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67.探り合い 67-3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

ペーターが咳払いをした。


「まず申し上げたいのは、政府内部でも、閣下が本日ボイニツェ城(Bojnice Castle)正門で表明された主張には確かに注意が払われており、現在のプロセスの透明性および歴史的権利をめぐる外部の懸念についても——」


「要点を」林雨瞳(リン・ユートン)が言った。


「……私どもは、双方の間に何らかの、探索可能な柔軟な余地が存在するのではないかと考えております」


俺は(シキ)の方を向いた。


「来たな」小声で言う。「釣り用語第一号」


(シキ)が頷く。


「柔軟な余地。翻訳:まずお前の方から引き下がってくれないか試してる」


エリザヴェータは表情一つ変えない。


「どのような柔軟さだ」


ペーターがマルタを一瞥した。


マルタが引き継ぐ。明らかに、彼女の方が腐ったものを飲み込めるように包装するのが上手い。


「例えば、最も敏感な主権関連の語彙には直ちに触れない形で、まずは特殊行政安排、文化管理自治、財産収益の分離、歴史的地位の承認といった方式を通じて、一つの——」


「止めよ」エリザヴェータが言った。


マルタの口が止まる。


部屋全体が静まり返る。


エリザヴェータが彼女を見る。紅い瞳の静けさが、ひどく苛立たしかった。


「今汝が並べた言葉は、すべて箱だ」彼女は言う。「中に何を詰めるつもりだ?」


マルタが一瞬言葉に詰まる。


ペーターが慌てて補足しようとする。


「私どもの申し上げたいのは、双方が過度に不均衡にならないような——」


「名前だ」エリザヴェータが言った。


ペーターが呆然とする。


「は?」


「方案の名前だ」彼女は言う。「汝らが持ってきたものは、結局どれなのだ?」


部屋に一秒の空白が落ちた。


ペーターは彼女を見た。相手の最初の一刀が内容ではなくタイトルに向かってきたことを、明らかに想定していなかった。


「現時点では……正式な名称はまだ——」


「よい」エリザヴェータは言った。


クソ。


また「よい」だ。


俺にはわかる。この言葉が出た時、誰かが死ぬか——少なくとも、誰かのキャリアが大出血を始める。


彼女がわずかに身を乗り出した。声のトーンは変わらない。


「名もなく、文書番号もなく、具名の責任者もなく、文書もない。汝らが持ってきたものは方案ではない」


彼女はペーターを見据えた。


「水温を測りに来ただけだ」


ペーターが今度こそ完全に動きを止めた。


彼女の一言で、今夜の訪問の骨組みが剥き出しにされたからだ。


そう。

ただの水温チェックだ。

女大公が「自治領」という三文字に心を動かすかどうか、口が緩むかどうか、「尊重と地位さえあれば、形式は話し合える」みたいな、報告書にコピペしやすい間抜けなセリフを自ら口走ってくれるかどうかを確かめに来ただけ。


残念だったな。


今夜、あんたらは入る部屋を間違えた。


ヴァーヴラがここでようやくゆっくりと口を開いた。彼女が皮を剥ぎ終えるのを待ってから、刃の切り口を整える係として。


「もし今夜皆様がお持ちになったのが正式な探索的枠組みであれば、具名文書をご提示ください」彼は言う。「そうでないなら、今回の接触はいかなる実質的な交渉の基礎も構成しません」


ペーターが眉をひそめる。


「正式に文書化する前に、まずは理解をすり合わせるプロセスも——」


「違う」林雨瞳(リン・ユートン)が言った。


彼女はスマホをテーブルに置き、まっすぐペーターを見た。


「あなた方は理解をすり合わせに来たんじゃない。答えを盗みに来た」


この一言が出た瞬間、マルタの顔色がはっきりと変わった。


ペーターがまだ粘ろうとした。


「それは少し言い過ぎでは——」


「全然言い過ぎじゃない」俺は言う。「あんたらが今一番知りたいのは、彼女がどこまで引き下がれるかだろ。『返還』を『安排』に言い換えられるか。『領地』を『特別行政地位』と呼べるか。もし今日彼女が口を滑らせて一言でも余計なことを言ったら、明日には『女大公、自治的枠組みに前向きな姿勢』って風向きを流すつもりだったろ」


