07.本領発揮 7-3
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
「アウローラ、ノヴァ! カウンターのところまでコネクテッド(Connected)!」俺は怒鳴る。
「ベガとステラは!?」
「あいつらが、後ろに下がった方が速く動けると思うか!?」
ロラは舌打ちして、人を引っ張りに行く。ノヴァが引きずられながら、一瞬だけ振り返って俺を見た。何か言いかけて、やめた。いい。こういう場面で「深刻な目」を演出するのは後にしてくれ。面倒が増える。
だが葉綺安は動かなかった。
どこから持ってきたのか、モップの鉄パイプを握りしめて、床を這う影どもを睨みつけている。
「あれ、踏み潰せる?」彼女が聞く。
聞き間違いかと思った。
「は?」
「床のやつ」彼女は俺を見ない。声が張り詰めている。「勝手に止まりそうにないから。踏むのか叩くのか、早く言って」
いい。
口は悪い。でも、本当に追い詰められた時に崩れない。
「直接触れるな」俺はバッグから香灰を混ぜた塩の小袋を取り出して投げた。「これを円状に撒け。そっち側を先に封じる」
彼女は片手で受け取った。動きに無駄がない。まるで最初からこういう仕事をしていたみたいに。
「最初からこっちの人間だって言えばよかったじゃん」
「言ったら最初に頭おかしい人扱いされるのが常だから」
「今は頭おかしい人の中で一番まともに見える」
言い終わる頃には、もう半跪きになって塩を床に弧を描くように撒いていた。水の痕を伝って這い寄っていた小さな影どもは、その線に触れた瞬間に焼かれたみたいに後退する。逃げ切れなかった何体かは、その場で小さく捩れながら、赤ん坊の泣き声に似た細い音を立てた。
ロラがそれを聞いて顔色をさらに落とす。「お願いだから赤ちゃんの声はやめて——」
「違う」俺はすぐに言う。「わざとそう聞こえるようにしてるだけだ」
こいつらの得意技だ。相手が何を怖がるかを察知して、その形に寄せる。人間をよく理解しているからじゃない。それが一番省エネだからだ。
ベガは半歩下がったまま、動かない。目が澄んでいる。さっきより澄んでいる。ドイツ語の歌に膨らまされた影どもを眺めながら、ぽつりと言った。
「歌が奴らを強くしたんじゃない」
俺は弾を込め直しながら返す。「じゃあ何だ」
「この建物に、最初から穴がある」彼女は天井を見上げた。「歌はただ、ドアを開けただけ」
俺の手が一瞬止まった。
全部正しいわけじゃないかもしれない。でも、八割は当たっている。
つまり、問題は最初からあの歌だけじゃなかった。この別荘自体がすでに汚れていた。ドイツ語の歌は外から来た手で、元々覗き見しかできなかった連中を全員引っ張り出してテーブルに並べただけだ。
ますます面倒になった。
ルナの方でまた一撃の音がして、古いコンポがついに完全に沈黙した。歌声が途切れた瞬間、ダイニング全体の明かりがちらついた。誰かに一本の糸を無理やり引きちぎられたみたいに。鏡から這い出ようとしていた影どもの動きが、半拍遅れた。俺に一番近いやつは腕を外まで伸ばしたまま、胴体が鏡の枠に挟まれて止まっている。
「今だ!」
もう遠慮しない。銃を上げ、引き金を引き、刀で補う。一枚目の鏡が銀の破片を撒き散らして砕け散り、中にいたやつは悲鳴を上げる間もなく符の炎に焼き尽くされた。二枚目は蹴り倒す。ガラスが床に叩きつけられる音が連続して響き、ダイニングは誰かにハンマーで叩き回されたみたいに、見事なくらい滅茶苦茶になった。
だが幽霊というやつは、一波叩きのめしたからといって、おとなしく順番待ちして消えてくれるような代物じゃない。
ガラスドアの外の水は、まだ増えていた。
ある程度溜まったところで、それは自分で立ち上がり始めた。
高くはない。膝くらいまでだ。育ちきれていない人型の水袋みたいなものが、よろよろとドア板に体当たりしてくる。一回、二回、三回。ぶつかるたびに、ドア枠から黒い水がじわじわ滲み出す。葉綺安の塩の線が、じりじりと押し込まれていく。
俺は武器バッグの一番底の隠しポケットを引きちぎるように開けて、黒い糸で封じた薬莢を一発取り出した。気分が一気に最悪になる。
本当はこれを使いたくなかった。
威力は十分だ。後始末が面倒なだけで。でも今ここでケチっていたら、このフロアごと汚水に沈む。
「全員、耳を塞げ!」
今度は葉綺安でさえ、素直に従った。
薬莢を薬室に押し込んで、ガラスドア下の一番水が厚く溜まっている部分に狙いを定め、深く息を吸って、引き金を引く。
ドン——!
