【44話】え!ラーメン!?
意外とラーメンの歴史って分からないもんですね。
学芸会が終わった放課後。
女学生たちは、教室で片づけを済ませていた。
「皆さん、お疲れさまでした!」
琴音が、集まった女学生たちに声をかける。
「今日はとても楽しかったわね」
「うん! お客さんもいっぱい笑ってくれたし!」
ミアが嬉しそうに答えた。
琴音は、そんなミアを見て微笑むと、皆に向かって言った。
「それで、これからうちの喫茶店で、お疲れさん会をしようと思うの」
「お疲れさん会?」
ミアが首をかしげる。
「そう。今日の学芸会の打ち上げね」
「いいじゃん!」
ミアがぱっと顔を輝かせた。
「参加できる人がいたら、ぜひ来てね!」
琴音がそう言うと、女学生たちから次々と声が上がった。
「私、参加したいです!」
「私も!」
「今日は楽しかったものね」
伊集院も、嬉しそうに頷いた。
「わたくしも参加させていただきますわ」
「やった! みんなで打ち上げだね!」
ミアが両手を上げて喜ぶ。
「じゃあ、準備ができた人から喫茶店に来てね」
琴音が笑顔で言った。
女学生たちは、楽しそうに話しながら帰り支度を始めた。
片付けも終わり、ミアは琴音の喫茶店へ向かった。
喫茶店には、すでに琴音と数人の女学生たちがいた。
「ミアちゃん、お疲れさま!」
琴音が笑顔で迎える。
「琴音、お疲れー!」
ミアは店内を見渡した。
「お、もう集まってるじゃん!」
「ええ。」
琴音が答える。
「伊集院は?」
「もうすぐ来ると思うわ」
「そっか。じゃあ、あたしも手伝うよ!」
ミアは空いているテーブルを見つけると、椅子を並べ始めた。
「今日は何が出るの?」
「ふふ、楽しみにしていてね」
琴音は厨房へ向かうと、準備を始めた。
店内には、学芸会を終えた女学生たちの楽しそうな話し声が響いていた。
「お待たせしました!」
琴音が厨房から運んできたのは、大皿に盛られたサンドイッチと、オレンジ色の寒天だった。
「おおっ! サンドイッチじゃん!」
ミアが目を輝かせる。
「ええ。ミアちゃんが教えてくれたものを、私なりに試してみたの」
琴音は、少し照れたように笑った。
「オレンジの寒天も作ってみたわ。果汁を使っているのよ」
「へえ、寒天でオレンジゼリーみたいなのを作ったんだ!」
ミアは皿に顔を近づける。
「どんな味か、楽しみだね!」
「さあ、皆さん。召し上がってくださいな」
伊集院が声をかけると、女学生たちは一斉にサンドイッチへ手を伸ばした。
「おいしい!」
「パンが柔らかくて食べやすいわ」
「オレンジの寒天も、さっぱりしていていいわね」
琴音は皆の反応を見ながら、嬉しそうに微笑んだ。
「よかった。ミアちゃんに教えてもらった甲斐があったわ」
「琴音、やるじゃん!」
ミアはサンドイッチを頬張りながら、親指を立てた。
「これ、喫茶店の新メニューにできるよ!」
「ふふ、そうね。今度、お店でも出してみようかしら」
「あの場面、もう少し間をつければよかったわね」
「そうね。私、つい早口になってしまったもの」
「でも、お客さんは笑ってくれたわよ」
女学生たちは、サンドイッチを食べながら学芸会の話に花を咲かせていた。
「ミアさんのところ、すごく面白かったわ!」
「ありがとう! でも、あたしも途中でちょっと焦ったんだよね」
ミアは、舞台の上での出来事を思い出しながら笑った。
「もう少し練習しておけば、もっと上手くできたかも」
「そういうところも、舞台の面白さですわね」
伊集院が、オレンジの寒天を口に運びながら言った。
「皆さん、次はもっと上手くできるように頑張りましょう」
琴音は、そんな女学生たちを見て微笑んだ。
「今日は本当にお疲れさまでした。こうして皆さんと一緒に過ごせて、私も嬉しいわ」
「琴音ちゃん、ありがとう!」
「また来年も、楽しい学芸会にしましょうね!」
女学生たちは笑いながら、今日の舞台を振り返っていた。
やがて話も一段落し、琴音が時計に目を向ける。
「まあ、もうこんな時間なのね」
「ほんとだ。そろそろ帰らなきゃ」
