↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイカラにギャルが転生!〜令和ギャルの大正暮らし〜  作者: がお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/52

【49話】ミア、叩き売りをする!?

やっとくそ暑い夏から脱出しましたね。

学校の校門を出たミアと琴音は、たわいもない話をしながら歩いていた。

「ねえ、琴音」

「はい?」

ミアが突然、足を止める。

「今日、浅草行かない?」

「浅草……?」

琴音が少し驚いた顔をする。

「うん。なんか遊びたい気分!」

「でも、寄り道をするのは……」

「いいじゃん」

ミアは楽しそうに笑った。

「せっかく学校早く終わったんだし、寄り道しようよ!」

「……しょうがないな」

琴音は小さく笑う。

「じゃあ、少しだけなら……」

「やった!」

ミアは嬉しそうに両手を上げた。

こうして二人は、浅草へ向かうことになった。

――そして。

浅草の街に着くと、遠くの方から威勢のいい声が聞こえてくる。

「さあさあ、寄ってらっしゃい! 見ていっておくれ!」

「……ん?」

ミアが足を止める。

「琴音、あれ何?」

人だかりの向こうから、威勢のいい声が響いていた。

「今日は特別! この値段じゃ二度と買えないよ!」

ミアの目が輝く。

「なんか面白そう!」

ミアは声のする方へ、人だかりをかき分けて進んでいく。

「すみませーん、ちょっと通してくださーい!」

琴音も慌てて後を追った。

ようやく人だかりの前まで出ると、台の上に並べられていたものを見て、ミアが目を丸くする。

「……え?」

そこに並んでいたのは――

黄色く色づいたバナナだった。

「バナナじゃん!」

ミアの声に、琴音も商品を覗き込む。

「まあ……バナナですわね」

「うわー、懐かしい!」

「懐かしい?」

琴音が不思議そうにミアを見る。

ミアは慌てて口元を押さえた。

「あ、いや……なんでもない!」

すると、台の上の男が声を張り上げる。

「さあさあ、お嬢さん方もどうだい! 甘くて美味いバナナだよ!」

「いくら?」

ミアがすぐに聞く。

「今日は特別! 一房――」

男が値段を告げると、ミアは少し考え込んだ。

そして、バナナの山を見ながら呟く。

「……これ、一房で売ってるんだ」

ミアはバナナの山を見つめる。

「うーん……」

そして、店のおじさんに声をかけた。

「おじさん、私、一本だけほしいんだけど」

「一本?」

おじさんは目を丸くした。

ミアが財布を取り出そうとすると、おじさんが首を横に振る。

「それじゃあ、売り上げになんないよ」

「え?」

「バナナは房で仕入れてるんだ。一本だけ売ったって、残りが売れなきゃ困るだろ?」

「そっか……」

ミアはバナナの房を見つめ少し考え込んだ。

そして

「……じゃあさ」

ミアが顔を上げる。

「一房、私が買うよ」

「え?」

おじさんが目を丸くする。

「その代わり、一本だけ私がもらって……」

ミアは残りのバナナを指差した。

「残りを一本ずつここで売ってもいい?」

「一本ずつ?」

「うん!」

ミアは楽しそうに頷く。

「一本なら、私みたいに『一本だけ欲しい』って人も買いやすいでしょ?」

おじさんは腕を組み、バナナの房を眺める。

「なるほどなぁ……」

琴音も感心したようにミアを見る。

「確かに、一房では多いと思う人もいるだろうね」

「でしょ?」

おじさんはしばらく考えてから――

「……面白いこと言う嬢ちゃんだな」

ミアはバナナの房を見ながら、少し考え込んだ。

「でも……」

「どうしたんです?」

琴音が尋ねる。

「一本だけ売るなら、ちょっと工夫しないとダメだな」

「工夫?」

「うん」

ミアは辺りを見回した。

すると――

「あっ!」

少し先に、一軒の喫茶店が見えた。

「琴音、あそこ!」

「喫茶店だね」

「ちょっと行ってくる!」

「えっ、ミアちゃん?」

ミアは琴音の返事を待たず、バナナを持って喫茶店へ向かって走り出した。


ミアは喫茶店の前まで来ると、勢いよく扉を開けた。

カラン、カラン――。

店内に軽やかなベルの音が響いた。

そしてミアは、店員に向かって笑顔で言った。

「すみませーん! ちょっとお願いがあるんだけど!」



しばらくすると、ミアが戻ってきた。

「お待たせー!」

琴音が振り返る。

「ミアちゃん、何をしていたの?」

ミアはニコニコしながら、手に持った袋を掲げた。

「これこれ!」

袋の中には、黒い物体が入っている。

「……なんなの、それ?」

琴音が怪訝そうに覗き込む。

ミアは得意げに笑った。

「これを売るの!」

「いや……これ食べ物なの?」

「まあまあ、見てて!」

ミアはバナナを売っているおじさんのところへ戻ると、袋を抱えたまま声をかけた。

「おじさん、ちょっと場所かしてね!」

「ん? ああ、いいけど……」

ミアは返事を聞くと、すぐに店先の空いた場所へ向かった。

そして袋から黒い物体を取り出し、ひとつずつ並べていく。

「よいしょ、よいしょ……」

琴音はその様子を見ながら首を傾げる。

「ミアさん……これは一体?」

「まあ、見てて!」

ミアは黒い物体をきれいに並べ終えると、満足そうに頷いた。

