06. エスカレート 6-2
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
外の廊下から、ぽつぽつと足音が聞こえてくる。風呂上がりのドライヤーの音、プラスチックのサンダルがぺたぺた言う音、低い声での愚痴。女の子たちの生活音が混ざっている。ごく普通の音だ。この場所がただ古くて、鏡が多すぎて、寝不足の若者が集まって集団神経衰弱を起こしているだけ——危うくそう信じ込みそうになるくらい、普通だ。
そして三分後。俺のドアを最初に叩きに来たのは、ロラだった。
いつもの「ドンドン。おーい、開けてよ」みたいなノックじゃない。
もう半分パニック寸前なのに、みっともなく見せたくないプライドだけは捨てきれず、三回だけ叩いた。その結果、一回一回がドア板を叩き割るかと思うくらい重い。
ドアを開けると、彼女は片足しかスリッパを履いていなかった。もう片方はどこかに落としてきたらしい。髪はまだ半乾きで、顔色は冷蔵庫から出したばかりみたいに白い。
「笑わないで、先に言っとく」開口一番、それだった。
「今の俺が笑える気分に見えるか」
「ならいいけど」彼女は息を吸い込んだ。いつもの早口のリズムが完全に狂っている。「洗面所で……誰かが、あたしと一緒にカウント取ってた」
俺は二秒ほど彼女を見た。
「なんだと?」
「ドライヤーかけながら、午後に詰まった八拍子のステップ踏んで確認してたの」そこまで言って、無意識に拍点を刻んでみせる。その指先が震えていた。「すごく小さい声で数えたの。五、六、七、八って。そしたら数え終わった後、一番奥のシャワーブースの中から、同じリズムで、もう一回カウントが返ってきた」
喉が小さく鳴った。
「半拍、遅れて」
俺は何も言わず、懐中電灯を掴んで部屋を出た。
二階の共用浴室へ続く廊下は、昼間よりずっと狭く感じられた。実際に狭くなったわけじゃない。夜になって照明が落ちると、古いクリーム色のタイルと錆びた金属フレームが、空間を内側へ圧縮してくる。一番奥のシャワーブースはドアが半開きで、暖気がまだ漂っていて、床に水があった。
ドアを押し開ける。
誰もいない。
ただ、床に濡れた足跡が一列、排水口のあたりから入口に向かって続いていて、ドアの前で途切れている。
その足跡を二秒ほど見つめて、首筋がじわりと緊張した。
これは「誰かが中から出てきた」足跡じゃない。
排水口の上に立って、入口の方を向いて、一歩ずつこちらへ迫ってきて——ドアの手前で突然消えた足跡だ。
背後で、ロラが小さく汚い言葉を吐いた。
「見えてるよね?」声を限界まで落とす。「あたし、見間違えてないよね?」
「誰かがシャワー浴びた後だって自分を慰めたいなら、好きにすればいい」俺は懐中電灯を消した。「でも嘘をつくなら、もう少し筋を通せ。この足跡、さっきまで濡れてた」
彼女は黙り込んだ。
浴室を出たところで、廊下の反対側からルナ(Luna)が早足でやってきた。まだ外套を着ていて、髪もきっちり結んでいるが、顔色が普通じゃない。慌てているんじゃない。必死に抑えているのに、抑えきれていない顔だ。
「あなたたちにも聞こえた?」まずロラを見て、それから俺に視線を移す。
「そっちから話せ」
唇を少し噛んでから、明らかに自分からは口にしたくない種類の話を切り出した。
「一階のフロントの内線が鳴った」
俺は眉をひそめる。「とっくに回線切れてるはずだろ」
「だから、確認しに行った」返しが早い。
「で?」
一拍、間が空いた。
「受話器を取ったら、向こうから聞こえてきたのが、自分の声だった」
廊下が二秒、静まり返った。
ロラが直接ルナを振り向く。
ルナは無表情だったが、声はいつもより短く、硬い。
