63.弁護士ヴァヴラ 63-3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
彼女は明らかに通訳したくなさそうな顔をした。
代わりにヴァヴラが、ごく自然に説明する。「通常の民事事件としてすぐに担当部門に回したのではなく、まずは省庁横断の確認に回された、という意味です」
「つまり」俺は言った。「今、その案件は、誰でも触れるのに誰も引き取りたくない引き出しに突っ込まれてるってことだな」
責任者の顔がわずかに曇った。
「そういうことではありません」
「では、もう少し体裁のいい説明をお願いします」
彼女は深く息を吸い、ようやく人間の言葉に近いバージョンを吐き出した。
「現在、司法行政の調整窓口が仮に保管し、民事の担当部と、関連する文化財部門との連携情報を確認した後で、次の段階に進める予定です」
俺は頷いた。
「さっきよりずいぶんマシだ。まだ官僚語だけど、少なくとも骨は見え始めた」
ヴァヴラはすでにメモを取っていた。
「窓口の名称、連絡手段、対応時間帯を」
責任者はすぐに首を振った。
「担当者情報は公開しておりません」
俺が口を開くより早く、ヴァヴラが続けた。
「では少なくとも、窓口がすでに指定されているかどうかだけ、確認を」
彼女は答えなかった。
「もしすでに窓口が存在しているにもかかわらず、その情報を提供しない場合」ヴァヴラは言った。「外部には『裁判所は窓口を設置済みだが、その連絡先を秘匿している』と説明せざるを得ません。まだ窓口がないのであれば、『裁判所は受理済みだが、担当窓口は未定』と説明します。どちらの理解を、より望ましいとお考えになりますか」
俺は隣で、思わず口笛を吹きたくなった。
エグい。
これは質問じゃない。二本のナイフを机の上に並べて、「どっちで刺されたい?」と聞いているだけだ。
責任者はさすがに不機嫌になった。
だが、この場で不機嫌になっても無意味だということも分かっている顔だ。
「窓口は、あります」
俺は笑った。
「最初からそう言えばよかったのに」
「名称を」
「司法行政調整連絡デスクです」
「連絡手段は」
彼女は俺たちを睨んでから、最終的には内線番号とメールアドレスを口にした。
ヴァヴラは一字一句漏らさず書き留め、スペルも確認した。
俺はスマホにその内線番号を登録し、「初めて人間の言葉をしゃべった場所」と名前を付けた。
責任者はそれに気づいたらしく、さらに顔を固くした。
「ほかに何か?」
「ある」俺は即答した。
ヴァヴラが横を向く。顔には「今度は何をしでかすつもりだ」という目が乗っている。
俺は責任者に笑いかけた。
「すでに窓口が存在して、初期受付も完了しているなら、政府がさっき対外的に『依法研議』と言ったのは、少なくとも完全な作り話ではない、ということになりますよね?」
彼女は眉をひそめた。
「他機関の発言についてはコメントいたしかねます」
「了解です」俺は頷いた。「つまり、裁判所側では確かに何かが動いていて、他の連中が霧を撒いているだけ、と理解していいですか?」
彼女は答えなかった。
いい。答えない方が、答えるより役に立つことがある。
ヴァヴラは書類を静かに回収し、落ち着いた口調で言った。
「ご協力ありがとうございました。後日、正式に書面で確認させていただきます」
責任者は一度だけ頷き、それで終わりにした。
俺とヴァヴラが背を向けた瞬間、彼は小声で言った。「今、あと少しで相手を爆発させるところだった」
「でも喋ってくれた」
「喋らない方がもっと爆発するって分かってたからだ」
「それって有効なコミュニケーションって言わないか?」
彼は俺を横目で見た。
「あなたの『有効』の定義は、かなり危ない」
「お互い様だろ」
俺たちは出口に向かわず、彼女が教えてくれた内線番号を頼りに上の階を目指した。司法行政調整連絡デスクという名前は、いかにも「時間を稼ぐために発明された」という雰囲気を漂わせているが、責任者が自分の口でその名前を吐き出した以上、今日はその実体を出してもらうしかない。
三階の廊下は一階よりも病院に近かった。白い壁、白いドア、魂まで漂白したような白さ。ドアの表示は一枚一枚どこまでも地味で、行政サポート、文書転送、内部連絡、書類保全——どれも「あなたが探している人はここにいません」と言っているみたいだった。
最後に、一枚のドアの前で俺たちは足を止めた。
