【38話】ミア、宝塚の魅力を知る!?
演目は調べたのですが。内容は資料が中々見つかりませんでした。
第一演目が始まる。
『正ちゃんの冒険』だ。
幕が上がると、舞台の上には見慣れない衣装を着た少女たちが現れた。
「おお~……!」
ミアは思わず身を乗り出す。
「これが宝塚……?」
舞台では、正ちゃんを中心に物語がテンポよく進んでいく。
コミカルな場面になると、客席からも笑い声が起こった。
「なんか、思ってたより楽しいじゃん!」
隣では伊集院が嬉しそうに舞台を見つめている。
「でしょう? 宝塚は素敵なんですよ」
「伊集院さん、めっちゃ嬉しそう(笑)」
第一演目が終わる。
ミアは、ふぅっと息を吐いた。
「なんか……意外と分かりやすくて、楽しかった!」
「私も、思っていたより楽しめたわ」
琴音も舞台を見ながら頷く。
その隣で、伊集院は嬉しそうに微笑んでいた。
「そう言ってもらえると、私も嬉しいですわ」
「あたし、もっと難しい劇なのかと思ってた!」
ミアはそう言って、次の演目を楽しみにするように舞台を見つめた。
「次はどんな劇なんだろ~?」
次の演目が始まる。
『ねね姫様』だ。
幕が上がると、先ほどとは雰囲気の違う舞台が広がった。
「わぁ……!」
ミアの目に飛び込んできたのは、華やかな衣装だった。
色鮮やかな着物に身を包んだ少女たちが舞台を行き交う。
「めっちゃ綺麗……」
さっきまで物語を追っていたミアだったが、今度は衣装や舞台の雰囲気に目を奪われていた。
「大正時代にも、こんな舞台があったんだ……」
琴音も舞台を見つめながら、静かに頷く。
「本当に華やかね」
隣では、伊集院が黙って舞台を楽しんでいる。
ミアはしばらく舞台を見つめていた。
「……なんか、いいかも」
三つ目の演目が始まる。
『采女礼讃』。
「これ、なんて読むんだろ?」
ミアは手元の番組を覗き込んだ。
「うねめらいさん、と読むそうですわ」
伊集院が答える。
「うねめらいさん……?」
ミアは聞き慣れない言葉を口にしてみる。
「采女というのは、昔の宮中に仕えた女性のことですわ」
「へぇ~。そんな昔の話なんだ」
ミアは少し驚いたように舞台を見る。
やがて幕が上がる。
すると、先ほどまでとは舞台の雰囲気が一変した。
色鮮やかな衣装をまとった少女たちが舞台に現れ、音楽に合わせて優雅に舞っている。
「わぁ……」
ミアは思わず声を漏らした。
華やかな衣装。
優雅な動き。
そして、舞台全体から漂う、どこか艶やかな雰囲気。
「なんか……綺麗」
ミアは、すっかり舞台に見入っていた。
琴音も静かに舞台を見つめている。
「さっきまでとは、また違う感じね」
「うん!」
ミアは頷いた。
「なんか、艶やかっていうの? こういうの」
伊集院は舞台を見つめながら、微笑んでいた。
ミアは再び舞台へ視線を戻す。
「宝塚って、いろんな劇をやるんだね……」
三つ目の演目が終わる。
「次は……『毒の花園』?」
ミアが番組を見る。
「なんか、タイトル怖くない?」
琴音も首を傾げる。
やがて幕が上がる。
すると、今までとは明らかに違う舞台が始まった。
音楽に合わせ、少女たちが軽やかに舞台を動いていく。
「えっ……踊ってる!」
ミアは驚いた。
しかも、その動きは今まで見てきた日本舞踊とは違う。
「なにこれ……バレエ?」
ミアは舞台から目が離せなくなった。
四つ目の演目が終わる。
「ふぅ……次で最後なんだ」
ミアが香盤表を見る。
「えっと……最後は『酒茶問答』?」
「酒とお茶……?」
ミアは首を傾げた。