「似てるとかじゃない。完全に一致してた。喋る間の取り方まで」彼女は言う。「向こうが言ったのは、『二階の全員を今すぐ集めろ。絶対に階段に近づくな』」
左手の死神の指輪が、その瞬間、鋭く冷えた。
「従ったのか?」
「切った」彼女は俺を見る。「あたし、その時一階にいて、一言も喋ってなかったから」
これには、さすがに突っ込みようがない。
三人で廊下の真ん中に立ち尽くしていると、共用室のドアがバンと開いた。葉綺安がドア枠に立っている。髪が乱れて、チューニングキーを握りしめ、今にも誰かに殴りかかりそうな顔色だ。
まず俺を睨む。
その睨み方には見覚えがある。「あんたじゃないよな」という確認の睨み方だ。
「さっき、ドアを叩いた?」
「してない」
「本当に?」
「夜中に用もなくお前のドアを叩きに行って、何のメリットがあるんだよ」
彼女の口元がひきつった。もっと辛辣な一言を返しかけて、やめた。自分でも、事態がおかしいと分かっているからだ。
「さっき、外で声がした」声を低く抑えても、最後に震えが滲む。「あんたの声で。ドアを開けろ、聞きたいことがある、って」
俺は彼女を見る。
彼女も俺を見る。
葉綺安の口は普段から悪いが、一つだけ癖がある。怖ければ怖いほど、口調が荒くなる。今、直接罵倒してこないということは、本当に刺さっているということだ。
「俺は行ってない」
「分かってる」彼女は歯を食いしばった。震えを飲み込むみたいに。「『何の用だ』って聞いたら、外のそいつが二秒黙って、それからもう一回あたしの名前を呼んだ」
ロラが息を呑む。
ルナがすぐに聞く。「ドアを開けたの?」
葉綺安は冷たい顔で言う。「あたしがそこまで馬鹿だと思う?」
その言葉が終わらないうちに、階段の方から軽い足音が聞こえた。
上でも下でもない。
踊り場の空間で、誰かがゆっくりと重心を移している音だ。一歩、止まる。一歩、止まる。そこに立って、首を傾げながらこちらの様子を窺っているような音。
俺が振り向くと、ノヴァ(Nova)が階段口から上がってくるところだった。
未開封のミネラルウォーターを手に持っている。顔色はいつもより白く、唇の色も薄い。でも口を開いた時の声は柔らかく、むしろいつもより柔らかかった。
「みんな、ここにいたんだ」
その一言で分かった。彼女も何かに遭った。
ノヴァが無事なら、まず笑ってから「何があったの?」と聞くはずだ。今みたいに、「人がいるかどうか」を先に確認したりしない。
ルナが彼女を見る。「どこにいた?」
「下で水を取ってて」手のボトルを軽く振ってみせて、少し無理のある笑いを作る。「ついでに、気分転換したくて」
「それで?」
ノヴァは少し黙った。
照明の下に立って、影が細長く伸びている。その小柄で、無害で、声が柔らかい見た目は、普段なら「ただ怖がっているだけ」に見えるはずだ。だが俺には分かる。彼女は今、本当に「堪えている」。
「ダイニングのガラスドアの前を通った時」彼女は言う。「中から、誰かが歌ってるのが聞こえた」
胸の中で、何かがどしんと沈んだ。
彼女は俺を見た。その目に、初めて余裕の膜がなかった。
「中国語じゃない」低く言う。「英語でもない」
誰も口を開かない。
ノヴァの水のボトルを握る指が、わずかに白くなる。それでも、最後まで言い切った。
「それに、その声……あたしの耳の後ろで、歌ってた」
葉綺安の顔色が一気に冷えた。
その理由は一つじゃないと俺には分かる。
一つは、怖いから。
もう一つは——ノヴァがその一言を言い終えた後、無意識に俺の方へ半歩寄ったからだ。
その半歩は小さい。廊下が狭い、照明が暗い、人の多い場所に立ちたかっただけ——そう言い訳できるくらいの半歩だ。でも彼女はノヴァだ。自分の呼吸をどこに落とすかまで、無意識にやるような人間じゃない。
俺が口を開く前に、階段の上から「コン」という音がした。