(シキ)が横から、俺より早くトドメを刺す。


「しかも『情報筋によれば、双方にすでに初期合意がある』って一行もおまけで付ける。ニュースの見出しも考えてあげたけど、使う?」


ペーターの頬がぴくりと引きつる。


マルタは唇を噛み、黙っていた。


上出来だ。

図星というやつだ。


エリザヴェータが手を伸ばし、テーブルの空いている場所を指し示す。


「せっかく来たのだ。互いの時間を無駄にするでない」


声は淡々としている。


「先ほど申したことを——ここに書け」


マルタが一瞬呆然とする。


「今、ですか?」


「そうだ、今だ」エリザヴェータは言う。「書け。名。代表する部署。方案の名称。範囲。汝らが『話し合い可能』と見なす内容。汝らが負える責任。期限」


ペーターがすぐさま口を挟む。「今夜、我々にはそのような権限は——」


「では、今夜ここで何をしておる?」エリザヴェータが問う。


あまりに平板な言い方だったからこそ、余計に刺さった。


ペーターが言葉に詰まる。


俺は横でゆっくり頷いた。


「そうだよな。権限なし、文書なし、名前なし、期限なし。自分たちの言葉にすら責任を持てないなら、今夜あんたらがやってることはオレオレ詐欺と本質的に何が違う?」


「その比喩は不適切です」ペーターの声が少し低くなる。


「十分適切だ」俺は言った。「もっと酷い表現にしなかっただけ、こっちが気を遣ってる」


ヴァーヴラが無地の紙とペンを一枚ずつ、滑らせるように差し出した。


「どうぞ」


この動作があまりにも美しかった。


ペーターとマルタは、その紙を同時に見下ろした。まるでそこに、この先半年の人生を台無しにする契約書が載っているかのような目で。


マルタが低く言う。「正式な権限なく文字を残すことはできません」


エリザヴェータが頷いた。


「よい」


まただ。


彼女がこう言うたび、俺は誰か無関係な人間を身代わりに差し出したくなる。


「それで二つのことが証明された」彼女は言う。「一つ。汝らは交渉に来たのではない。二つ。汝ら自身、持参したものを名乗れぬ代物だと承知しておる」


誰も口を挟まない。


彼女はさらに押し込む。


「口頭の試し打ちの意味は、妾も理解しておる」彼女は言う。「汝らは、妾が焦るかどうかを見ておる。『特別行政地位』と『自治領』という二つの言葉をようやく放り出したことで、妾が自ら後ろに退き、汝らの代わりに屈辱を飲み込んでくれるかどうかをな」


紅い瞳がペーターをなぞり、次にマルタをなぞる。


「残念だが——」


彼女は言った。


「妾は臆病者の代わりに提案を書き上げてやる趣味はない」


背中の冷たさが一気に肩まで這い上がった。


この一文は重すぎた。あまりに重くて、後ろに立っていた護衛の男ですら、無意識に体を揺らしたほどだ。


ペーターは数秒沈黙し、ようやく別のアプローチに切り替えた。


今度は空気清浄機のふりをやめて、少しは本当に火事処理をしている人間の声になった。


「わかりました」彼は言う。「では、聞き方を変えましょう。仮に——あくまで仮の話ですが——明日、政府側から何らかの特殊な安排に関する正式文書が提示されるとした場合、閣下が最低限ご覧になりたい要素は、どのようなものでしょう?」


俺は笑いをこらえきれなかった。


「おお、形を変えてきた。『退いてくれませんか』から、『じゃああんたの方から条件を出してくれませんか』に」


「さっきより高級だけど」(シキ)が言う。「結局やってることは答えの盗み見」


エリザヴェータはすぐには返事をしなかった。


彼女はペーターを見つめていた。この男がどこまでが道具で、どこからがゴミか、その境界線でも探っているような目だ。


最後に、口を開いた。


「よかろう」


ペーターの目が一瞬、明るくなる。


次の瞬間、自分が喜ぶのが早すぎたことを思い知る。


「教えてやろう」エリザヴェータは言う。「『文書』と呼ぶに値しないものが何かを」


ペーターの顔から血の気が引く。


俺は下を向き、みっともなく笑いすぎないよう、唇を噛んだ。


彼女が手を上げ、人差し指を一本立てる。


「具名がなければ——当たらぬ」


二本目。


「権責の出所が明記されておらねば——当たらぬ」


三本目。


「範囲が完全に画定されておらねば——当たらぬ」


四本目。


「実行ノードが書かれておらねば——当たらぬ」


五本目。


「期限がなければ——当たらぬ」


一拍置く。


「暫定措置と現状凍結の機構がなければ——当たらぬ」


さらに続ける。


「門、地、収益、管理、人員、通行——これらの責任主体が誰か、明記なきものもまた——当たらぬ」


部屋の静寂の中で、(シキ)のキーボードだけがカチカチと動いていた。まるで彼らのカウントダウンを取っているみたいに。


ヴァーヴラが自然に引き継ぐ。


「二点、補足します」彼は言う。「『特別行政地位』または『自治領』を枠組み名称として用いるのであれば、その法的根拠、移行条項、および権利主体による最終確認プロセスの提示が不可欠です。最終確認のプロセスなきものは——方案ではなく、ただの賃貸契約です」


