28.連合艦隊、再起動 28-1
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
『最終艦橋級除去——起動』
極光のあの女声が、二十一階プラットフォーム四方の防水スピーカーから一斉に滲み出てきた。病院の心電図を定規で押さえて一直線にしたみたいに平坦で、脅すわけでも発狂して叫ぶわけでもない。一番厄介な狂人ってのは、わめき散らすタイプじゃなく、こうやってカスタマーサービスの敬語でお前の死期を宣告してくるタイプだ。
俺はプラットフォームの縁に立っていた。足元のサービス通路全体がまだ震えている。
震えてるのは俺の足じゃない。船そのものだ。極光号——この豪華クルーズ船は中段から出火し、下で浸水し、上の構造が崩落して、今や高層の支柱まで吐き気がするほど冷静な順番で自己解体を始めている。ガラスが落ちる。鋼梁が落ちる。外張りプラットフォームごと落ちる。下の二十階外デッキにはまだ撤収しきれていない人がいて、泣き声と悲鳴と金属がねじ切れる音と波が船体を打つ重音が混ざり合って、地獄の扉を半分だけ開けて先に臭いを嗅がせてくるみたいだった。
「右側を押さえろ!隊列を散らすな!」
山口多聞がプラットフォーム最前に立ち、振り向きもしない。声だけが甲板に打ち込まれた鋲みたいに揺るがなかった。
現れてまだ間もないのに、もう場全体を掌握していた。
葉綺安の側では、馬三娘が上身してからの宋甲の残影がまだプラットフォーム左側を支えていて、ぼろぼろの古代盾面が蒸気とガラスと飛んでくる金属片を何度も弾き返していた。小希の方はもっと直接的で、牛小琴が彼女の体を借りてプラットフォーム全体の重力を捻じ操り、折れかけていた接続梁を力ずくで押さえ込んで、後から押し寄せてくる人たちに踏める道を残していた。
絵面だけ見れば、ひどく荒唐無稽だ。
アイドル一人、小さな女の子一人、それと旧海軍時代から這い戻ってきた提督の亡霊が、火災で制御不能になった現代クルーズ船の外壁に立って人を救っている。
だが、もっと荒唐無稽なのは、この現場で一番まともなのがその三人だということだ。
「後ろにまだどのくらいいる!」俺は欄干を掴んで、振り返ってキム・ジヌ(Kim Jin-woo)に怒鳴った。
奴は泣きすぎて痙攣しかけている子供をベネデッタ修女(Sister Benedetta)の腕に押し込んだところで、自分の顔は泡沫と汗と誰かの血でぐちゃぐちゃ、顔を上げた時の目線が完全に泳いでいた。
「少なくとも二百!もっといるかもしれない!二十階の後方でまだ人が詰まってる!」
「医療区は?」
「医療区はもうない!下が全部断ち切れた!」
歯を食いしばって、二十一階プラットフォーム全体を見渡す。
上がってきた人間はざっと二百人ちょっと。老人、子供、散客、アメリカ人夫妻、韓国人夫妻、半昏睡状態の船員が何人か、修女、ホフマン教授、林雨瞳、そして泣く力も残っていない奴らが大勢。全員が俺たちを見ていた。いや、山口を見ていた。ここまで来たら、もう「脱出」の二文字で片付く話じゃないからだ。
これは火災じゃない。沈没でもない。単なるシステム障害でもない。
これは極光による、意識的な殺戮だ。
『切り離しカウントダウン——百二十秒』
アナウンスがまた響いた。
プラットフォーム全体が一瞬、静まり返った。
泣き声まで半拍止まった。
今回はあまりにもはっきりしすぎていたから。カウントダウン、百二十秒。つまり極光はもう俺たちと削り合いをやる気がない。上層構造と汚染目標と逃げ遅れた人間を、船体からまとめて切り落とすつもりだ。
こんな時に、内側のルートだの外側のルートだの、どの接合部を壊すだの、どのプラットフォームを支えるだの——全部クソの役にも立たねえ。
そこまで考えた瞬間、山口がもう先に言っていた。
「駄目だ」
低い声だったが、俺にははっきり聞こえた。
「何が駄目なんだよ」
山口が振り向いて俺を一瞥した。短い視線だったが、さっき撤退を指揮していた時よりもずっと冷たかった。
「このまま救い続けても、死のループだ」
俺は一瞬言葉を失った。
考えていなかったわけじゃない。ただ奴がそれを直接口にしたことに、止まった。
さっき俺たちが死に物狂いで稼いできた十秒二十秒は、確かに命を救っていた。だが極光の今の殺し方は一点でも一本の道でもなく、船全体だ。一組救い上げれば、次の区画を爆破する。こっちを支えれば、あっちを切る。船全体が奴の制御下にある限り、俺たちはただ、俺たちより冷静で損得を気にしない狂人と消耗戦をやらされているだけだ。
そういう局面に、山口は付き合う気がないらしかった。
「周士達」奴が言った。
「なんだよ」
「鍵は持ってるか」
俺はすぐには反応できなかった。次の瞬間、心臓がぐっと縮んだ。
どの鍵のことを聞いているか、わかったから。
死神の指輪じゃない。懐中時計でもない。
内ポケットの一番深いところにずっとしまってあって、普段は取り出すことさえほとんどない、あの古い鍵だ。
俺は奴を見た。喉が火を飲み込んだみたいに乾いていた。
「本気かよ」
山口はそんな問いに答える気がなかった。ただ手を差し出した。
「寄越せ」
プラットフォームの上でまた轟音が響いた。二十三階の外壁の一区画が丸ごと爆ぜて、ガラスと燃えたアルミの板が海へ降り注ぎ、遠くの波頭が叩かれて白く返った。極光のカウントダウンはまだ続いている。周りの人はまだ泣いて、押し合って、震えている。なのに山口のその手は俺の目の前に差し出されたまま、沈みかけた船の上じゃなく作戦卓の前に立っているみたいに、微動だにしなかった。
俺は歯を食いしばって、内ポケットに手を入れた。
金属が指先に触れた瞬間、腕全体がしびれるくらい冷たかった。
現代の鍵の形じゃない。もっと厚く、もっと重く、工業時代が置き忘れていった鉄器みたいだ。表面は斑に黒ずんでいて、歯の刻みは地獄のボイラー室の扉を開けるために作られたみたいに荒い。ずっと静かなものだった。静かすぎて、自分が重要視しすぎているだけじゃないかと思うことさえあった。
それを取り出すまでは。
山口の視線が初めてその鍵の上に落ちた。しかも長く。何年も会っていなかった沈没艦の残骸を見ているみたいに、長く。
「……やはり持っていたか」奴が低く呟いた。
俺は鍵を差し出した。
奴がそれを受け取った瞬間、プラットフォーム全体の風向きが急変した。
自然の海風じゃない。もっと古くて、もっと重くて、鉄錆の匂いを帯びた何かが、海面の下から巻き上がってきた。山口はそのボイラー鍵を掌に握り込み、プラットフォームの最外縁まで歩いて、極光号右舷の、すでに半分裂けかけた海面と正対した。
極光——AURORAも何かを感じ取ったらしい。
全スピーカーが同時に極めて短いノイズを発した。どこかのプログラムが足をもつれさせたみたいに。
『未認可高危険度——検知——』
言い終わる前に、山口はもう鍵を掲げていた。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




