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嵐の前の静けさ

 表情が固まってきているのがあからさまになっているのが伝わったのか、男爵は「では、失礼」と一言残し去っていった。気持ち悪くてしかたがない。


そもそも人込みの多い所は苦手なうえに、きつい香水の臭いやらが混ざり慣れていないものだから気持ち悪くなってしまうのは仕方のないことだと思う。更に見たくもない顔をみたらなおさら…。久々にドレスアップ、しかも王女様の見立てとあれば立ち去るわけにもいかないのでしょうが、もう帰ってもよろしいかな。一言挨拶だけして帰らせてもらおう。


とうんうんうなって壁から離れようとした時だ。

 「いいや、隣国がきな臭いことになってきましたなあ。」

「国境付近でのいざこざが絶えない。」

「領土侵犯の度に警告しているのだがな。そろそろ国から警告するべきだろうに。」

中年の紳士の方々が顔をつきあわせてなんだか穏やかではない会話をしているのが聞こえた。隣国というのはどこの国なのか、どういう状態なのか知りたくなったため壁際に戻って聞き耳をたてる。

「目的はわがオルフェ国の領土か。」

「いや、違うだろ。ヒスト国は今財政難に加え輸出できる産物が少ない。おまけにこの前の干ばつで食糧難ときた。庶民の不満が溜まっているが国は何もしてくれちゃいない。そこで我が国にいちゃもんつけて鬱憤晴らさせようとしているか、なにか資源か食糧を強奪しようとしているのでは、というのが見立てだ。」


 この国、オルフェ国は海にほとんど囲まれた国である。そのため海産資源のみならず海底に眠っている資源はとれるし、多湿であるため夏には作物が良く育つ。秋までに収穫した野菜は一部は冬になると雪の下に入れて保存しておく。そうすると野菜が凍らないように糖分をつくるため、甘い野菜ができブランド野菜として国内外に出荷している。


農業だけではなく、魔法が発達しているため他の国に比べれば豊かなのだ。

一方、山脈を挟んだ反対側には2つの国があり、そのうちの一つがヒスト国だ。山脈があるため湿った空気は雲となってオルフェ国に潤いをもたらすがヒスト国には渇いた空気が流れるというフェーン現象が起きる。そのため元来乾燥地帯であるが、去年ほどだったか干ばつが起きたというのは耳にしていた。そのため食糧が不足している。


庶民は生活に苦しくなり不満をためているからヒスト国は我が国を使ってガス抜きしたいというところだろう。まったくそんなことをしても根本的に改善できるわけがないのに。

しかしそのせいで他国に我が国の評判が落ちるというのはいささかまずいな。別にとりわけ自分の国が好きというわけではないけれど。


 経済に影響がでるとこれから新規のビジネスを始めようとしているのに邪魔されるではないか。どうしよう。

と思考を巡らせていたらやっと来たのだ。


「大変お待たせ。」

カールネスト公爵がやっと、やっと来たのだ。

「いえ。」

と言いつつ内心ではタイミング悪し遅すぎるんだよとなどと思っていることがばれたらまあ不敬罪に問われてしまいますかね。

「一曲踊るかい?」

と手を差し伸べられたが生憎自分は踊れない。

「結構です。」

と断った瞬間、いろいろなところから視線を感じた。


「何断っておるのかしら、どこの家だか知りませんんけど。」

「それよりも公爵家につりあうとは到底思いませんわ。」


主に女性からの誹謗が酷い。


「それに今回は踊るために来たのではないのですが。」

公爵殿を睨んでしまう。どうして断っただけでこんなにも言われなくてはならないのかいささか不満だ。こいつの性格はともかく見目麗しく地位もあり、ここ最近は積極的に自国の経済発展に尽力しているため大変人気がある。また自分以外の女性には紳士的な対応するのだから懸想している淑女は多いはず。まあ宰相というだけあり忙しいからこのような夜会にくると女性に囲まれてしまうのは致し方ない。先程もそうだったしね。だから踊ったら踊ったで女性陣から非難轟轟なのは容易く想像できる。

「まあまあそうだけどさ、せっかくおめかししているのだし一曲くらい踊ったら?」


なんとまあ、おっさんじみた発言するのでしょう。しかも踊れないって言ったよね。ここで踊るというのは恥さらしのなにものでもない。


「ここにいる淑女の方々に睨まれるのもいやですし、踊れませんので。」

まったくふざけるなと言いたい。

「大丈夫。私に身を任せてくれれば踊れるよ。一曲だけだからそんなに睨まれないよ。」

と能天気なことを仰る公爵殿。とても宰相しているとは思えない。



大変お待たせしました。忙しくて執筆できず気がつけばもう1年経っていました。

修正しながらまた投稿していけたらrと思います。

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