女学生たちは席を立ち、帰り支度を始めた。
「今日は楽しかったわ!」
「琴音さん、ごちそうさまでした!」
「こちらこそ、来てくれてありがとう。また遊びに来てね」
琴音が笑顔で見送る。
「じゃあ、また明日ね!」
ミアも手を振った。
夜の町を歩きながら、ミアは今日の学芸会を思い返していた。
「もうちょっと間をつければ、もっと面白かったかもなぁ」
そんなことを考えながら歩いていると、ふと、どこからか懐かしい匂いが漂ってきた。
「ん?」
ミアは足を止める。
「この匂い……どこかで嗅いだことある」
匂いのする方へ目を向けると、少し先に明かりのついた屋台があった。
白い湯気が立ち上り、その向こうで一枚の暖簾が揺れている。
そこには、大きく「萬福」と書かれていた。
「……萬福?」
ミアは屋台へ近づいていく。
湯気の中から漂ってくる、醤油のような香り。
そして、聞き覚えのある麺をすする音。
「えっ……」
ミアは目を丸くした。
「ラーメンじゃん!」
まさか、この時代にラーメンの屋台があるとは思っていなかった。
ミアは、思わず暖簾をくぐった。
「おじさん、ラーメン一つ!」
「あいよ!」
おじさんが、手際よく麺を茹で始める。
やがて、湯気の立つ丼がミアの前に置かれた。
「お待ちどうさん」
「いただきます!」
ミアは箸を手に取ると、麺をすする。
「……おいしい!」
醤油の香りと、あっさりしたスープ。
久しぶりに口にしたラーメンの味に、ミアは思わず笑顔になった。
「ラーメン……久しぶりに食べたなぁ」
箸を止めず、夢中になって食べ続ける。
おじさんはそんなミアの様子を見ながら、ニヤリと笑った。
「お嬢ちゃん、そんなにラーメンが好きなのかい?」
「うん! 大好き!」
ミアは即答した。
スープを一口飲み、しみじみと頷いた。
「豚骨もいいけど、やっぱりこういうシンプルなのが美味しいんだよね」
「……とんこつ?」
おじさんが首をかしげる。
「なんだい、それ?」
「え?」
ミアは箸を止めた。
「あ……」
ここでミアは、自分が未来のラーメンの話をしてしまったことに気づく。
「えーっと……」
どう説明しようかと考えながら、ミアは苦笑いを浮かべた。
すると、おじさんはそれ以上聞かず、話題を変えるように尋ねた。
「ところで、お嬢ちゃん。ここは初めてかい?」
「うん、初めて!」
「そうかい。じゃあ、この屋台を見るのも初めてだな」
ミアは暖簾を見上げた。
「じゃあ、この『萬福』って、ずっと昔からあるの?」
「まあな。昔は屋台を引いて、あっちこっちで売ってたもんさ」
「へぇ……」
ミアは、目の前のラーメンを見つめた。
「なんか、すごいね。こういうのって歴史を感じる!」
「ははは、大げさだねぇ」
おじさんは笑った。
ミアは最後の一口まで食べ終えると、丼を置いた。
「ごちそうさまでした!」
「はいよ、ありがとさん」
ミアは代金を払い、暖簾をくぐって屋台を後にした。
「久しぶりのラーメン、美味しかったなぁ」
夜道を歩きながら、ミアは満足そうにお腹をさすった。
「まさか、大正にもラーメンがあるとは思わなかったなぁ」
ミアは歩きながら、さっきのラーメンを思い出す。
「また来ようっと!」
そう言って、ミアは満足そうに家へ向かって歩いていった。
ラーメンが日本で食べられるようになったのは、明治時代に入ってからと言われています。
横浜などの港町を中心に、中国から伝わった麺料理が広まり、やがて日本独自のラーメンへと発展していきました。
大正時代になると、ラーメンを提供する店や屋台も登場し、庶民の食べ物として少しずつ広まっていきます。
ちなみに、今回ミアが見つけた屋台の「萬福」は、東京・銀座にある老舗ラーメン店がモデルです。
この店は大正時代に屋台から始まったとされ、現在も銀座で営業しています。
あおもうひとつ、日本で最初にラーメンを食べた人物として紹介されることがあるのが、あの水戸黄門こと徳川光圀です。
時代劇のイメージでは、印籠を出して「このラーメンを食べたのは……」なんて言いたくなりますね(笑)。