そこには、インクがまだ乾いていそうな真新しい紙が貼ってあった。
司法行政調整連絡デスク
俺はその紙を見て、思わず笑った。
「ちゃんとした看板を作る時間もなかったのか。これ完全に急ごしらえの塹壕だ」
ヴァヴラがドアをノックした。
中から短い「どうぞ」が聞こえた。
ドアを開けると、二人の男と一人の女が同時に顔を上げた。その光景は、こっそり会議をしていた教室を開けたら、中の人間がカンニングをしていたんじゃなく、どうやってこちらを入れないかを研究していたと分かった時の、あの感じにそっくりだった。
一番年配の男が先に口を開いた。
「どちら様でしょうか」
ヴァヴラは名刺をテーブルに置いた。
「昨日の案件の行政上の流れを確認しに参りました。受付の責任者から、こちらをご案内いただきました」
その男の顔色が、ほぼ瞬時に一段暗くなった。
「当デスクは個別案件について対外的な説明は行っておりません」
俺は隣に立って、笑みがこぼれるのを止められなかった。
「みなさん、共通のマニュアルでも使ってるんですか?なんで全員、最初の一言が同じなんだ?」
彼は俺を無視した。
ヴァヴラは拒絶など聞こえなかったかのように、さっきメモした情報をそのままテーブルに押し出した。
「一階で、初期受付の完了を確認しました。また、本案件は現在こちらのデスクが仮保管し、民事担当部と文化財部門との連携情報の確認を待っているとのことでした。残る確認事項は一つだけです。現在、書類が実際に止まっているのはどの段階か、そして次に引き渡す部署はどこか」
部屋がわずかに静まった。
女性が先に眉をひそめた。
「誰がそんなことを?」
俺はすかさず言った。
「あ、ビンゴだ」
年配の男が即座に彼女を睨んだ。
これでもう推測しなくてもいい。
ヴァヴラは指先をテーブルに押し当て、声は相変わらず落ち着いていたが、さっきより少し硬くなっていた。
「皆さん、外部はもはや受理の有無だけを問うているのではありません。手続きが混乱していないかを問うています。今夜から『法廷内の窓口同士がたらい回しをしている』という報道が始まるのを避けたいなら、一番いい方法は、十分シンプルで十分一貫した回答を今出すことです」
俺が補足した。
「人間語に翻訳すると、今のうちに一つのバージョンを選んでください。遅くなると、外側が勝手に十個のバージョンを作り始めます」
年配の男は俺たちを見つめ、「通報する」と「答える」のどちらが面倒が少ないかを天秤にかけているような顔をしていた。
最終的に、隣の若い男の方が先に限界を迎えた。小声で言う。
「書類は昨夜、高注目案件フォルダに移されました」
俺は笑いを堪えるのに少し苦労した。
「高注目案件フォルダ?それ、小学生の工作のタイトルみたいだな」
誰も俺を見なかった。
ヴァヴラはすぐに続きを押した。
「それから?」
若い男は唇を一度噛んだ。
「今朝、行政調整保管に移されました。本来なら午後に民事分案の前置審査に送る予定でした」
「本来なら?」ヴァヴラはその言葉を素早く掴んだ。
「……記者会見があったので、保留になりました」
「いつまで保留ですか」
「上からの指示待ちです」
「どこの上ですか」俺は聞いた。
「お客様——」
「いや、今日は本当に『上』に興味があるんだよ」俺は言った。「一階から三階まで、全員に『上がある』って言われたのに、誰も階数を言ってくれない。この建物って宗教施設なのか?」
女性がとうとう堪えきれなくなった。
「そういう態度では話が進みません」
「逆だよ」俺は彼女を見た。「俺のこの態度のおかげで、みなさんの無駄な言葉が二言くらい省けてる」
ヴァヴラは俺を止めなかった。
ただ、問いを核心に向けてもう半歩だけ押し込んだ。
「確認させてください。現在、書類はまだ民事担当部に送られておらず、行政調整と前置審査の間に止まっている。それで合っていますか」
部屋の誰も口を開かなかった。
俺はスマホに目を落とした。画面にニュースの通知が飛んでいた。
手続きの不透明さへの外部の疑問が続く 政府は案件の流れを未説明
俺はそのままスマホを画面を下にしてテーブルに伏せた。
「皆さん、時代の流れは速い。今ここで話さなければ、十分後には外側がバージョンを決めることになる」
年配の男がようやく一言吐き出した。
「……そうです」
よし。
この「そうです」は、値段がついた。