全員が顔を上げる。
二階から三階へ続く階段口は、昼間確認した通り、廃材で完全に塞がれている。壊れた椅子、板材、倒れた棚がバリケードみたいに積み上がっていて、普通の人間が通れる隙間はない。だが今、その積み上げられた向こうから、はっきりと引きずる音がした。
木の椅子が、床の上をゆっくり一段分引きずられる音。
一度。
止まる。
もう一度。
ベガ(Vega)は、階段の踊り場の陰に立っていた。
いつそこへ上がったのか、どれくらいそこにいたのか、誰も気づいていなかった。頭上から斜めに光が落ちて、顔色を青白く染めている。俺たちを見ていない。塞がれた三階の入口だけを見ている。何かを数えているみたいに。
「そこで何してるの!」ロラが先に声を上げた。
ベガはゆっくりと視線を下ろした。声に、ほとんど抑揚がない。
「聞いてた」
「何を?」
「上で、誰かが歩いてる」彼女は言った。
「三階は封鎖されてる」ルナ(Luna)がすぐに言った。
「だから聞いてた」ベガ(Vega)はルナを見る。表情はまだ淡々としているが、その淡さの中に、初めて小さな空洞が透けて見えた。「階段口まで来て、三回止まった」
俺は眉をひそめる。「三回って、どうやって分かった?」
彼女は視線を階段へ落とした。
「止まるたびに、ちょうど——あたしの真上だったから」
左手の死神の指輪が、一気に冷えた。
次の瞬間、フロア全体の照明が落ちた。
完全な暗転じゃない。電圧が何かに引っ張られたみたいに下がって、全部の蛍光灯が低く唸り、白い光が一回り縮んだ。廊下全体が汚水に浸かったみたいになる。壁の色、顔の色、影の色、全部が灰色に変わった。
下の階から、「チン」という音がした。
エレベーターだ。
昼間、誰も乗ろうとしなかったあの旧式エレベーター。ボタンは全部壊れていて、稼働するはずがない。なのに今、一階のそれが、まるでホテルみたいに澄んだ音を一回鳴らした。
そして——俺たちの頭上、三階の封鎖区画の向こう側の床全体から、同時に足音が降ってきた。
一人じゃない。
大勢だ。
速い足音、遅い足音、革靴みたいな音、素足で板を踏む音。逃げているわけでも、追いかけているわけでもない。ただ俺たちの真上を、行ったり来たりしている。整然としているようで、でたらめなようで——まるで上の階に誰かが並んでいるみたいで、まるで誰かが席を探しているみたいだった。
ロラが叫んで、後退した。
ノヴァ(Nova)は今度は何も装わなかった。手のボトルがパシャッと床に落ちて、そのまま俺の腕の横に身体を寄せた。葉綺安がほぼ同時に一歩前へ出た——ノヴァを引き離そうとした、その瞬間、一階のダイニングの方から、短い音楽が流れてきた。
数音だけ。
完全なメロディじゃない。遠い場所で誰かが古いスピーカーの再生ボタンを間違えて押したみたいに、そこにあるべきじゃない何かが、鉄管から、電線から、この建物の古い骨格の中から、じわじわと滲み上がってきた。
ルナの顔色が、ついに変わった。
隊長の顔じゃない。カメラの前で作る管理された落ち着きでもない。二十代の普通の女の子が、どれだけ場を制御しようとしても、頭上のあの見えない何かだけはどうにもならないと悟った瞬間の、一秒だけ空白になった顔だ。
彼女はすぐにその一秒を引っ込めて、低く、安定した声で言った。
「離れるな」
正しい判断だった。
遅かったけど。
次の瞬間、共用寝室の方から「ドン」という鈍い衝撃音がした。二段ベッドの上段から何か重いものが落ちたような音だ。葉綺安が全身を震わせて、すぐに走り出す。ルナとロラも続く。俺は悪態をついて、懐中電灯を掴んで追った。
共用寝室のドアは開いていた。
中に誰もいない。
でも、全員のスーツケースが、半歩ずつ動かされていた。
