表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/365

50.ブダペスト 50-2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

ブダペストの昼は夜とは別物だ。


夜は灯りと川で人を手懐けてくる。昼は別の種類のものを使う——石畳、橋、路面電車、坂道、看板、古い壁、観光客、サラリーマン、コーヒーの匂い、そして過剰なまでに普通の街の空気。歩いていると、この街が「首都らしく見える」ことに非常に真剣に取り組んでいるのが分かる。どの通りも、自分がどう見えるべきかを知っていて、どの建物も、「歴史は適切に保存され、適切に名付けられ、適切に入場料が設定されています」と言い張っている。


ただ、歩けば歩くほど、俺は落ち着かなくなった。


陰気だからじゃない。むしろ、何もなさすぎるのがおかしい。


何度か、明らかにおかしいと感じた。ある街角が、地下室を地上に引っ張り上げたみたいな冷気を持っていた。ある建物の外壁のそばで、鳥が一列に並んで、全員が同じ方向を一点に見つめて微動だにしなかった。ドナウ川沿いの柵の向こう、川面の光の中に、輪郭が黒ずんだ人影が何人か立っていた。ところが、そのすぐ隣を歩く通行人は、視線の端すら動かさない。見えていないんじゃない。見ないようにしている。その感じが、直接出るよりずっと腹立たしい。街全体が、非常に高水準の集団的な「見て見ぬふり」を習慣にしている。


俺は柵の前に立ち、その川面をしばらく見た。


「見えてるか?」


エリザヴェータは俺の隣に立ち、傘を低く傾けて、正午前のまだそれほど強くない光を遮っている。


「あそこに何かいる」


「分かっておる」


「でも周りの人間は、完全に気づいていない」


「それも分かっておる」


彼女は答えを確認しているみたいに静かだった。


俺は振り返って彼女を見た。


「つまりこの街が鈍いんじゃなくて、誰かが目を閉じさせている」


エリザヴェータは軽く鼻を鳴らした。


「『見えない』を、インフラに組み込んだのじゃ」


その一言は、気持ち悪くて、正確だった。


俺たちはその後、川沿いを歩き続けず、旧市街の路地へ入っていった。石畳、坂道、アーチ型の門、カフェ、小さな本屋、古物商、観光土産のショーウィンドウが続く。外から来た人間に写真を撮らせて帰らせることが、この世で最も重要な事業であるかのような一帯だ。


彼女に付き合って古物商に入った。十七世紀から十九世紀の銀器と時計が並ぶ棚の前で、エリザヴェータは二分ほど立ち止まり、最後に冷たく言い捨てた。


「偽物が多い」


店主は中国語が分からず、笑顔を向けるだけだ。彼女はそれ以上何も言わず、踵を返した。


「お前が言うと、本当に税務調査に来た亡霊みたいだ」俺は後ろからついていきながら言った。


「この通りがかつて妾の管轄であったなら、今の状態を見れば税務調査くらいはするわ」


「『かつて』って言葉、お前はちょっと中毒になってないか」


「あなたは間抜けな質問に中毒になっていないか?」


「俺はそれを職業的勘と呼んでいる」


「職業があるのか?」


「……」


彼女がこちらを横目で見る。「今すぐ自分の肩書きを説明しようとするな」という目だ。俺は言葉を飲み込み、代わりにコーヒーを二杯買いに行った。一杯は普通の熱いやつ。もう一杯は、彼女用——飲まないだろうとは分かっているが、手ぶらで歩かせると俺が安っぽいガイドに見えるので。


俺たちは小さな広場の脇で少し立ち止まった。広場ではバイオリンを弾いている人がいて、鳩に餌をやっている人がいて、子供が鳩の群れを追いかけて走り回っている。観光局が作ったサンプル映像みたいな光景だ。


