S2第三章:Full Support―― パイワン族の困り事
工寮の隙間からは、無影灯の蒼白な光が漏れ出し、アルコールと焦げた薬草が混ざり合った、鼻腔を焼くような不快な臭いが漂っていた。
「アジ(姉貴)の名はリャヴァウス(Ljavaus)。部落の外では、柳大夫と呼ばれている」
タレムが俺の傍らで、祈りのような、あるいは警告のような声を漏らした。
扉の隙間から覗き見えた光景は、狂気の二重起動だった。
リャヴァウスはストレッチャーの前に立ち、右手には精密なメスを、左手にはくすんだ輝きを放つ琉璃珠を握りしめ、それを雨瞳の額に押し当てていた。彼女の眼差しは、現代医学の冷徹な最適解と、古の呪術が孕む狂信的な情熱の間を、目まぐるしく往復している。
「アジ、血を持ってきたぞ!」
サカヌが、鮮血の詰まったバッグを手に飛び込んでいく。
リャヴァウスは顔も上げず、零下の温度を孕んだ声で命じた。
「吊るしなさい。バル、発電機を回せ。高周波電焼で止血する。一秒でも遅れたら、その首を撥ねるわよ」
工寮の外で、俺は檻に閉じ込められた獣のように、泥まみれの地面を徘徊していた。肺の奥にこびりついたヤニの焦燥感は依然として消えず、だが今の俺には、煙草の煙を吸い込むだけのシステム負荷すら残っていなかった。
「周士達、落ち着け」
タレムは軽トラに寄りかかり、檳榔を噛みながらも、その視線は遠くの山稜線――暗闇が蠢く境界線を死守していた。
「アジが中で権限争いをしてるんだ。外でお前がエラーを起こしたところで、何のパッチにもなりゃしない」
工寮の扉が、耳を劈く乾いた悲鳴を上げながらゆっくりと開いた。
鼻腔を蹂躙する濃密な薬草の臭いと、焼けた金属の悪臭。リャヴァウスは、深山の墓場から這い出してきた活屍のような蒼白な顔で現れた。彼女は暗紅色の血に染まったゴム手袋を無言で引き剥がし、その濁った双眸を俺に固定した。その眼差しは、幾重にも重なるエラーログを孕んでおり、俺は思わず視線を逸らした。
「命は繋ぎ止めたわ」彼女は、辛うじて通り抜けられるほどの隙間を空けて告げた。「だが、彼女の腹部に祖霊の印を打ち込むしかなかった。それは寄生虫と同じよ。死気を封じ込める代わりに、彼女の生命力をリソースとして喰らい続ける。……今は抑え込んでいるけれど、それは死神との交渉時間をわずかに稼いだに過ぎないわ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の脊椎から支えが失われた。膝が砕け、今にも崩れそうなプラスチック椅子に重い肉体を預ける。
空気が抜けたゴムボールになった気分だ。瞼を持ち上げるのすら、システムへの過負荷に感じられる。劣質な煙草のヤニと山の冷気に焼かれた肺が悲鳴を上げている。脳裏に浮かぶのは、ベルタスのあの吐き気がするような完璧なスマイルだけだ――奴はすべてを計算していた。俺が膝を屈することも、この半端な命のために、自ら地獄へ身売りすることも。
「周士達、私を見なさい」リャヴァウスの声が、氷の楔となって俺を貫く。「大武山の薬草は長くは持たない。あの印が黒く染まった時、彼女の魂はあのトンネルの灰へと完全デリートされる。……あんたには我々の部落を助けてもらうわよ。それは、あんた自身を助けることでもある」
俺は返答せず、ただ泥と乾いた血にまみれた自分の手を見つめていた。
「恩にきるよ、アジ(姉貴)」砂利を噛んだような掠れ声が漏れる。「残りの負債は、このロクでもない命を張って返してやるさ」
