えは全員が知っているからだ。


エリザヴェータが書類をテーブルに押し出した。


「妾がもう少し見苦しくない版を出してやろう」


顎を上げ、声は高くない。だが部屋全体に霜が降りたみたいだった。


「第一、名称を『ドラキュリヤ=バートリ大公永遠領特別自治取り決め』に改める。副題にそなたらの好む国内法上の用語を加えるのは構わぬ。だが主体名称は前に来る」


文化部次官の顔が白くなった。


「それはあまりにも——」


「第二、範囲じゃ」彼女は続ける。「ポニツァ城、附属地塊、旧鉱業権重複帯、ノヴァキからプレヴィザの核心連動区——全て暫定凍結範囲に含める。地籍分割が完了するまで、処分禁止、新たな収益取り決め禁止、権利チェーンの変更禁止」


内政副局長がすぐに反発した。


「その範囲は広すぎる。地方行政と既存の不動産市場に甚大な不安を——」


ワヴラが冷たく引き取る。


「結構。では早急に分割を進めればいい。そちらは不安を減らしたい、こちらは境界線を出したい——両者は矛盾しない」


俺は向かいの一団を見ながら、笑って付け加える。


「ただし、あんたらの不安が、境界線が永遠に出てこないことの上に成り立っているのでなければ、の話だが」


エリザヴェータは止まらない。


「第三、政府は管理を借り戻すことができる」


テーブル全体の顔が、同時に上がった。


ついに一番痛いところに来た。


彼女は十指を組み、視線が全員の顔を順に流れる。


「公共サービスが欲しいか?よかろう。文化保全がしたいか?よかろう。消防・警察・民政を続けたいか?よかろう。そなたらはその土地の管理者の一人であり続けることすら、できる」