その鳩が一斉に飛び立った瞬間、俺は広場の反対側にある古い石像の台座のあたりで、周囲より半寸だけ濃い影を見た。


目を細める。


次の瞬間、通りの上空で、普通の市街監視カメラに見えていた小型ドローンが角度をわずかに変え、ゆっくりとこちらへ向きを変えてきた。


「ほう」俺は小声で言った。「俺より疑い深いものが、ついに出てきたか」


エリザヴェータはドローンを見もせず、静かに言った。


「こちらをスキャンしておる」


その通りだった。数秒もしないうちに、広場の向こう側から、濃紺の制服に市街安全識別バッジを胸につけた男が二人、こちらへ歩いてきた。警察ではない。かといって、ただの警備でもない。半官半民の執行部隊というやつだ。あれが一番厄介で、銃を抜く気配はないが、「協力」を求められた際に断れば、即座に「何か隠している側」に分類される。


先に口を開いたのは一人目で、俺には一言も分からないハンガリー語を一続き喋った。


俺は無表情で英語を返した。


「英語で話してくれれば、少しだけ恨む量が減る」


相手はそれなりに流暢な英語に切り替えた。内容は単純だ——定期的な身元確認、観光エリアでのセキュリティスキャン異常検知、書類の提示に協力を。


心の中で、太い一語だけ吐き捨てた。


——クソ。


普通の観光地でこんな頻度で止められるはずがない。しかも、相手の視線が先に俺へ落ちて、それからエリザヴェータへと移った、あの順番が露骨だった。俺たちが偶然ぶつかったんじゃない。どこかのシステムが、人の流れの中から俺たちを先に選り分けた——そういう感触だった。


パスポートを取り出そうとしたその瞬間、少し離れた場所から、早口のハンガリー語が割り込んできた。語気は急で、苛立っていて、誰かを怒鳴りつけているようでもあり、厄介ごとの後始末をしているようでもある。


若い女だった。


透明な戦術防水ジャケットの下に、ゆったりしたネオンパープルのショート丈パーカー。髪型はサイドを刈り上げたアンダーカットで、もう片方だけ肩まで届くウェーブが残っている。耳の軟骨には光沢のある金属リングが二つ。手にはスマートフォン。歩く速度は、最初からこの通りに属しているみたいに速い。俺たちと市街安全の二人組の間に割り込んだとき、一瞬の躊躇もなかった。そのまま端末の画面を相手に向けて突きつける。


画面には、俺には読めないハンガリー語のインターフェース、QRコード、何かの認証ページらしきものが映っていた。二人の男は画面を覗き込み、表情が変わった。「例行業務」から「またシステムの誤検知か」という、あからさまな面倒くさそうな顔に。


女はさらに数語、速く鋭く畳みかけた。俺には聞き取れなかったが、リズムから察するに、「時間を無駄にしている」という類いのことだろう。一人がまだ何か言おうとしたとき、彼女はもう苛立たしげに手を横に振って「本当に調べる気があるなら本部のサーバーにアクセスしろ、ここで観光客を止めるな」と言い放っていた。二人は顔を見合わせ、実際に引き下がった。去り際、こちらをもう一度振り返って、「要確認リストに追加した」という目を残していった。


二人が遠ざかってから、俺は視線を女に戻した。


彼女は端末を操作しながら、ごく気軽な英語で言った。


「カメラの真下に立ちすぎ。外から来た人って、みんなそんなに死にたいの?」


俺は彼女を見た。


「まず助けてくれたことに礼を言う。それから一つ聞かせてくれ——あんた、誰だ?」


彼女は顔を上げた。その目は明るい。無邪気な明るさじゃない。夜中に画面を見続けて、頭が回り続けている人間に特有の、鋭い光り方だ。


「通りすがり」と彼女は言った。


「通りすがりが、市街安全の連中を追い払える偽の認証画面を持ち歩いてるのか?」


「普通はね」彼女は口の端を上げた。「だから私は普通の通りすがりじゃない」


エリザヴェータは隣でその様子を見ていた。何も言わず、ただ視線が、いつもより少し長く彼女の上に止まっていた。


女もエリザヴェータを一瞬見た。失礼な目じゃない。ただ素早く、まるで頭の中でこの組み合わせを再評価しているみたいに。——東洋系の顔立ち、今にも悪態をつきそうな成人男性。外見は若すぎるのに、雰囲気だけが不釣り合いに古い少女。どちらも観光客には見えないのに、よりによって一番観光客らしい場所で突っ立っていた二人組。


