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28.連合艦隊、再起動 28-2

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。

飛竜(ヒリュウ)


その二文字だけ。


呪文もない。長広舌もない。派手な演出も一切ない。


だが海面は即座に応えた。


極光号(オーロラ)の脇で黒波を立てていた海水が、まず外へ向かって輪を描きながら退き、次に渦を巻き始めた。普通の渦じゃない。海全体が底から誰かに捻じ開けられたみたいに、黒い水と白い泡が船体の側面に沿って、恐ろしいほど巨大な渦穴を穿っていく。海風に混じっていた現代クルーズ船特有の油煙とプラスチックと燃えるケーブルの匂いが、一瞬で別の匂いに塗り潰された。


石炭の煙。機械油。錆びた鋼鉄。年季の入った塩。


俺が罵声を吐く暇もなく、海底が先に鳴った。


爆発じゃない。沈没艦が折れる音でもない。極めて古式で巨大な機械が深海で再点火する音だ。ドクン、ドクンと。ボイラーが最初の火を飲み込むように。歴史の底に沈んだ鋼鉄の肺葉が、再び呼吸を始めるように。


次の瞬間、渦の中央が盛り上がった。


誓って言う、あの光景は死ぬまで忘れられない。


幽霊じゃない。幻影でもない。半透明のアンティーク模型なんかでもない。一隻まるごとの船だ。一隻まるごとの、実体を持った、黒水と海泥を纏って海底から力ずくで突き上がってくる老航母だ。まず艦首が水を割り、次に鋼鉄の艦身、そして甲板全体が深淵から頭をもたげる海上工場みたいに現れた。舷側は斑蝕と亀裂と海中付着物に覆われて、長く漬け込まれたのにまだ腐り切ることを拒んでいる巨大な死骸みたいだった。海水が甲板の縁から滝のように落ち、灯火は点いていない。砲座も沈黙している。それでも、自分を海から押し上げてくるその事実だけで、現場全員の理性を思い切り殴りつけた。


飛竜。


模型じゃない。投影でもない。


本物だ。


近くで震えていた白人客がその光景を見た瞬間、腰から崩れ落ちて座り込んだ。アメリカ人夫妻の妻は泣きじゃくって言葉も出ず、夫を掴んだまま海面を指差し続けた。ベネデッタ修女(Sister Benedetta)は唇が真っ白になりながらも、反射的に胸の前で十字を切った。ホフマン教授は口を開けたまま、脳みそを一度引き裂かれて再構成されているみたいな顔をしていた。


極光のアナウンスが初めて本当に乱れた。


『検知——』

『未認可大型——検知』

『データベース不整合』

『データベース不整合』

『保護プロトコル——』


山口は完全に無視した。


一歩前に出て、声は相変わらず高くないが、刃みたいに真っ直ぐだった。


「飛竜、傷病者を収容しろ。婦女子を優先」


深海から這い戻ったばかりの空母は言葉では答えなかった。動作で答えた。


飛竜の舷側に並ぶ、それまで漆黒だった艙口が、一つずつ開いていった。


そして人影が現れた。


いや、「人影」じゃない。沈没船塚から引き上げられた旧時代の水兵たちの群れだった。軍服はとっくに腐って、塩漬けの布切れみたいに体にぶら下がっている。顔がまだ形を保っている者もいれば、半面が骨を露出している者もいる。眼窩にあるのは炎じゃなく、ただひたすら暗い、湿った光だけ。軍靴が甲板と舷梯を踏む音は湿って重く、一歩ごとにまだ海水を引きずっているみたいだった。