タレムが傍らで、重みのある手で俺の肩を叩いた。言葉はもう、必要なかった。
工寮の外、大武山の風が勢いを増していく。それは、次なる血塗られた狩猟の開幕を告げる、不吉なプレリュードだった。
タレムに連れられ、ボロ小屋の地下室へと足を踏み入れた。ドアの蝶番が耳障りな悲鳴を上げ、開いた先には三対の鋭利な視線が、レーザーサイトのように俺を射抜いていた。
「ムニ(Muni)、この小僧……魂が半分欠落してやがる。どこの不良セクターから拾ってきた?」
上座に座る長老が煙管を燻らせ、鷹のような眼差しで俺をスキャンする。その視線は、皮肉を剥ぎ取り中身を検分しようとする物理的な圧力を伴っていた。
「列車事故の生存者よ……これも縁だし、悪人には見えないわ。パオロ、老眼が悪化したんじゃない?」
老婆ムニが乾いた笑い声を上げる。軽妙な口調だが、そこには上位権限者特有の威厳が滲んでいた。
「よせ、喧嘩をしに来たわけじゃない」
タレムより二回りほど巨大な、鋼鉄の塔のような男が割って入った。彼は立ち上がり、事務的なトーンで自己紹介を始めた。「若いの。俺はアダウ(Adaw)、卑南族・知本の大頭目だ。あの鷹のような男はパオロ、旧好茶の雲豹大酋長。そしてこの老婆は歸崇部落の大長老ムニ――リャヴァウスとタレムの母親だ」
命の恩人たちの豪華すぎる肩書きに、俺は膝を突きそうになったが、老婆の驚異的な力によって強引に引き戻された。
「若いの、漢人のような時代遅れのプロトコルはいらないよ。助けたのは、私に目的があるからだ」
ムニの瞳は、老いを感じさせないほど清冽で、こちらの内核を見透かすようだった。
「……なら、俺の命はあんたに預けますよ」
精一杯の虚勢を張ってみせる。
だが、老婆はそれを「今世紀最大のバグ」でも聞いたかのように笑い飛ばした。「ハハッ! 半分の魂をアクマに抵当に入れてる男が死んだところで、山の祖霊じゃあいつらから奪い返せやしないよ」
彼女は背を向け、使い古されたホワイトボードを裏返した。その瞳から熱量が消え、頂の積雪のごとき冷徹さが宿る。
「お前たちが事故に遭ったのは、偶然じゃない」
彼女の指先が、ボードに貼られた写真をなぞる。「今、大武山の祖霊が怒りに震えているわ」
そこに写っていたのは、平穏な山岳風景ではなかった。武装兵、装甲車、通電した鉄条網。そして、深山の奥深くに寄生するように根を張る――鋼鉄の研究施設。
「リヴァイアサン・バイオテックだ」
アダウが歯噛みし、開山刀をテーブルに叩きつけた。深い亀裂が走る。「林務調査を隠れ蓑に役人を買収し、山を不当占拠しやがった。中で何をビルドしているかは不明だが、地脈の声がノイズに変わっちまった」
「近寄ることもできやしない」パオロが憤慨しながら紫煙を吐き出す。「俺の飛鷹を飛ばしただけで、あいつら実弾を撃ってきやがった。実弾だぞ!? 信じられるか?」
ムニが俺を見つめ、声音を深刻なアラートへと変えた。「奴らが去らぬ限り、祖霊に安らぎはない。それは災厄と異象を招くわ。今夜、我々は作戦会議を開く予定だった。お前が現れた以上、このプロジェクトに参加してもらう」
俺は鶏の巣のような頭を掻き、社畜の習慣で精一杯の愚問を絞り出した。
「……警察に相談、とかはしなかったんですか?」
パオロが机をひっくり返さんばかりの勢いで立ち上がったが、アダウがそれを力任せに押さえ込んだ。
「このド阿呆がッ!」パオロの怒号が俺の鼓膜を叩く。「付近の警察はとっくに買収(買収)されてる! 俺たちの同胞の警官は左遷され、残っているのは漢人の役人だけだ! 奴らは祖霊の叫びなんて気にしちゃいな――奴らが気にするのは、懐にねじ込まれる賄賂の重さだけだ!」