彼女はスマートフォンをしまい、隣の路地の方へ顎をしゃくった。


「二、三歩移動して。あの機械、今日は機嫌が悪い」


無視することもできた。


でも、さっきドローンがこちらへ向きを変えてきた角度は確かに見ていたし、この街の「普通」がどれだけ不自然かも分かっている。だから一秒だけ迷って、ついていった。エリザヴェータも当然ついてくる。傘を差したまま路地に入る彼女は、正午の光を断ち切る一筋の黒みたいだった。


路地の中は、ずっと涼しかった。


女は小さなカフェの勝手口の脇で足を止め、壁にもたれて俺を見た。


「今日はもう、高いところ、橋の上、開けた広場の真ん中には立たない方がいい。この街の目、最近ちょっと過敏になってるから」


「普通の監視カメラじゃないだろう」俺は言った。


彼女は直接答えず、逆に訊いた。


「普通だと思う?」


俺は笑った。


「思ってたら聞かない」


彼女も笑った。マウスを一回クリックするくらいの短い笑みだった。


「いい。少なくとも馬鹿な観光客じゃないね」


「褒め言葉か?」


「ブダペストでは、そう受け取っていい」


俺は二秒ほど彼女を見た。


「ずっと俺たちを見てたのか?」


「ずっとじゃない」彼女は訂正した。「駅を出てからしばらくして、から」


否定するより、その答えの方がずっと本当に聞こえた。


もう少し追及しようとしたとき、彼女はもう体を起こし、臨時のサブクエストをクリアしたみたいに立ち去る準備をしていた。振り返る直前、俺を一瞥した。短い視線だったが、はっきりと興味が乗っていた。


「次はカメラの下に立つな、東から来た人」彼女は言った。「あなた、麻煩を引き寄せるタイプに見える」


「見えるんじゃなくて、実際にそうだ」俺は返した。


彼女はそれを聞いて、さっきより少し大きく笑った。


「じゃあ、幸運を」


それだけ言って、行った。


速い。角を曲がった瞬間にはもう見えなくなっていた。街が自分の手を伸ばして俺たちをトラブルから弾き出し、そのまま何事もなかったように引っ込めたみたいだった。


俺はその場に立ったまま、彼女が消えた方向を眺め、眉をひそめた。


「普通の通りすがりじゃない」俺は言った。


「当然じゃ」エリザヴェータが言った。


「お前が一回くらい否定してくれると、俺も参加してる気分になれるんだが」


「彼女の周りには、電気が多い」エリザヴェータは静かに言った。


「電気?」


「字義通りではない」彼女は路地の外の光と影を横目で見た。「頭が速く、手も速い人間が持っている、あの感じじゃ。この街の大半の人間より、ずっと覚醒しておる」


俺はうなずき、否定しなかった。


そして、さっきの一言が頭に残っていた——「駅を出てからしばらくして、から」。


偶然の遭遇じゃない。何らかの意図を持った観察だ。


追いかけなかった理由は単純だ。一つ、追いつけない。二つ、この場所でこういうことができる人間は、また現れたいときに自分で現れる。


---


その後の半日は、俺たちは本当にただ歩き続けた。


ただし、午前とは少し違う見方で。観光ルートの方向感じゃない——この街のどこかがおかしいと分かっている人間が、もっと細かく見始めるときの、あの感覚だ。路面電車の曲がり角に設置された鏡型カメラ、古い建物の軒下に増設された金属製の箱、本来ホワイトノイズがあってはいけない広場がいくつか、そして「見えないもの」のそばを通り過ぎる人間の目が、ほんの一寸だけ逃げる瞬間。


