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57.トレンチーン国立公文書館 57-3

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

この女がこの顔をするときは、必ず「他人の答えを待つのをやめて、自分で全部ひっくり返しにいく」モードに入っている。


つまり——本当の意味での面倒が、ここから始まる。


俺は椅子の背にもたれ、長く息を吐いた。


今日は実家に帰って懐かしむだけで、せいぜい入場料の文句を言うくらいで終わるはずだった。


それが気づけば、ボイニツェ城(Bojnice Castle)はまだ取り戻せていない。スロバキア政府は机の前に引きずり出された。ハンガリーは堂々と死んだふりを決め込んだ。ルーマニアは「この件には歴史的な風味がありすぎて手が出せない」という見事な演技を披露した。


そして今、エリザヴェータの顔は完全に落ち着きを取り戻し——どう見ても、愉快そうだ。


俺の頭の中に残ったのは、ひどく素朴な一言だけだった。


終わった。


---


翌朝、俺は一人分欠けた状態で目を覚ました。


この一文だけ聞くと、「昨夜もまた誰かが壁の中に引きずり込まれたのか」と思われそうだが、残念ながらそこまでイベント性は高くない。


実際のところはこうだ——目を開け、起き上がり、半死半生の脳みそが三秒かけて再起動するのを待った後、俺は気づいた。外見十四歳、実年齢五百九十六歳、先祖代々の家に入場料を取られた怒りで日傘を凶器に変えた吸血鬼女大公が、いない。


空になった椅子を二秒見つめた。


もう一度見た。


それからゆっくりと顔を両手に埋めた。


「……クソ」


林雨瞳(リン・ユートン)は隣のベッドの端にすでに座っていて、目も覚めていた。手にはホテル備え付けの、見た目は高級感があるが飲んだら段ボールを熱湯で煮出したような味のコーヒーを持っている。彼女は俺を一瞥して、冷静なまま、刃のような一言を返した。


「気づいた?」


「かすかな人間的希望として、早起きの散歩に出ただけかもしれないと思おうとしてたんだが」


「吸血鬼女大公が早起きで散歩すると思う?」


「思わない」


「なら答えは出てる」


俺は頭をかきながら、ベッドを下りた。まずドアの鍵を確認し、次に窓を確認する。


異常なし。破損もなし。「先に裁判所を一つ潰してきます、後で合流します」系のメモも残っていない。


つまり連れ去られたのではなく、自分の意志で出ていった。


これはむしろ悪い。


連れ去られた場合は少なくとも相手がいる。自分で出ていった場合は、完全に覚醒した頭で、今日一日の俺たちの休息を根こそぎ消し飛ばすような何かをしに行ったことを意味する。


上着を羽織りながら聞いた。


(シキ)葉綺安(イェ・キアン)は?」


「下」林雨瞳(リン・ユートン)はコーヒーを一口飲んだ。「(シキ)がエリザヴェータの不在に最初に気づいて、今ごろ手当たり次第に追跡しようとしてる。綺安(キアン)はもっと直接的」


「直接的ってどういう意味だ」


「『周士達が起きてから一緒に頭を痛めればいい』って言ってた」


「……俺への信頼感、ちょっと重くない?」


「信頼じゃない」雨瞳はカップを置いて立ち上がった。「経験」


ダメージは少ない。侮辱は大きい。


一階に降りると、(シキ)がレストランの隅に陣取っているのが見えた。テーブルの上にはタブレット、スマホ、充電ケーブルが広げられていて、朝食ビュッフェの脇で情報戦でも始めようとしているみたいだ。葉綺安(イェ・キアン)はその向かいに座り、ゆで卵を切り分けながら、驚くほど穏やかな表情をしている。今日が普通の旅行二日目で、古代貴族が国際ニュース案件になりそうなことをやらかしている可能性があるとは、到底思えない顔だ。