「これで準備オッケー!」

おじさんは並べられた黒い物体を見て、ぽかんとしていた。

「……嬢ちゃん、それ、何だい?」

ミアはニッと笑うと、黒い物体を指差した。

「これはね――チョコバナナ!」

「チョコバナナ?」

おじさんが目を丸くする。

ミアはチョコバナナを一本手に取ると、声を張り上げた。

「さあさあ、みなさん寄ってらっしゃい!」

突然始まったミアの声に、周りの人たちが振り向く。

「甘くておいしいバナナはいかがですかー!」

そして、チョコをバナナに絡めながら――

「今日はなんと! ただのバナナじゃありません!」

人だかりが少しずつ大きくなる。

「チョコバナナですよー!」

「チョコバナナ?」

聞き慣れない言葉に、客たちがざわつく。

ミアはバナナを高く掲げた。

「一本から買えます!」

「一本?」

「そう! 一房じゃありません!」

ミアはニッと笑った。

「おやつに一本、どうですかー!」

おじさんは隣で呆然としながら、その様子を見ていた。

「……なんだ、この嬢ちゃんは……」

客たちは物珍しそうに、ミアの手元を覗き込んでいた。

「チョコバナナ……?」

「一体どんな味なんだ?」

「一本だけなら、試してみるか」

恐る恐る、一人の客が手を挙げた。

「じゃあ、それを一本もらおうか」

「はい、毎度あり!」

ミアは嬉しそうにチョコバナナを渡した。

客はしばらく眺めていたが――

「……いただきます」

パクッ。

一口食べた瞬間、客の目が大きくなる。

「……うまい!」

「本当ですか?」

琴音も思わず身を乗り出す。

「ああ! バナナの甘さに、チョコの甘さが合う!」

その声を聞いた周りの客たちが、一斉にミアを見る。

「俺にも一本!」

「私も食べてみたい!」

「じゃあ、こっちにも一本!」

「はいはい! 順番にどうぞー!」

ミアは大忙しでチョコバナナを手渡していく。

その横で、おじさんは売れていくバナナを見ながら、呆然としていた。

「……一本ずつでも、売れるじゃねえか」

あっという間に、一房分のバナナが売れてしまった。

「はい、最後の一本!」

ミアがチョコバナナを客に渡す。

「もうないの?」

「私も欲しい!」

客は途切れない。

ミアが困ったようにバナナの房を見ると、おじさんが笑った。

「嬢ちゃん、残りのバナナも使っていいぞ!」

「えっ、いいの?」

「これだけ売れるなら、全部売っちまおう!」

「やった!」

ミアは琴音を見る。

「琴音、喫茶店に戻ろう!」

「えっ?」

「作る場所が必要でしょ!」

ミアはおじさんに手を振った。

「ちょっと作ってくるから、待っててね!」

そう言うと、ミアと琴音は再び喫茶店へ駆けていった。

そして――

しばらくすると、また袋いっぱいのチョコバナナを抱えて戻ってくるのだった。


しばらくすると、次第に客足も落ち着いてきた。

「はい、最後の一本ですよー!」

ミアがチョコバナナを渡すと、ついに並んでいた客がいなくなった。

「ふぅ……」

ミアが額の汗をぬぐう。

おじさんはバナナの籠を見ながら、嬉しそうに笑った。

「いやぁ、嬢ちゃんのおかげで、今日はいつもよりずっと沢山売れたよ」

「ほんと?」

「ああ。一本ずつ売るなんて考えたこともなかったが、こういう売り方もあるんだな」

ミアはニッと笑う。

「でしょ? 一房は多いけど、一本なら買いやすいもん!」

琴音も頷いた。

「確かに、ちょっと食べてみたいという方には丁度いいですね」

おじさんはミアを見て笑った。

「嬢ちゃん、商売の才能があるんじゃないか?」

「えへへ……それほどでもないよ!」

ミアは照れながら笑った。

おじさんは、残っていたバナナの中から綺麗な一房を取り上げた。

「嬢ちゃん、これはお礼だ」

「え?」

おじさんは、その一房をミアに手渡した。

「今日、随分と助けてもらったからな。持っていきな」

「いいの?」

ミアは目を輝かせる。

「うん、ありがとう!」

琴音も頭を下げる。

「ありがとうございます」

ミアはもらったバナナを嬉しそうに眺めた。

「今日は浅草に来てよかったー!」

おじさんは笑いながら手を振った。

「また遊びに来いよ!」

「うん!」

こうして二人は、バナナ一房を抱えて家路についた。

今回は浅草で「叩き売り」を登場させてみました。

叩き売りとは、威勢のいい口上で客を集め、商品の値段を次々と下げたり、勢いのある話術で商品を売ったりする販売方法のことです。

こうした販売では、売り手が商品の魅力を面白おかしく語り、客とのやり取りを盛り上げながら売ることもありました。

こうした「売り口上」を使った商売は「啖呵売(たんかばい)」とも呼ばれます。

啖呵売の「啖呵(たんか)」は、歯切れよく威勢のいい言葉を次々と並べること。

つまり、商品の説明だけではなく、巧みな話術そのものを武器にして商品を売るわけですね。

「さあさあ、寄ってらっしゃい!」

という、あの独特の呼び込みもその雰囲気の一つです。

今回はそんな昔の商売を見たミアが、現代の感覚で「一本だけ売ればいいじゃん」と考えました。

そして、なぜかチョコバナナまで作ってしまいました(笑)

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。