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47.起爆 47-1

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

石橋の向こう、ひび割れた石壁が、まず一度、ゆっくりと膨らんだ。


大げさに一面が吹き飛ぶのではなく、壁の中で巨大な肺が静かに息を吸い込んでいる——そんな不安な膨らみ方だった。


真鍋は橋のこちらで片膝をつき、切れた導爆主幹を押さえながら一度だけ振り返った。顔が一瞬で蒼白になる。


「橋に触れさせるな!」


「今それ言うのかよ」俺はあの重い黒いケースを抱え、世界ってやつは本当に、事態が最悪にならないと大事なことを追加しないのが好きだなと腹の中で毒づいた。


次の瞬間、壁が破裂した。


爆薬で吹き飛んだのとは違う。古びた石壁全体が内側から無理やり押し広げられ、石灰と瓦礫が外へぶちまけられる。その隙間から黒い液体が流れ込み、空中で一度塊になって、地面に落ちてからゆっくりと形を作り始めた。


今度出てきたのは、さっきまでの漏れ出した端材(生ゴミ)とは違う。


より完成度が高く、より性質が悪かった。


成人二人分ほどの大きさで、全体がいくつもの死に方を雑に縫い合わせて失敗した化け物の集合体。上半身はかろうじて人の形を保っているが、下半身は狼種の後ろ脚と海底で腐った何かが混ざったような形になっている。胸にはちぎれた拘束帯が食い込んでおり、顔の半分は枯れた人皮、もう半分は霧と黒泥で作られている。何よりおぞましいのは、身体にまだちぎれきれていない輸液チューブが何本も垂れ下がり、まるで実験台から自分で這い降りてきたばかりの死体のようだった。


そいつが地面に降り立った瞬間、最初に見たのは真鍋でも俺でもミルチャでもない。


橋だ。


正確に言えば、橋の向こうに半分だけ繋ぎ直された導爆主幹だ。


——結構。


こんな化け物ですら、俺たちより段取りを理解してる。


「クソが」俺は吐き捨てる。


イリーナはすでに撃っていた。


一発目が肩口を貫通し、黒い液体と骨片が飛び散ったが、そいつはわずかによろめくだけ。ヴォロンツォフが続けて二発撃ち、前へ突き出した腕の一本を吹き飛ばす。落ちた腕は床でまだ小さくのたうち、二歩ほど這った。撃ち落とされたことを、まるで認めていないみたいに。


カーンが低く祈りを唱え、経文を刻んだ金属牌を投げつけた。牌が胸に突き刺さり、焼けた鉄を濡れた肉に押し込んだようにプシュッと白煙が上がる。ようやく、そいつは声を上げた。


叫びではない。


何人分もの最後の息が、一度に喉から絞り出されたような音だった。


背中が一気に粟立つ。


「これも端材か!」俺はエリザヴェータに叫ぶ。


エリザヴェータは橋の前に立ち、振り返りもしない。


「少々大ぶりの生ゴミじゃ」


「お前のボキャブラリー、人間に失礼すぎるだろ」


「人を侮辱しているのではない」彼女は淡々と言う。「こやつを侮辱しておるだけじゃ」


そう言い終わるが早いか、彼女はもう前に出ていた。


エリザヴェータの戦いを見るのは本当に苦手だ。見た目が悪いからじゃない。理不尽すぎるからだ。


橋に怪物が飛びかかってきた瞬間、彼女は一歩も引かず、片手でそいつのまだ原型を留める顎を掴み、もう一方の手で背中の脊椎とも管ともつかない塊を掴んで、全体を横合いに捻り飛ばした。