俺は歩み寄って、椅子を引いて腰を下ろした。


「で、当主様はどこへ?」


(シキ)が顔を上げる。表情が微妙だ。


「見つかった」


「そんなに早く?」


「だって、まったく隠れてないから」


胃の底から、じわりと嫌な予感が這い上がってきた。


「どこへ行ったんだ?」


(シキ)がタブレットをこちらへ向けた。


地図に一つのピンが立っている。昨日俺たちが来た場所から、それほど遠くない。その横に、彼女が調べた建物の名前が表示されていた。


俺はその文字を一秒見つめた。


もう一秒見た。


それから目を閉じて、ゆっくりと椅子の背にもたれた。


「……裁判所」


(シキ)が頷く。


「裁判所」


葉綺安(イェ・キアン)はゆで卵を二つに切りながら、淡々と言った。


「予想より、ずいぶん速い」


「昨日、何をするって予想してた?」


「訴状提出」


「なんで先に言わなかったんだ!」


「言っても止められないでしょ」


……クソ、これも反論不能だ。


林雨瞳(リン・ユートン)が椅子に座って、こめかみを指で押さえた。


「いつ。出て行った?」


「夜明けごろ」(シキ)は言う。「ホテルの正面玄関付近の防犯カメラの映像を確認したら、一人で日傘を差して、貴族のアフタヌーンティーに向かうような格好で出てって、タクシーを拾って裁判所へ向かってた」


頭の中に、その光景が即座に浮かんだ。


夜明けの光。スロバキアの街路。外見十四歳の金髪吸血鬼女大公。優雅に着飾って、不満そうな顔で裁判所に乗り込んでいく。


もし誰かに撮られていたら、まずSNSでコンセプチュアルアートの写真として拡散されて、その後「いや、本当に政府を訴えに行ってた」と判明するやつだ。


俺は二秒黙ってから、非常に誠実に言った。


「今日の裁判所の受付担当者に、線香の一本でも上げてやりたい気分だ」


「もう遅い」林雨瞳(リン・ユートン)が言った。


結局、朝食はほとんど誰も箸が進まなかった。


緊張しているわけじゃない。ただ、事態がすでに「止めようとしても自分が間抜けに見えるだけ」な段階まで来ていた。エリザヴェータという人間は、「見てみよう」から「動こう」に切り替わった瞬間、もう交渉の余地がない。昨日公文書館で座って待っていたのは、まだ踏むべき手順があったからだ。その手順が彼女の番に回ってきた今、遠慮するはずがない。


裁判所の外に着いたとき、案の定、事態はすでに軌道を外れ始めていた。


いや、正確には、まだ「全面崩壊」には至っていない。


「正常な軌道から外れて車体が傾き始めたが、後続の連中はまだ自分たちがこれから横転することに気づいていない」——そういう段階だ。


裁判所の外観は至って普通で、むしろ地味なくらいだ。正面の階段は短く、ガラスのドアには特に威圧感もない。入ったら整理番号を取って、書類を何枚も書かされるんだろうなと一目で分かる、典型的なお役所建築だ。


そしてエリザヴェータは、その建物の正面ど真ん中に立っていた。


今日は昨日より少しだけ正式な装いだ。黒いスカート、手袋、日傘。髪も一筋の乱れもなく整えられている。三枚の羊皮紙文書は今は手元になく、濃い色のハードケースのファイルにきっちり収められて、腕に抱えられている。裁判所の前に立つその姿は、原告というより、不動産の引き渡しを受けに来た人間のそれだった。


俺は道の向こう側から彼女を二秒見つめてから、たまらず口を開いた。


「あの格好は訴訟に来たんじゃない。この建物を自分のものにしに来た顔だ」


(シキ)が横から刺す。


「昨日は前朝の遺臣みたいって言ってたじゃない」


「撤回する」俺は言う。「今日は前朝の支配者ご本人だ」


雨瞳は笑わない。ただ前を見ている。


「もう出した後」


「なんで分かる?」


「あの表情」雨瞳は淡々と言う。「これから動く顔じゃない。もう動いた後の顔」


……こいつが的確なことを言うとき、本当に腹が立つ。


俺たちが向かおうとした瞬間、裁判所の中から男が一人、早足でドアを押し開けて出てきた。スーツ、眼鏡、強張った表情。書類の束を小脇に抱えていて、「今朝は普通に出勤してきただけなのに、キャリアが五年分老け込むような案件を突然受け取った」という顔をしている。