俺は気まずそうに身を縮めた。ここは紛れもなく法外の地だ。俺は現在の戦力差を計算し、深く溜息を吐いた。
「……分かった。とりあえず、充電器を貸してください。スマホのバッテリーが死んでて、応援の要請もできないんで」
一時間の待機を経て、スマホの画面にようやく救いの微光が灯った。
俺が真っ先にダイアルしたのは葉綺安だ。コールが半分も鳴らぬうちに接続され、鼓膜を粉砕しかねない咆哮が突き刺さる。
「周士達! どこでくたばってたのよ!? 雨瞳までいなくなるし……二人して月まで駆け落ちでもするつもり!?」
「じゃあ切るぞ」俺は耳をほじりながら、フラットなトーンで返した。
「ええっ! 待って、待ちなさいよ! 一体どこにいるのよ!?」
「――大武山だ」
俺はスピーカーモードに切り替え、列車の脱線、死神の襲撃、そして利維坦生技による「山の不法占拠」に至るまでの全ログを吐き出した。受話器の向こうで、息を呑む音が重なる。
「デタラメだわ! 公然と収賄ですって!?」正義の代行者、林曉葳の声が真っ先に爆発した。監察室を今すぐ解体せんばかりの剣幕だ。「風紀担当は何をログアウト(サボり)してるの? これはもう国家安全保障レベルの脆弱性よ!」
「よせ、電話を貸せ」ヤニの臭いが漂ってきそうな声――老高だ。「周士達、高国城だ。今夜中には合流する、座標を送れ。……それで、手土産は何がいい? 特産品か、それとも避妊具か?」
「武器を調達できるか?」俺は奴のジョークを無視した。
「周士達、俺は刑事組の小隊長であって死の商人じゃない。銃が欲しけりゃ左に曲がってニコラス・ケイジでも探すんだな」老高が自慢げに鼻で笑う。
「……」俺は虚空に向かって白眼をむいた。「いいか、よく聞け。後室へ行って、祝聖された水銀弾と浄塩散弾を回収してこい。馬三娘か牛小琴に案内させればいい。銃は『本物』を用意しろ。あと、暴徒鎮圧用のゴム弾(布袋弾)もだ。……俺たちが相手にするのは泥棒じゃない。戦争だ」
台北ナンバーを掲げ、赤と青の警告灯を激しく明滅させた捜査車両が、最後のヘアピンカーブを咆哮と共に駆け抜けた。砕石を跳ね上げるタイヤの悲鳴。完全に停止するより早く、重装備を詰め込みすぎたバックドアが内圧に耐えかねて異音を漏らす。
「周士達! さっさと出てきやがれッ!」
老高がドアを蹴り開け、火のついていない長寿煙草をくわえたまま降りてきた。彼が真っ先に視界に収めたのは、再会した俺の顔ではなく、街灯の柱の上に蹲り、豹皮のケープを纏って零下の視線を送るルカイ族の酋長・パオロだった。
「クソが……俺はいつの間に『セデック・バレ』のロケ地に迷い込んだんだ?」老高は額の汗を拭い、無意識に腰のホルダーへと手を伸ばす。
「リラックスしろ、老高。あの方はルカイの酋長だ。あそこが定位置なんだよ」俺は工寮の重い扉を押し開けて現れた。顔の返り血はすでに乾き、その有様は幽霊よりも幽靈じみていた。
林曉葳が助手席から飛び降りる。手には軍用スペックのノートPC。土製猟銃を手に並び立つパイワンの戦士たちを見て、彼女の瞳に一瞬の動揺が走ったが、すぐさまプロフェッショナルな冷徹さを取り戻した。
「周士達、トランクの中身だけど……」曉葳は声を潜め、重みで沈み込んだ車両を指差した。「監察室に見つかれば、私たちは一生塀の中よ。この賭けに、警察官のバッジを賭ける価値があるんでしょうね?」
「安心しろ、曉葳。これから相手にする連中は、法律の適用外にいる奴らだ」