「なんか、タイトルだけじゃ全然分かんないね」
「どんな劇なんだろう?」
やがて、最後の幕が上がった。
舞台には、酒を好む者と茶を好む者が現れる。
どうやら、お互いに自分の方が素晴らしいと言い合っているらしい。
「あははっ!」
ミアが思わず笑った。
「これ、酒とお茶でケンカしてるの!?」
琴音も思わず笑う。
舞台では、酒と茶、それぞれの良さを語りながら、軽快なやり取りが続いていく。
そして茶匠が舞台中央に現れると、優雅な踊りが始まった。
「わぁ……」
ミアは再び舞台に見入った。
「最後まで、いろんなのが出てくるんだね……」
最後の演目が終わる。
すると、それまで舞台にいた少女たちが再び舞台へ集まってきた。
音楽が鳴り始める。
「あれ……?」
ミアが顔を上げる。
少女たちは一斉に踊り始めた。
色とりどりの衣装が舞台いっぱいに広がっていく。
「わぁ……!」
ミアは思わず身を乗り出した。
最後は出演者全員が舞台に並び、華やかな踊りで締めくくられる。
やがて大きな拍手が劇場を包んだ。
ミアも夢中になって手を叩いていた。
舞台の幕がゆっくりと降りていく。
場内には、まだ大きな拍手が響いていた。
ミアは隣に座る伊集院を見る。
「……あれ?」
伊集院は、まだ舞台を見つめていた。
その表情は、うっとりとしている。
「伊集院さん、めっちゃ嬉しそう……」
「ええ……素敵でしたわ」
伊集院は小さく微笑んだ。
ミアはそんな伊集院を見て、思わず笑う。
「ほんとに宝塚が好きなんだね~」
劇場を出ると、夕方の街にはまだ明るさが残っていた。
ミアたちは、学校へ戻る道を歩いていた。
「いや~、面白かった!」
ミアが満足そうに言う。
「最初はどんな劇かと思ったけど、結構楽しめたね」
琴音も頷く。
「ええ。私も楽しかったわ」
ミアはふと、何かを思い出したように伊集院を見る。
「そういえばさ、最後の『酒茶問答』で、茶のところで最後に踊った人!」
「え?」
「あの人、凄く綺麗だったね!」
伊集院の表情が、ぱっと明るくなった。
「天津乙女さんのことですわね」
「そう、その人!」
ミアは頷く。
「踊りも凄かったし、なんか……めっちゃ綺麗だった!」
伊集院の声が、いつもより少し大きくなった。
「天津乙女さんは、宝塚でも特に素晴らしい方なんですのよ!」
「へぇ~!」
ミアが興味深そうに伊集院を見る。
「踊りもとてもお上手で、舞台に立つだけで目を引くんです。それに日本舞踊も素晴らしくて――」
伊集院は次々と言葉を重ねていく。
「あ、あの……伊集院さん?」
琴音が少し驚いたように声をかける。
「……あっ」
伊集院は我に返った。
「す、すみません……つい」
ミアは笑った。
「いやいや、めっちゃ好きなんじゃん!」
「……はい」
伊集院は少し恥ずかしそうに頷いた。
ミアと琴音は顔を見合わせ、思わず笑った。
三人は劇の余韻を楽しみながら、学校への道を歩いていった。
今回のお話では、大正時代の「宝塚少女歌劇」を取り上げてみました。
当時は現在の「宝塚歌劇」とは少し雰囲気が違い、レビュー形式が確立する前の時代です。
今回ミアたちが観劇したのは、実際に大正14年(1925年)に東京・市村座で上演された演目を参考にしています。
そして、劇中でミアが目を奪われた「茶匠」を演じたのが、**天津乙女**さんです。
天津乙女さんは宝塚少女歌劇の初期を代表するスターの一人で、日本舞踊にも秀でた方でした。
ミアにとっては初めての宝塚。
そして伊集院にとっては、大好きな宝塚を友達と一緒に観る特別な一日になりました。