彼はエリザヴェータの前に立って、まずスロバキア語で何か言った。


エリザヴェータはそれを聞いてから、わずかに顎を上げ、さらに短く数言返した。


男の表情が「緊張」から「今日という日を行事予定から全部消去したい」に即座に格上げされた。


俺は(シキ)に小声で聞いた。


「録画できるか?」


「もうしてる」


「プロだな」


「あなたたちと長くいると、護身スキルが自然と身につく」


裁判所の入口に立つ公務員は、明らかに最後の抵抗を試みていた。語調が速くて、「これ本当に正式に進めなきゃいけないの?」という切実さが、スロバキア語が分からない俺にも滲み出てくる。


だがエリザヴェータは、そんな懇願を一切受け付けなかった。


声を荒げることもなく、ただ静かに一言二言言って、それからファイルをそっと軽く叩いた。


男の顔が、その場で灰色になった。


たぶんこういう意味だったんだろう。


——受け取らなくてもいい。ただし、受け取らなかった場合の結果はそちらで引き受けることになる。


これが普通の人間の口から出れば、ただの脅しに聞こえるかもしれない。


だが十五世紀の王権文書を携えて裁判所に乗り込んできた吸血鬼大公の口から出れば、その効果は「自然災害の予報」に近い。


俺たちが近づいていくと、エリザヴェータはすでにこちらに気づいていた。


紅い瞳がこちらを一瞥して、表情は驚くほど平静だ。今朝こっそり抜け出して国を相手に訴状を叩きつけてきた人間の顔ではなく、少し早めに朝食を買いに出ただけの人間の顔だ。


俺は彼女の前に立って、まず彼女を見て、それから裁判所の入口を見た。


「まさか道を聞いてただけとは言わないよな」


「訴状を出した」彼女は言う。


「……正直だな」


「汝に隠す必要はないからな」


「隠す隠さないの問題じゃなくて、昨日は公文書館を震え上がらせて、今日はもう裁判所に乗り込んでるって、このペースはお前の年齢に見合いすぎじゃないか?」


エリザヴェータが俺を見る。


「他人が死んだふりをするのを眺めるのに、もう十分時間を使った」


「ああ、だから今日は見るのをやめて、直接訴えたわけか」


「然り」


あまりにも即答だったせいで、ツッコミのタイミングを完全に失った。


林雨瞳(リン・ユートン)が横に立って、彼女を見る。


「名義は何にした?」


エリザヴェータは手元のファイルをわずかに持ち上げた。


「所有権争議、歴史的継承権確認、行政処置の不当性、および文書と財産権の再審認請求」


俺は口を開けたまま、二秒止まった。


「……本当に弁護士じゃないのか?」


「違う」


「じゃあこの五百数十年、何を学んできたんだ?」


「妾を怒らせた者に、どう後悔させるかじゃ」


「その答え、普通に怖えんだけど」


(シキ)は隣で口を開けたり閉じたりしてから、最終的に一言だけ絞り出した。


「で……受理された?」


エリザヴェータの口元に、ほんのわずかな笑みが浮かんだ。


「最初は受け取りたくなさそうだったが」


「それで?」


「受け取らないほうが面倒になると、分からせた」


……まあ、そうだよな。


俺がさらに何か言おうとした瞬間、裁判所の中からまた人が出てきた。


今度は一人じゃない。二人だ。


一人は若い。手にスマホを持っていて、顔色は大きなグループチャットで自分の名前が赤くハイライトされているのを見てしまった人間の色をしている。もう一人はより上位の人間らしく、スーツはきっちりしていて足は速いが、その速さは威圧感ではなく「火を消しに行く」ための速さだ。


しかも動きがあったのは裁判所の中だけじゃなかった。


道の向こう側でも、何かが始まっていた。


一台の車が止まった。続いてもう一台。降りてくる人間がいる。裁判所の入口を見上げる人間がいる。電話をしながら早足でこちらへ向かってくる人間がいる。その中の何人かは、一目でそれと分かった——