最前列で見ていた連中が、その場で後ずさった。


子供が一人、声を上げて悲鳴を上げた。


正直、俺自身も半歩引きたかった。


山口は乗客なんか見もせず、ぶっきらぼうに一言投げた。


「怖がるな。こいつらはお前たちを噛みはしない」


荷役係でも紹介するみたいな平坦な口調だったのに、なぜかその一言で現場が本当に少し落ち着いた。たぶんもう、どの怪物を怖がるか選ぶ気力も残ってなかったんだろう。


腐乱水兵たちが上がってきた。


無秩序に突っ込んでくるんじゃない。隊列を組んでいる。二人一組、四人一列で、飛竜から下ろされた舷梯とロープブリッジと臨時吊り索を伝って極光号(オーロラ)側に寄ってくる。動きは速いが、一挙一動が教範通りで、旧海軍の操典が腐った骨に直接刻まれているみたいだった。プラットフォームの縁に着くと、まず気をつけの姿勢をとり、山口の号令を待ち、それから班ごとに人群れへ入っていく。


不思議なことに、彼らは本当に誰にも乱暴しなかった。


子供は泣き喚いたが、腐乱水兵たちはただ同じように湿冷たく、しかし驚くほど安定した手を伸ばして、人を一人ずつプラットフォームの縁から接舷位置へ誘導していく。老人、傷病者、腰を抜かした乗客を、軍需物資でも運ぶみたいに手際よく移送していった。


片耳が半分なくなった腐乱水兵が、アメリカ人夫妻の前で一瞬立ち止まった。この二人の洋人をどう運ぶか判断しているみたいだったが、結局片腕ずつ抱え上げて、そのまま接舷橋へ送り込んだ。


俺はちょっと呆然と見ていた。


葉綺安(イェ・キアン)が隣に立っていた。馬三娘(マー・サンニャン)はまだ退いておらず、あの水兵たちを見て眉をひょいと上げた。


「あら。海軍のサービス精神、思ったよりずっとよろしいじゃないの」


山口がさらりと返した。「少なくとも、この船のAIよりはマシだ」


この一言で俺は思わず吹き出した。笑ってから、すぐにまずいと思ったが。


その時、飛竜からもう一組が上がってきた。


今度は水兵じゃない。軍医だ。


そいつを見た瞬間、俺は反射的に林雨瞳(リン・ユートン)の担架を引き戻しかけた。


だってどう見ても医者に見えなかった。


軍帽はまだあるが、袖章は半分以上腐り、白衣は白衣に近い色の破布しか残っていない。胸から腹にかけて一面が水死体みたいに膨らんで乾いていて、口元には黒ずんだ縫合跡がある。一番やばいのは目だ。真剣で、極めて専門的で、そのプロ過ぎる眼差しのせいで「こいつはとっくに死んでいる」という事実をつい忘れそうになる。


奴は林雨瞳のそばに来て、脚の傷と顔色を確認すると、極めて手慣れた様子で後ろの腐乱担架兵二人に顎で合図した。


「おいおい、ちょっと待て」俺はたまらず口を挟んだ。「この医者、先に自分を治した方がよくないか?」


林雨瞳は痛みで顔から血の気が引いていたのに、俺のこの一言を聞いて、かすかに白目を剥いた。


葉綺安が噗っと吹き出した。


山口は表情一つ変えない。


「奴の応急処置の腕前は、お前より上だ」


「それは信じるけどよ——」


「それに、奴は手を震わせない」


クソ。


一撃で完封された。


腐乱軍医は俺のツッコミに完全に影響されず、聞こえてさえいないみたいだった。低く林雨瞳に向かって、俺にはよく聞き取れない古い日本語を一言告げてから、担架兵二人と前後で彼女の担架を水平に持ち上げた。運ばれる直前、林雨瞳は体を支えて俺の方を一瞥した。


その目線の意味は明確だった。


無駄口叩くな、まず生き残れ。


俺は頷くしかなかった。


病人を道連れにしそうな腐乱軍医たちに彼女を託しながら、人生で初めて、とんでもなく筋違いな安心感を覚えた。


極光は明らかに発狂寸前だった。


船全体の外壁照明が乱発光を始め、一部区画は完全に暗転したかと思うと、次の瞬間爆発的に点灯した。それまで人群れだけを狙っていた機械吊りアームや消防ノズルや整備ユニットが、今や全部外海へ向けられて、浮上したばかりの飛竜を敵艦として処理しようとしている。