倒れているわけでも、蹴散らされているわけでもない。一つ一つが、きっちり揃って、部屋の中央に向かって半歩だけ引き寄せられている。まるで誰かがここに立って、礼儀を知らない生者のために、改めて配置を整え直したみたいに。
ロラは頭皮が総毛立ったのが声にまで出ていた。
「もう無理、誰がここで寝られるの、これ」
ベガがドア枠に立って、部屋の中のスーツケースを見ながら、ぽつりと言った。
「広げすぎるのが、嫌いなんだと思う」
誰もその一言を拾わなかった。
さっきの足音全部合わせたより、その一言の方が、ずっと嫌だったからだ。
俺は廊下を振り返った。照明はまだ落ちたまま、一階から聞こえていた旋律は消えている。でも、指輪の冷たさは引かない。むしろ深くなっている。これは下級の騒霊が数匹暴れているだけの冷たさじゃない。もっと遠い場所から、何枚もの壁を透かして、こちらを見ながら、この建物の中で動かせるものを全部軽く突いて回って——「お前たちはちゃんと反応するか」を確かめているような冷たさだ。
「全員、来い」俺は直接言った。
ルナが俺を見る。「どこへ?」
「俺の部屋」
葉綺安が眉をひそめる。「なんで——」
「ここに残ってそいつと交渉したいなら止めない」俺は遮った。「でも今夜は一回しか言わない。一人で切り離される状況を作るな」
彼女は顔を険しくして、明らかに言い返したかった。
でも今回は、言い返さなかった。
ノヴァが床からボトルを拾い上げて、静かに言う。「賛成」
ロラはもっと早かった。即座に手を挙げる。「賛成。枕も持っていっていい? 今日はアイドルのプライドより命の方が大事」
「最初からたいして残ってなかったくせに」葉綺安が反射的に言いかけて、自分でも途中でしぼんだ。
ルナは深く息を吸って、うなずいた。
「分かった。今夜は全員、同じ部屋にいる」
元々一人用の軍官房に六人を詰め込むのは、国民的アイドルグループを学生寮に放り込むのと大差ない。五分後、俺は自分の部屋の真ん中に立って、彼女たちが布団、枕、コート、スマホの充電ケーブル、水のボトル、挙げ句の果てには菓子まで運び込んでくるのを眺めながら、ひどく非現実的な気分になっていた。
ルナはドア側に座って、まだ秩序を保とうとしている。ロラはベッドの足元に丸まって、口だけはまだ動かそうとしているが、目は絶えずドアの隙間を確認している。ノヴァは壁に背中を預けて、静かすぎる。俺が通りかかる時だけ、ごく自然に視線をこちらへ上げる。葉綺安は一番硬い座り方をしていて、まるで全世界に借金でもあるみたいな顔だが、よりによって俺の椅子に一番近い位置に陣取っている。ベガは一番隅で膝を抱えて、頭を少し下げたまま——上の階を聞いているのか、壁の中を聞いているのか、分からない。
ドアを閉めると、廊下も、浴室も、階段口も、ダイニングも、封鎖された三階も、全部が一枚のドアの向こうに押し込まれた。
でも、閉めたからって何もなくなるわけじゃない。
ただ、順番待ちのリストから、一時的に外れただけだ。
武器バッグを手元に引き寄せて、ドアに背中を預けて座る。左手の指輪は、まだじわじわと冷えている。部屋の中は誰も喋らない。六人分の呼吸が狭い空間に詰まって、全員が眠れないのに誰も先に眠ろうとしない、あの重さがある。
だいぶ経ってから、ロラがごく小さな声で言った。
「周さん」
「なんだ」
「もし夜中に誰かがカウント取り始めたら、先に起こして。自分一人でそいつに合わせちゃうの、嫌だから」
俺は口の端だけ動かした。笑いには、ならなかった。
「任せとけ」ドアを見たまま、平坦に言う。「今夜は、一人で鬼と鉢合わせするやつは出さない」
そう言った。
でも、心の中では分かっていた。
この夜は、まだ始まったばかりだ。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




