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「世の中いわゆる学園異能バトルものだとかが人気だけど社会人異能バトルものとかどうなんだろうかって思ってみたり」

「いかがですか。当社の新商品は、現在貴社がお使いの他社の製品よりも、多機能かつ高性能ですし、一度お試しいただければその違いははっきりとお分かりになると思います」

 紗論(しゃろん)は訪れた先の担当者の前に、資料を提示しながら言った。その際に胸に挿した真紅のバラの花に触れて能力を発動することも忘れない。紗論には香を使って、他者の意識をある程度誘導することが出来るという、異能の力を持っている。実際には他社よりも割高な新商品を、言葉巧みに契約させるのは、紗論にとって息をするよりも簡単なこと。そのはずだった。

「しかし、お宅の新商品は、今うちが使っているものより運用面でコストがかかりそうじゃないか。それに消耗品に互換性がない」

 紗論は目の前の男の言葉に、一瞬耳を疑った。

(まさかこの男も、異能持ちなの……?)

 気がつけば、先ほどから男の人差し指が軽く音を立てる程度に、一定の間隔でテーブルを叩いていたように思う。

(……音、もしくは振動でわたしの異能を無効化している?)

 紗論は軽くかぶりを振って、それから不自然にならない程度にそっと男の手の上に自らの手を重ねて言った。男の人差し指の、動きが止まる。

「……正直に申しまして、商品本体は赤字なんです。これは消耗品などの保守・運用によって利益を得る商品ですので」

「で、では、一応検討させていただくということで……」

 やや頬を赤く染めた男の顔を見て、紗論はうまくいったことを確信して満足げに微笑んだ。

 自社でひとり待機中にやって来た、コピー機の会社の人がモデルだったりします。男の鼻が詰まっていただけなんじゃとか、異能関係なくて結局色仕掛けなんじゃとか笑いどころのよくわからないお話。

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