『未認可艦艇——検知』

『歴史的武装プラットフォーム——検知』

『除去優先度——修正』

『修正』

『修正』

『最優先に修正』


「焦ってるな」俺は言った。


「焦るさ」山口は海面を見据えたまま、むしろ冷めた口調で言った。「あいつは、自分が処理してるのは一隻の船とその上の人命だと思ってた。今処理しなきゃならないのは、海戦だ」


その言葉が落ちるや否や、山口はボイラー鍵を空中で一度くるりと回し、また寸分違わず手の中に収めた。


そして、二度目の号令を発した。


蒼竜(ソウリュウ)


極光号(オーロラ)左後方の海面に、第二の渦がぱっと開いた。


続いて三つ目。


瑞鶴(ズイカク)


四つ目。


翔鶴(ショウカク)


見えない指で海を一隻ずつ点灯させていくみたいだった。黒い水が翻り、白波が逆巻いて、旧式鋼鉄の艦影が異なる方位から次々と海を割って現れる。出鱈目に浮かんでいるわけじゃない。陣形を組んでいる。飛竜が先に近接して人員を収容し、蒼龍が右舷側の死角を埋め、翔鶴と瑞鶴はさらに外側で、闇から広がる刃の翼みたいに、極光号(オーロラ)の周辺海域を先手で封じ込める。


五百人の散客は、この光景を前にもはや驚愕を通り越して完全フリーズだった。


跪く者、泣き出す者、自分の信じる神を狂ったように唱え始める者。もういっそ何も問わずに従うと決めた顔つきの者もいる。どうせ今日見たことを外で話しても誰も信じないのだから。


山口の声は、どんどん本物の提督そのものになっていく。


榛名(ハルナ)


遥か彼方の深い海霧の中から、空母の浮上よりもずっと重い鋼鉄の共鳴が届いた。


霧島(キリシマ)


さらにもう一つ。


波そのものの質が変わった。単に船体が水面を破る音じゃない。もっと重く、もっと長く、もっと圧迫感のある何かが、海底から一枚岩ごと押し上げられてくる感触。二隻の巨大な艦影が海中で寝返りを打つ山脈みたいに現れ、主砲塔が一基また一基、霧の帳の外へ顔を出す。砲身は低く構え、艦橋は森厳とした威容を放つ。さっきの飛竜だけでも十分悪夢だったのに、榛名と霧島が揃って、現場全体がはっきり理解した——山口が呼んだのは、ちょっとした幽霊船の応援なんかじゃない。


海底から、一個艦隊を丸ごと引きずり戻してきている。


そして、ここからは早かった。


菊月(キクヅキ)夕月(ユウヅキ)卯月(ウヅキ)


三つの、ひと回り小さい渦がほぼ同時に口を開け、三隻の駆逐艦が魚雷みたいに黒海を切り裂いて飛び出した。速度がさっきまでの艦とまるで違う。こいつらは見せるためにいるんじゃない。働くためにいる。ロープ、探照灯、舷梯、収容ネット——艦体が完全に姿勢を固めるより先に、装備が展開されていく。海に落ちた者、下層の外壁に挟まった怪我人、二十階の後方で上へ上がれなかった散客の群れに、即座に第二の生還ルートができた。


最後に、山口は後ろでまだ震えている人間を一顧だにせず、ずっと遠い海だけを見ていた。


利根(トネ)筑摩(チクマ)


二隻の重巡洋艦が最後に入場し、さらに外側の位置に収まる。こいつらは人を拾いに来たわけじゃない。全体を見張りに来た。左右の外郭から海域を押さえ込み、極光号(オーロラ)と飛竜たち、それに周囲に裂け散った残骸ごと、もっと大きな一つの戦場へと包み込む。


十一隻。


一隻も欠けていない。

「とても面白い」★四つか五つを押してね!


「普通かなぁ?」★三つを押してね!


「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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