わずかに間を置いた。


「ただし、前提がある。まず自分たちが主人ではないと認めることじゃ」


財務次官が最初に口を開いた。


「賃料はどう計算しますか」


俺は笑いそうになるのをぎりぎりでこらえた。


やっぱりな。


最初に折れたのは、金を管理している人間だった。


法理を先に聞かない。民意を先に聞かない。国家の尊厳を先に聞かない。


賃料を先に聞く。


俺は椅子の背もたれに沈み込んで、心から幸せになった。


エリザヴェータは男を見る。その目は刃の峰みたいに薄かった。


「象徴的なものじゃ」


向かいの数人が、同時に固まった。


彼女は続ける。


「年に一ユーロ。それに加えて、毎年一度の公開更新文書。そなたらが具名で、管理権の根拠が借り戻しにあり、固有の所有権にはないと認める文書じゃ」


テーブルが静まり返った。


俺はこらえきれず、うつむいて二度笑った。


やりすぎだ。


金を取っているんじゃない。


顔を取っているんだ。


財務次官の表情が完全に歪んだ。


「これは政治的に極めて屈辱的な——」


俺は顔を上げる。


「そうか?金額は少ないのに、あんたらが高く感じてるだけじゃないのか」


林雨瞳(リン・ユートン)が横から静かに刺す。


「嫌なら借りなければいい」


向かいの一列の顔色が、まとめて悪くなった。


司法調整室主任が気を取り直して口を開く。


「仮に『管理の借り戻し』という表現を使う場合、条文中に国家の法秩序と公権力の全面的な適用を保持する旨を明記する必要があります」


エリザヴェータはうなずいた。


「構わぬ」


俺もさすがに彼女を一瞥した。


彼女は俺を見ない。続ける。


「刑事、国境、対外軍事、一般公共秩序——そなたらが引き続き担う。民事物権、場域収益、地契の執行、領内代理と対外賃貸——これは妾の代理人が処理する」


彼女はワヴラを見る。


「具名で書き込め」


ワヴラはまばたきひとつしない。


「俺が書く」


司法調整室主任が眉をひそめる。


「これは国内法の枠組みの中に、別の物権と収益主体を埋め込むことになります」


「そうだ」俺は笑いながら見る。「やっとわかったか」


内政副局長がまだ粘ろうとする。


「それでも、ノヴァキからプレヴィザの全区間を凍結に含めるのは、地方では到底——」


シキが投影を切り替えた。


オーストリア、ポーランド、チェコ、ハンガリーの映像が一列に並び、今日の午後の最新速報と、全ネットで拡散しているK類収益のスクリーンショットが映し出された。


チャット欄は滝よりも速く流れている。


「権原未整理で金取る度胸あるの草」

「年1ユーロで高いとかウケる」

「自治じゃない、大家が帳簿確認しに来ただけ」

「自分が主人じゃないって認めるの、そんな難しい?」


シキが眼鏡を押し上げる。


「補足します。今この瞬間も、一分ごとに一万人が『管理の借り戻し』という言葉を覚えています」


俺は向かいの一団を眺めて、さらに気分が良くなった。


そうだ。今あいつらが一番恐れているのは、もう俺たちじゃない。


民衆が突然、話の全体像を理解してしまうことだ。


財務次官が二歩目を退いた。


「名称の部分については、正式タイトルに権利主体と行政上の取り決めを並記する形で、我が方も検討できます」


誰も笑わなかった。


ワヴラが一ページ目をめくり、二行ほど流し読みして、そのままエリザヴェータの前に押しやった。


彼女は速く読んだ。


向かいの一団の呼吸が乱れ始めるくらい、速く。


数十秒後、彼女は書類を置いた。


「午前中のものよりは、多少まともになっておる」


財務次官がほんの少し、息を吐いた。


次の一言が、その半分の息を切り取った。


「だが、まだ足りぬ」


俺の気分は最高だった。


そうだ。これが正しい流れだ。


エリザヴェータが手を上げ、第一項を指す。


「そなたらは『特別歴史自治管理区』と書いた。『領』ではない」


司法調整室主任がすぐに口を開く。


「現行の国内法制の枠組みでは、『自治管理区』が運用可能な用語です。『領』は主権の誤読を招きやすく——」


エリザヴェータは一瞥もしない。


「それはそなたらの問題じゃ。妾の問題ではない」


テーブル全体が静まり返った。


彼女の指が次の項目へ動く。


「第二。そなたらは範囲をポニツァ城本体と文化保護緩衝地帯と記した。ノヴァキ、プレヴィザ一帯、鉱区、連動収益地塊——全部消えておる」


内政副局長が息を吸い込む。


「それらの部分は、さらなる技術的確認を要するため——」


ワヴラが地籍、文化財、鉱業権、財務の四枚の副本を一列に並べた。


「違う。あんたら自身の窓口が今日、書面で認めている。歴史的地籍索引、重複現場検証、オーバーレイ比較、収益分類と承継チェーンの存在を。今さら『確認を要する』と書くのは、意図的な客体の矮小化だ」


俺が一言添える。


「人間の言葉に訳すと——正門だけ半分認めて、地下と周辺の肉は先に隠しておこうってことだ」


財務次官の顔色が悪くなった。


この一言が核心を射抜いているからだ。


彼らが何を守ろうとしているか、今は手に取るようにわかる。


城そのものじゃない。


城の横に伸びている、まだ金を生み続けられるあの一本の線だ。


エリザヴェータが第三項を指す。


「そなたらは、政府が自治管理区内で『既存の管理権を継続行使できる』と書いた」


彼女は目を上げ、はじめて財務次官を正面から見る。


「まだわかっておらぬのか?」


相手の喉仏が上下した。


「我が方としては、公共安全・文化保全・住民サービスの継続性を考慮し——」


彼女は冷たく遮った。


「管理は続けてもよい。権利は盗めぬ」


俺は横で笑いをこらえるのに必死だった。


始まった。


エリザヴェータが収益のページを開く。


「入場料、ガイド料、場所代、地下連動収益——全部『政府が暫定的に代行管理する』と書いてある。賃貸関係なし、対価なし、家主の承認なし」


財務次官が今度は先に音を上げた。

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