その時、後部座席のドアが乱暴に蹴り開けられた。楽器ケースに擬装した西瓜刀を携え、葉綺安――馬三娘が降り立つ。そのヤンデレ特有の瞳が暗闇で異様な光を放ち、視線は工寮内の雨瞳へと一直線にロックされた。口角が、危険な弧を描く。
「周士達……」その声は、背筋が凍るほど甘い。「雨瞳が怪我をしたって? 彼女に傷をつけたクズはどこ? ――地獄の刑罰を、たっぷり味あわせてあげたいわ」
「三娘、遊んでる暇はないぞ」俺は彼女の肩を掴み、その内側で燻る凄まじい煞気を抑え込む。「今は、老高が持ってきた『手土産』を検品するのが先だ」
老高は毒突きながらトランクを全開にした。「廃棄処分」のラベルが貼られた箱の中には、祝聖された水銀弾、浄塩散弾、そして強化型防弾ベストがぎっしりと詰め込まれ、薄暗い街灯の下で鋼鉄の鈍い光を放っていた。
頭目アダウが歩み寄り、フラッシュバンを一つ手に取って手のひらで転がした。老練なハンターの、獰猛な笑みを浮かべて。
「……こいつは、あの白衣のゴミ屑どもを『盲目』にしてくれるのか?」
工寮の外で焚き火が爆ぜ、致命的な火花を散らしている。俺は火の傍らに蹲り、スマホに届いた「官の大旦那」からの簡潔なメッセージを確認して、ようやく胸を撫で下ろした。ハードウェア(裝備)は揃った。だが、ソフトウェア(戦力)のピースが一つ欠けている。
あの偽人の襲撃以来、牛小琴は「霊体乖離」のデバッグ中だ。佛光山からくすねてきた太上老君の仙丹でクールタイムを短縮させたが、肉体という依代がなければ、彼女の代名詞である「阿鼻重踏」は発動できない。
「俺がやる!」老高が侠気を見せて胸を叩いた。「この人生、修羅場は腐るほど潜ってきた。牛頭の一人や二人……」
結果、牛小琴が同期を試みた瞬間、老高は高圧電流に触れたかのように「ブッ」という無様な音を立てて泥土へと弾き飛ばされた。
「魂が不純すぎるか、あるいは純粋すぎる人間は、器にはなれないよ」
アピス――エリスリードとの腐れ縁の元凶である北歐の雪精靈が、どこからか這い出してきた。この傲慢な精靈は部落の子供たちには人気があるらしい。……「純潔な者にしか視えない」という設定のせいだろうが、俺にはガキどもがハエ叩きで奴を撃墜しようとしているようにしか見えない。
「曉葳もダメだ。彼女は標準的なマグル体質(霊的不感症)だからな」俺は溜息をつき、氷のごとく冷徹なエリスリードに視線をやった。彼女は今回の門破り(ブリーチング)の主力。極光の剣気だけが、リヴァイアサンの防磁装甲を切り裂ける。
「三娘」俺は優雅に長槍を磨く彼女に向き直った。「山の霊脈は祖霊によってプロテクトされている。地府のネットワークはここには届かない。あんた、まだ『陰兵借道』を使えるか?」
馬三娘はムニ老婆の方を向き、短く吐き出した。「長老たちが頷き、祖霊がその席を空けてくれるなら、バックドアを開けることは可能よ」
ムニ老婆が杖を突きながら歩み寄り、三娘を検分するように眺めると、俺に深みのある笑みを向けた。「周士達、お前は本当に度し難い男だね。このレベルの冥府の将軍を従えているとは」
「婆ちゃん、人聞きが悪いな。俺たちは友人ですよ。互いのために心臓を差し出せる仲だ」俺が厚かましく訂正すると、三娘の病的なまでに美しい顔に、一瞬だけ解析不能な微笑が浮かんだ。
「わかったよ。祖霊とチャットして、お前たちのために裏口を開けてやろう」老婆は首を振り、祖霊屋へと戻っていった。
「借道」の目処が立ち安堵した瞬間、焚き火の周りから驚愕の叫びが上がった。駆け寄った俺は、危うく口の煙草を噴き出しそうになった。