その一撃の力は橋ごと揺らすほどだった。


怪物の前爪が橋の欄干を削り落とし、手前に反撃しようとした瞬間、エリザヴェータは膝を跳ね上げて胸に叩き込み、カーンの金属牌をさらに深く押し込んだ。


ついに、そいつは慟哭を上げた。


その声が響いた瞬間、橋の下の井戸が号砲でも鳴ったみたいに、黒い水面がまた一寸ぶん押し上げられた。


真鍋が顔も上げずに怒鳴る。「これ以上叫ばせるな!下が一斉に動き出す!」


「それ、あいつに言えよ!」俺は走りながら返す。


俺は黒いケースをミルチャの胸に叩きつけた。


「持ってろ!これ以上俺の腕に負担かけたら、先に井戸に投げ込むぞ!」


ミルチャは一歩よろめきかけながらも、しっかり受け止める。


「お前は橋へ行け!」


「そのつもりだ!」


散弾銃を構え、怪物の体からまだ壁に繋がっている輸液管に向けて一発撃つ。


銀鋼球弾が当たると、黒い管が焼き鏝を押しつけたみたいに縮れ、体に送り込まれていた黒い液体があちこちから吹き出す。怪物の体がびくりと揺れ、バランスを崩した一瞬、エリザヴェータが側面の支柱に向かって思い切り叩きつけた。


ドン。


古びた石柱が一周ひび割れる。


その隙に、俺は橋を駆け抜けた。


真鍋はまだしゃがみ込んで線を繋いでいる。ヘイズが隣で片膝をつき、片手で線の端を押さえ、もう片手で橋の下で蠢く黒い影に短銃で牽制射撃をしていた。俺が駆け寄ると、彼女の第一声は「気をつけろ」ではなく——


「あと三十秒遅かったら、あんたたち見捨てて自分だけ逃げるつもりだった」


「国際協力の信頼感ってやつがよく分かったよ」


「少なくとも私は正直だ」


その点、ミルチャも同じ流派だな。


俺は真鍋の横で線のもう一方を持ち上げながら訊く。「あとどれくらいだ?」


「十秒」歯を食いしばって言う。「あいつが橋を壊さなければ、の話だ」


橋の後方でまた轟音。


振り返る。


まずい。


怪物はもう前に飛びかかるのをやめ、両側の支柱に体当たりを始めていた。橋を渡るより、橋を折る方が早いことを分かっている。


エリザヴェータは正面に立ち、飛び散った灰と黒い液体が頬にかかっても、まるで乱れていない。突進する腕を片手で掴み、足元を滑らせて肩に乗り上げ、そのまま頭を非情に後ろへ折る。


バキッ。


これまでに何度も骨の折れる音を聞いてきたが、これが一番嫌な音だった。


首の中には普通の骨じゃなく、黒く光る硬い節が連なり、誰かが人間の背骨の破片と鉄線を一緒にこねて作った偽物だった。


その偽の首を引き千切ると、エリザヴェータは止まらず井戸の方へ投げ捨てた。


怪物はまだ死なず、上半身だけで橋の縁を這いながら、黒い液体を引きずって前に進んでくる。


周士達(ジョウ・シーダー)!」真鍋が叫ぶ。


「終わったか?」


「終わった!」


最後のカチッという音と共に、導爆主幹全体が一瞬ぱっと光った。長いこと空気が通っていなかった血管に、やっと血が通い始めたみたいに。


同時に、無線から(シキ)の声が飛び込んでくる。


「そっち、線繋がった!?上の奴ら、主ホールを納骨堂にしそうな勢いなんだけど!」


俺は起爆装置をつかみ、無線に向かって叫ぶ。「繋がった!今から上へ撤退する!」


林雨瞳(リン・ユートン)の声がすぐさま割り込んできた。誰よりも切迫した声で。


「急いで!下のやつ、橋に向かうだけじゃない、建物全体の隙間を探して上へ這い上がろうとしてる!」


これが、一番まずい。


第三層はもう「爆発寸前の工場」ではなく、


井戸ごと城全体が、一緒に壊れ始めている。


---


俺たちは一気に上へ駆け上がる。


もはや戦術的撤退なんて上品なものじゃない。崩壊しつつある古城の中で、まだ走れる通路を血眼で探しているだけだ。真鍋とヘイズが先に橋を渡り、ヴォロンツォフとカーンが下がりながら撃ちまくる。ミルチャは黒いケースを抱えて、死にたくないが証拠は絶対持ち帰りたい上級官僚の走り方で前に進む。イリーナが殿を務め、一歩ごとに振り返っては撃つ。まるで「今日くらい爆破してもバチは当たらない」とでも言いたげに。