どこかで何かが起きている。俺たちが行く。


そういう顔をしている。記者だ。


俺はその集団を眺めながら、ひどく不吉で、しかし見覚えのある予感を覚えた。


「情報が漏れた」


林雨瞳(リン・ユートン)が言う。


「分かってる」俺は停まったばかりの車を見つめた。「しかも、漏れ方が異常に速い」


実際には、「速い」どころではなかった。


「あり得ないほど速い」が正確だった。


十分も経たないうちに、裁判所の前に漂っていた「まだ辛うじて普通の月曜日を装える」空気は、完全に踏み潰された。


最初に来たのは地元の記者だ。機材はそこまで大げさじゃないが、足は速く、目は血の匂いを嗅ぎつけた魚みたいに光っている。次に現れたのは、どこから湧いてきたのか分からない弁護士たちだ——本当に、弁護士の嗅覚というのは怪物より鋭いときがある。正式なスーツを着ている者もいれば、鞄を提げたまま来た者もいて、どう見ても「移動中に情報を受け取って、即座に引き返してきた」という格好だ。


その中の一人、中年の男は、まだ近づいてもいないうちからネクタイを整え始めていた。顔には「世紀の案件に協力する用意はあります、もちろん委任料が見合えばなおよし」という職業的な笑みが貼り付いている。


俺はほとんど吹き出しそうになった。


「ハゲタカの集まりが早すぎる」


(シキ)が声を潜める。


「記者のこと? 弁護士のこと?」


「両方。片方はアクセス数を食って、もう片方は委任料を食う」


葉綺安(イェ・キアン)は後ろに立って、天気を見るような顔で言った。


「始まった」


「分かってる」俺は集まってくる人波を見つめた。「でも、規模がでかすぎないか?」


裁判所の中の人間たちも、完全に落ち着きを失っていた。


さっきまではまだ体裁を保てていた公務員たちが、今や「現場を制御して、これ以上撮影させないようにして、誰か早く上に電話しろ」という混乱のリズムに完全に飲み込まれている。入口付近で報道陣を後退させようとしている人間がいるが、まったく効果がない。なぜなら、エリザヴェータ本人がそこに立ったまま、動かないからだ。


しかも、ものすごく堂々と立っている。


カメラに怯む様子は一切ない。


むしろ正反対だ。


今の彼女の表情は、ほとんどこう言っていた。


——撮ればいい。世界中が見ればいい。


地元の記者の一人が先に走り寄ってきて、英語で大きく問いかけた。


"Are you the plaintiff who filed the current property rights lawsuit?"(今回の所有権訴訟を提起した原告の方ですか?)


俺はその質問を聞いた瞬間、頭皮がざわりとした。


この質問が出た時点で、もはや「裁判所が面倒な書類を受け取った」という話ではない。


原告がいる。案件がある。メディアがいる。情報が外に出た。


つまり、この鍋は公式に沸騰し始めた。


エリザヴェータはその記者を一瞥し、よけることもなく、平坦な声で返した。


「然り」


俺は危うく顔を覆いたくなった。


「おい、あっさり認めすぎだろ!」


「なぜ認めてはならんのだ?」彼女は振り返りもせず聞いてくる。「妾がしたことを、なぜ隠す必要がある?」


「いや、少しくらい俺たちに息継ぎさせてくれよ!」


「昨日、十分休んだであろう」


「あれは祖宅の入場料で恥をかかされてただけで、休息じゃない!」


雨瞳がそこで口を開いた。声は小さいが、はっきり届く。


周士達(ジョウ・シーダー)


「何だ」


彼女は、押し寄せてくる記者の群れ、カメラ、そして「一枚噛みたい」という顔で集まってくる弁護士たちを眺めながら、特に表情を変えずに言った。


そして、極めて静かに、俺に問いかけた。


「約束してた休息——どこ行った?」


俺は一言も返せなかった。


あまりにも正しかったからだ。


ただ少し息を抜ける場所を探していたはずが、気づけば——


五百九十六歳の吸血鬼女大公が、スロバキア政府を本当に訴えた。


そして情報は、すでに全部外に出ていた。

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