ヴァヴラは彼が撤回する前に、すぐ次の釘を打ち込んだ。
「次の正常な手続き上のステップは、民事分案の前置審査ですね」
「そうです」
「現在止まっている理由は、行政レベルからの先行調整要求があったためですね」
彼は一秒間を置いてから、非常に不本意そうに言った。
「……そうです」
俺は長く息を吐いた。
「ほら、これでよかったじゃないですか。人間語を喋っても、死なないでしょ」
女性が俺を見る目つきは、「不快」から「生涯取引禁止リストに追加」へとアップグレードされていた。
気持ちは分かる。人によって一番つらいのは怒鳴られることじゃなく、曖昧な言葉を人間語に翻訳させられることだ。
ヴァヴラはペンを閉じて、立ち上がった。
「ご協力ありがとうございました。この内容を基に、後日正式に書面を送付し、対外的な説明を行います」
年配の男がすぐに顔を上げた。
「それは——」
「個人名は引用しません」ヴァヴラは言った。「確認済みの手続き上のノードのみを記述します。今ここで正式に否定されるのでなければ」
部屋は再び静かになった。
誰も否定しなかった。
当然だ。俺たちはたった今、一階から三階まで叩き上がって、それぞれの人間の口から言いたくなかったことを、一枚一枚剥ぎ取ってきたんだから。
俺は立ち上がり、ズボンを軽く叩いた。
「じゃあ、今日はご協力ありがとうございました。皆さんの誠実さは、便秘みたいな出方でしたが、ちゃんと出てきてくれました」
ヴァヴラがようやく俺を睨んだ。
「行くぞ」
「はいはい」
ドアを出た瞬間、俺は横を向いて彼を見た。
「さっき止めなかったってことは、俺が役に立ってるって思ってるってことだよな」
「うるさい」彼は言った。「ただ、うるさい方が礼儀正しくするより早い時がある」
俺は笑った。
「それ、他の人が言ったら悪口に聞こえる。あんたが言うと、なんか感動するな」
「悪口だよ。勘違いするな」
「それなら安心した」
階段を下りながら、ヴァヴラはスマホで猛烈な勢いでメッセージを打っていた。毒を盛るみたいな速さで指が動いている。
「確認した流れを今すぐ戻す。希が図を作って、林雨瞳が対外の口調を整える。今夜から打つのは一言だけだ」
俺は頷いた。
「分かってる」
彼は俺を一瞥した。
俺はスマホを取り出して、彼に向けて軽く振った。
「事案は受理済みだが、行政調整と民事の事前審査の間で宙に浮いている状態だ。政府が『法に基づき検討中』と抜かすなら——まず、その『法に基づき』が現在どの段階まで進んでいるのか、答えてもらおう」
ヴァヴラ(ヴァーヴラ)は、ようやく薄く笑みを浮かべた。
「悪くない」
「ありがとよ、弁護士先生」俺は言った。「で、そろそろ次のドアをノックしに行く時間じゃないか?」
奴はアタッシュケースを脇に挟み直し、歩みを止めない。
「ああ」
「どのドアだ?」
奴が裁判所の正面扉を押し開けると、外の冷たい風が容赦なく流れ込んできた。入口にたむろしていた記者どもがまだそこにいて、餌の時間だと悟った犬の群れのように、一斉にカメラのレンズをこちらへ向けてくる。
ヴァヴラ(ヴァーヴラ)は前を見据えたまま、布で拭きたての刃みたいな平坦な声で言った。
「政府に聞きに行く。なぜ奴らは裁判所より先に、自分たちが『法に基づき検討中』だと知っていたのか——とな」
隣に立つ俺は、思わず口の端を引き上げた。
「上等じゃねえか」
「何がだ」
「今ちょっと、あんたのことが本当に気に入ってきた」
「気色の悪いことを言うな」
「安心しろよ」俺は煌々と点灯し始めたレンズの群れを見据え、肩をぐるりと回した。「そっちの趣味はねえからな。ただ——この後、どの部署の連中が最初に不眠症になるか、それだけがちょっと楽しみになってきた」
握っていたスマホに力を込め、俺は階段を降りていく。
記者どもが殺到する。
マイクが突き出される。
矢継ぎ早の質問が、雨霰と叩きつけられる。
それでも、今の俺の機嫌はすこぶるいい。
今回は、もう外から手探りでドアを叩いているだけじゃない。
どの引き出しで書類が止められているか。
どの窓口が時間を稼いでいるか。
どのフロアが死んだふりを決め込んでいるか。
それを全部わかったうえで——
あとは、そのドアを、建物じゅうに響くくらいの音を立てて、蹴り破ってやるだけだ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