俺が橋の中央を越えるころ、橋面はすでに亀裂だらけになっていた。


一気に崩れるのではない。さっきの怪物が支柱を壊したせいで、踏むたびに石橋の骨がどこか砕けていくのが足裏に伝わってくる。


振り返る。


あの上半身だけになった怪物が、まだ這っていた。


頭はなく、胸にはカーンの金属牌が刺さったまま、それでも不揃いな二本の腕で橋の縁を這い上がろうとしている。一歩進むたび、後ろに長い黒い液体の跡を残していた。そいつ自身が生きたいわけじゃない。あの井戸が、そいつを死なせたくないみたいだった。


頭皮が粟立ち、振り返りざまにもう一発撃つ。


銀弾がそいつを横っ腹から吹き飛ばし、ようやく怪物ごと橋の一部が崩れて落ちていった。


落下音はしなかった。


ただ井戸の底から、何かを飲み込むような、詰まった音が響いた。


「この場所、本当に嫌いだ」俺は言う。


「結構」イリーナが俺の横を駆け抜けながら言う。「まだ正気だという証拠だ」


処置室を抜けるころには、さっきまでかろうじて医療器材として判別できたものが、ほぼ全部倒れていた。壁の防護棚が次々と勝手に割れ、搬出されなかった小さな標本容器から黒い水が滲み出している。換気ダクトの奥から引っ掻く音がして、天井が時折ぽこりと膨らむ。上で何かが鉄板に張りついて這い進んでいる。


真鍋が走りながら手元の信号計を振り返る。


「主ポンプ、まだ過負荷状態だ!」


「それは良いことじゃないのか?」俺は訊く。


「爆発するから良いことだ!」と彼は言う。「悪いのは、俺たちが遅れたら先に爆発するってことだ!」


この論理は非常に明快で気に入った。


上層サービス廊下に飛び込んだ瞬間、銃声が一気に近くなった。


前方の廊下は本来、主展示室裏の保守区画に繋がっているはずだったが、今は標準的な交戦現場になっていた。砕けた木片、弾痕、倒れた展示ケース、刀で斬り裂かれたタペストリーが散乱している。一番前の半崩れの扉枠のそばで、(シキ)がC.U.I.B.の武装要員一人の背中を踏んで片手で弾倉を交換していた。俺たちを見た瞬間、第一声が——


「もう少し遅かったら、上から建物ごと爆破してたとこだった」


「すごく被害者ヅラだな」


「実際被害者だし」


彼女は斜めから飛び出してきた別の一人を一刀で斬り倒した。血と灰が壁に飛び散り、ちょうどいい具合に汚い画面になった。


葉綺安(イェ・キアン)はさらに前方、主ホールの入口に背を向けて立っていた。手の刀は全体が黒く染まり、足元には人とは言いがたい二体が倒れていた。一体はまだC.U.I.B.武装要員の顔の半分を残していて、もう一体は壁から無理やり絞り出された肉袋みたいだった。彼女は振り返って俺を一瞥し、生きているのを確認してから、冷たく一言だけ言う。


「スマホの削除代、また増えた」


「生きて戻ったら一番最初に消す」


「そうしなさい」


林雨瞳(リン・ユートン)は反対側の柱に背を当て、顔は紙みたいに白かったが、目だけが怖いくらい鋭く光っていた。彼女は主ホールの床の中央を見つめ、声を低く絞り出す。


「上がってきた」


視線を辿った。


観光ポストカードの表紙になりそうなほど華麗だった主ホールの床が、中央からゆっくりと細い亀裂を一本、押し広げていた。爆発じゃない。黒い湿気が木の床板の下から滲み上がり、床全体が水に浸かった棺桶の蓋みたいに反り上がっていく。


もう少し遅れたら、あの井戸は地下で漏れているだけじゃなくなる。


城の腹の中から、育ち始める。


ミルチャは見もせずに即断した。


「正門へ撤退!全員、今すぐ!」


ヘイズが退きながら訊く。「ケースは?」


ミルチャは黒いケースをさらに強く抱え込み、硬い声で言う。


「持ち出す。残りは全部送り込む」


——結構。


ようやくまともな官僚らしくなった。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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