01. 同じ屋根の下で 1-4
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件・名称等は一切関係ありません。
夢の中で誰かに思いきり蹴り飛ばされて、俺はかなり不格好な体勢で長椅子から転げ落ちた。
「おい、いつまで寝てんだよ」
腰をさすりながら起き上がると、葉綺安がソファの前に仁王立ちになっていた。腕組み、目線は氷点下。このまま俺を床に埋めることを本気で検討している顔だ。
「なんだよ」首をぐりぐり回す。「葉綺安、こんな朝っぱらから、借金取りかよ」
「昨日、集訓場所まで送ってくれるって言ったでしょ」
そこで初めて思い出した。確かに言った。
「わかったわかった」頭をガシガシ掻きながら立ち上がる。「先に顔洗ってくる」
二歩も歩かないうちに、背後で悲鳴が上がった。
「周士達!!」
振り返ると、葉綺安の顔が今にも発火しそうなくらい真っ赤になっていた。
「どうした。幽霊でも見たか」
「非常識にも程があるでしょ!」俺を指差しながら、声がひっくり返りそうになっている。「家に未婚女性がいるのに、全裸でうろつくとかありえないんですけど!」
俺は自分の身体を一瞥して、思わず笑った。
「未婚女性って」わざとゆっくり言う。「お前のことか?」
葉綺安が、縄張り争いをする野良猫みたいな低い唸り声を出した。次の瞬間には飛びかかってくる勢いだ。
俺はちゃっかり両手を上げた。
「わかった、わかった。今すぐズボン履く。アイドル様、どうかお怒りをお鎮めください」
彼女は俺を睨みつけていた。靴で殴り殺すかどうか、本気で検討している目だ。
十数分後、ようやく人間らしい格好に整えて、鍵を掴んで下の駐車場へ。葉綺安はすでに助手席に乗り込んでいた。サングラスをかけて、顔は「世界中の仕事関係者全員が自分にギャラを踏み倒している」くらいの不機嫌さだ。
エンジンをかけると、地下駐車場に低いエンジン音が響き渡る。
「シートベルト」と俺は言った。
「うるさい」
「今日は俺が運転手なんだから、うるさくて当然だろ」
彼女は鼻を鳴らしたが、ベルトはちゃんと締めた。
十数分後、黒いダッジ・チャレンジャーが地下駐車場から飛び出し、そのまま一直線に南下の高速道路へと切り込んでいった。
助手席の葉綺安は、一言も口を開く気がなさそうだ。
俺はハンドルを握りながら、前方に次々と流れ去っていく都市の景色を眺めていた。昨夜の夢がまだ首の後ろにへばりついていて、振り払おうとしても振り払えない。
台中。山の上。クローズド合宿の別荘。
聞いただけで、ろくなことにならない予感しかしない。
「とても面白い」★四つか五つを押してね!
「普通かなぁ?」★三つを押してね!
「あまりかな?」★一つか二つを押してね!