エリザヴェータが午後のどこかで、橋の上で急に足を止めた。遠くの丘と建物をしばらく見ていた。


俺は隣に立った。


「ここに、お前の何かがあったか?」


彼女はしばらく沈黙してから口を開いた。


「あったかもしれぬ」


「かもしれぬ?」


「長く生きれば、多くのものが『かつてあったかもしれない』になる」彼女は言った。「家、土地、名前、借り、人。全部を認めたいわけでもない」


その言葉は、彼女のいつもの古めかしい口調より、ずっと人間の言葉に近かった。だからこそ、かえって面倒だった。意味が分かってしまうから。


---


午後遅く、俺たちはホテルへ戻った。


地下駐車場には、あのSprinter VIP Editionが届いていた。黒いボディ、長い車体、内装は俺たちがやるような種類の仕事に使う車とは思えないほど清潔だ。全欧州保険の書類、鍵、付帯処理パッケージが、誰かが丁寧に次の移動の準備を整えてくれたみたいに、テーブルの上に揃えて置かれていた。それを眺めながら俺が思ったのは、ベルタスがもし本当に死んだとき、俺は先に泣くのか、先に遺言書を確認するのか、どっちだろう、ということだった。


部屋に戻ると、三人の廃人はあまり改善されていなかった。


林雨瞳(リン・ユートン)はまだ療養中で、葉綺安(イェ・キアン)の二日酔いは少し引いていたが、今日、重大な判断を下せる状態ではないのは一目で分かる。(シキ)はようやく海鮮地獄から半分這い上がり、「内陸の国の冷製生牡蠣を信じた自分」を二度と繰り返さないと誓っていた。白昼の出来事を大まかに話すと、三人の反応はほぼ同じだった——驚きじゃない。「やっぱりこの街も、俺たちを楽にさせてくれないか」という、疲れた納得だ。


---


夕方を過ぎてから、俺はシャワーを浴びて、やっと人間らしくなった。


窓の外では空が落ちていき、ドナウ川の光が街の輪郭を再び照らし始めた。ブダペストはまた夜の、「何もなかった顔」に切り替わろうとしている。


そのとき、スマートフォンが震えた。


普通のSMSの音じゃない。一般的なメッセージアプリでもない。今日以前には確実に存在していなかった暗号化通知のアイコンが、画面の中央に直接浮かび上がった。黒い背景に、シンプルな星のマークだけ。


タップする。


画面が一度点滅した。俺のセキュリティ設定をあざ笑うみたいに。それから英語のメッセージが現れた。


---


今日、カメラを避ける方法をまだ覚えているなら、まだ見込みがある。


22:30、この住所へ。


この街の目を閉じさせているのが誰か知りたければ、間抜けは連れてくるな。


—— C.I.L.L.A.G.


---


メッセージの下に住所と、監視カメラの映像のスクリーンショットが一枚添付されていた。


今日の昼間、俺とエリザヴェータが川沿いに立っていた後ろ姿。角度は高く、市街カメラが撮ったものだと一目で分かる。画面右上に、一行だけ余計な文字が添えてあった。


P.S. 隣で傘を差している方、センスはあなたより上です。


俺はその画像を二秒見てから、笑いが漏れた。


エリザヴェータが奥の部屋から出てきて、俺の顔を見て眉を上げた。


「どうした?」


俺はスマートフォンを向けた。


彼女は一通り見て、それだけ言った。


「普通の通りすがりではないと、最初から申しておった」


俺はスマートフォンをしまい、窓の外の灯りを見た。


なるほど。


昼間は街に「見えないふり」をされ、午後は電気過剰な女に監視カメラの下から引っ張り出してもらい、夜になったら正式に招待状が届いた。しかもこの口ぶりからして、今朝の「通りすがり」が向こうで待っている可能性は、十中八九だ。


俺は上着を掴み、ゆっくりと息を吐いた。


「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