さっきの二発より重い。
音が重いんじゃない。ダイニング全体が、床の下から何かに思い切り持ち上げられたみたいに揺れた。ドア板、食器、シャンデリア、窓枠、全部が一度に震える。弾が床に着弾した瞬間、黒い水が見えない手で一気に引き裂かれて、目が痛いほど白い符紋が炸裂し、水面を伝ってドアの端まで一息に走った。
次の瞬間、水面全体が沸騰したみたいに泡立った。
形になりきれていなかった小さな怪どもは、影を固める暇もなく、白い光の中で一塊ずつ縮んでいく。火で炙られた泥みたいに、数回身を捩ってから全部散った。残っていたガラスドアの半片もついに耐えきれず、がらがらと崩れ落ちる。外の廊下の水が一気に引いて、何かを一蹴りで蹴り戻したみたいに消えた。
最後の黒い気配が床の隙間から抜けていくと、ダイニングは呼吸音すら借り物みたいな静けさになった。
俺はその場に立ったまま、耳の中がまだ鳴っている。
手が少し痺れていて、指輪が左手ごと凍らせようとするくらい冷たい。これが、一般人の前で本気を出したくない理由だ。素性がばれるのが嫌なわけじゃない。本気を出すたびに、後で説明しなければならないことが山積みになるのが嫌なんだ。
後ろが数秒静まってから、最初に口を開いたのはロラだった。
「……マジかよ」
実に代表的な一言だ。
ノヴァはカウンターに背を預けて、顔から血の気が引いているが、目はいつもより澄んでいる。怖いからじゃない。ずっと推測していた何かが、今初めて実物として目の前に現れたからだ。ベガは相変わらず静かで、砕けた鏡から俺の左手へ、それから俺の顔へと視線を移す。まったく驚いていない顔だ。ルナは歪んだ椅子を脇に放り投げて、呼吸は乱れているが、背筋はまだ伸びている。葉綺安は、ほぼ流された塩の線の後ろに立って、額に汗が浮いて、唇が白くなるほど噛みしめられている。
彼女は俺を見た。ようやく、正当に文句を言える理由を見つけた人間の目だ。
「説明してもらう」
俺は銃をバッグに押し込んで、刀も収めてから、ゆっくりと息を吐いた。
「いいよ」と言う。「でも今じゃない」
「じゃあいつ? 夜にもう一波来てから?」
「ここがもう半日静かになってから。二波目がないか確認してから」俺は彼女たち五人を順番に見る。「それと今から、単独行動は全員禁止。トイレは二人で行け。何か取りに行くなら三人で行け。今夜の寝る場所については、アイドルとしての尊厳を守りたいなら守ればいいが、どうせ今夜もまた全員一緒に詰め込まれることになる」
ロラが苦笑する。「アイドルの尊厳って、トイレットペーパーみたいなもんだね。使い切ったら終わり」
「あんたは昨日の時点でもう切れてた」葉綺安の口はまだ動く。でも声がいつもより少し掠れている。
ルナはしばらく俺を見てから、低く一言だけ言った。
「分かった」
信頼じゃない。一時的に主導権を渡す、という意味の「分かった」だ。それで十分だ。
ダイニングは散々な有様だった。砕けたガラス、黒い残滓、倒れた椅子、俺がぶち抜いたドア枠の半分、それから言葉では説明しにくい、汚れたものを焼いた後に残る冷たい匂い。国民的アイドルの封鎖合宿の現場は、今は完全に戦場跡だ。
その日の午後から夜にかけて、建物全体は嘘のように静かになった。
動きがなくなったわけじゃない。一度本気でやられた後、しばらく穴の中に引っ込んで傷を舐めている時の静けさだ。三階から椅子を引きずる音が聞こえることはあった。閉めたはずのドアが一度震えた。でも朝みたいに、直接テーブルに乗り込んでくることはなかった。
五人とも、合宿を続けようとは誰も言わなかった。
昼飯は誰も食べられなかった。夕飯はカップ麺にお湯だけ。文句を言える立場の人間はいない。ロラが途中で二言ほど冗談を挟もうとして、自分で笑えなくなった。ノヴァは口数がかなり減って、演じる余裕がなくなったのか、本当に疲れたのか、どちらか分からない。ベガは一日中、鏡以外の反射面を確認し続けていた。何かがまだ潜んでいないかを確かめるみたいに。ルナは全員のスマホをまとめて充電して、夜番の順番を組み直した。グループが今にも崩れそうなのに、彼女だけは自分が先に崩れることを許さない。葉綺安は一日中静かだった。彼女らしくないほど静かで、ただ時々、俺の左手の指輪に視線が引っかかる時だけ、目が少しだけ止まった。
聞かないんじゃない。
俺が自分から話すのを、待っている。
いい。一晩待てる人間なら、話す価値がある。
三日目の朝、夜明けと同時に俺は目が覚めた。
首が痛いからじゃない。もう先延ばしにできない、という重さに起こされた。
窓の外は霧が深い。山の朝は湿っていて、空気全体が滴っているみたいだ。別荘の中は静かで、昨夜の残り音も来ていない。そのせいで建物全体が、喧嘩の後に「いい子にしてます」を演じている問題児みたいに見える。
ベッドの端に座って、左手をしばらく見つめた。
指輪は元の静かな冷たさに戻っている。雪ちゃんは出てこない。呼ばなかった。今日のこれは、あいつに代わりに話してもらえる類の話じゃない。
攤牌の時間だ。
全員が一階のダイニングに降りてきた頃には、俺はすでにテーブルの一角を片付けていた。昨日の痕跡は大半を処理した。処理しきれなかった部分は布で覆った。どうせ全員が見ている。水道管が破裂したとか言い張るつもりはない。
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