俺は口笛を吹きそうになった。


「おお、その『賃貸契約』って表現、えげつないな」


「的確だからよ」林雨瞳(リン・ユートン)が言う。


ペーターは今度こそ沈黙した。


彼らはただ探りを入れに来ただけだったのに、今やこちらから『持ってこれないなら、そもそも交渉の席にすら着けない』という仕様書を丸ごと突き返されたのだ。


マルタはテーブルの上の白紙を見つめ、ついに低く口を開いた。


「本日、私どもが文字を残せないとしても……少なくとも、双方が対話の可能性を残す意志はあると、理解してもよろしいでしょうか?」


エリザヴェータが彼女を見る。


「ならぬ」


あまりにも潔い「ならぬ」だった。あまりに潔すぎて、俺ですら歯がきしむ気がした。


彼女は小さなパラソルを手に取り、その先端でテーブルを軽く叩く。


「汝らが本日持参したものは、対話ではない」彼女は言う。「ただの臆病である」


マルタの顔色が本当に真っ白になった。


ペーターは深く息を吸い、今夜これ以上血を流さずに帰るのは不可能だと、ようやく悟ったようだった。


「では——」彼は言う。「明日、正式に改めて——」


「改めてではない」エリザヴェータが遮る。


「送り届けよ、だ」


ペーターが固まる。


彼女は彼を見据え、一語一語、丁寧に突き立てた。


「明日、午前十時までに」


「具名の」


「書面を」


「文書番号付きで」


「権限の出所を記し」


「範囲を定め」


「期限を記し」


「暫定措置を定め」


「現状凍結条項を添え」


「そして、署名した者が責を負う覚悟を持つ文書を寄越せ」


紅い瞳は穏やかなままだ。


「一つでも欠ければ——今夜ここに来なかったものとして扱う」


聞き終えて、俺の感想は一つだけだった。


クソったれ。


この女は条件を提示しているんじゃない。


相手を「口頭の試し打ち」から引きずり下ろし——「本物を持って来るか、ただの情報リーク要員であることを認めて消えるか」の二択を突きつけている。


ヴァーヴラが、いつの間に用意したのか、今の内容をそのまま反映したページをペーターの前に滑らせた。


俺は、彼がいつ打ったのか、本気でわからなかった。


上部の見出しは、法廷前の最後通牒のように簡潔だった。


正式接触最低要件


その下に、エリザヴェータがさきほど宣告した項目が、一つ残らず列挙されている。


ペーターはその紙を見下ろし、まるで真っ赤に焼けた鉄塊を手に押しつけられた人間の表情をしていた。


「これは……持ち帰ってもよろしいでしょうか?」


「もちろんです」ヴァーヴラが言う。「今夜、皆様が本当にまだ脳みその残っている人間の代理として来られたのなら、この一枚が彼らの無用な屈辱を大幅に省いてくれるでしょう」


俺は危うく吹き出すところだった。


この男、本当にどんどん上達している。


ペーターはその紙をゆっくりと手に取った。マルタはテーブルの上のペンには一切触れなかった。最初から最後まで、彼女にはわかっていたのだ——今日この場で一文字でも書けば、帰った瞬間に皮ごと剥がされるということが。


立ち去る間際、ペーターはまだ自分たちの体面を取り戻そうとした。


「閣下にもご理解いただきたいのですが、現在の状況はもはや単なる法律問題ではなく、周辺諸国、政治的バランス、そして国際的な見え方も絡んでおります」


エリザヴェータが彼を見た。


「それは重々承知しておる」


その声の平坦さが、恐ろしいほどだった。


「だがそれは——妾の問題ではない」


ペーターの口角がわずかに動いた。まだ何か言いたげだったが——


エリザヴェータはすでに視線を外していた。


意味は明白だった。汝の言葉は終わった。もう出て行け。


葉綺安(イェ・キアン)がドアを開けた。


礼儀ではない。終了の合図だ。


三人が出て行く時の背中は、入ってきた時よりずっと強張っていた。特にペーター——手にした「正式接触最低要件」の紙を、まるで自分の死亡診断書でも握っているみたいに持っていた。


ドアが閉まった瞬間、俺はついに長く息を吐いた。


「はあ」


(シキ)が顔を上げる。


「どうした?」


「今、『交渉に来たつもりが、死にに来ただけだった』っていう純度100パーセントの地獄を生で見た気がする」


林雨瞳(リン・ユートン)がスマホを拾い直し、淡々と言う。


「まだ死んでない」


「もうすぐだろ」俺は言う。


ヴァーヴラがノートパソコンを閉じ、時計を確認した。


「もし彼らに今夜、少しでも脳みそが残っているなら、今すぐあの紙を誰かの机に叩きつけているはずだ」


「脳みそが残ってなかったら?」俺は聞く。


エリザヴェータが立ち上がり、小さなパラソルを手に収めた。


「それはそれで、なお良い」


彼女は言った。


「妾はもとより、愚か者と語り合う趣味はない」


俺は彼女を見て、こめかみを揉んだ。


「わかった、正式に通告する」俺は言う。「今日あんた、『よい』を三回言って、おまけに相手の口頭試探を具名書面に強制アップグレードさせた。このペースで行くと、血の川が流れる日もそう遠くないぞ」


彼女が俺を一瞥した。紅い瞳が、夜の刃のように冷たく光る。


「汝も見たいのであろう?」


俺は口角を引いた。


「ああ、見たいさ」


部屋が一秒、静まり返った。


それから俺は付け足した。


「ただし、その時に先に流れるのが——他人の血であることを祈るよ」

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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