そこには、小柄で敏捷だったはずのシキが、暗青色の重力波動を全身から発し、土製猟銃を地裂驚神・阿鼻重踏へと幻化させて立ち尽くしていた。彼女がそれを一振りするたび、大気が圧縮されるような重い風切り音が轟く。
彼女が振り返る。その瞳には、牛小琴特有の剛毅な死の意志が宿っていた。
「牛小琴……!? なんで彼女を選んだんだ?」
「彼女はこの山に選ばれた器だ」シキ(牛頭モード)が口を開く。少女の清鈴と神将の重低音が多重音声する不気味な響き。「彼女は部落のために働き、私はクズどもの骨を砕きたい。この取引は合理的だ」
「父さん……今なら象を一頭、土の中にプレスできそうだよ」シキの声に含まれる威圧感に、タレムは呆然と立ち尽くしている。
「……祖霊の奇跡か、それとも牛の化け物に憑かれたのか?」タレムは頭を掻き、娘の膨れ上がった気圧を見つめた。「まあいい! あの白衣の連中に穴を穿てるなら、どこの神様でも大歓迎だッ!」
「よし、時間は刻一刻と過ぎている。明日の早朝には山に入るぞ。基地までは少なくとも二日の行軍だ。装備を点検しろ」アダウが手を叩き、全員を休息へと促した。
「あんたもだ、さっさと寝な」リャヴァウスが俺の鼻先を指差した。「林雨瞳は私が診ておく。心配いらないわ」
「恩に着るよ、アジ(姉貴)」俺は深々と頭を下げた。
翌朝、俺は腹の底を揺さぶる角笛の音で強制起動された。スマホを確認する――午前五時。窓の外を覗き見た瞬間、俺は思考を停止させた。
山肌を埋め尽くしていたのは、懐中電灯の光と松明の紅い点。山全体が、巨大な合同祭祀でも執り行っているかのような、異様な密度の熱気に包まれていた。
ルカイ族の「雲豹猟刃勇士団」が先陣を切って到着する。彼らは現代的な迷彩服を拒絶し、深い色の獣皮を纏っていた。顔に塗られた黒炭の偽装が、彼らを朝霧の影へと同化させる。領袖パオロ大酋長が高みに立ち、「漢人の警官」と「冥府の神将」を冷徹に検分していた。
続いてプユマ族の「鉄血花環猟団」が、アダウ頭目の指揮下で整然と展開する。戦士たちの手には伝統的な長槍だけでなく、老高が横流しした「廃棄処分」の防弾ベストと、タクティカル・クロスボウが装備されていた。
「おばあ、地脈のノイズが強まっているわ」
シキ(牛小琴モード)がムニ老婆に向かって告げる。その声に重なる牛頭神将の威厳に、歴戦の勇士たちさえもが本能的な敬畏を感じていた。
ムニ老婆は頷き、隊列の最前方へと進み出ると、手にした杖を重々しく地面に突き立てた。
「大武山の落とし子たちよ、聞きなさい」老婆の声が、放送システムを通じて山谷に増幅される。「今日の戦いは、漢人の法律のためではない。祖霊の安息のためだ。奴らの差し込んだ管を引き抜き、我らが猟場を取り戻せッ!」
「オォォォー!!」
三族の戦士による戦吼が、部落の上空で爆裂した。
俺は蛇腹剣をスライドさせた。剣身の銀光が寒気の中で異常なまでの輝きを放つ。馬三娘が車屋根に立ち、その長槍の閃光が出陣する者たちの横顔を照らし出す。
「老高、隊を率いろ」俺は捜査車両に飛び乗り、遠方で惨緑色の光を放つ要塞へと視線をロックした。
「あいよ! 全員続け、あのキチガイどもに最高の『手土産』を叩き込んでやるぞ!」
赤と青の警告灯が霧の中で明滅を始める。警官、鬼差、北欧の調査員、そして三族のハンターからなる混成連軍が、今、死地への行軍を開始した。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




